超音波モーター

超音波モーターとは

超音波モーター (英: Ultrasonic Motor) とは、超音波の振動を利用して回転運動や線形運動を行うモーターです。

一般的な電気モーターとは異なり、回転部分や可動部分が直接的に接触する機構を持ちません。超音波振動の伝達によって運動を実現します。振動の伝達によって運動を実現するため、駆動中にほとんど騒音を発生しません。音響的に敏感な環境や静粛性が求められる装置に適しています。

また、高い周波数の振動を利用するため、非常に迅速な運動が可能です。これにより、素早い位置制御や高速な動作が要求される用途に応用されます。ただし、一般的には小型装置へ適用されるモーターです。

したがって、大きな負荷や高いトルクが要求される場合には、十分なパワーと効率を提供するかどうか注意が必要です。負荷に対する適切な設計や評価の実施が求められます。

超音波モーターの使用用途

超音波モーターは、さまざまな用途で使用されます。以下は使用用途の一例です。

1. 光学機器

カメラやビデオカメラなどの光学機器において、自動フォーカス機構やズーム機構に利用されます。超音波モーターの特徴である高速応答性と静音性を活かし、瞬時に焦点距離を合わせたり、レンズの拡大・縮小を行ったりします。光学系の微妙な制御が求められるため、超音波モーターの高い精度と滑らかな運動が重要です。

2. 医療機器

内視鏡やエコー画像装置などの医療機器に使用されます。内視鏡の先端に取り付けられた超音波モーターは、細かな位置調整や振動制御を可能にし、医師が手術や検査を行う際に精密な操作をサポートします。超音波モーターの非接触性や静音性が特に重要であり、患者の快適さと高い治療効果を提供することが可能です。

また、磁力の影響を受けないという特徴を活かし、磁気を用いた医療診断機器であるMRIの本体や周辺機器などにも用いられています。

3. ロボット

ロボットアームやマニピュレータなどのロボット工学において使用されます。超音波モーターは高い精度と高速応答性を持ち、微細な動作制御や位置決めを実現するために最適です。これにより、産業用ロボットや医療用ロボットなど、多様なロボット応用において使用されています。

4. 電子製品

超音波モーターは、スマートフォンやタブレットなどの消費電子製品にも使用されることが多いです。振動を利用して、タッチフィードバックや振動アラームなどの機能を実現します。

超音波モーターの原理

超音波モーターは、圧電効果を利用して動作する場合が多いです。圧電素子またはピエゾ素子と呼ばれる材料を使用します。一般的に圧電素子は、セラミックや圧電結晶によって構成されます。

圧電素子には、駆動周波数の電圧が印加されます。駆動周波数は、素子の固有の振動周波数に合わせて設計されることが多いです。この電圧により、圧電素子は周期的に膨張と収縮を繰り返して変形します。

この変形は超音波の振動となります。超音波の振動はモーター内部の機構部分に伝達されることで、回転運動へ変換される仕組みです。

超音波モーターの構造

一般的な超音波モーターは以下のような構造要素を有します。

1. 振動子

振動子は超音波の振動を発生する部分です。超音波を発生させることで、モーターの駆動力を提供します。圧電素子などが使用されることが多いです。

2. 駆動子

振動子からの振動を受け取り、その力を増幅・変換して運動を引き起こす部品です。駆動子は通常、回転軸や線形運動用のスリップリングなどの形態です。圧電素子などと接触していることが多く、駆動力を増幅する部品です。

3. ローター

超音波モーターにおいて回転運動をする部分です。駆動子によって駆動されます。回転軸や回転ディスクなどと呼ばれることが多いです。

4. ステーター

ローターと対向し、回転運動や線形運動の制御を行う部分です。ステーターは振動子や駆動子によって発生する振動を受け取り、それに対応した力や制約を与える役割を果たします。

参考文献
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/village/ultrasonic-motor.html
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00009/

オムニホイール

オムニホイールとは

オムニホイール

オムニホイールとは、あらゆる方向への移動が可能なホイールであり、本体部分の主動回転部と本体外円上に配置されたローラーの受動回転部によって構成される車輪です。

通常、3輪1セットまたは4輪1セットで使用されます。自動車のようなステアリングなどを用いたタイヤでの車輪構成と比較すると、移動機構が簡素になるため、小型化や軽量化に向いています。

オムニホイールの使用用途

オムニホイールは、主にロボットや台車などの移動機構として使用されています。狭いスペースの移動に適しているため、工場や倉庫内で無人搬送ロボットとしての利用や病院等の室内環境を想定した車いすとして利用される場合が多いです。

無人搬送ロボットとしてのオムニホイールには、センサを搭載した人追尾機能を持つロボットもあります。作業装置を載せたまま移動できるため、台車と作業台を兼ねた使用も可能です。

オムニホイールの原理

オムニホイールは、モータの駆動力を縦方向に伝達し、横方向への回転は自己駆動力を持たないフリーの機構によって行う車輪です。旋回や全方向への平行移動は、オムニホイールの路面へのグリップ力に対して、各モータの速度制御を調節することで可能になります。

通常は、3輪1セットもしくは4輪1セットで使用されることが多いです。それぞれの特徴を以下に示します。

1. 3輪構成

4輪での車輪構成に比べ、駆動系が1つ少ないために小型化や軽量化が見込めるという利点があります。しかし、どの方向に移動する場合でも、移動量がベクトルの合力となるため、路面との相性によっては、直進性が悪くなる場合があります。

2. 4輪構成

4輪構成の場合は、前後左右方向への移動は自動車の様に通常のタイヤで移動するのと変わらない動きとなるため、高い直進性が見込めます。一方で、駆動系としては3輪構成に比べて駆動系が1つ多い状態となるため、装置全体として大きくなり、重さも増えてしまうという短所もあります。

