差動プローブ

差動プローブとは

差動プローブとは、オシロスコープなどで信号を測定するときに、コモンノイズと呼ばれるアースの振動など、信号を発信している機器とは関係のない場所から発生するノイズを検出し、アンプによって測定信号を増幅させて測定しやすくするための装置です。

USBやHDMIなどの通信において、正確に信号を出力側が検知するために必要になります。差動プローブは使い方を間違えれば、壊してしまう可能性や正確な出力が得られない場合もあるので、注意が必要です。

オシロスコープを販売している会社から、差動プローブが発売されている場合も多く、接続性が優れているので、オシロスコープと同じ会社の差動プローブを購入すると良いです。

差動プローブの使用用途

差動プローブは、多くの通信機器における試作品の製造段階や製品の試験段階で使用されます。USB接続やHDMI接続、DisplayPort接続、Ethernet、SATAなどの通信において、オシロスコープなどでノイズを検知して、そのノイズが製品に対して影響を及ぼさないか、ノイズに影響がある場所はどこかを検査するために使用されます。

差動プローブは高価な製品が多いので、購入前に使用する規格を満たしているかなどを正しく調べておくことが大切です。

差動プローブの原理

差動プローブは、2本の性質が全く同じアクティブプローブをまとめた構造となっており、片方のアクティブプローブを、測定対象の信号を発信する機器の接続部のプラス端子に、もう片方をマイナス端子に接続します。この2本のプローブから検出される信号の差を計測することで、コモンノイズの検出が可能です。

差動プローブには、オシロスコープで波形を測定しやすくするために、工夫されている製品が多く発売されています。低電圧の信号をオシロスコープで測定しやすくするために、アンプによって増幅したり、高電圧の信号を与えてオシロスコープに負荷を与えない様に一部の電圧をアースに逃したり、信号を明確な矩形波にしたりするなどさまざまです。

差動プローブを使用する信号に応じて、適切に選定すれば明確なノイズを測定することができます。

差動プローブのその他情報

1. 差動プローブの等価回路

差動プローブは、アクティブ・プローブを2本組み合わせた構成で、プローブの先端から直接半導体回路の入力端に接続されることから、入力容量が極めて小さい1pF 程度のものもあります。一方、入力抵抗は減衰器を介するパッシブ・プローブとは異なり、数十KΩ~1MΩ程度です。

そのため、高インピーダンス回路に差動プローブを接続して波形を測定する場合は、プローブの影響を踏まえて測定結果を考察する必要があります。その際、差動プローブの等価回路を被測定回路に接続して、影響をシミュレーションすることが有効な手段です。

差動プローブの場合、片側のピンとGND間はメーカーが公表している入力抵抗と入力容量が並列に接続されたものとなります。もう片側のピンとGND間も同様に入力抵抗と入力容量が並列に接続されたものとなります。したがって、差動プローブの2本のピン間では入力抵抗が2倍、入力容量は半分となります。このインピーダンスが被測定回路に与える影響を踏まえた上で、測定結果を判断して下さい。

2. アクティブプローブ

プローブは、安定した信号を測定するために使用されるものです。プローブが無ければ、ケーブルが持つ容量成分の影響で回路動作が変わってしまいます。特に高い周波数の測定に強い影響を与えます。

アクティブプローブは、先端の入力部に半導体素子を使用するものです。アクティブプローブ自体の入力容量も非常に小さな入力容量を実現しており、1pFより小さな入力容量のものもあります。

プローブの入力容量も、波形に影響を与えます。パッシブプローブはアクティブプローブよりも容量成分が大きく、パルス立ち上がり部で波形の振動であるリンギングが大きく出ます。

3. 高電圧差動プローブ

差動プローブはフローティング状態の信号分を観測するのに適したものですが、一般的なプローブは差動電圧、対地電圧いずれも30V~100V程度の耐圧しかありません。商用電源など高い電圧を扱う回路でフローティング状態のポイントの測定には、大型の高電圧プローブが必要になります。差動電圧で6,000V以上、対地電圧2,000V以上のスペックのものが市販されています。

高電圧差動プローブを使う測定では、放電する恐れがあるため、2本のピン間距離を充分離さなければなりません。その結果、リード線のインピーダンスにより高周波領域でリンギングが発生し、振幅が大きく変動してします。その対策として、2本のリード線を捩って使う方法が有効です。

4. コモンモードノイズ

電気回路内のノイズは、ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズに大きく分けられます。ディファレンシャルモードノイズとは、回路内の導線を通って伝導するノイズです。

一方、コモンモードノイズとは信号が一部大地や筐体を通て戻ってくるノイズで、入力信号とリターン時の信号が同位相のノイズです。コモンモードノイズは、ノイズの伝わり方が複雑であるため対策が難しいものとされています。

スイッチング電源の動作試験では、高電圧差動プローブが非常に有効な手段として使用されます。スイッチングレギュレータでは対地電圧が数百Vも変動するコモンモードノイズが発生します。

差動プローブを利用すると対地電圧の変動をキャンセルして観測できるはずですが、実際には差動出力に対地電圧の変動分が若干乗ることが避けられません。この変動の影響を減らすには、CMRR (Common-Mode Rejection Ratio) が優れたプローブを選択する必要があります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jipe/37/0/37_130/_pdf
http://www.ktek.jp/
https://jp.tek.com/probe-selectionguide-51z-21484-5

スパークキラー

スパークキラーとは

スパークキラー (英:spark killer) とは、スイッチのON/OFF時などに発生するスパークやサージ電圧を抑制する装置です。

スパークが発生じた場合、回路内にある半導体素子やトランジスタがダメージを負う可能性があり、サージ電圧でも電子部品が破壊されます。

特に、直流電流の回路でスイッチを使用する場合は、スパークキラーなど、スパークに対する備えを回路内で行う必要があります。

スパークキラーの使用用途

スパークキラーは、直流電流で動作する電気機器で幅広く使用されています。特に直流電流を電源として使用する場合は、スイッチ周辺でスパークの可能性があるので、スパークキラーの使用が必須です。

交流回路でも同様な問題が発生するので、スパークキラーが使われます。スパークキラーは、定格の電圧や抵抗値、静電容量、使用適正温度などが正確に決められているので、それらを考慮して適切に選定する必要があります。

