ボール盤

ボール盤とは

ボール盤

ボール盤 (英: drilling machine) とは、木材・樹脂・金属などの素材に穴をあけるための工作機械です。

テーブルに素材を固定し、主軸に取り付けたドリルやリーマなどの切削工具を回転させ、主軸を素材に向かって下げていくことで穴あけ加工を行います。ボール盤で可能な加工は、穴あけ加工・穴広げ加工・リーマ加工・タップ立て加工・座ぐり加工・中ぐり加工などです。

この機械が日本で「ボール盤」と呼ばれる語源は、オランダ語の「boor-bank」 (ドリル台) と言われています。

ボール盤の使用用途

ボール盤は、大量生産前の試作部品の加工や修正に多く使われています。加工物に穴を開ける用途が一般的です。ボール盤はフライス盤旋盤などとは異なり、小型のものが多いので、手軽かつ簡単に穴あけの作業を行えるのが特徴です。

自動化の面では、フライス盤やマシニングセンタなどの方が優れているので、ボール盤は大量生産には不向きです。他の工作機械よりも安価であり、DIYなどの個人でのものづくりにも活用されています。

ボール盤の原理

ボール盤は取り付ける工具を取り換えることで、様々な加工が可能となります。

1. 穴あけ加工

ボール盤の基本的な使い方で、ドリルで加工物に穴をあけます。ドリリングとも呼ばれ、通常のソリッドドリリング加工や、穴の中心に円筒を残して大径の穴をあけるトレパニング加工などがあります。

2. 中ぐり加工

中ぐりバイトと呼ばれる切削工具を使用して、ドリルであけた穴の内径を広げて、寸法精度を出します。

3. 座ぐり加工

座ぐりドリルを使って、ドリル穴の上部に、大径の段を加工します。6角穴ボルト用に多く使われます。

4. リーマ加工

リーマと呼ばれる工具を用いて、ドリル穴の精度を高めるための加工です。主軸やチャックなどが振れると、加工精度が悪化するので、剛性を上げることが重要です。

5. ねじ切り加工

ドリルであけた穴に、タップと呼ばれる工具を使用して、めねじのねじ山を作る加工です。タッピングまたはタップ立てとも呼ばれます。

ボール盤の種類

ボール盤には様々な種類があります。代表的な種類は以下の通りです。

1. 直立ボール盤

最も一般的なボール盤で、床に据え付けられます。上下方向に主軸ヘッドを手動または機械式で動かし、主軸の真下に置かれた加工物にドリルで穴あけ加工します。主軸の回転数は、減速ギアを入れ替えることで変更できます。穴径は13~50mm程度です。

2. ラジアルボール盤

直立ボール盤よりも大きなボール盤です。主軸ヘッドが可動式のアームに取り付けられており、アームを動かすことで、大きな加工物を動かさないままで何箇所もの穴あけができます。

3. 卓上ボール盤

最も小型のボール盤で、主にDIYや簡単な加工などに使われます。直立ボール盤より精度は落ちますが使い勝手は良いと言えます。穴径は13mm程度までです。

4. タレットボール盤

主軸に複数種類の工具を取り付けた旋回台を設け、工具を順次変更することにより、複数の作業工程が可能です。

5. NCボール盤

数値制御により、精度の高い加工を自動で行います。

6. その他のボール盤

多軸ボール盤は、主軸の数を増やしたボール盤で、複数の穴を同時に加工することが可能です。主軸の数は50の物も存在し、汎用機ではなく特殊な部品などの加工に使用されます。多頭ボール盤は、主軸ヘッドが多数備えられ、1台で穴あけ・座ぐり・ねじ立てなどの加工が順次行えます。

ボール盤のその他情報

ボール盤の使い方

1. ドリルを確実に取り付ける</br /> ドリルをチャックに確実に締め付けないと、加工中に空転して加工精度が低下し、ボール盤が損傷します。

2. 安全第一
手袋の使用は、ドリルに巻き込まれる恐れがあり、非常に危険です。また、保護めがねを確実に着用することが必要です。

3. 加工物の固定
加工物は、クランプやバイスを使って確実に固定する必要があります。締め付けが弱いと、加工物が振れ回されて危険です。

4. 適切な回転数
ドリルの直径や加工物の硬さなどによって適切な回転数や送り速度を選ぶ必要があります。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/drilling/
https://electrictoolboy.com/media/25303/ 
https://www.bildy.jp/mag/drillpress-guide/#i-5
https://sakusakuec.com/shop/pg/1drill-press/
https://www.kousakukikai.tech/drilling/

OPCサーバー

OPCサーバーとは

工場における各種設備と通信して、機器の制御をおこなったりデータのやり取りを行うアプリケーションをOPCサーバと呼ばれています。

OPCとはOLE for Process Controlの略で、プロセス制御を行うため広く採用されている産業用の通信規格を定めたものです。1996年にマイクロソフト社と機器制御メーカーが共同で規格化を行い、現在ではOPC Foundationが標準化を進めています。

OPCによりサプライヤと利用者の関係が強化され、利用者側の機器制御のためのオートメーションアプリケーションの選択肢の幅が広がりました。加えてオートメーション化を進めるサプライヤも彼らのアプリケーションにOPCを採用するメリットを強く認識するようになりました。