オムニホイールの特徴

長所

  • その場での旋回や全方向への平行移動が可能
  • 最低3つあれば車輪として駆動系が構成可能で、4輪駆動に比べて移動機構が簡素になり、小型軽量化が可能
  • 動作時の振動が少ない

特に、移動ロボットにおいては、2輪ロボットは「基本的に目標に対して動く向きを変えながら常に前に向かって動く」のに対し、オムニホイールロボットは「常に目標に向かって向きを固定させた状態で平行移動する」という大きな違いがあります。

これは、オムニホイールを用いることで「移動時に向きを変えてから動く」という手順を省けることを意味し、「最短距離で素早い動きを行える」という大きなアドバンテージになります。

このように、オムニホイールは素早い移動に対して大きなアドバンテージを持つため、ゴールまでの到達時間などを競うロボットコンテスト用のロボットでは、オムニホイールを使用した移動機構を搭載しているロボットも多いです。

オムニホイールの部品構成には決まったものはなく、受動回転部に配置されるローラーの数や角度、素材などは様々なものが存在します。各オムニホイールによって得意とする環境や用途、耐荷重性などがことなるため、使用用途に合わせた選定が必要となります。

短所

オムニホイールの短所としては、「段差に弱いこと」、「屋外での使用に弱いこと」が挙げられます。オムニホイールの動作原理によるもので、どちらの条件も地面とのグリップ力を十分に発揮できないという課題が原因です。

オムニホイールのその他情報

1. オムニホイールロボットの制御方法

4輪タイプの場合、オムニホイールは機台に対して90度ごとに4つ取り付けられています。各オムニホイール一つずつにモーターが取り付けられており、独立にモーターへの指令を出すことで、機台の速度と進行方向を決定します。

例えば、X方向に機台を直進させる場合、Y方向における各オムニホイールの速度ベクトルの和が0になるように制御が必要です。

2. 制御における注意点

制御時の注意点としては、地面とのグリップが不十分だとタイヤに滑りが生じます。オムニホイールの内一つでも空転が生じると、オムニホイールの速度ベクトルの総和が想定値からズレてしまいます。フィードバック制御を取り入れる等してモータへの指令を都度修正する仕組みが必要です。

フィードバック制御とは、出力である制御量を入力値にフィードバックして出力と入力の差が0になるように入力値の修正を行う制御を指します。空転のような外乱が生じても修正を加えることができる制御になります。

アルミダイカスト

アルミダイカストとは

アルミダイカスト

アルミダイカストとは、アルミ合金や亜鉛合金などを溶かし、金型へ圧入して成形する特殊な鋳造方法のことです。アルミダイカストは、高い寸法精度と美しい表面を持つ、複雑な形状の製品を大量生産することが可能であるという特徴があります。

このため、アルミダイカストは、金属加工手法の中でも高く評価されています。アルミダイカストと混同されるのがアルミ鋳造です。アルミ鋳造は、アルミ合金やなどの金属を、融点よりも高い温度で液体にして型に流し込み、冷やして固める方法を指すため、アルミダイカストとは異なる鋳造方法です。

また、アルミダイカストでは金属の金型を使用するのに対して、アルミ鋳造の場合は一般的に砂型を利用します。アルミダイカストは、金属の塊から金型を設計・製作を行う必要があるため、製作コストが高いという特徴があります。

アルミダイカストの使用用途

アルミダイカストは主に、自動車部品で使用されています。その中でも近年の需要が高いのは、ステアリング関係の部品です。アルミダイカストであれば、複雑な形状や高精度の製品でも大量かつ短時間で製造できるという特徴があるからです。

アルミダイカストが使われているのは自動車部品だけではありません。その他にも、普段使っているパソコンや携帯電話、デジタルカメラ、冷蔵庫や洗濯機など、日常生活のさまざまな製品に使われています。アルミダイカストは、小型部品の製造も可能であるため、製品の軽量化にも貢献しているのです。

アルミダイカストの原理

アルミダイカストは、金型を使った鋳造方法です。ダイカストとは、金型(Die)による鋳造(Cast)という意味があります。ダイカストマシンの構成は、金型を開閉する型締装置、金型に溶解した金属を射出する射出装置、金型から押し出す押し出し装置です。

アルミダイカストは、まずアルミニウム合金を溶解させます。このとき、アルミニウム以外の金属も溶解させ、目的の成分をもつ合金を作り出すため、入念な成分調整と管理が必要です。アルミニウム合金が溶解したあと、金型を清掃し、型締装置で金型を閉じます。

そして、閉じられた金型に対して、射出装置により溶解アルミニウム合金を充填します。アルミダイカストは、金型に溶解金属が射出され、急速に冷却されるため、表面層の組織が細かくなるのが特徴です。アルミダイカストは、この細かい表面組織によって表面が硬くなり、強度を持った製品を製造することが可能になります。

一方で、アルミダイカストは、急冷されるため、鋳巣ができやすいのがデメリットです。この鋳巣は、表面だけでなく、最後に凝固していく中心部でも発生します。アルミダイカストで鋳巣が発生してしまうと、強度低下など期待した製品性能を達成できなくなります。このため、アルミダイカストでは、ダイカスト時の温度管理や、金型形状の十分な検討が必要です。

アルミダイカストのその他情報

1. アルミダイカストとアルミ鋳造の違い

アルミダイカストは、アルミ合金や亜鉛合金などを溶かし、金型へ圧入することで成形を行います。一般的に材料はおよそ500℃~700℃程度に熱して溶かし、金型に低速で流し込んだ後、高い圧力をかけて冷やすことで成形されます。

一方でアルミ鋳造は、高温の炉で溶かした液体状のアルミニウム合金を、金属やセラミックスの鋳型に流し込んで成形する方法です。アルミ鋳造では、基本的に外部からの力はかけず、液体金属の落下による投入と、その後の流れを利用しています。アルミ鋳造は、アルミダイカストと比較して、重力鋳造と呼ばれることもあります。