使用環境下の電圧にスパークキラーが耐えられなければ、事故の原因になるので、注意が必要です。

スパークキラーの原理

リレーなどのスイッチをON/OFFした際、負荷にインダクタンス成分を含む場合は、サージ電圧が発生します。また、スイッチやリレーなどの接点部でスパークが発生した場合、接点の寿命が短くなります。スパークキラーは、サージ電圧やスパークを減少させるための機器です。

スパークキラーは、直列でつながっている抵抗とコンデンサで構成されます。スパークキラーの時定数は、コンデンサ容量と抵抗値で決まり、サージ電圧が急激に変化しないようにします。

使用するフィルムコンデンサは、使用時に電圧が高くなり過ぎないように、十分余裕も持った静電容量の大きさを選択する必要があります。抵抗については、サージに対する耐性が十分にある抵抗器を選択します。

スパークキラーの選び方

スパークキラーは、抵抗RとコンデンサCの直列回路の構成です。C、Rの算出は、回路電流 がI (A) の場合、下記のようになります。

   C = I × 2/10~I × 2/20 (μF)
   R = 負荷の直流抵抗値 (Ω)

※負荷の直流抵抗は分からないことが多くあり、その場合は標準の120Ωを使います。

※C、Rの計算は参考値です。最終的にはこの値を目安に、実装試験でサージ吸収効果の確認が必要です。

接続はリード線タイプ、被覆電線タイプ、金属端子タイプがあります。使用する電子部品は、回路電圧より高い定格電圧のものを使用します。

   使用可能直流電圧 ≦ 交流定格電圧x√2

スパークキラーの定格電圧は、交流表示となっています。スパークキラーは直流回路でも使用するので、スパークキラーの定格電圧を直流電圧に変換して、使用可否を検討します。

スパークキラーのその他情報

1. スパークキラーの配置

電源とスイッチ、及び抵抗などの負荷で構成されている回路において、基本的なスパークキラーの設置方法は、スイッチと並列に配置するか、負荷と並列に配置するかの2種類です。

直流回路では、2種類の配置方法が使われます。サージ吸収効果は両者ともに同じですが、スイッチの接点でスパークが目視確認できるような状態では、スイッチに並列接続する方法が有効です。

スイッチOFF時、回路はスパークキラーを通じでつながっており、スイッチ部で大きな電位差が生じないようになります。そのため、スパークキラーによって、高電圧になることを防げるので、スパークが起こりにくくなります。

また、交流回路の場合は、スパークキラーをスイッチに並列接続した場合、スイッチのOFF時に漏れ電流が流れます。この漏れ電流により、スイッチが誤動作を引き起こす可能性があります。したがって、交流では、負荷に並列にスパークキラーを接続するのが、一般的です。

2. サージ電圧の吸収

リレー、モーターなどの誘導性負荷を用いる回路において、スイッチの開閉操作で誘導性負荷から発生するサージ成分を吸収する目的で、誘導性負荷と並列にスパークキラーを挿入します。スパークキラーを挿入しないと、サージ電圧は誘導性負荷の駆動電圧の10~30倍程度にも及び、ノイズ周波数は100MHzを超えます。

サージ電圧の発生により、回路内の電子部品の絶縁破壊、プリント基板のパターンの損傷が起きます。さらに、発生したサージの高調波成分が直接、および回路パターンから輻射され、周辺機器、装置などに様々な弊害を与えることがあります。適切なスパークキラーを設置すれば、このようなサージ電圧を吸収することが可能です。

参考文献
https://www.dempa.co.jp/productnews/trend/h091105/h1105.html
https://www.okayaelec.co.jp/media/2017/03/08/7
https://www.okayaelec.co.jp/media/2017/03/08/8
www.op316.com/pdf/technical/spark-killer-okaya2.pdf

ビルドアップ基板

監修: OKIサーキットテクノロジー株式会社

ビルドアップ基板とは

ビルドアップ基板

ビルドアップ基板は、何層も積層されているプリント基板のことをいいます。

ビルドアップ基板を使用することで、小さい面積で、密度の高い基板が使用することができるので、小型の機器などでも多機能の製品を作成することができます。ビルドアップ基板は導体の層と絶縁体の層が何層も積み重なり、層を貫通するようにレーザーによる穴あけや配線加工がなされており、小さい面積の複雑な基板を入手することができます。

ビルドアップ基板の登場

基板の高密度化に伴い、現行のビアホールの構造だけでの対応が難しくなってきました。携帯電話の発展により軽量・小型化に対応する基板が必要なってきました。ビルドアップ基板は2000年頃から登場し、現在に至ります。

ビルドアップ基板とは、欧米での分類では、マイクロビアという方法がされていましたが、海外ではHDI (英: HIGH density inter connection) Micro-via Laser-viaという名称で言われています。日本では、主にビルドアップという名称が主流です。ビルドアップ基板 (積み上げ) という意味の通り、何層も積層されているプリント基板のことをいいます。

通常、1回の積層 (積み上げ) で多層基板ができる所を何回も積み上げるため工数や費用が増えますが、主に下記2つの理由から活用が進んでいます。

1. 無駄なスペースを減らす

多層基板に関して、バイアホール (穴を開けて他の層とつなぐもの) を使用した場合、接続層以外の所はビアがあるため、配線を行う事ができません。そのため、多層板にしても配線の効率があがらなくなります。

2. レーザーで小さい穴を空けることが出来る

装置の進歩により、ドリルよりもレーザーの方が高速で小さい穴をあける事が可能となりました。ドリルで穴をあける場合は、下の層を突き破ってしまいますが、レーザーの場合は条件を組み合わせると樹脂には穴を開けて、の上で加工が止めることが可能です。

そのため、多層化した後にレーザーで穴を開け、メッキをして更に次の層をビルドアップしレーザーで加工をする工程を積み重ねる (ビルドアップする) ことで、ビアホールのエリアが有効に使われて高密度が可能となります。

ビルドアップ基板を使用することで、小さい面積で密度の高い基板が使用することができるため、小型の機器などでも多機能の製品を作成することが可能です。小さい面積の複雑な基板を入手することができます。

ビルドアップ基板の使用用途

ビルドアップ基板は、小型で軽量の電子機器に幅広く使用されています。ビルドアップ基板が実用化された当初は、パソコンや携帯電話で使用されていましたが、現在は小型の計測機器や、スマートメーターなどのIoT機器、デジタルカメラのモジュール、PCの周辺機器などで使用されています。

ビルドアップ基板の製造工程における穴あけ加工などの精度は規格が定まっており、ビルドアップ基板の作成を依頼する際にはどの程度の精度で依頼するかを正確に選択する必要があります。