OPCサーバーの使用用途

工場内には、工作機械、PLC、各種制御機器などがあり、無数の装置が動作しています。

これら機器を提供する各メーカーは、それぞれの制御機器にアクセスして通信するためのOPCサーバーソフトウェアを提供します。他方、OPCのクライアント機能を 生産計画や管理のための各種アプリケーションに組み入れます。

以上により、機器メーカーおよび利用者双方ともに製品ごとの個別の仕様に対応しなくても、OPC規格で決められたデータ通信を行い、データの取得、書き込みや機器の制御ができるようになります。

OPCサーバーの原理

従来は、ベンダーの提供する機器単位で通信の規格が決まっていたために、機器に対して統括した制御を行うことは困難でした。OPCの規格化により特定のベンダーに依存することなく、任意のベンダー間をまたぎ、デバイスとOPCサーバー間でデータ通信を行うことができるようになりました。

OPCサーバーは現場のPCやPLC、工作機械等と自由に通信ができます。ベンダーが異なっていても、決められたプロトコルとコマンドに従うことで通信を継続することが可能です。

OPC規格に従い、生産データのREAD/WRITEを行うためにOPCサーバは各装置と接続することができます。

OPCサーバに接続する機器側は、製品の製造を行っている際、品種ごとの生産計画に従って、生産が進んでいるかどうかを以下の流れで確認することが可能です。

STEP-1: OPCサーバに対してアプリがデータを要求する
STEP-2: OPCサーバが接続先の装置側から品種情報をREADする
STEP-3: OPCサーバからアプリに対してデータWRITEする

特徴は、全てOPCサーバからのREAD/WRITEの要求に対して装置側と通信するため、装置側は、これに応えるのみでよいという点です。 

参考文献
https://jss1.jp/column/column_158/

IoTゲートウェイ

IoTゲートウェイとは

IOTゲートウェイ

IoTゲートウェイとは、異なるデバイスやセンサーからのデータを収集し、それらを適切な形式に変換してクラウドやデータセンターへ送信する機器です。

また、逆にクラウドやデータセンターからの指示を受け取り、対象デバイスへ適切な命令を伝達します。これにより、IoTシステム全体の効率性や安全性が向上し、よりスムーズな運用が可能となります。

近年、インターネットに接続されたデバイスが急速に増え続け、さまざまな産業や生活においてIoT (Internet of Things) 技術が一般的になってきました。このIoT技術を利用するためには、デバイス間の通信やデータの収集・解析が不可欠であり、その役割を担う重要な機器がIoTゲートウェイです。

IoTゲートウェイの使用用途

IoTゲートウェイはさまざまな分野でIoTシステムを支えています。代表的な使用用途を4つ紹介します。

1. 農業

農場では、土壌センサーや収穫ロボットなど、多くのIoTデバイスが利用されています。これらのデバイスはIoTゲートウェイを通じて収集したデータをクラウド上に送信します。

これにより農家は土壌情報や生育状況を遠隔監視できるため、農作業の効率化に役立てることができます。

2. 交通

インテリジェントトランスポーテーションシステムでは、道路に設置された様々なセンサーからのデータを収集・分析する必要があります。IoTゲートウェイがこれらのセンサーとネットワークを仲介し、交通管理センターでは道路交通データをリアルタイムに把握が可能になります。

3. エネルギーインフラ

発電所や変電所には、重要な設備を監視するためのセンサーネットワークが導入されています。IoTゲートウェイを使って収集したデータをもとに、エネルギー供給の状況が管理・制御されています。

4. 工場

工場の生産ラインでは品質管理を徹底するためにIoTセンサーが多用されます。生産機器の稼働状況や製品品質データはIoTゲートウェイを通じて収集され、工場の管理システムで監視・分析されています。これにより、工場の自動化と効率化が進められています。

IoTゲートウェイの原理

1. データ受信

IoTゲートウェイは、デバイスやセンサーから送られてくるデータを受信します。このとき、デバイスやセンサーは、BluetoothやWi-Fi、ZigBeeなどの無線通信技術や、RS-232やRS-485などの有線通信技術を用いてIoTゲートウェイと接続されています。

2. 変換

IoTゲートウェイは、受信したデータを適切な形式やプロトコルに変換します。例えば、Bluetoothで送られてきたデータをTCP/IPに変換できます。

また、IoTゲートウェイは、受信したデータに対してフィルタリングや集約などの処理を行うことが可能です。例えば、不要なデータを除外したり、複数のデバイスやセンサーからのデータを1つにまとめたりができます。

3. 保護

IoTゲートウェイは、受信したデータに対してセキュリティや信頼性を向上させることができます。暗号化や署名などの手法を用いてデータを保護したり、エラー検出や訂正などの手法を用いてデータの品質を確保したりできます。

4. データ送信

IoTゲートウェイは、処理したデータをクラウドやオンプレミスのサーバーに送信します。

IoTゲートウェイのその他情報

1. IoTエリアネットワーク

IoTエリアネットワークとは、比較的近距離に存在するIoTデバイス同士を接続するネットワークのことです。一般的には100m程度の範囲内にあるデバイスを接続対象としています。