アルミダイカストのメリットは、寸法精度が高く、複雑な形状でも製造できることです。この理由は、溶けたアルミニウム合金に圧力をかけて型に投入するため、型の隅々までアルミニウム合金が瞬時に行きわたるからです。一方でアルミ鋳造は、目的の寸法にならないことや、表面に皺が発生する場合があります。高温のアルミニウム合金は流動性が比較的低いため、落下による投入だけでは型の隅々にまで行き渡るのに時間がかかるからです。

このため、アルミ鋳造では、凝固するときにアルミニウムが収縮するため、寸法変化や流動の際に生じた皺などの欠陥が生じることがあります。アルミダイカストは、寸法精度が、高く表面粗さにも優れていることも特徴です。アルミニウム合金が瞬時に行きわたるため、製造時間を短縮することが可能となり、製品を大量生産することができるというメリットもあります。

アルミダイカストでは表面粗さが高品質を保っていることから、仕上げや検査工程を削減できるという点も、アルミ鋳造とは異なる特徴です。しかし、アルミダイカストのデメリットとして、金型の設計と製造にかかるコストが高いという特徴があります。このため、小ロット生産の場合には、砂型を利用するアルミ鋳造の方が費用を抑えられる場合があります。

また、アルミダイカストは、強度が必要な部品には適さないということもデメリットです。アルミダイカストでは製造の都合上、成型時に空気や蒸発した離型剤を巻き込んでしまいます。これによって「巣」と呼ばれる空洞ができるため、製品の強度が低下することに注意が必要です。

2. アルミダイカストの材料

アルミ合金には鋳造用や展伸用材料がありますが、ダイカスト用材料はADCを先頭にしたシリーズで、多数の種類があります。アルミダイカスト材料の主成分系はAl-SiとAl-Mgで、そこにCuやMnなどの元素が添加されています。アルミダイカストで要求される耐食性、鋳造性、耐衝撃性に合わせて各素材が選定されているのが特徴です。

アルミダイカスト材料の金属組織は、Al固溶体が母相です。母相にはラメラ―状のAl-Si共晶組織やMg2Si,やAl2Cuなどの微細析出物による析出強化を利用したものがあり、これによって発現する特性が異なります。

通常、アルミニウム合金は鋳造や加工後の熱処理加工により、結晶粒を整えたり微細析出物を形成したりします。しかしアルミダイカストでは、ダイカスト中に巻き込む空気やガスが熱処理により膨張し欠陥化することを避けるため、熱処理加工をしないことが多いです。

しかし、最近適用が進んでいる真空ダイカストや無孔性ダイカスト法では、これらの欠陥が発生しにくいという特徴があります。したがって、近年のアルミダイカストでは、熱処理加工を追加することにより、アルミダイカスト材料の特性を引き出すことが可能になっています。

参考文献
https://www.taiyoparts.co.jp/blog/960/
https://www.taiyoparts.co.jp/blog/4458/
https://www.hakkokinzoku.co.jp/forging-encyclopedia/hot-forging/superiority01.html
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1304/17/news019.html

アルマイト

アルマイトとは

アルマイト

アルマイトとは、アルミ表面に酸化皮膜 (アルマイト膜) を人工的に形成させる表面処理のことです。

膜を形成している物質もアルマイトと称します。アルマイト膜を形成することにより、耐食性や耐摩耗性の向上などを図ることが可能です。アルマイト膜は、メッキ加工とは異なり、ただ表面を覆うだけではなく製品自体を溶解しながら入り込む形で生成されて表面を覆うため、より丈夫な表面処理が施されています。

なお、アルマイト膜を形成することをアルマイト処理とも言います。

アルマイトの使用用途

アルマイトは家庭用製品から工業用製品まで幅広い分野で用いられています。アルマイトよりなるアルマイト膜を形成すると、「高耐食」「高耐摩耗」「表面特性 (撥水性など) の付与」「着色など装飾性が高い」という特長があるためです。

  • 家庭用製品
    弁当箱、やかん、鍋、携帯電話、サッシ等
  • 工業用製品等
    建築材、自動車部品、光学部品、半導体部品、医療機器等

アルマイトの原理

アルマイトが形成される母材であるアルミニウムは、酸素と結びつきやすく、空気との接触により薄い酸化膜を形成する性質があります。このため、アルミニウムには、さびにくい、つまり耐食性が良い特性があります。

しかしながら、この自然に形成される酸化膜の膜厚は非常に薄いものです。環境によっては化学反応による腐食が生じ、アルミニウムまで腐食が及ぶ可能性があります。

そこで、人工的に酸化物 (アルマイト) よりなる膜を形成してアルミニウムを保護しています。アルマイトの主成分は非晶質アルミナ (Al2O3) です。なお、アルマイトよりなるアルマイト膜は 膜厚方向に伸びる孔部を多数有する多孔質層の形状をしています。

アルマイトのその他情報

1. アルマイト (アルマイト膜) の形成方法

アルマイト (アルマイト膜) の基本的な形成方法は、以下の通りです。なお、アルマイト処理もこれに準じた方法です。

  1. アルミ製品を治具に取付け、電解液の中に入れる。
  2. 治具に電極を繋ぎ、プラスの電気を流し、同時に陰極にも同様に電気を流す。
  3. 電気分解により、表面に酸化皮膜(アルマイト膜)が生成される。

この時に生成される酸化被膜 (アルマイト膜) の厚さは、電解時間に比例します。また、アルマイト膜は、アルミニウムの表面を溶解しながら生成されるため、その表面形状はアルミニウムの表面の形状を反映した形です。

