アルミダイカスト

アルミダイカストとは

アルミダイカスト

アルミダイカストとは、アルミ合金や亜鉛合金などを溶かし、金型へ圧入して成形する特殊な鋳造方法のことです。アルミダイカストは、高い寸法精度と美しい表面を持つ、複雑な形状の製品を大量生産することが可能であるという特徴があります。

このため、アルミダイカストは、金属加工手法の中でも高く評価されています。アルミダイカストと混同されるのがアルミ鋳造です。アルミ鋳造は、アルミ合金やなどの金属を、融点よりも高い温度で液体にして型に流し込み、冷やして固める方法を指すため、アルミダイカストとは異なる鋳造方法です。

また、アルミダイカストでは金属の金型を使用するのに対して、アルミ鋳造の場合は一般的に砂型を利用します。アルミダイカストは、金属の塊から金型を設計・製作を行う必要があるため、製作コストが高いという特徴があります。

アルミダイカストの使用用途

アルミダイカストは主に、自動車部品で使用されています。その中でも近年の需要が高いのは、ステアリング関係の部品です。アルミダイカストであれば、複雑な形状や高精度の製品でも大量かつ短時間で製造できるという特徴があるからです。

アルミダイカストが使われているのは自動車部品だけではありません。その他にも、普段使っているパソコンや携帯電話、デジタルカメラ、冷蔵庫や洗濯機など、日常生活のさまざまな製品に使われています。アルミダイカストは、小型部品の製造も可能であるため、製品の軽量化にも貢献しているのです。

アルミダイカストの原理

アルミダイカストは、金型を使った鋳造方法です。ダイカストとは、金型(Die)による鋳造(Cast)という意味があります。ダイカストマシンの構成は、金型を開閉する型締装置、金型に溶解した金属を射出する射出装置、金型から押し出す押し出し装置です。

アルミダイカストは、まずアルミニウム合金を溶解させます。このとき、アルミニウム以外の金属も溶解させ、目的の成分をもつ合金を作り出すため、入念な成分調整と管理が必要です。アルミニウム合金が溶解したあと、金型を清掃し、型締装置で金型を閉じます。

そして、閉じられた金型に対して、射出装置により溶解アルミニウム合金を充填します。アルミダイカストは、金型に溶解金属が射出され、急速に冷却されるため、表面層の組織が細かくなるのが特徴です。アルミダイカストは、この細かい表面組織によって表面が硬くなり、強度を持った製品を製造することが可能になります。

一方で、アルミダイカストは、急冷されるため、鋳巣ができやすいのがデメリットです。この鋳巣は、表面だけでなく、最後に凝固していく中心部でも発生します。アルミダイカストで鋳巣が発生してしまうと、強度低下など期待した製品性能を達成できなくなります。このため、アルミダイカストでは、ダイカスト時の温度管理や、金型形状の十分な検討が必要です。

アルミダイカストのその他情報

1. アルミダイカストとアルミ鋳造の違い

アルミダイカストは、アルミ合金や亜鉛合金などを溶かし、金型へ圧入することで成形を行います。一般的に材料はおよそ500℃~700℃程度に熱して溶かし、金型に低速で流し込んだ後、高い圧力をかけて冷やすことで成形されます。

一方でアルミ鋳造は、高温の炉で溶かした液体状のアルミニウム合金を、金属やセラミックスの鋳型に流し込んで成形する方法です。アルミ鋳造では、基本的に外部からの力はかけず、液体金属の落下による投入と、その後の流れを利用しています。アルミ鋳造は、アルミダイカストと比較して、重力鋳造と呼ばれることもあります。

アルミダイカストのメリットは、寸法精度が高く、複雑な形状でも製造できることです。この理由は、溶けたアルミニウム合金に圧力をかけて型に投入するため、型の隅々までアルミニウム合金が瞬時に行きわたるからです。一方でアルミ鋳造は、目的の寸法にならないことや、表面に皺が発生する場合があります。高温のアルミニウム合金は流動性が比較的低いため、落下による投入だけでは型の隅々にまで行き渡るのに時間がかかるからです。

このため、アルミ鋳造では、凝固するときにアルミニウムが収縮するため、寸法変化や流動の際に生じた皺などの欠陥が生じることがあります。アルミダイカストは、寸法精度が、高く表面粗さにも優れていることも特徴です。アルミニウム合金が瞬時に行きわたるため、製造時間を短縮することが可能となり、製品を大量生産することができるというメリットもあります。

アルミダイカストでは表面粗さが高品質を保っていることから、仕上げや検査工程を削減できるという点も、アルミ鋳造とは異なる特徴です。しかし、アルミダイカストのデメリットとして、金型の設計と製造にかかるコストが高いという特徴があります。このため、小ロット生産の場合には、砂型を利用するアルミ鋳造の方が費用を抑えられる場合があります。

また、アルミダイカストは、強度が必要な部品には適さないということもデメリットです。アルミダイカストでは製造の都合上、成型時に空気や蒸発した離型剤を巻き込んでしまいます。これによって「巣」と呼ばれる空洞ができるため、製品の強度が低下することに注意が必要です。

2. アルミダイカストの材料

アルミ合金には鋳造用や展伸用材料がありますが、ダイカスト用材料はADCを先頭にしたシリーズで、多数の種類があります。アルミダイカスト材料の主成分系はAl-SiとAl-Mgで、そこにCuやMnなどの元素が添加されています。アルミダイカストで要求される耐食性、鋳造性、耐衝撃性に合わせて各素材が選定されているのが特徴です。

アルミダイカスト材料の金属組織は、Al固溶体が母相です。母相にはラメラ―状のAl-Si共晶組織やMg2Si,やAl2Cuなどの微細析出物による析出強化を利用したものがあり、これによって発現する特性が異なります。

通常、アルミニウム合金は鋳造や加工後の熱処理加工により、結晶粒を整えたり微細析出物を形成したりします。しかしアルミダイカストでは、ダイカスト中に巻き込む空気やガスが熱処理により膨張し欠陥化することを避けるため、熱処理加工をしないことが多いです。

しかし、最近適用が進んでいる真空ダイカストや無孔性ダイカスト法では、これらの欠陥が発生しにくいという特徴があります。したがって、近年のアルミダイカストでは、熱処理加工を追加することにより、アルミダイカスト材料の特性を引き出すことが可能になっています。

参考文献
https://www.taiyoparts.co.jp/blog/960/
https://www.taiyoparts.co.jp/blog/4458/
https://www.hakkokinzoku.co.jp/forging-encyclopedia/hot-forging/superiority01.html
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1304/17/news019.html

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