定温乾燥機

定温乾燥機とは

定温乾燥機とは、庫内の温度を均一に保つ乾燥機のことで、乾燥させたい対象物の水分を乾燥させるために使用されます。大きく分けると自然対流式と強制対流式の2種類に分類されます。

定温乾燥機の他に、恒温乾燥機などとも呼ばれています。庫内の温度を高い精度で均一にコントロールし、高温環境を一定に保ちながら、効率の良い加熱で対象物を乾燥させることが可能です。

最大温度は200〜300℃程度まで設定できるものが多く、価格はおおよそ10万円〜となっています。

定温乾燥機の使用用途

定温乾燥機の用途としては、実験用のガラス器具の乾燥や、実験試料の乾燥など、名前の通り対象物の乾燥に最も多く用いられます。他にも試料の脱気・硬化のために使われたり、一定温度条件下での耐熱試験や水分測定などの分析にも活用されます。

定温乾燥機のうち、自然対流式ではヒーター熱の自然対流によって空気が循環しており、空気の流れによる飛び散りなどが起こりにくいことから、飛散しやすい粉末状の対象物などを乾燥させることに向いています。卓上でも使用できる小型なものから床置きで高さ1m以上の大型のものまで様々なサイズがあり、用途に適したサイズの乾燥機を選ぶことが出来ます。

定温乾燥機の原理

自然対流式の定温乾燥機は、熱を発生させることで生じた浮力によって、自然に気体に対流が起こることを利用して庫内の温度を均一にします。熱は温度に応じてエネルギーを持っており、熱が空気に伝わることで空気の温度が上昇します。

物質の温度が上昇すると、物質の分子の運動が活発になるため、温度の上昇に伴って密度が小さくなり、密度の差によって、重力と逆向きに浮力が発生して対流が起きることが自然対流の仕組みです。

一方で、強制対流式の定温乾燥機はヒーターの熱を送風のファンで循環させることで庫内の温度を均一にします。自然対流式よりも庫内の温度分布がより一定になりやすく、しっかりとした空気の流れがある分、乾燥時間は自然対流式よりも短くなる傾向があります。

定温乾燥機の選び方

定温乾燥機を購入する際に検討しておくべき項目は主に以下の7点です。

  1. サイズ
  2. 電源電圧
  3. 棚の数と高さ
  4. 設定可能温度と温度制御性能
  5. 対流方式
  6. タイマー・プログラム機能の有無
  7. 過昇温防止装置の有無

これらの機能面の必要性と価格との兼ね合いでどのモデルにするかを考えると良いでしょう。以下に、各項目について詳細を述べていきます。

1. サイズ

設置予定場所が実験台や棚の上なのか、或いは床に直置きにするのかによって選ぶ型式が変わります。また、加熱機器なので隣接する装置や壁との間にスペースを設ける必要があるので、それを含めて余裕のあるサイズを選びましょう。

2. 電源電圧

小型のものであれば通常の家電と同様に100Vの電源で使用できますが、大型になると200Vの電源が必要となるものもあります。また、中にはサイズが小型でも200V電源が必要なものもあるので、サイズだけでなく電源電圧も確認しましょう。

3. 棚の数と高さ

棚の数が多い程、設置面積が増えるため乾燥機内のスペースを有効活用できます。一方で、一段毎の高さが低くなるため、高さのある器具や試料を入れることができなくなります。どのようなものを乾燥機に入れるのかを想定して適切な棚の数と高さのものを選びましょう。

4. 設定可能温度と温度制御性能

定温乾燥機は加熱装置なので、設定可能温度の下限は室温となります。一方で、設定可能温度の上限は型式によって200℃程度のものと300℃程度のものがあります。また、温度制御性能はどの程度の変動幅で温度を一定に保てるかを示す値です。

「±○℃」という表記で記載されています。制御能力が高い(「±○℃」の値が小さい)方が価格は高くなるので、使用用途に合わせて過剰なスペックにならないように選びましょう。

5. 対流方式

上述した通り、自然対流式と強制対流式があります。粉体の乾燥など、飛散しやすいものを扱う場合には自然対流式が良いです。基本的には強制対流式の方が自然対流式よりも高価になるため、ガラス器具の乾燥に用いる場合など、大まかな温度分布で十分な場合にも経済的な観点から自然対流式を選ぶと良いでしょう。

一方で、耐熱試験や水分分析など、厳密な温度制御が求められる場合には温度制御能に優れる強制対流式を選ぶ方が好ましいでしょう。また、試験用途の場合には対流方式だけでなく、装置の温度制御性能も合わせて確認することが肝要です。

6. タイマー・プログラム機能の有無

タイマー機能が付いているものは、「○時間後に電源を切る」という形で運転させることが可能です。必要以上に熱を掛けたくない場合や、電源の切り忘れで終夜稼働させることを避けたい場合等に便利な機能です。

プログラム機能が付いているものは、「○℃で○時間、その後△℃で△時間」というように、温度と時間の設定をプログラムさせて運転することが可能です。タイマー機能よりも高性能な分、価格も高くなります。

7. 過昇温防止装置の有無

過昇温防止機能とは、装置の制御系の故障により設定温度以上に温度が上昇してしまった場合に、強制的に装置の電源を落としてくれる機能です。乾燥機の温度設定とは別に過昇温防止の温度設定を行うことができます。

例えば、乾燥機の温度設定を60℃、過昇温防止の温度設定を100℃にそれぞれ設定するという具合です。現在販売されているものの多くが安全機能として過昇温防止機能を内蔵したものが多いですが、価格が安いものだとそのような安全機能がついていないものもあります。

200℃、300℃と高い温度に設定できる装置であり、火災の原因にもなりうるため、過昇温防止機能のある装置を購入することをお勧めします。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/product/category/science/drying-oven/convection-oven/
https://www.yamato-net.co.jp/word/65
http://www.daiwakeisoku.com/_userdata/PDF/electric_drying_oven.pdf
https://lab-brains.as-1.co.jp/article/selection-guide/2022/03/16313/

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