IoTエリアネットワークにより接続されたIoTデバイスは、IoTゲートウェイを介してインターネットに接続されます。IoTゲートウェイがIoTエリアネットワークとインターネットの橋渡しを行います。IoTエリアネットワークでは、通信規格としてZigbeeやBluetooth、ThreadなどのIEEE802.15.4規格が採用されることが多いです。

これらの規格はIoTデバイスに適した省電力で低速な通信方式として開発されています。一方で、IoTゲートウェイとインターネットの間ではWi-FiやEthernetなどの高速な規格が使われます。IoTエリアネットワークを活用するメリットは、インフラコストの削減と電力消費の最適化です。

個々のIoTデバイスがインターネットに直接接続されると多大なトラフィックが発生し、電力も大量に消費されます。IoTエリアネットワークによってIoTデバイス群をまとめて管理して、これらの問題を回避できます。

2. エッジコンピューティング

エッジコンピューティングは、分散処理型のコンピューティング環境の概念の1つです。

初期のIoTシステム
当初、IoTシステムはサーバー集中型のシステムで、すべてのフィールドデータは直接、もしくはIoTゲートウェイを介してIoTサーバーに集まります。IoTサーバーは集まったデータを集約し、必要な処理を行います。

サーバー集中型のシステムの場合、総てのフィールドデータの情報を処理する必要があります。さらに、サーバー機能も行うため、大規模になればネットワーク負荷やデータ蓄積・処理にリソースを占有される問題がありました。

最新のIoTシステム
IoTデバイスやIoTゲートウェイで使用されるハードウェアの性能の向上で、エリアネットワークの管理、プロトコル変換機能だけでなく、様々な機能を持たせることができるようになってきました。そこで、フィールドデバイスに近いところで可能な前処理を行い、IoTサーバーとのやり取りを必要最低限にして、ネットワークへの負荷、通信するデータの最適化などが行えるようになってきました。

このようにフィールドデバイス、またはその近くに配置するIoTゲートウェイに、従来のネットワーク中継機能に加えてより高度なデータ処理機能、分析機能などを与え、ネットワークを含めたIoTシステム全体を効率的に動作させるためにエッジコンピュータは使われています。

参考文献
https://www.techfirm.co.jp/blog/iot-gateway

レーザー切断機

レーザー切断機とは

レーザー切断機

レーザー切断機とは、高出力のレーザービームを使用して材料を切断するための機械です。

レーザーによって、金属やアクリルなどの材料を溶かすことで切断します。レーザー切断機は、非常に高い精度で切断作業を行える点が特徴です。レーザービームは狭い焦点サイズで集光されるため、微細な切れ込みや複雑な形状の切断も可能となっています。

高精度かつ加工スピードの速さから大量生産に非常に向いており、さまざまな産業や場面で使用されている機械です。以前は高価な機械でしたが、近年では10万円以下のモデルが存在します。したがって、DIYを趣味とする個人が購入することも可能になりました。

レーザー切断機の使用用途

レーザー切断は、さまざまな産業や製造業界で多くの使用用途があります。以下に代表的なレーザー切断機の使用用途を例示します。

1. 金属加工

鋼板やステンレス鋼などの金属材料の切断に広く使用されています。レーザービームの高エネルギー密度により、金属の表面を溶かして吹き飛ばすことで切断を行います。金属の厚さによって適切な出力やパラメータを調整し、高精度の切断が可能です。

自動車産業における車体製作や部品製作に使用されます。また、航空宇宙産業における航空機部品にも使用されることが多いです。

2. シートメタル加工

シートメタルは、自動車部品や建築材料などの製造に頻繁に使用される薄い金属シートです。レーザー切断機は、シートメタルの切断や穴あけなどの加工を効率的に行うために使用されます。高い切断精度と狭い切削幅により、複雑な形状のパーツを正確に切り出すことが可能です。

3. プラスチック加工

プラスチック部品の製造業界でも広く使用されています。プラスチックの切断や穴あけは、高精度な切断と熱影響の少ない加工が求められます。レーザー光は極細となるため、微細な切り込みや複雑な形状の加工が可能です。

電子機器、医療機器、パッケージ製品などのプラスチック部品の製造に使用されます。

4. 医療

近年では医療の現場でもレーザー切断 (メス) の導入が進んでいます。レーザービームは高精度かつ血管を同時に凝固させることができるため、出血を最小限に抑えながら正確な切除を行うことが可能です。レーザー眼科手術などで利用されます。

レーザー切断機の原理

レーザー切断機の構成は、レーザー発振器、光路、集光部などです。架台にはテーブルや駆動装置が付属する場合が一般的です。

運転を開始すると、レーザー発振器が設定されたレーザー強度を元に照射します。一般的にはCO2レーザーが使われることが多いです。製品によってはYAGレーザーが使われている場合もあります。

照射されたレーザーは光路を通って集光部へ進行します。集光部ではレーザー光を0.05mm~0.4mm程度の大きさまで集光し、対象物へと照射します。 材料は強力なレーザーで溶かしながら切断しますが、切断屑は噴射エアーによって吹き飛ばされる場合が多いです。

レーザー加工では、熱をどれだけ加えるかも重要です。材料の熱耐性を調べ、それに合ったテーブルの送り速度に設定します。適切な速度でなければ切断面が荒れたり、不完全となる場合もあるため注意が必要です。