ビルドアップ基板の工程

ビルドアップ基板の製造工程としては、絶縁体層の形成、ビア加工、スミアの除去、ビアへのめっきなどがあります。

1. ビルドアップ層の形成

プリント基板の上に絶縁体層をビルドアップします。方法は、リジッドの材料であるプリプレグを使用する場合はフィルムを使う場合があります。プリプレグは、デジカメやスマホの半導体のパッケージに使われる場合が多いです。

2. ビア加工

基板と基板の間の絶縁体層にビアと呼ばれる穴をあける工程です。現在はレーザーを使用して穴を開けることが一般的です。

レーザーも炭酸ガスやUV-YAG等の種類と波長を使います。炭酸ガスは波長が長い赤外線のため、デジカメやスマホに良く使われます。UV-YAGは波長が短い紫外線のため、半導体のパッケージ基板のような高密度な領域に使われます。

3. 樹脂の残渣除去 (デスミア) 

レーザー加工によって発生した残渣をスミア呼びます。樹脂が残っていると接続ができないため、除去する必要があります。この工程をデスミアと呼びます。スミアがビルドアップ基板に残っていると接続不良などに繋がるため、確実に除去する必要があります。

強力な薬品 (過マンガン酸カリウム) で除去する必要がありますが、最近の高速に対応した樹脂は除去できない場合があるため、プラズマ等を併用する場合があります。

4. ビアへのめっき

絶縁体を挟んだ基板同士で、回路をつなぐためにビアにめっきをします。小さい穴にメッキするため、気泡が入らないようにする必要があります。

ビルドアップ基板のその他情報

1. ビルドアップ基板のビアの名称

穴の配置・構造によって名称が変わりますので、簡単に解説をします。

スタガードビア
階段の様にビアの位置をずらす方法です。

スタックビア
ビアの上にまたビアを重ねていきます。すべての層でビアが重なっているものはフルスタックビアと呼ばれています。

IVH (英: Interstitial VIA Hole) 内部にあるビアホール
ビルド以外の層は、上下に接続する穴をドリルを使って設ける必要があります。構造的に基板の中にある穴であることからこのような表記が使われます。ブラインドビアという言い方もされます。ビルドアップ層とIVHの層を分けて記載するのが通例です。

例) 3-6-3 ビルド 表 3層 IVH 6ビルド 裏 3層 合計12層

2. ビルドアップ基板とエニーレイヤー基板の違い

ビルドアップ基板はコア層の両方の面に配線する層を積み重ねますが、全ての層がビルドアップ層の場合エはニーレイヤー基板といいます。

先ほどの表記でいうと、3-0-3 (6層エニーレイヤー) ということになりますが、使ってない層を0というのは座りが悪いため、層数+エニーレイヤーという言い方になっています。

エニーレイヤー基板はスルーホールを形成するコア層を必要としません。ビルドアップ基板は、IVHの所は従来の基板の導通となりますが、エニーレイヤー基板はレーザーで開けられた小径のビアホールのみで自由に各層の間を繋げられます。

これらの特徴の違いから、エニーレイヤー基板は通常のビルドアップ基板よりも高密度が可能となり、製品の軽薄短小化に繋がります。工程数や費用が多くなりますが、上記理由でスマホ等に多く使用されています。図を参照してください。

ビルドアップ基板の各構造の名称

図1. ビルドアップ基板の各構造の名称

3. ビルドアップ基板の材料について

現在は、通常の基板材料と同じガラスクロス材や主にパッケージに使われているフィルムの2種類が主流です。過去を見ると、色々な材料が使われてきました。

元々ビルドアップ基板は、IBMが自社の製品群に対して、大型コンピューターフリップチップ実装に対応できる技術を開発して来たことがスタートです。その中で各種検討を行ってきました。

その結果、フォトビアと言われている紫外線硬化樹脂を用いて、露光・現像を行う方式を採用しました。これは、一括でビアが形成できるというメリットがありました。層間厚が必要のため、膜厚が稼げる、カーテンコーター用のソルダーレジストの材料をベースに開発を行い、量産化しました。ソルダーレジストと同じように、塗布して露光現像をして、その後、熱で最終硬化を行い絶縁層を形成しました。

その後、化学銅を析出して、電気銅メッキを行い、層を重ねてゆくプロセスです。IBMが立ち上げた事により、弊社含めて各メーカーは開発を行いましたが、光によるビア形成は、形状を安定させる事が非常に難しく、また、化学銅の形成はもともと、光重合を起こす樹脂のため、ピール強度がでにくく、条件管理が非常に難しいという難点がありました。また、現像が溶剤であり、各種規制があり、普及される技術とは言えませんでした。

その後、マイクロビアの形成方法であるが、レーザー加工装置の大幅な進化により、ビアの加工速度が何十倍にも上がった事により、光による形成から、レーザー加工による形成に変わりました。その時、RCC (レジンコーテドコッパーフォイル:樹脂付き銅箔) が採用されてきました。これは、熱硬化の樹脂であり、銅箔の上に樹脂をコーテングして、プリプレグと同じ半硬化の状態にした物です。

そのため、従来の基板と同じプロセスである、積層のプロセスが使えるメリットがありました。また、ピール強度もでやすいため、ビアは光による形成から、RCCのレーザーによる形成へ置き換えが進みました。

電子機器の小型化及びハンデイー化が進み、ビルドアップ基板の用途は拡大してきました。その中で更なる、コストダウン及び高密度に対応できる信頼性が求められました。

また、レーザーの出力アップ加工技術の大幅な改善により、一般的に使われているガラスクロス入りの材料での加工が可能となったため、ガラスクロス入りの材料への意向が大幅に進みました。携帯電話やデジカメなどの各種モバイルは、このタイプです。

一方、LSIのパッケージにおいて、LSIの高密度化 フリップチップの対応で、高密度の多段のビルドアップが求められてきました。多段化及び薄型の対応のため、層間の厚さが薄く、また、より小さいビア及び表面のフラット性が要求されました。それに対応するためにフィルムタイプの材料が開発されました。

回路の中に樹脂を充填するため、真空ラミネーターが必須であり、また、樹脂表面に化学銅を析出させるのに、独自のプロセス専用のラインが必要となります。そのため、大型な設備投資が必要となります。パッケージ用途では、PCスマホのMPU大規模なLSIに使われています。