すなわち、アルミニウムの表面に微小な凸凹であった場合でも、その形状を反映してアルマイト膜が形成されるため、塗装の様に表面を平らにならすことはできません。

2. アルマイト膜を形成する際の注意点

アルマイト膜を形成する際に注意するべきポイントは5つあります。

  • アルミ加工を切削で行ったか、放電加工で行ったかによって、膜の成長具合が変わるため、アルマイト膜生成後の見込み寸法に差が出る。
  • 鉄や、ステンレスなど、アルミ以外の素材が接合されている状態でアルマイト膜を形成すると、アルミ以外の素材が溶けてしまう可能性がある。
  • 異なる種類のアルミ合金で構成されている部品に一度にアルマイト膜を形成すると、色ムラや膜厚ムラが発生する。
  • はめあいを想定した穴形状などがある部品にアルマイト膜を形成すると、アルマイト膜の膜厚の寸法精度によっては、はめあいが機能しなくなる可能性がある。
  • はめあいの穴の深さや、貫通穴または止まり穴などの形状によって、アルマイト膜の膜厚寸法精度に差が出ることを考慮する。

上記の様に、アルマイト膜を形成する部品の形状や施した加工手段などにより、生成されるアルマイト膜の厚さに差が出てしまいます。そのため、精密な寸法が必要となる部品などにアルマイト膜を形成する場合は、事前の検討と確認が重要です。

3. アルマイトのデメリット

アルマイト膜は、柔軟ではなく脆い性質も有しており、アルマイト膜を形成したパーツを、加工したり曲げたりすると、剥離あるいは割れが生じます。また、物質ごとに、熱によって膨張する割合 (熱膨張係数) は異なります。酸化処理する前のアルミニウム合金と、酸化処理後のアルマイトは異なる熱膨張係数です。

特に高温環境 (100℃以上) 下では、この2つの物質における熱膨張割合の差がどんどん開くため、アルマイト膜に剥離やクラック (ひび割れ) が発生してしまいます。

4. アルマイトの着色方法

アルマイトには様々な色の着色が可能です。着色方法として、電解着色と染料着色の2つに大別されます。

電解着色
電解着色とは、アルマイト膜を形成した部品をスズやニッケルなどの金属塩を含む電解溶中で二次的に電解して、多孔質層であるアルマイト膜の孔部に金属を析出させて着色する方法です。この方法でアルマイト処理をすると、黒やブロンズ、黄色などの金属の持つ色合いをアルマイトにつけることができます。

また、電解着色にはアルマイト膜に着色するだけでなく、補強する効果もあります。

染料着色
染色着色とは、アルマイトの膜の多孔質層の孔部の内側に染料を入れることで、アルマイトに着色する方法です。カラーアルマイトと呼ばれています。

染料によってアルマイト膜を着色した後は、封孔処理を施します。これは端的に言うと、染料が入った穴にフタをする処理で、アルマイトの着色が剥がれないようにします。ただし、アルマイト膜自体が剥離した場合は、着色も剥がれることになるため注意が必要です。

電解着色、染料着色 (カラーアルマイト) のどちらの処理においても、着色の濃度は皮膜の厚さ、処理にかける時間や温度などの条件によって変わります。これは、穴の中に入る金属や染料の量が、条件によって変化するためです。量が多ければ多いほど、着く色は濃くなります。

参考文献
http://toeidenka.co.jp/alumite.html
http://toeidenka.co.jp/alumite.html#almt_chap01
http://toeidenka.co.jp/assets/doc/Q&A_160921.pdf

たわみ軸継手

たわみ軸継手とは

たわみ軸継手

たわみ軸継手とは、たわみ性を持たせた軸継手です。

たわみ性を持たせることで軸芯のずれを許容し、軸受の摩耗や装置に伝わる振動などを低減できることが特徴です。軸継手はカップリングとも呼ばれ、モータなどの駆動軸と従動軸の間に設置し、動力を伝達します。

たわみ軸継手の使用用途

たわみ軸継手は接続しようとする2つの軸の軸線が一致させにくい場合や振動、衝撃を緩和させたい場合などに使用します。太さの異なる2軸を結合可能であり、駆動側の熱を従動側へ伝達するのを防止できます。

既存の駆動装置を別の従動機器に取り付けたい場合や駆動側の熱による従動側の変形を防ぎたい場合に使用されます。

たわみ軸継手の原理

たわみ軸継手は、ゴムやばねなどのたわみ性を持った素材を内蔵しています。これらによって振動や軸線のずれを吸収することでスムーズな動力伝達が可能です。通常は正確に固定しても温度変化や経年劣化で徐々にズレや振動、破損が発生します。

衝撃や振動の影響が大きい場合や長期的にスムーズな回転伝達が必要となる場合には、軸継手を使用することが多いです。部品の特性上、素材によって耐久性や耐荷重性が異なるため、使用用途や使用期間に合う軸継手を選定することが必要です。

たわみ軸継手の種類

たわみ軸継手は使用先のトルクや回転数などの仕様などに合わせて選定します。ゴム軸継手は振動や衝撃の緩和用途以外に電気的な絶縁を必要とする場合にも使用することもあります。

主要なたわみ軸継手の種類は以下の通りです。

たわみ軸継手のその他情報

1. たわみ軸継手芯出しの許容値

回転機の設置やメンテナンス時の復旧の際には必ず芯出し調整を行います。たわみ軸継手の面方向、周方向それぞれを求められる精度によって調整します。一般的なたわみ軸継手の芯出し許容値は5/100mm以下として芯出し調整を行う場合が多いです。

メーカー許容値は9/100mm以下程度ですが、例外としてカップリング毎に大きさが定められていることもあるため、メーカー許容値を確認して芯出し調整をします。芯出し調整はカップリング同士の面間、面方向のズレ、周方向のズレをそれぞれ調整することが必要です。