レーザー切断機の選び方

レーザー切断機を選ぶ際には、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 材料の仕様

切断したい材料の種類と厚さに応じて切断能力を選定することが肝要です。異なる材料に対して、最適なレーザー波長や出力が異なる場合があります。また、切断可能な最大厚さにも注意が必要です。

2. 切断精度と速度

必要な切断精度と作業速度も考慮します。高い切断精度を求める場合は、光学系の精度やレーザーのフォーカス能力に注目する必要があります。

また、作業速度は生産性に関わる重要な要素です。大量加工が必要な場合は、作業可能な速度も十分考慮します。

3. 安全性と規制

レーザー切断機は高出力のレーザービームを使用するため、適切な安全対策が必要です。レーザーセーフティ機能や適切な保護装置を備えた機種を選びます。また、国や地域の規制に適合していることも確認して購入することが大切です。

参考文献
http://www-it.jwes.or.jp/

GNSS受信機

GNSS受信機とは

GNSS受信機

GNSS受信機とは、人工衛星から信号を受信して、受信地点の緯度、経度の情報に変換するための装置です。

GNSSとは「Global Navigation Satelite System」の略したもので、全球測位衛星システムと訳されます。人工衛星を利用して、位置情報を測定するシステムです。

米国のGPS (Global Positioning System) は、最も広く利用されているGNSSです。日本ではQZSS (Quasi-Zenith Satellite System: みちびき) 、ヨーロッパのGalileo、ロシアのGLONASS、中国のBeiDouなど、それぞれの国が構築している衛星システムがあります。

GNSS受信機の使用用途

GNSS受信機は、位置情報を活用したサービスで用いられています。私たちの生活で身近なものでは、カーナビゲーションでGPSが知られるようになりました。

現在では、スマートフォンにも搭載されています。また、近年普及しつつあるドローンも、GNSS受信機を搭載し、位置の制御に活用しています。

GNSSの応用例は、バスやタクシーの運行情報の提供、子どもや高齢者の居場所の確認、建設機械の位置把握などです。災害への備えとして、自然斜面での地盤位置を測定することにより、突発的な土砂崩れの前兆を検出します。

GNSS受信機の原理

GNSS受信機の原理には、単独測位と相対測位があります。

1. 単独測位

単独測位は、4つ以上の衛星からの信号をGNSS受信機が受信し位置情報を取得する方法です。衛星から送信された信号には、送信した時刻の情報が入っており、送信した時刻と信号から、GNSS受信機に到着するまでの時刻の差を出して、それを信号速度で乗じて衛星までの距離を算出します。

同様に他3つ以上の衛星からの距離も算出し、GNSS受信機の位置を検出します。理論的には3個の衛星があれば三角測量によりGNSS受信機の位置を求めることができますが、誤差を補正するために4つ以上の衛星が必要です。

2. 相対測位

相対測位には、DGPS (Differential-GPS) と干渉計方式があります。

DGPS方式
DGPS方式は、複数のGNSS受信機で4つ以上の衛星からの信号を受信し、高精度な位置情報を取得します。複数のGNSS受信機が単独測位を行い、それぞれの受信機の位置情報から共通誤差を考慮して位置を取得する方法です。

干渉計方式
干渉計方式はDGPS方式と同様に、複数のGNSS受信機を利用し、それぞれの受信機が受信する信号の位相差も利用して位置の取得をします。

GNSS受信機のその他情報

1. 国産の測位衛星みちびき

GPSはアメリカの測位衛星を使ったシステムであり、当初は軍事目的で開発されたものです。日本のGNSSは2010年に「みちびき」の初号機が打ち上げられました。2018年に4機体制でサービスが開始され、7機体制が構築される予定です。

みちびきは準天頂衛星システムと呼ばれ、準天頂軌道を使っており、日本を中心にアジア・オセアニア地域上空を飛行しています。なるべく日本付近に長く留まるように、南北非対称の「8の字軌道」を飛行しており、北半球に約13時間、南半球に約11時間滞在します。

みちびきはGPSと一体で利用し、GPSを補うことでより高精度で安定した測位を実現させるためのシステムです。

2. みちびきの活用例

みちびきは高精度な位置情報を利用可能で、cm級測位も対応しているシステムです。そこで、さまざまな活用方法が検討されています。例えば、労働力不足が顕在化している農業では農機の自動走行システムです。

交通安全領域では自動車の自動運転、道路交通法違反の自動判定、冬季の除雪作業の支援などへの利用が検討されています。福祉分野では、視覚障害者の自立歩行の補助などに期待されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsprs/52/4/52_165/_pdf/-char/ja
https://qzss.go.jp/usage/userreport/use-cases_181025.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1994/116/10/116_10_672/_pdf
http://www.shamen-net.com/word/word02.html

超音波モーター

超音波モーターとは

超音波モーター (英: Ultrasonic Motor) とは、超音波の振動を利用して回転運動や線形運動を行うモーターです。

一般的な電気モーターとは異なり、回転部分や可動部分が直接的に接触する機構を持ちません。超音波振動の伝達によって運動を実現します。振動の伝達によって運動を実現するため、駆動中にほとんど騒音を発生しません。音響的に敏感な環境や静粛性が求められる装置に適しています。