本記事はビルドアップ基板を製造・販売するOKIサーキットテクノロジー株式会社様に監修を頂きました。

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スラリーポンプ

スラリーポンプとは

スラリーポンプ

スラリーポンプは、液体と固体の混合物であるスラリーを輸送するために使用されるポンプです。

一般的なポンプとは異なり、特別な設計が施されます。スラリーは非常に粘性が高く、ポンプ内部の部品を摩耗させたり詰まらせたりする可能性があります。そのため、耐久性に優れるように設計されているのが特徴です。

ポンプの輸送の方式としては、スラリーの容積を変化させて輸送する容積式と、遠心力を使ってスラリーを輸送する遠心式があります。

スラリーポンプの使用用途

スラリーポンプは様々な産業分野で幅広く使用されています。以下はスラリーポンプの使用用途一例です。

1. 鉱石・石油採掘業界

鉱山業界では、功績や鉱泥を輸送するために使用されます。粉体を運搬する機会が多い鉱山業界ではスラリーポンプは重宝されます。

石油掘削業界でも、広く使用されています。石油採掘の際は石油井戸の深部に到達するために、岩石を削り出す必要があります。この岩石屑のスラリーをポンプで排出するために使用されます。

2. 水力発電所

水力発電所でも、スラリーポンプが使用されることが多いです。水力発電所ではタービンが回転するために水を供給しますが、河川水には固体の微粒子が含まれています。スクリーナなどで濾過した後の土砂などが混じった水をスラリーポンプで排出します。

3. 建築業界

建設現場で使用される砕石や砕砂を輸送するために使用されます。また、ダム建設現場で大量の土砂を輸送するためにも使用されます。

スラリーポンプの原理

スラリーは密度が高く、様々な固体微粒子が含まれるため、スラリーポンプは特殊な設計が必要となります。スラリーを受け入れる取水口、ポンプ内部でスラリーを加速させるインペラ、スラリーを放出する吐出口から構成されます。

取水口でスラリーを吸い込み、インペラの回転によってスラリーを加速させます。インペラーによって加速されたスラリーは、吐出口に送られるのが一連の流れです。

スラリーポンプは高密度流体に対応するため、ポンプ内部に複数の補助羽根を持ちます。これにより、高い圧力を発生させることができます。

スラリーポンプの種類

スラリーポンプには多岐に渡る種類のポンプが採用されます。以下はスラリーポンプの種類の一例です。

1. シングルステージ式

シングルステージスラリーポンプは、スラリーを輸送するための基本的なポンプです。1段のインペラーで構成されるポンプで、構造が簡単で安価な点が特徴です。ただし、インペラが1段であるため、対応揚程は低い場合が多いです。

2. マルチステージ式

マルチステージスラリーポンプは複数段のインペラを持つポンプです。多段式設計により高揚程に対応可能であり、スラリーを効率的に輸送することができます。ただし、シングルステージに比べて高価な場合が多いです。部品点数も多いため、シングルステージよりも故障や閉塞の可能性が高いです。

3. 耐摩耗性スラリーポンプ

高い耐摩耗性を有するスラリーポンプです。ポンプに使用される材料が、摩耗や腐食に対して耐性を持っています。内部部品には特殊な合金鋼、ゴム、セラミックなどの材料が使用され、耐久性や寿命を向上させることが可能です。

スラリーポンプの選び方

設計段階でスラリーポンプを選定する場合、移送目的、対象物の形状や硬さ、化学的腐食性の有無、使用温度などから総合的にポンプの方式を選定します。

輸送するスラリーの性質を把握することが最も重要です。スラリーの比重や固体濃度などを調べることで、選択に役立つ情報を得ることができます。スラリーの性質を把握したら、流量は圧力を必要能力に応じて選定します。

維持管理や修理のしやすさも考慮する必要があります。スラリーポンプは、過酷な環境下で使用されることが多いため、維持管理や修理が困難な場合があります。簡単にメンテナンスができるポンプを選択することが望ましいです。

コストを考慮することも重要です。スラリーポンプはその特性から、他のポンプよりも高価なことが多いです。しかしながら、イニシャルコストが高くても、長期的には適切なスラリーポンプを選択することでコスト削減に繋がる場合もあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij/66/6/66_609/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/15/5/15_5_304/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/18/11/18_11_653/_pdf
https://xn--zck0cra1cf9c3c.jp/knowledge/detail04/
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/09/

GPSモジュール

GPSモジュールとは

GPSモジュール

GPSモジュールとは、宇宙上空に多数ある人工衛星から発信されているGPS信号を受信して、位置情報などを割り出す装置のことです。

GPSは「Global Positioning System」の頭文字をとった用語で、全世界の正確な位置情報を測位することができるシステムです。正確な位置情報をGPSモジュールで得ることができれば、現在移動している速度や方角、目的地までの距離を算出することが可能です。

GPSは米国で運用される衛星測位システムですが、日本にはGPS情報を補正できる「みちびき」という日本で運用される衛星測位システムがあります。

GPSモジュールの使用用途

GPSモジュールは、動作、位置情報、移動速度、方向などが必要な機器の位置検出の用途に使用されます。GPSモジュールの具体的な用途は以下のとおりです。

  • スマートフォンやスマートウォッチの地図アプリを使用するための位置観測 
  • カーナビにおける自動車の位置、速度、方向、目的地までの距離の算出

GPSモジュールの製品のスペックによって、位置精度や算出時間、位置情報の誤差の度合いが製品にどの程度影響を与えるのかを考慮して選定することが大切です。

地下や建物などのGPS信号の遮蔽物がある場合、信号を正確に受信できないことがあります。遮蔽物によって小さくなった信号を処理することで、受信できる高精度のGPSモジュールもあります。

GPSモジュールの原理

GPSモジュールの原理は、人工衛星から発信されるGPS信号を受信し、その信号を処理解析することで、モジュールの現在位置を算出する信号処理のアルゴリズムを有する点にあります。GPSモジュールの受信部は通常はパッチアンテナ等の受動アンテナとLNA (低雑音増幅器) により、微弱な信号を検波増幅しRF処理とベースバンド処理がなされることで正確な位置情報を算出するためのGPS信号が処理されます。

このGPS信号を処理するアルゴリズムは、位置検出の精度を高め、消費電流を低減させるために製品ごとに、さまざまな工夫が施されています。人工衛星から発信されるGPSの信号は、2種類の周波数で発信されるのが一般的です。その信号には、信号を発信した時点での時刻と、その時刻における人工衛星の正確な位置情報が含まれています。