基本的には駆動側に調整用の金属板を入れてモーターの位置調整を行うことで補正します。

2. たわみ軸継手と固定軸継手の違い

軸継手にはたわみ軸継手の他に固定軸継手があります。たわみ軸継手がミスアライメントを吸収しながら動力を伝達するのに対し、固定軸継手は別名リジットカップリングリーマボルトと呼ばれ、しっかりと固定され動力を伝達します。取付位置の精度が高い必要があり、軸心の一致が必要となります。

取付自体はリーマボルトを閉め込むだけなので簡単です。一般的に使用頻度が高いものではフランジ型固定軸接手があります。たわみ軸継手にはカップリング同士を固定するボルトにゴムなどの衝撃吸収材を使用しますが、固定軸継手には吸収材はありません。

参考文献
https://www.nbk1560.com/resources/coupling/article/powertransmission-about/
https://em.ten-navi.com/dictionary/1395/

https://www.nbk1560.com/products/coupling/powertransmission/FCL/FCL-355/

ぜんまいばね

ぜんまいばねとは

ぜんまいばね

ぜんまいばねは、ねじれた形状の巻き線を持つばねの1種です。

ぜんまいばねはコイルが渦状に巻かれており、力が加わると、そのエネルギーが蓄積・解放されます。 そして、押しや引っ張りなどの力に対して反発することで運動が生まれ、これを取り出して機構の制御に利用します。

また、 適切な材料と設計がされていれば、強度と耐久性に優れた特性を持ちます。長期間にわたって安定した弾性特性を維持することが可能です。

比較的コンパクトなばねで、機構の設計上組み込むスペースが少ない場合によく検討されます。

ぜんまいばねの使用用途

1. 車両のサスペンション

ぜんまいばねは、自動車のサスペンションシステムに使用される場合があります。車の振動を吸収し、乗り心地を向上させるために、サスペンションに組み込まれます。車輪と車体の間で力の吸収と放出を行い、走行中の衝撃を緩和します。

2. 産業機械

産業機械には、振動の吸収や制御、部品の位置合わせ、クッションなどの目的で使用されます。機械の運転中に生じる振動を抑制し、正確な動作を維持するのに役立ちます。

3. 消費者製品

ぜんまいばねは消費者製品にも使用されています。例えば、ドアクローザーやショックアブソーバー、キーボードのキータッチなどが挙げられます。目的はクッションや振動吸収です。また、コード式掃除機のコードの巻取り機構には昔からよく使われています。

4. 時計

腕時計などでも使用されます。ぜんまいばねが巻かれた状態から力が解放されることで、時計の動力となります。ぜんまいばねは、コンパクトにばねをまとめることができるので、スペースの少ない時計などにはよく使われます。

5. 家庭用品

身近な家庭用品にも多く、ぜんまいばねが使われています。具体的には、家具のクッション、ドアを自動で閉じる装置や、玩具などです。また、コンベックスやメジャーの巻き取り機構にもほとんど使用されています。

ぜんまいばねの原理

1. フックの法則

フックの法則は、ばねが受ける力とその伸びや圧縮との間に比例関係があることを示しています。ばねが受ける力は、ばね定数と変位に比例します。この原理は、ばね一般に適用されます。なお、「フック」とは、この法則を発見した人の名前です。

2. 弾性エネルギーの蓄積と放出

ぜんまいばねが力を受けて変形すると、その内部にエネルギーが蓄積されます。この蓄積されたエネルギーは、ばねが解放された際に放出されます。ぜんまいばねはこのエネルギーを使って、元の形状に戻ろうとします。この時のばねの動きを取り出して、機構を制御しようするのがばね一般の原理です。

3. 周期性と振動

ぜんまいばねに周期的な力が加わると、ばねがその都度エネルギーを蓄積・解放します。その応答の結果、周期的な運動が生まれ、振動が生じます。このため、特定の周波数や振幅での振動を実現可能です。

ぜんまいばねは、このばね一般の原理を使って、コンパクトにばねを構成することができるので、身近なところから産業用まで様々なところで使われています。

ぜんまいばねの選び方

 まず、適切な荷重範囲を考慮してばねの荷重要件を選ぶ必要があります。また、ぜんまいばねの伸びや圧縮の必要範囲も重要な要素です。

そして、設計条件に合った適切なばね定数を決定します。ばね定数は、ぜんまいばねの変形の度合いを示す指標です。ばね定数が大きいほど、同じ力に対して伸びや圧縮が小さくなります。

材質は耐久性、強度、耐腐食性などに影響を与えます。用途や環境に合った適切な材料を選定し、これらを総合的に踏まえたうえで、コストに見合うかどうかを検討します。

 参考文献
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-06/zenmaibane.html
https://www.kagaspring.com/keyword/basic/item_1808.html

CGソフト

CGソフトとは

CGソフトとは、コンピュータ上で画像を作製・編集するためのソフトウェアです。

CGはComputer Graphicsの略で、ソフトを使ってCGを制作する人のことをCGクリエイターと呼びます。

CGソフトの使用用途

CGソフトは産業・商業用だけでなく、個人の趣味としても使用されます。CGソフトの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • テレビアニメーション作製
  • 漫画・絵画作製
  • ゲームソフト作製
  • ウェブサイト用素材の作製
  • デザイン用CGの作製
  • デジタルカメラで撮影した写真の編集
  • 建築図面の製図

CGソフトの種類

CGソフトは主に2DCGソフトと3DCGソフトに大別されます。ソフトウェアの価格帯はそれぞれ異なりますが、近年では無料ソフトウェアも増加傾向です。

1. 2DCGソフト

平面で描くCGを作製するソフトです。主なソフトとしては、PhotoshopやIllustratorなどが挙げられます。

2. 3DCGソフト

立体の3DCGを作製するためのソフトです。主にゲームやアニメーション用の3Dモデルの作製などで用います。主なソフトとしては、MAYAや3ds maxなどが挙げられます。CADも3DCGソフトの一種です。