また、高い周波数の振動を利用するため、非常に迅速な運動が可能です。これにより、素早い位置制御や高速な動作が要求される用途に応用されます。ただし、一般的には小型装置へ適用されるモーターです。

したがって、大きな負荷や高いトルクが要求される場合には、十分なパワーと効率を提供するかどうか注意が必要です。負荷に対する適切な設計や評価の実施が求められます。

超音波モーターの使用用途

超音波モーターは、さまざまな用途で使用されます。以下は使用用途の一例です。

1. 光学機器

カメラやビデオカメラなどの光学機器において、自動フォーカス機構やズーム機構に利用されます。超音波モーターの特徴である高速応答性と静音性を活かし、瞬時に焦点距離を合わせたり、レンズの拡大・縮小を行ったりします。光学系の微妙な制御が求められるため、超音波モーターの高い精度と滑らかな運動が重要です。

2. 医療機器

内視鏡やエコー画像装置などの医療機器に使用されます。内視鏡の先端に取り付けられた超音波モーターは、細かな位置調整や振動制御を可能にし、医師が手術や検査を行う際に精密な操作をサポートします。超音波モーターの非接触性や静音性が特に重要であり、患者の快適さと高い治療効果を提供することが可能です。

また、磁力の影響を受けないという特徴を活かし、磁気を用いた医療診断機器であるMRIの本体や周辺機器などにも用いられています。

3. ロボット

ロボットアームやマニピュレータなどのロボット工学において使用されます。超音波モーターは高い精度と高速応答性を持ち、微細な動作制御や位置決めを実現するために最適です。これにより、産業用ロボットや医療用ロボットなど、多様なロボット応用において使用されています。

4. 電子製品

超音波モーターは、スマートフォンやタブレットなどの消費電子製品にも使用されることが多いです。振動を利用して、タッチフィードバックや振動アラームなどの機能を実現します。

超音波モーターの原理

超音波モーターは、圧電効果を利用して動作する場合が多いです。圧電素子またはピエゾ素子と呼ばれる材料を使用します。一般的に圧電素子は、セラミックや圧電結晶によって構成されます。

圧電素子には、駆動周波数の電圧が印加されます。駆動周波数は、素子の固有の振動周波数に合わせて設計されることが多いです。この電圧により、圧電素子は周期的に膨張と収縮を繰り返して変形します。

この変形は超音波の振動となります。超音波の振動はモーター内部の機構部分に伝達されることで、回転運動へ変換される仕組みです。

超音波モーターの構造

一般的な超音波モーターは以下のような構造要素を有します。

1. 振動子

振動子は超音波の振動を発生する部分です。超音波を発生させることで、モーターの駆動力を提供します。圧電素子などが使用されることが多いです。

2. 駆動子

振動子からの振動を受け取り、その力を増幅・変換して運動を引き起こす部品です。駆動子は通常、回転軸や線形運動用のスリップリングなどの形態です。圧電素子などと接触していることが多く、駆動力を増幅する部品です。

3. ローター

超音波モーターにおいて回転運動をする部分です。駆動子によって駆動されます。回転軸や回転ディスクなどと呼ばれることが多いです。

4. ステーター

ローターと対向し、回転運動や線形運動の制御を行う部分です。ステーターは振動子や駆動子によって発生する振動を受け取り、それに対応した力や制約を与える役割を果たします。

参考文献
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/village/ultrasonic-motor.html
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00009/

3軸加速度センサー

3軸加速度センサーとは

3軸加速度センサーとは、X方向、Y方向、Z方向の加速度を測定するセンサーです。

加速度とは、ニュートンの運動の法則 (第2法則) で「ある物体が外部からの力Fをうけるとき、その力の方向に、力Fの大きさに比例し、物体の質量mに反比例する加速度aを生じる」と定義されています。数式であらわすと「F=ma」です。加速度は「ある一定の時間における速度の変化量」と言えます。

加速度センサーは加速度を測定し、信号処理をすることで物体の動き、振動、衝撃を検知するためのセンサーです。また、重力も測定することができるので、重力を計算すると傾きの検出も可能です。加速度センサーには、圧電式、ピエゾ抵抗式、静電容量式などがあり、用途に応じて選定されます。

3軸加速度センサーの使用用途

3軸加速度センサーは現在では、幅広い機器に使用されています。使用例には、以下のような機器があります。

1. 携帯電話

縦横の検出をすることにより画面の向きを変更したり、歩数計のカウントなどに使われています。

2. ゲームコントローラー

コントローラーの動きを検知することに使用されています。

3. 自動車

車の加速・減速や荷重による車体の姿勢を検知し、ABSや電子制御サスペンションなどに活用されています。また、エアバッグの衝突検知にも使われています。

4. ロボット

ロボットの位置や姿勢の制御に活用されています。

3軸加速度センサーの原理

3軸加速度センサーの種類には、主にピエゾ抵抗式、圧電式、静電容量式があります。

1. ピエゾ抵抗式3軸加速度センサー

ピエゾ抵抗式の加速度センサーは、ピエゾ抵抗効果とよばれる、ピエゾ抵抗素子に力が加わると抵抗が変化する現象を利用したセンサーです。センサー素子の可動部と固定部の接合部にピエゾ抵抗素子を配置し、加速度がかかることによって可動部からピエゾ抵抗素子に力が加わり、抵抗値が変化します。この抵抗値の変化から、加速度を検出します。