そのGPS信号をGPSモジュールの受信部で、4つ以上の多数の人工衛星からの信号を受信します。このGPS信号によって、人工衛星からの距離を算出可能で、3つの人工衛星からの距離が分かれば現在の地球上の位置を算出することができます。

4つ目以降の人工衛星は、時刻の誤差の調整に使われ、より正確な位置情報の算出に役立ちます。

GPSモジュールのその他情報

1. GPSモジュールで扱う周波数

GPSモジュールで扱う周波数は、通常L1帯といわれる1575.42MHzとL2帯と呼ばれる1227.6MHzです。L5帯という1176.45MHzの周波数が用いられる場合もあります。

L1帯にはC/Aコードという民生品向けの識別コードとPコードと呼ばれる軍事用コードが含まれており、C/Aコードが通常は用いられます。

2. GPSモジュールの位置精度

GPSモジュールの測定精度にはさまざまな要因がその位置精度に影響を与えますが、以下が誤差を発生させる主な要因です。

電離層
大気中にある層の1つで、この層をGPS衛星の電波が通過する際に速度が落ちて誤差を生じさせます。

対流圏
これも大気中の層の1つです。乾燥大気中と水蒸気中での電波の屈折で誤差を生じさせます。

マルチバス
GPS衛星から発信された電波を受信したときに、地面や構造物など、さまざまなものに電波が反射します。マルチパスと呼ばれるこの現象によって、電波が乱れることにより誤差が発生します。

この中でもマルチパスは、それが起因で受信できる衛星数量自体やその衛星間の配置が制限されるため、最も大きな誤差要因となります。なお、GPSモジュール自体の性能によって誤差は異なりますが、一般的な機器に搭載されているタイプで受信状況の良い環境で半径10メートル程度、受信状態の悪いところでは100メートル程度の誤差が発生します。

ただし、スマートフォンには、WiFiや時刻補正、アプリ位置情報システムなどGPSを補正するシステムがあるため、それらを併用することで、位置精度をさらに向上させることが可能です。

3. 日本の衛星測位システム「みちびき」

GPSモジュールをより高精度で安定した受信状況にするために、現在は「みちびき」という日本の衛星測位システムがあり、2018年の11月から4機で運用を開始しています。衛星での測位は4機以上衛星があれば可能なのですが、安定性を求めるためには、もっと多くの衛星が見える事が望ましいです。

日本版GPSと呼ばれる「みちびき」は、従来のGPS衛星の電波が遮られて位置情報が不安定になる地点を補い安定した高精度測位を実現しています。

参考文献
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps
https://www.garmin.com/ja-JP/aboutgps/
https://www.amazon.co.jp
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps
http://www.ne.jp/asahi/nature/kuro/HGPS/principle_gps.htm
https://jp.techcrunch.com/2019/07/05/2019-07-03-gps-on-the-moon-nasas-working-on-it/

タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは

タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは、人がスイッチを押したときに、クリックすることで通電するモーメンタリータイプのスイッチのことです。

ここでのタクタイル (英: Tactile) には「触って感じられる」「触覚の」という意味があり、タクトスイッチとも呼ばれます。タクタイルスイッチは、一般にプリント基板上に設置されて使用されます。

スイッチを押したときに、押したという感触がフィードバックすることが特徴です。そのため、人が操作する電子機器全般に広く利用されています。取り付け方法は、基板の穴に挿入するタイプか基板の表面に取り付けるタイプで大別され、防塵などに有効なシールがあるかどうかでさらに分類されています。

タクタイルスイッチの使用用途

タクタイルスイッチの使用用途は、通信機器やOA機器、実験機器や医療機器、家電品のリモコンの操作部などであり、人の操作が必要な機器で非常に幅広く使用されています。タクタイルスイッチを使用する基板の設計段階で、穴に埋め込むのか、表面に取り付けるのかを適切に見分けて選定する必要があります。

また、精密機器や故障した時の損失が大きい機械でタクタイルスイッチを使用する場合は、防水や防塵等の効果を有し信頼性の高いシール構造のタイルスイッチを選定した方が良いです。プッシュ時のストロークの長さを製品によって使い分けることで、素早く連続でタッチできるような製品にしたり、強い力で押さなければ作動しないような製品にしたりすることもできます。

タクタイルスイッチの原理

タクタイルスイッチは、内部のプッシュ板と呼ばれる板を人手で押した場合に、スイッチ内部に形成されている電気的なスイッチの接点同士が接触することで電流が流れ、スイッチが動作する機構を有しています。タクタイルスイッチは筐体、プッシュ板、フィルム、メタルドーム、3つの接点、取り付け台で構成されています。

メタルドームは、ドーム状の形状をしている導体です。ドームのふちに接点が2つ取り付けられており、ドームの中心部に取り付け台にもう1つの接点が取り付けられています。タクタイルスイッチのプッシュ板が手で押された時、メタルドームの中央が潰されて、ドーム中央にある接点とメタルドームが接します。接点とメタルドームが接することで、3つの接点で電流が通るようになり、スイッチがONになります。

反対に、タクタイルスイッチのプッシュ板から手が離れた場合、メタルドームとメタルドームの中央にある接点が離れ、スイッチがOFFになります。

タクタイルスイッチのその他情報

1. タクタイルスイッチの修理

タクタイルスイッチは一般的に十分な耐久性を持っていますが、使用箇所や使用頻度によっては故障することもあり得ます。修理を行うことになりますが、古い製品やメーカーが既に存在しない等、修理を依頼できないケースもあります。それでも、はんだ付けが行える場合は、ユーザーでの新品への交換は対応可能です。

故障したタクタイルスイッチから品番を確認して、同一のタクタイルスイッチが入手できるかを調査します。もし入手できなければ外観の寸法などから同様の製品のタクタイルスイッチを探すことは、それほど困難ではありません。タクタイルスイッチでは、規格がある程度統一化されているためです。

2. メカニカルキーボードの軸色

パソコンのメカニカルキーボードには、赤軸や茶軸、青軸等のタイプがあります。これらは、キーボード向けのキースイッチの大手メーカーであるドイツのメーカーのキースイッチが、タイプごとに軸の色を変えていることからきています。キースイッチのタイプ毎に軸色が変わるため、軸色を確認すれば、キースイッチのタイプを判別することが可能です。

このうち、茶軸と呼ばれるキースイッチはタクタイルタイプと呼ばれています。ただし、実際にタクタイルスイッチは使われておらず、キースイッチの構造 (によるキーの打感) からその様にメーカーが呼んでいるだけです。

