呼気ガス分析装置とは
呼気ガス分析装置とは、呼気に含まれる酸素や二酸化炭素の容量やその濃度を検出し、分析できる装置のことです。
呼気を分析することは、運動能力の中でも心肺機能の能力を知るために重要な情報が得られます。いわゆるスポーツとしての運動には瞬発力が求められる無酸素運動と、持久力が求められる有酸素運動に大別することができます。運動中の呼気を分析することによって、被験者がどの程度の運動強度まで有酸素運動で活動でき、どの強度から無酸素運動になるのかを知ることが可能です。
呼気ガス分析装置を用いることで、呼吸だけでなく循環と代謝のサイクルを総合的な指標として利用することができます。運動競技者の持久力の測定などに利用したり、心疾患を持つ患者の心機能の分類や、治療効果の指標などにも利用されており、トレーニングやリハビリテーションの効果的な処方の作成に貢献しています。
呼気ガス分析装置の使用用途
呼気ガス分析装置は、主にプロスポーツ選手を含むハイレベルな競技者の心肺機能の評価に用いられます。特に持久力が勝敗の鍵を握るマラソンや陸上の中長距離競技、水泳競技、自転車競技などの種目において、心肺機能の優劣が勝敗を左右すると言っても過言ではありません。
スポーツ分野以外においては、医療業界でも利用されています。例えば心不全における心機能分類の指標にしたり、治療効果の判定、リハビリテーションや運動療法を実施する際に、どの程度の運動強度が適切なのかを呼気ガス分析装置を用いて検討する場合があります。
呼気ガスを分析したデータを即時的に取得し、パフォーマンスを解析することでより効率の良いトレーニングの提案をすることや、カロリー消費や栄養補給などのタイミングを、効果の高い理想的なタイミングを設計できます。
呼気ガス分析装置の原理
呼気ガス分析装置は大きく4つの分析装置が組み合わされているのが一般的です。まず一回換気量を測定する流量計、次に酸素と二酸化炭素の濃度計などから構成される測定装置、3つ目に測定結果から必要な基本データを計算する演算装置、そして演算結果にその他のデータを付加して総合的な分析を行う解析装置の4つです。
演算装置では呼吸数のカウントや呼気と吸気を区別したり、酸素の摂取量と二酸化炭素の排出量などを計算します。そして、得られた数値を解析により、パフォーマンスなどを分析できます。
呼気ガス分析装置ではガスマスクのように使用者の顔に装着するため、様々な運動時の測定が可能です。呼気ガス分析装置は、呼気だけでなく酸素摂取量、呼吸の回数、呼気の温度や湿度、酸素換気量なども測定できます。
呼気ガス分析装置のその他情報
人が運動するためにはエネルギーを作り出さなければならず、その能力は有酸素運動と無酸素運動との閾値に大きな関係があります。呼気ガス分析装置は、アスリートのパフォーマンス測定に重要な役割を果たす装置です。
また呼気ガス分析装置を用いた運動能力測定の代表例に、breath-by-breath法とmising chanber法があります。それぞれに長所と短所があるため、評価の目的によって選ぶことが重要です。
breath-by-breath法
breath-by-breath法では呼気と吸気ガス濃度の差から、酸素摂取量 (VO2) や二酸化炭素排出量 (VCO2) を1呼吸ごとに、連続して測定します。1呼吸ごとに測定が行われるため、安静時から運動中、そして回復時まで分析できるのが特徴です。運動量を変化させながら試験する漸増負荷試験に適しています。一方で高速センサーが必要なことと、換気量とガス濃度との時間のずれを正確に補正することが必要となります。
mixing chamber法
mixing chamber法は被験者の呼気ガスを、ある容積のあるchamberに集めて混合してからガス分析を行う方法です。試験方法の性格から、ある一定時間の継続した運動状態において測定可能になります。比較的安価で技術的にも容易に実施できる測定ですが、運動開始時などの短期的な状態を把握することには適していません。