2. 圧電式3軸加速度センサー

圧電式加速度センサーは圧電効果とよばれる、圧電性のある物体に力が加わると分極が発生し、電圧が生じる現象を利用したセンサーです。センサー素子の可動部と固定部の接合部に圧電素子を配置し、加速度がかかることによって可動部から圧電素子に力が加わり、電荷が発生します。この電荷の変化から加速度を検出します。

3. 静電容量式3軸加速度センサー

電極間の静電容量の変化を利用して検出します。センサー素子の中にあるのは、固定電極と可動電極です。加速度がかかると可動電極が移動するので、固定電極との隙間が変化し、電極間の静電容量が変化します。この静電容量の変化から加速度を検出します。

3軸加速度センサーのその他情報

1. 3軸加速度センサーの応用例

3軸加速度センサーは比較的小型で応用しやすいデバイスです。そこで人体動作解析分野への応用例が増えてきています。

測定例1: 歩行時の膝に加わる3軸加速度を測定
膝に3軸加速度センサーを装着、歩行時の加速度データを収集します。

測定例2: 下肢の左右機能差測定と下肢の易受傷性測定
3軸加速度センサーを両足の膝関節側面部に取り付けて固定します。不安定板に片足で乗った際の「最大振幅」を測定します。

上記により、下記の結果を得ることができます。

結果1: 膝に加わる加速度
3軸加速度センサーで測定すると、膝を中心に上げ下げする運動、前後方向の運動、左右方向運動それぞれで加速度が同時に測定 することができます。また、上記の3軸方向の加速度を両足で同時に測定すると、左右の膝の衝撃値の差異や、 歩行の際の左右のバランス測定なども可能です。

結果2: 歩行周期
歩行時、かかとが地面に接地している間の時間の測定を行うことで、歩行サイクルの算出ができます。歩行サイクルを算出することで、歩行周期の平均値・分布なども算出できます。

結果3: 衝撃吸収機能
足を地面に着地させた瞬間から、加速度が0になるまでの時間を測定することで、膝が衝撃をどの程度 吸収できているか測定できます。

2. 3軸加速度センサーを使った歩数計のアルゴリズム

3軸加速度センサーを使った歩数計の歩数を認識するアルゴリズムには、以下のような算出例があります。歩数検出では3軸を合成した3軸合成値のみを採用しますが、X, Y, Z軸をそれぞれの値を参照してしまうと、センサーがどの方向を向いているかに依存してしまうからです。

まず最初に行うのが、歩行時の3軸合成値とXYZ軸の値の算出です。センサーを前後左右斜めいずれかに動かした場合は、初期移動のときに3軸合成値は1Gから外れる値になります。

そこで、3軸の合成値が1Gから外れるタイミングを、歩数として認識処理を行います。人によって歩き方は異なりますが、3軸合成値は1Gより低く、その後1Gより高くなるのが通常です。その周期をカウントすることで、ゆっくり歩く場合も、走る場合も歩数検出が可能になります。

参考文献
https://www.marubun.co.jp/product/component/a7ijkd000000ip73.html
https://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/application-notes/ANJ-0005_jp.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/42/1/42_1_48/_pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/acceleration/measurement.jsp
https://www.hdk.co.jp/pdf/AP_Note/anhaam04_v1.01.pdf

システムリセットIC

システムリセットICとは

システムリセットICとは、電源電圧をモニタし、マイコンに対してリセット信号を供給する半導体素子です。

マイコンは、正常動作電圧範囲より下回った電圧が印可された場合、制御プログラムの要求に従う動作ができなくなります。その結果、内部のデータを破壊して電子機器が本来期待される動作を行えなくなり、致命的な事態を招く可能性があります。

システムリセットICの使用目的は、このようなマイコンのプログラムが異常な動作をしないようにするためです。

システムリセットICの使用用途

システムリセットICは、マイコンに印可する電源電圧をモニタし、リセットICの出力信号をマイコンのリセット入力信号端子に接続して使用します。

マイコンは、PCやスマートフォン、タブレット端末を含む情報機器、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などの一般の家電機器をはじめ、テレビやBDレコーダー、オーディオなどのAV機器、車やバイクなどの車載機器、プリンターやスキャナーなどの事務機器、測定器や各種試験機器などの業務用機器など多くの機器に搭載されているため、システムリセットICも同様に多くの機器に搭載されています。

システムリセットICの原理

一般的にICは、電源電圧端子 (VDD) 、GND端子、リセット信号出力端子 (OUT) の三端子からなります。ICのVDD端子にマイコンに印可する電源電圧を接続し、ICのOUT端子とマイコンのリセット (RESET) 端子を接続して使います。

ICには電圧検出機能が搭載されており、VDDに入力される電圧が所定の電圧より下回ると、マイコンにリセットをかけてシステムの安定動作を図ります。 

システムリセットICの選び方

システムリセットICは、VDDの電圧が検出電圧より低い場合にマイコンにリセットをかけ、VDDの電圧が検出電圧よりも高い場合に、マイコンへのリセットを解除します。ICの検出電圧は、多くのラインアップが用意されており、使用するマイコンの電圧範囲に合わせてICを選定することが大切です。