なお、主なキーボードの軸色は6種類あり、赤軸、ピンク軸、銀軸、黒軸、茶軸、青軸です。それぞれキーボードの打感が異なりますが、この打感の違いはキースイッチの構造から来ており、スイッチ構造自体は同一です。

3. タクタイルスイッチとハプティクス

タクタイルスイッチだけでなく、昨今はスマートフォンの操作時に振動を与えることで、実際には存在しない操作ボタンがあるかのような物の感触を生み出す「ハプティクス」と呼ばれる触覚技術が、電子メーカーを中心に盛んに開発されています。

VRやARなどの双方向の高度な通信技術の応用で、仮想空間の中であたかも物に触れているかのような触覚技術を取り入れる技術進歩は非常に早いです。近い将来には、遠隔医療やロボット操作といった領域に、タクタイルスイッチから進化した触覚技術が活躍すると期待されています。

参考文献
https://ac-blog.panasonic.co.jp/20160701
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120510/217190/
https://keshilog.com/jiku/

半導体露光装置

半導体露光装置とは

半導体露光装置

半導体露光装置は、半導体製造工程の内、シリコンウェーハに回路パターンを描写するための装置になります。回路パターンの原型となるフォトマスクに強力な紫外光を透過させ、フォトレジストを塗布したシリコンウェーハに回路パターンを転写します。近年では、細かい回路パターンを微細化するためにEUVと呼ばれる波長が13nmのレーザーを使用する装置もあります。位置決めなどが非常に高精度で要求されるため、装置の値段が高価です。

半導体露光装置の使用用途

半導体露光装置は、MOS(金属酸化物半導体)-FET(電界効果トランジスタ)などの半導体素子を含むIC(集積回路)の製造工程における露光工程で使用されます。

ICの製造工程では、シリコンウェーハ上においてフォトリソグラフィおよびエッチングのサイクルを順次回繰り返し、シリコン酸化物や金属などのレイヤ(層)を所定のパターンに積層および加工する過程で、半導体素子として必要な特性を持つような処理が行われます。一例としてn型MOS(NMOS)の場合、p型のシリコン基板上のゲート領域にシリコンの酸化膜とその上にゲート金属を形成し、ドレインおよびソース領域には高濃度の不純物をイオン注入することで、n型(n+型)のMOSを形成します。このような一連のプロセスにおけるフォトリソグラフィおよびエッチングの各工程は、図のように構成されます(成膜工程S1~レジスト剥離工程S6)。

半導体露光装置

このうち、露光工程(S3)が、半導体露光装置を用いて行われる工程です。回路パターンの寸法や半導体素子の精度によって、露光装置の波長が使い分けられています。

半導体露光装置の原理

半導体露光装置は、光源、コンデンサレンズ、フォトマスク、投影レンズ、ステージで構成されています。光源から発生した紫外光がコンデンサレンズによって、同じ方向を向くように調整されます。その後、回路パターンを構成する1つのレイヤの原型となるフォトマスクを紫外光が通過して、投影レンズで光が縮小され、シリコンウェーハ上に半導体素子の回路パターン(の1つのレイヤ)を転写します。ステッパのような露光装置では、1回転写が終われば、ステージによってシリコンウェーハが移動し、シリコンウェーハ上の別の位置に同じ回路パターンを転写します。フォトマスクを取り換えることで、半導体素子の回路パターンの別のレイヤの転写が可能になります。

光源には、248nmの波長のKrFエキシマレーザーや、193nmの波長のArFエキシマレーザー、13nmの波長のEUV光源などが使用されます。

最新の半導体製造工程のデザインルール(最小加工寸法)は、3~5nm程度まで微細化が進んでいるので、コンデンサレンズやフォトマスク、投影レンズ、ステージすべてに、ナノ単位の高精度が要求されています。また、積層化も進んでいるので、露光は回路パターンを変えて1つの半導体ができるまでに何回も行われます。

半導体露光装置の市場規模とシェア

世界の電子機器市場は拡大を継続しており、それを支える半導体産業の重要性はますます重要になっています。世界の半導体市場は2019年にマイナス成長になりましたが、過去もリーマンショックなどを経験しながらも拡大を継続しています。近年メモリは微細化から3D化へ技術開発が変化しておりエッチング技術の重要性が高くなってきています。

半導体露光装置の市場規模は、2018年時点で1兆852億円です。
消費地域別のシェアは、1位韓国36%、2位台湾19%、3位中国18%、4位米国14%、5位日本7%と続きます。半導体露光装置のベンダ国籍別シェア(2018年)は、欧州(84%)、日本(14%)、米国(2%)で、欧州・日本でほぼ寡占されています。

EUV露光装置について

EUV(Extreme Ultravioletの略)露光装置とは、極端紫外線と呼ばれる非常に短い波長の光を用いた半導体露光装置です。従来のArFエキシマレーザ光を用いた露光装置では加工が難しいより微細な寸法の加工が可能となります。

半導体の微細化は、ムーアの法則(半導体集積回路は3年で4倍の高集積化,高機能化が実現される)に従い微細化されてきています。これまでにもステッパーと呼ばれる縮小投影露光技術や露光波長の短波長化や液浸露光技術の開発により、解像度を飛躍的に向上させてきています。

微細化はウェーハに焼き付けることのできる最小加工寸法が小さくなることであり、その最小加工寸法Rは以下のレイリーの式で表されます。
 R=k・λ/NA ※kは比例定数,λは露光波長,N.A.は露光光学系の開口数

これまでも様々な技術開発により、kを小さくしたりλを小さくしたりNAを大きくすることで、微細化を実現してきています。
EUV露光装置は、露光波長の短波長化によりこれまでの限界を突破できる技術とされ、近年量産化がされています。

半導体露光装置の価格について

半導体露光装置は、現在半導体を効率的に量産するのに欠かすことのできない装置ですが、史上最も精密な機械といわれており、価格は高価になります。

半導体露光装置で利用する光源波長が短いほど、微細なパターンが形成できる上、露光装置の価格も高くなるとされています。波長ごとに、i線が約4億円、KrFが約13億円、ArFドライが約20億円、ArF液浸が約60億円、EUVが約200憶円規模といわれています。

回路が微細になればなるほど信号伝達の高速化や省エネ化などを図ることができますが、近年半導体露光装置の価格も含め微細化によるプロセスコストの増大が無視できなくなってきています。