CGソフトの原理

2DCGソフトは、ラスター形式とベクター形式、3DCGソフトは、ポリゴンモデリングとスカルプトモデリングに大分されます。

1. 2DCGソフト

ラスター形式
1ピクセルの点を格子状に並べる形でCGを作製する形式です。濃度や色の異なる点を多数並べて複雑な画像を表現します。ただし、点の数が増えるほどデータサイズが増加します。

主なソフトはAdobe Photoshopです。jpg、pngなどの拡張子が使用します。複雑な画像表示に有意な反面、拡大縮小を行うと品質が落ちやすいという欠点もあります。

ベクター形式
点と点の関係などを数値データとして記憶し再現する形式がベクター形式です。形状を数値で管理するのでデータサイズも小さく、変形がしやすいという利点があります。ロゴや地図などに適しています。

主なソフトはAdobe Illustratorです。PDFなどの拡張子が使用されます。拡大縮小に有意な反面、複雑な描写表現が難しいという欠点があります。

2. 3DCGソフト

ポリゴンモデリング
3つ以上の頂点を接続して囲んだ領域をポリゴンとして定義し、多数組み合わせて3次元形状を再現する方式です。ほとんどの3DCGがこのモデリング方式によって作られます。ただし、複雑な表現が必要な場合は多量のポリゴンを定義する必要があるため、スカルプトモデリングを使用することもあります。

スカルプトモデリング
彫刻を施すような感覚で直感的に3DCGモデルの形状を製作する方式です。各ポリゴンが破綻なく繋がっていることが必要となり、これを無視するとエラーや異質な陰影が生じます。

ただし、ポリゴンの流れを無視してモデリング可能なため複雑なモデリングの際に便利です。一方で、作製されたデータサイズが大きいという欠点があります。

CGソフトのその他情報

1. CGソフトの機能

CGソフトは効率化のためにさまざまな機能を備えています。以下は機能の一例です。

  • モデリング機能
    最も基本的な機能です。CGの形状を造形するCG作成の第一段階で、CGの立体形状や内部構造を表現します。
  • リトポロジー機能
    ポリゴンメッシュを再構成する機能で、ポリゴンメッシュを滑らかにすることが可能です。
  • アニメーション機能
    作成したCGを動作させる機能です。CGの骨格に相当するリグを動かし、より本物らしい動きを表現することができます。

その他、エフェクトをかける機能や座標的にポリゴンを操作す機能など、CGを効率的に作製する機能が用意されています。 

2. CGソフトの統合型と特化型

CGソフトは、統合型と特化型に分類することができます。

統合型
CGアニメーション作成に必要な機能がすべて備わった製品です。具体的には、CGのモデリングやレンダリングなどすべての工程を一つのソフトで行うことが可能です。統合型の製品は全機能を有し便利ですが、その分扱いが難しく慣れるまでに時間がかかります。

特化型
モデリングやスカルプトなど、特定工程のみの機能を備えた製品のことを指します。はじめてCGアニメーションを作製する場合は、特化型のソフトが適しています。統合型では実現できない複雑なことを実施する際には特化型が有利です。 

参考文献
https://school.dhw.co.jp/word/cg/2dcg.html
https://school.dhw.co.jp/word/cg/cg.html
https://www.asobou.co.jp/blog/web/vector-raster
https://knowledge.autodesk.com/
https://school.dhw.co.jp/word/cg/sculpting.html
https://entry.cgworld.jp/terms/%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0.html
https://c3dpoly.com/3dcg-software

ギヤポンプ

ギヤポンプとは

ギヤポンプ

ギヤポンプとは、容積形ポンプの1種で回転ポンプに分類され、2つの歯車の回転により送液するポンプです。

ギヤポンプの使用用途

ギヤポンプは、定量的に送液したいときや高粘度液を送液したいときに用いられることが多いです。圧力上昇に伴う吐出量の変化が少なく定量性の良いことが特徴です。送液する液の種類としては、油、樹脂、塗料、接着剤、溶剤など幅広い種類の液を送液することができます。

歯車とケーシング以外で触れるところが少なく分解が比較的容易であることから、化学業界はじめ食品業界や薬品業界のサニタリー分野でも用いられています。更にある程度の固形物含有液にも使用することができます。

ギヤポンプの原理

ギヤポンプは、ケーシングの中に2つの歯車がぴったり収められた構造をしています。ギヤポンプは容積式ポンプと呼ばれ、歯車と歯車の間や、歯車とケーシングの間に存在する液にエネルギーを加えて吐出する機構になっています。ギヤの回転速度を変化させることにより吐出量のコントロールをすることができます。

ギヤポンプの歯車構成は複数ありますが、今回はケーシング内に上下2つの歯車が収められている外転式ギヤポンプとギヤとピニオンを組み合わせた内転式ギヤポンプについて説明します。

1. 外転式ギヤポンプ

上下の2つの歯車がかみ合うように回転を行います。中央で噛み合った歯車が、再び開くタイミングで負圧が生じることによって液を吸い込みます。吸い込んだ液は歯車とケーシングの間を通る仕組みになっています。

1. 内転式ギヤポンプ

ケーシングの吸引側でギヤとピニオンのかみ合いが離れた時、負圧が発生します。負圧により吸入口より液体を吸い込みます。ケーシング内には三日月の液が入る空間が存在しています。ギヤとピニオンは偏心していることから、三日月部分を通る際にギヤとピニオンは接触から離れる状態となります。出口側にてギヤとピニオンの歯が完全にかみ合うタイミングとなります。そのタイミングで完全にシールされた状態となり今度は加圧状態となって吐出口から液が送り出されます。 