システムリセットICの種類

1. 出力タイプ

システムリセットICのOUT端子の出力タイプは、NchオープンドレインタイプとCMOSタイプの2種類があります。Nchオープンドレインタイプの場合、OUT端子に外部プルアップ抵抗が必要ですが、CMOSタイプの場合は、外部プルアップ抵抗は不要です。

Nchオープンドレインタイプの場合、マイコン以外の素子を接続することが可能ですが、CMOCタイプの場合は、ICとマイコンを1対1で接続する必要があります。

2. WDT (Watch Dog Timer) 搭載タイプ

所定の電圧を検出して、単にシステムにリセットを発生させるのみのタイプの製品に加えWDT (Watch Dog Timer) を内蔵するタイプもあります。WDTとは、マイコンのプログラムが暴走・停止していないかをモニタする機能です。

マイコンの動作を常に見張るため、番犬のような役割を果たします。WDTを内蔵するタイプは、電圧をモニタしてシステムにリセットを発生させる機能に加え、マイコンの動作が異常となった場合に、マイコンに対してリセットを発生させる機能が搭載されています。

WDT機能は、マイコンから出力されるWDT信号をリセットICに接続して使用します。マイコンから出力されるWDT信号は、マイコンが正常動作している場合は一定の周波数を持ったパルス信号です。しかし、マイコンが不安定な動作になった場合、WDT信号は一定の周波数ではなくなります。

リセットICは、WDT信号の周波数をモニタして周波数が異常な場合にマイコンにリセットをかけます。

3. ディレイタイマ搭載タイプ

ディレイタイマを内蔵するタイプもあります。マイコンへのリセットを解除する際に、設定された時間が経過した後にリセットを解除する機能です。 過度的な電圧変動が発生した場合でも、安定してリセットを解除することができます。

静電容量形近接センサー

静電容量形近接センサーとは

静電容量形近接センサー

静電容量形近接センサーとは、非接触型のセンサーの1種で、物体の有無を検知するセンサーです。

物体が電界に入った際の静電容量の変化により、物体を検知することができます。検知できる物質は、金属・水・油・ガラス・プラスチック・紙などさまざまです。また、非金属容器の外側から、内容物を検出することもできます。

ただし、物体の物体の大きさ、厚さ、非誘電率により検出感度や距離が異なることや水や湿気に影響を受けやすいことに注意が必要です。

静電容量形近接センサーの使用用途

静電容量形近接センサーの用途は、容器の外から内容物の検出と非接触でのスイッチです。

1. 容器の外から内容物の検出

壁の裏・タンク内・コンテナの中・カバーの裏などにある液体・紙・ガラス・木材を検知することができます。主に、内容物の検査用や確認用として使われています。

2. 非接触のスイッチ

エレベーターの押しボタンスイッチ、各種パネル等を介してのスイッチ、ライト等の非接触でのスイッチとして使われています。車のルームランプの点灯・調光用のスイッチにも応用されています。

静電容量形近接センサーの原理

静電容量形近接センサーの原理は、物体が電界に入った際の静電容量の変化により、物体を検知できることにあります。電極と大地に対して電圧を加えた場合に、電極と大地間に電界ができます。

物体が電極によって形成されている電界内に入ると、物体は静電誘導により帯電し、電極の静電容量が変化します。

1. 検出回路

静電容量形近接センサー内には、検知電極を持ちます。検出電極が形成する電界内に誘電検出体が入ると、検知電極が対象物とコンデンサを形成します。静電容量は対象物との距離に依存して決定されます。

検出回路には、発振回路を利用するのが一般的です。検出電極の静電容量変化に伴い、発振振幅が変化します。発振回路が開始、停止する振幅の変化を比較することで物体を検知します。静電容量形近接センサーは、検出電極が要素になり、発振をしています。

2. 発振回路

発振回路とは電気的な繰り返し振動を発生する電気回路を指します。コンデンサー (C)と抵抗 (R) から構成されるRC回路を用いており、1/1,000〜数MHzの周波数発振が得られます。

3. CR発振

CR発振は、帰還型と呼ばれる発振回路です。増幅回路の出力の一部を入力にフィードバックさせることで、規則的な電圧の変動を生じさせます。CR発振回路は増幅器の出力の位相を180度回転して入力に戻す回路です。

静電容量形近接センサーのその他情報

1. 相互干渉

高周波発振回路を使用しているため、近くに近接センサがある場合に、相互干渉を起こすことがあります。複数設置する際は、規定以上の距離を取って設置する必要があります。

2. 静電容量の変化

静電容量の変化は、物体の大きさ、厚さ、非誘電率に関係があります。それぞれの値が大きいほど、静電容量も大きくなります。

誘電率とは、各物質の持っている固有の電気的な定数です。誘電率の値は外部から電界を与えたとき各物質の中の電子がどのように応答するかによって決まっています。非誘電率は、物質の誘電率と真空の誘電率の比で表されます。