また半導体露光装置に求められる性能として、半導体製造するコスト面から半導体露光装置のスループットも重要な指標になります。スループットとは、どれだけ高速に回路パターンを露光できるかを示す性能で、スループットが上昇するとシリコンダイ1枚当たりの製造コスト(ランニングコスト)は低下します。半導体チップの量産時に重要視されます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/41/1/41_1_8/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/57/4/57_4_615/_pdf
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspf/79/3/79_3_221/_pdf
http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00064&test=open&age=

ミストコレクター

ミストコレクターとは

ミストコレクターとは、工作機械の切削加工時に発生するオイルミストを吸引し、空気からオイルを分離して回収する装置のことです。

オイルミストとは、オイルが煙状になり、空気中に拡散したものです。オイルミストのほとんどは有害物質であり、人体への悪影響があるほか、その他の機械に付着すれば故障の原因にもなるので、確実に除去しなければなりません。

現在のミストコレクターにはオイルミストを除去する方法として、フィルターを用いる方法、ミストを帯電させて除去する方法、遠心力を用いて除去する方法があります。

ミストコレクターの使用用途

ミストコレクターは、NC旋盤ボール盤マシニングセンタなどを使用する際に生じるミストオイルを回収するために使用されます。

オイルミストが多く発生するのは特に切削加工であり、特に切削油が高いせん断を受ける高圧給油加工、研削加工、高速切削加工などです。このような工作機械とあわせて、ミストコレクターが使用されます。

ミストコレクターの原理

ミストコレクターには大きく、フィルター式、電気集塵式、遠心分離式の3つの方式があります。それぞれの原理について説明します。

1. フィルター式

フィルター式のミストコレクターでは、オイルミストをフィルターを用いたろ過により除去します。ミストコレクターとしては最も一般的な方式であり、通常フィルターは何層も重ねられて使われます。

フィルター式のメリットは構造がシンプルのため、安価に導入できること、現場で管理しやすいこと、安全性が高いことです。デメリットはフィルターの交換など、定期的なメンテナンスが必要であること、フィルターの通気抵抗により、電動機の消費電力が多くなること、交換した後のフィルターは、産業廃棄物として処理しなければならないことなどが挙げられます。

2. 電気集塵式

電気集塵式は、高電圧によるコロナ放電によりオイルミストに電荷を与えて、マイナス電極である電圧使用集塵極板の静電力によって油分を吸着、回収する仕組みのオイルコレクターです。コロナ放電とは、普通は電気を通さない気体でも高電圧を印加すると気体の一部が電離して、電子や正負イオンが発生し、電界中を移動することによって気体中に電流が流れる現象のことです。

電気集塵式のメリットは、1μm以下の非常に微細なオイルミスト粒子でも回収できること、フィルターを用いていないので、フィルター交換や、フィルター廃棄の手間が不要である、電極は洗浄によって再使用できることです。一方で、デメリットとしては導入コストが高く、高電圧の取り扱いに注意が要ること、電極のメンテナンスや洗浄の手間やコストがかかることなどが挙げられます。

3. 遠心分離式

遠心分離式は、回収したオイルミストが含まれている空気を遠心力によって、空気とオイルミストに分解する仕組みのミストクレクターです。遠心分離式は他の方式に比べると、メンテナンスや設置が容易なのがメリットです。しかし、1μm以下の微細なオイルミスト粒子の捕集には向いていません。

ミストコレクターのその他情報

1. ミストコレクターの設置

ミストコレクターの設置には、設置する機械によって注意が必要です。オイルミストが適切に回収できなければ作業者への健康被害や、空調設備などの故障にも繋がりかねません。ミストコレクターには3つの設置方法があり、工作機械や工場の環境によって使い分けることが大切です。

直接吸気方式
マシニングセンタやNC旋盤など、加工エリアが仕切られた工作機械では、密閉エリアを直接吸気します。最も効率よくオイルミストを回収できます。

局部吸気方式
汎用旋盤や研削盤など、加工部が開放空間になっている工作機械では、局部吸気方式でオイルミストを回収します。工作機械の加工部でオイルミストが発生する部分に、フードやホースなどを近づけて、オイルミストを吸引します。

広域吸気方式
広域吸気方式は、工場全体の空気を吸引します。直接吸気方式、局部吸気方式とセットで行う吸気方式です。

2. ミストコレクターと集塵機の違い

ミストコレクターと類似した装置に集塵機があります。集塵機は、切削加工で生じる粉塵などの個体を回収するための装置です。ミストコレクターが切削油を用いた切削加工で使われるのに対して、集塵機は切削油を用いないドライ加工で使う装置になります。

なお、粉塵は一般的に、空気中に浮遊するすべての細かい粒子状の固体のことです。粉塵でも10μm以上のものは煤塵 (ばいじん) 逆に細かい粉塵で特に小さいものが、PM2.5と呼ばれる微小粒状物質です。PM2.5は人体にとっては特に肺の奥深くまで入り、呼吸器や循環器に影響を与えることが懸念されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2016.7/0/2016.7_45/_pdf
https://www.apiste.co.jp/gme/technical/detail/id=4340

PTCサーミスタ

PTCサーミスタとは

PTCサーミスタとは、ある一定の温度を超えると抵抗値が急上昇する電子部品です。

PTCとは、Positive Temperature Coefficient (正の温度係数) の頭文字をとったもので、温度と抵抗に正の相関があるという意味です。サーミスタ (英: Thermistor) は、Thermal Sensitive Resistor「熱に敏感に反応する抵抗体」から派生した言葉です。抵抗体を被測定体に接触させ、電気抵抗の差から温度を測定することができる部品のことを指します。抵抗体には金属酸化物半導体を使用していることが特徴です。

また、PTCサーミスタを使用した過電流保護装置をリセッタブルヒューズと呼ばれます。管ヒューズやブレードヒューズは一度切れると交換が必要な合金エレメントを使用するため、一般的なヒューズとは原理が異なります。

リセッタブルヒューズは回路に過大電流が流れる場合、PTCサーミスタが高温になり抵抗値が高くなることで電流値が制限されます。過大電流発生の原因が解消されると、PTCサーミスタの温度が低下して抵抗値が低くなります。そのため、復帰可能なヒューズとして利用されます。