ギヤポンプのその他情報

ギヤポンプ 用のオイルシールとメカニカルシール

ギヤポンプ軸部の密閉にはオイルシールもしくはメカニカルシールが使用されます。

オイルシールとは、シール自身の弾性で密閉性を確保するもので、メカニカルシールとはコイルバネの力を利用して密閉性を確保するものです。どちらの場合も、ポンプの軸が回転する為のクリアランスが存在するので、 完全な密閉性を担保できません。完全密閉してしまうと軸受摩耗及び抵抗の増加に繋がり、その結果、シール面の焼き付きなどトラブルに繋がるためです。

一般的には、メカニカルシールの方が、漏れが少ない、寿命が長い、メンテナンスがしやすいという特徴がありますが、流体の種類、ポンプの仕様、使用条件を考慮して設計することでメンテナンス頻度や設備の寿命が改善されます。また適切なクリアランスが維持されているか、漏れに変化がないか定期的な確認が必要です。

ギヤポンプ のキャビテーション発生と対策

ギヤポンプの吐出圧力不足のトラブルが生じた場合、その原因の一つとしてキャビテーションが考えられます。キャビテーションとは、ポンプのケーシング内で部分的な圧力差が生じ、その圧力低下が液体の飽和蒸気圧まで低下することで発生する現象です。この現象が起こると、流体内で気泡の消滅と発生が繰り返され、生じた気泡が消滅する際に、大きな衝撃圧力が発生します。

この衝撃圧力の影響により、キャビテーションの発生初期は、パチパチやバチバチという音が発生します。さらにキャビテーションが成長すると、ポンプ自体を揺らすような振動が発生する場合があります。このような状態となると、ポンプの性能が出ないだけでなく、設備が破損するなどの故障に繋がるおそれがあります。

キャビテーションを発生させないためには、配管内径を太くする、吸込側配管を短くする、ポンプ吸込み条件を可能な限り押し込み条件にする等の対策があります。これらは、設備設計の段階で考慮しておく必要があります。

ギヤポンプ のエア噛みと対策

エア噛みとは、ポンプの吸込側配管に空気などの気体が混入し、気泡やエア溜まりが生じている状態のことです。
この現象が発生すると、設計上の十分な吐出圧力や流量が得られずに、ポンプの能力低下に繋がるおそれがあります。

エア噛みを発生させないためには、ポンプを送液する流体の液面よりも下に設置すること、配管を曲げる個数を減らすこと (目安3個以内) 、配管を下り勾配にしないこと、2台のポンプで1本の配管から吸い上げしないことなどの対策があります。設備のレイアウト変更する際には注意が必要です。

参考文献
http://gearpump.co.jp/gearpump/index.html
http://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/a1a.html
https://m-and-k.com/service/gearpump/
http://daidopmp.co.jp/products/
https://pump.acquainc.com/archives/362

画像検査装置

画像検査装置とは

画像検査装置とは、カメラやセンサーなどから得た画像を元に対象物の外観や寸法の検査をする装置です。

画像検査装置は、検査員による目視作業に代わるものとして利用されています。目視作業は、部品や製品の品質維持及び保証のために行われます。画像検査装置は、個人差や疲れによる検査精度のばらつきを防ぐ重要なものです。

画像検査装置の使用用途

画像検査装置は、様々な分野の製造ラインで利用されています。主な用途は、以下の通りです。

  • 工場における部品等の傷や汚れ、欠損の有無検査
  • 梱包される製品や部品の個数の過不足検査
  • 製品や部品の寸法やサイズ違いの検査
  • 製品や部品の色の検査

画像検査装置の導入により、ヒューマンエラーを防止して24時間の安定稼働や検査速度アップが図られています。

画像検査装置の原理

画像検査装置は、カメラやセンサーと照明からなる画像入力系と画像処理装置で構成されています。画像検査装置の原理は、カメラで撮影した画像を基に画像処理装置で特徴量などの情報を抽出し、登録している良品情報と照合することによる合否判定です。

画像入力系と画像処理装置の機能は、以下の通りです。

1. 画像入力系

画像入力系は、照明、カメラ、レンズで構成されています。画像入力系は、対象物、対象物の搬送条件、検査の目的 (キズの大きさや汚れの程度など) によって、最適な機器 (エリアカメラかラインセンサカメラか間接照明か直接照明かなど) を選定し、設置と制御を行う必要があります。

2. 画像処理装置

画像入力系から得られた画像に対して、画像変換、画像変形、特徴量抽出などの処理を実施します。画像検査装置では、画像処理装置にあらかじめ良品と判断する基準 (特徴量の数値や範囲、図形パターン) を登録しておき、画像入力系の画像から得た特徴量と比較して合否の判定をします。

画像検査装置の選び方

画像検査装置は、検査しようとする対象物、搬送ラインの仕様、検査の目的に合わせて画像入力系、画像処理装置を選びます。画像検査装置の選定においては、発生する費用に対して、生産性の向上や人員の負荷軽減などの効果を定量化し、費用対効果を得られるようにする必要があります。

画像検査装置を選定する際のポイントは、以下の通りです。

1. 画像入力系

照明
ムラが無く明るさが安定した照明は、画像検査を安定したものにします。検査したい項目を強調できるような光源の種類、フィルターの種類、光の当て方、台数の選定が必要です。

例えば、金属表面の凹凸を撮影する場合は正反射タイプの照明を、ハレーションが起こりやすい場合は拡散反射タイプの照明を使用します。

カメラ
検査したい項目によってカラーカメラ、モノクロカメラ、高速カメラ、ラインセンサカメラ、コンタクトイメージセンサカメラなどから選定します。カラーカメラは、製品や部品の色を検査する場合に採用します。

一般的にカラーカメラは、モノクロカメラよりも高価です。検査する対象の色が単純なものであれば、モノクロカメラとカラーフィルターによって安定した検査ができることもあります。カメラの選択時には、色の検査だからカラーカメラと単純に考えずに、モノクロカメラと照明の工夫による低コスト等の検討も必要です。