水や湿気による影響を受けやすいため、選択と設置の検討が重要です。

3. 応差

感応面に対して、標準検出体を接近させ、静電容量形近接センサーのスイッチが検出動作した時の感応面から検出体までの距離を検出距離と呼びます。また、検出動作中のセンサースイッチから検出体を遠ざけるとスイッチは復帰します。この時、感応面と検出体までの距離が復帰距離です。

検出距離に対し、復帰距離と検出距離の差の比を取ったものを応差 (ヒステリシス) と呼び、静電容量形近接センサーの検出特性を示す指標の1つです。検出距離の1~15%程度が目安となっています。

参考文献
http://www.system-electronic-japan.co.jp/src/catalog/A_group.pdf
https://www.fa.omron.co.jp/
https://www.h-repic.co.jp/descriptions/electrostatic

はんだ付け装置

はんだ付け装置とは

はんだ付け装置

はんだ付け装置とは、はんだを用いて金属同士を接着する装置です。

はんだは、接着する母材より融点が低い金属です。はんだを溶融状態に加熱し、母材が溶けない温度で母材間の隙間にはんだを流して冷却すると、接合部に合金層ができて接合されます。

はんだは、本来スズと鉛の合金ですが、近年は鉛を使用しない鉛フリーはんだを使うのが一般的です。鉛が人体に有害であるため、EUのRoHs指令で有鉛はんだは「電気・電子機器で鉛などの特定有害物質の使用制限」に該当します。

はんだ付け装置は、こてはんだ方式、フローはんだ方式、リフローはんだ方式などの種類があり、リード線タイプの電子部品にはフロー方式が、リード線の無いタイプにはリフロー方式が使われます。

はんだ付け装置の使用用途

1. こてはんだ方式

はんだこてを使ってはんだ付けを行う方法であり、主に手動で行います。電子部品を少量生産する場合や、複雑な形状にはんだ付けを行う場合などが用途です。

2. 挿入実装技術

リード線付きの電子部品を基板にはんだ付けする場合に使用する装置です。基板の穴に電子部品のリード線を挿入後、はんだを溶解した槽に浸してはんだ付けを行う方法です。フロー方式と呼ばれます。この方法の利点は、短時間で大量の部品を処理できることです。

3. 表面実装技術

基板の接合部分にクリームはんだを塗布し、加熱炉で加熱してクリームはんだの溶解を行ってはんだ付けを行う装置です。リード線がないSMD電子部品の接合に使われます。リフロー方式と呼ばれ、大量生産向けです。

はんだ付け装置の原理

日本工業規格の分類では、はんだ付けは「ろう接」の1つです。はんだ付けは、融点以下の固相の母材に、はんだを溶解状態にして接合する方法で、液相接合になります。

ろう接にはろう付けがあり、ろう付けとはんだ付けの差異は、使用する溶加材 (ろう材、はんだ) の融点温度です。ろう付けが融点温度450℃より高い場合であり、はんだ付けは450℃以下の場合です。

はんだ付け装置の原理では、「ぬれ」と「毛管現象」が重要になります。

1. ぬれ

「ぬれ」とは、溶けたはんだが金属となじむかどうかを表すことです。加熱により溶融金属となったはんだ材は、母材の隙間へ浸透拡散します。金属に溶けたはんだを落とすと、はんだは自らの表面張力により丸くなり、丸くなったはんだの接線と金属のなす角度が接触角です。接触角が小さいほどぬれやすくなり、ぬれの特性を表す指標です。

2. 毛管現象

「毛管現象」とは、2つの金属を接着する場合、溶けたはんだが表面張力により接着する金属の間の隙間に入り込むことです。毛管現象で金属間にはんだを浸透させるためには、隙間を狭くすることが大事です。

3. フラックス

通常空気中にある金属の表面は、酸化膜で覆われており、はんだ付けができません。そこで酸化膜を取り除くためにフラックス (主成分はアビエチ酸) を使います。フラックスは、はんだの中に入っていることや別に塗布する場合があります。そのほかフラックスの機能は、金属表面を綺麗にすることです。

はんだ付け装置の種類

電子部品のはんだ付け装置は、大きく分けて3種類が使われています。

1. 静止槽式

静止槽式はDIP方式とも呼ばれ、溶解したはんだ槽に、基板の下面を浸してはんだ付けを行う方法です。槽の液面は静止しています。古くからある方式で、メンテナンス性に優れているが、はんだが静止しているため、熱循環効率が悪く、品質の面で今一歩といえます。

2. 噴流式

噴流式はフロー方式とも呼ばれ、溶解したはんだを噴流させて熱循環効率を上げ、高品質のはんだ付けを可能にした方式です。ダブルウエーブ式、オーバーフロー式、セレクティブフロー式など多くの種類が確立済みです。

フロー方式は、電子部品をプリント基板に挿入してから、はんだを溶かした槽に浸してはんだ付けします。噴流式においても、流動したはんだの扱いは難しく、細かいメンテナンスと技術者の養成が必要です。

3. リフロー方式

リフロー方式は、基板の接合部にはんだペーストを印刷後、その上に電子部品を置いてフロー炉で加熱し、はんだを溶融させて接合する装置です。基板製造の主流になっています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/75/7/75_7_583/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/5/3/5_3_304/_pdf