PTCサーミスタの使用用途

PTCサーミスタは電子基板などに使用されており、家電製品から産業用途まで幅広く使用されます。以下はPTCサーミスタの使用用途一例です。

  • スマートフォンなどの過電流・過負荷保護
  • 小型モータの過負荷保護
  • 電気カーペットや電気ヒータ
  • モーターやパワー半導体の過負荷保護

PTCサーミスタは温度が低い時には抵抗値も低いですが、過大電流によって過熱すると抵抗値が急上昇します。この仕組みにより、電気回路の過電流保護に使用されます。組み込まれる回路はヒーター回路や電子通信機器などです。

また、パワー半導体やモーターなどを使用する際には、過熱の保護を考慮する必要があります。そこでPTCサーミスタが使用されます。過熱から保護するために排熱用のヒートシンクやモーター巻線などと、PTCサーミスタを物理的に熱結合させることで利用します。

PTCサーミスタの特性から抵抗値が増加することを利用し過熱検知を行い、動作の停止や電源遮断を行う形で回路を構成します。

PTCサーミスタの原理

PTCサーミスタは大きく3つの特性を得ています。

1. 抵抗温度特性

抵抗値が室温からキュリー点 (室温の2倍程度の抵抗値を示す温度) まではほぼ一定であり、キュリー点 を超えると急激に抵抗値が上昇します。この性質により、電子回路の過熱を素早く検知して回路電流を制限することで、電子部品の故障を防止します。

2. 静特性 (電圧電流特性) 

キュリー点を超えるまでは、電圧の上昇に比例して電流も上昇します。キュリー点を超えるとサーミスタ自体の抵抗値が上昇するため、電流値は減少していきます。すなわち一定電力を保ちます。電圧電流特性は、山なりのようなグラフになるのが特徴です。

3. 動特性 (電流時間特性) 

PTCサーミスタの電流時間特性は、時間の経過とともに電流値が減少していく点が特徴的です。通電直後に大きな電流を流すことができる特性を利用して、モータ起動などに使用されます。

PTCサーミスタの種類

PTCサーミスタにはポリマー系とセラミック系の2種類に大分されます。

1. ポリマー系

ポリマー系はポリエチレンなどのポリマー材料に導電性粒子を混ぜて製造されるPTCサーミスタです。導電性粒子にはカーボンブラックやニッケルなどが使用されます。

頭文字を取ってPPTCともばれます。また、リセッタブルヒューズはポリスイッチなどとも呼ばれますが、この名称はポリマーが由来です。過電流保護の用途にのみ使用されるPTCサーミスタです。

2. セラミック系

チタン酸バリウムに微量の希土類元素を添加したセラミックが材料のPTCサーミスタです。添加剤の量や種類を調整することでキュリー温度を調整します。過電流保護のみではなく、消磁回路や自己制御型の加熱素子にも使用されます。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/3898/
https://ednjapan.com/edn/articles/1712/20/news012.html
https://www.maximum-tech.co.jp/ptc.html
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/limt-sensor/technote/apn-limt-sensor.html
https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ptc/basic/ptc
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/limt-sensor/technote/apn-limt-sensor.html

CNC画像測定システム

CNC画像測定システムとは

cnc画像測定システム

CNC画像測定システムとは、測定対象物をCCDカメラで拡大して寸法や形状、表面性状を観察するためのシステムのうち、コンピュータにより数値制御され自動測定を行うものです。

測定対象物やCCDカメラを任意の位置に高速で高精度に移動させることができるだけでなく非接触で測定を行うため、測定対象を傷つけることがありません。また、レーザや画像処理によるオートフォーカスによる高精度なピント合わせが可能で、画像処理により肉眼では観察できないキズや欠陥などを見つけることができます。

CNC画像測定システムの使用用途

CNC画像測定システムの使用用途は、連続した自動測定を高速高精度で行うことです。基盤のパターン測定や電子部品の測定など、極微小で同じパターンが連続するような測定に適しています。

同じパターンの連続により、どこを測ったか分からなくなる混乱や疲労が人間には生じるため、常に同じ動作を精度よく行うCNC画像測定システムは半導体の製造ラインでは欠かせないものです。また、人間による測定では微妙な位置合わせのばらつきが誤差に与える影響が大きく、手動による測定に向いていないものにも適しています。

CNC画像測定システムの原理

CNC画像測定システムは、寸法や形状、表面性状を観察するためにCCDカメラで測定対象物を拡大します。CCDカメラで得た画像を表示するための装置や、画像から寸法や表面性状を測定したり、画像そのものを加工するためのシステムが必須です。

測定システムの制御から画像処理までは、専用のアプリケーションソフトをインストールしたPCで行うことが一般的です。CNC画像測定システムの設置および使用は、温度管理された専用の測定室を用意することが必要になります。これは装置の精度の高さと測定対象の微細さから、温度の変化が測定の誤差に与える影響が大きいためです。

CNC画像測定システムは、手動で操作することもできますが、そのほとんどは専用のコントローラもしくはPCのアプリケーションソフトから行います。早い応答性と高精度の位置決めをするため、ステッピングモーターボールネジを組合せた機構にデジタルスケールで座標を読み取り、フィードバック制御を行っています。

CNC画像判定システムのその他情報

1. CNC制御

CNC制御とは、「Computer Numerical Control」の略称で、コンピュータを使って工作機械等を制御することです。移動方向や移動速度といった機械の動きをプログラミングで自動化することで、高精度かつ高速な動作が実現可能になります。

CNC制御ではGコードとMコードと呼ばれる2種類のプログラム言語を用いて記述されます。Gコードでは位置決め等の加工、動作の条件や順番を記述しており、MコードはGコードを補助する役割です。

2. CCDカメラの構成

CNC画像判定システムにも使用されているCCDカメラは大きくマイクロレンズ、カラーフィルター、フォトダイオードから構成されており、各部品は以下に示す働きがあります。

マイクロレンズ
レンズを通った光を効率良くフォトダイオードに届けるために集光する働きを担っています。

カラーフィルター
光の色をRGB (赤、緑、青) もしくはCMY (シアン、マゼンダ、イエロー) に分解し、フォトダイオードに届けます。

フォトダイオード
受光すると電荷を発生させる光電変換を行ち、電荷を垂直及び水平に転送します。転送された電荷はCCDの出力部で電荷量を電圧に変換し、画素ごとに画像出力されます。

各フォトダイオードにR、G、Bと割り当てているため解像度は本来のCCD画素数の1/3ほどに落ちてしまいます。画像処理エンジンが補完を行い、本来の画素数の画像に仕上げています。なお、合成処理を行わずにフォトダイオードで取り出したデータをそのまま保存したのがRAW形式です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/image.jsp
https://www.nikon.co.jp/technology/product/nexiv/