振動試験機とは
振動試験機 (英:vibration testing machine) とは、部品や製品に振動を与える試験機です。
振動試験機は、振動による破損や故障を確認したり、部品の振動応答特性を調べるたりするために使用されます。どんな製品でも長期間の振動による疲労から、破損の可能性があります。そのため、品質保証の観点から振動試験機を使う試験が多く行われます。
振動試験機の使用は、主に正弦波振動やランダム波振動による耐振性能を確認するのが目的です。また、機械系の振動応答特性である機械インピーダンスの測定を行い、共振周波数の把握や振動対策にも活用されます。
振動試験機の使用用途
振動試験機は、部品や製品の耐振動性の確認及び部材・構造体の振動応答特性の把握などに使用されます。
- 自動車部品や電子部品などの製品が振動環境に耐えて、性能を発揮できるかの確認
- 家電製品・OA機器・食品など出荷される製品が輸送時に受ける振動による製品、およびパッケージへの影響の確認
- 建築資材や建物自体の地震に対する耐力の試験、及び免震構造・制震構造の効果確認
- タービン発電機のタービンブレードの振動特性・軸のねじり振動特性
- 工作機械のフレームの機械インピーダンス測定
- 振動計・地震計の校正など
振動試験機の原理
振動試験機は駆動方式によって、機械式・油圧式・動電式・サーボモーター式などに分類され、それぞれ原理が異なります。
1. 機械式振動試験機
駆動力としてモーターを用いて、回転運動を機械式に往復運動に変える方式です。油圧式や動電式に比べて、比較的低価格です。近年機械式は、制御性が短所で、他の方式に置き換わっています。
2. 油圧式振動試験機
駆動力として油圧ポンプからの油圧を使う方式です。サーボバルブにより油圧回路を高速で切換えて振動させます。低い振動数・ロングストローク・大パワーが必要な場合に適しています。周波数範囲は1~300Hz程度です。建物などの大型構造物を地震波で振動させる場合などに多く使われます。
3. 動電式振動試験機
磁界中の導線に電流を流したときに発生するローレンツ力を利用する方式です。励磁コイルによる磁界中に設置した駆動コイルに交流電流を流すことで、電流に応じて往復運動させます。
加振機の振動をピックアップで検出して、制御器にフィードバックし、振動を設定値に保ちます。この方式の特徴は、加振振動数の範囲が広いことで、特に高い振動数まで対応可能です。振動数範囲は、5~3,000Hz程度が一般的ですが、小型の加振機では、さらに高く、40,000Hzまで可能なタイプもあります。
4. サーボモーター式振動試験機
ACサーボモーターと、ボールスクリューを組合せたサーボモーターリニアアクチュエータを使用して振動させる方式です。油圧式に比べ搭載荷重は低く、動電式に比べると振動数範囲は低くなります。油圧式と動電式の中間的な動作範囲です。振動数範囲は、0.01~300Hz程度です。
振動試験機のその他情報
1. 振動試験の種類
振動試験の種類は、正弦波振動試験・ランダム波振動試験・衝撃試験などに分類されます。
正弦波振動試験
一定周期で繰り返す振動を与える試験です。振動周波数と振幅を固定して試験する方法と、周波数を掃引し、振幅は振動数に応じて設定する試験方法があります。主に耐振性の確認に使われます。更に、振動周波数を変化させて試料の共振の有無・共振周波数・振動応答特性を調べる試験があります。
ランダム波振動試験
規則性のないランダム振動波形で加振する試験です。試験条件は振動数帯域と加速度のスペクトル密度で規定します。この試験は、上下左右前後の3方向について行います。電気製品や電子部品が地上の車両走行や航空宇宙輸送の振動負荷でどのようになるかをよく再現できます。そのため、応力累積による性能劣化や機械故障の検出効果が高く、市場環境により近い試験結果が得られます。
衝撃試験
一般的に、規定のピーク加速度と作用時間のパルス波形衝撃を供試品に加える試験です。衝撃環境に対する耐性・特性評価を行います。
2. 振動試験機の大型化と小型化の傾向
振動試験機の大型化が進んでいます。従来は電気製品や電子部品・自動車用部品などが試験の主体でしたが、包装貨物や鉄道車両搭載部品・航空宇宙産業・耐震建築などのニーズが高くなっています。また、航空宇宙産業で必要な振動周波数は、民生品や車載品より高いため、そのスペックに合わせた試験機も開発されています。
振動試験機の小型化のニーズも増えているのが現状です。例えば、卓上型振動試験機があります。この試験機は、プリント基板上のはんだ付け不良や、コネクターの接触不良・ビスやナットの締め付け不良などの検出に使われます。また、ハンディ型の振動試験機が開発されています。この試験機では電子機器の耐振チェックや、特定箇所の振動応答特性の測定に使用されています。
参考文献
https://www.imv.co.jp/pr/simulation_system/
https://www.espec.co.jp/products/trustee/test/compound.html
https://www.test-navi.com/jp/test/cases/pdf/06_sindou.pdf
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/1745.pdf
https://www.keisokuten.jp/file.php?id=9930