高速カメラは、検査対象物が高速に移動して通常のカメラではブレが生じる場合に採用します。一般的に高速カメラを使う際には、照明を明るくする必要があります。

ラインセンサカメラやコンタクトイメージセンサカメラは、シート状の検査対象物や検査対象物が円や円筒形の回転物などの場合に採用します。コンタクトイメージセンサカメラは、固定焦点レンズと照明が一体になったカメラで、検査対象とカメラの距離が安定している場合に有効です。

レンズ
レンズの選定は、焦点距離、被写体深度などを基に行います。画像検査をする場合は、検査対象を必要な精度で捉えられる様に視野を設定する必要があります。

そのために重要となる項目が焦点距離です。焦点距離は、レンズからカメラの撮像素子までの距離です。焦点距離は、検査対象物の大きさ (視野) 、レンズと検査対象物との距離、撮像素子の大きさから決まります。

被写界深度は、焦点を合わせた検査対象物がカメラから遠ざかったり、近づいたりしても焦点が合う範囲のことです。被写界深度が深いほど、検査対象物とカメラの距離が変動してもピントがあった画像を取ることができます。

製造ラインでは、他の機器との干渉しないようにカメラを設置するなどの制約が生じます。画像検査装置で使用するレンズは、検査に必要な撮影条件を満たす焦点距離と被写界深度が取れるレンズを選定する必要があります。また、焦点距離が短いレンズは画像にひずみが生じるので、検査精度に影響しないか確認が必要です。

2. 画像処理装置

画像処理装置は、検査に必要な精度 (キズの大きさやムラの程度、長さの誤差、文字やバーコードの認識率など) と、速度 (生産ラインで許される時間内に検査が完了できるか、現在の検査速度よりも早くできるかなど) を基に選定します。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visual-inspection/method/sensor.jsp
https://www.active-ltd.co.jp/picture_check.php

真空装置

真空装置とは

真空装置

真空装置とは、ある動力を用いて真空を作り出す機器のことです。

真空装置には大きく分けてエジェクター、真空ポンプ真空ブロワの三種類が存在します。それぞれ用途によって使い分けます。真空の用途として、吸着パッドによる吸着・系内を減圧することによる脱気が大きな項目として挙げられます。

真空装置の中でもエジェクターは原動力をエアーとすることで危険物使用区域でも使用できる、非常に有用な機器となります。一方で真空ポンプや真空ブロワは電動のため効率よく真空をつくることができます。

真空装置の使用用途

真空状態の用途として、吸着パッドによる吸着が挙げられます。これはロボットなどで搬送する際にワークを吸着させて持ち上げるのに使用します。

また、系内を減圧することによる脱気にも使用されます。酸化しやすい物質に対して、空気 (酸素) を取り除くことで酸化を防ぎます。また混合液や薬品などから不要な水分を蒸発させることで液体を分離させたり濃縮させたりすることも可能です。

真空装置の中でもエジェクターはエアーを用いているため、小型でシンプルなところから安価に真空発生したい場合に用いられます。真空ポンプは高い真空度を得るのに、真空ブロワは通気性のあるワークの吸着に用いられます。

真空装置の原理

エジェクターはベンチュリ―効果を用いて真空発生させます。エジェクター内は部分的に絞られた構造で駆動流体であるエアーが通ると高速で通り抜けます。高速で通り抜けたところは部分的に真空になります。このような原理のため、駆動源は流体を用い、多様性があります。蒸気・空気・水・など様々な流体を使用できます。

真空ポンプはモーターの回転によりベーンが回り、ケーシング内の気体を密封しながら排出します。連続的に気体の排出を行い、動力としてモーターを使用できるため、高い真空度や排気速度を達成することができます。沸点を下げるための減圧機器としても用いられています。

真空ブロワはモーターを回すことで内蔵された羽を回転させます。羽が回転することで気体を取り込みます。気体を引き込むことで気体を圧縮して真空状態にします。吸い込み量が大きいことが特徴です。ただし、原理上吸着させるワークに通気性がある方が効率よく使用することができます。 

真空装置の構造

真空装置には装置によって異なる機能を持っていますが共通するユニットとしては真空ポンプ(エジェクター、真空ブロア)、真空チャンバ、真空バルブ、真空計で構成されています。

1. 真空ポンプ

真空ポンプとは、真空チャンバな内の空気を外へ放出し残った大気圧以下の低圧すなわち真空を保持するために機械です。またどの程度の真空圧を必要とするか、また排気する気体の成分によって使用する真空ポンプの種類が異なります。真空ポンプの中で最も一般的なのは、ロータリーポンプと呼ばれるもので排気量や圧力の上限、コスト面で優れています。

2. 真空チャンバ

真空チャンバは真空の状態を作り出すための容器です。真空チャンバは真空ポンプによって空気を排出するため容器内の圧力が低下します。低下した場合、真空チャンバ内の気圧より外気圧のほうが大きくなるため、外側から圧力を受けることになります。そのため、発生した圧力に真空チャンバ自身が耐えられなくなると形状を保つことができなくなるので真空チャンバを選定する際は強度に注意しなければなりません。

3. 真空バルブ

真空バルブは、真空チャンバと真空ポンプの間に生じる、異なる圧力を遮断するユニットです。真空バルブにはゲートバブルやL形バルブ、ストレートバブルなどの種類があり、圧力によって使用する真空バルブを分ける必要があります。

4. 真空計

真空計は真空チャンバ内の圧力を計測する機器です。真空計は種類によって計測できる圧力の大きさが異なるため、使用する真空装置の圧力に見合った真空計を使用する必要があります。

参考文献
http://www.hokuto-mfg.com/product/item04.html
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators/ejector.html
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators/vacuum-pump.html
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators/vacuum-blower.html