電極帯

電極帯とは

電極帯とは、水槽などに入った液体の量を測るための装置です。

塩ビで覆われたステンレス製の電線と割りシズと呼ばれる電極で構成され、割りシズが水に浸ると電流が流れます。この通電を利用し、どの割りシズが水に触れているかを判断し水量を正確に測定します。

ビルの受水槽ではポンプを制御し、水位が低下すると給水、満水になると停止する仕組みで適切な水量管理が可能です。排水槽では水が一定量に達すると排水ポンプを作動させ、溢れるのを防ぐ仕組みとして利用されます。

電極帯の使用用途

電極帯は、浮遊物が多い環境や液体と距離がある環境で有効です。以下の用途で使用されます。

1. マンションの飲料水用受水槽

マンション住民に飲料水を供給するために、水槽内の水量を管理します。受水槽の水をリアルタイムで監視し、自動的にポンプを制御します。

2. 雨水排水システム

豪雨や台風時、雨水を適切に排水するためのシステムです。水量が一定を超えると排水し、一定値を下回ると自動でポンプが停止します。

3. 工場の液体貯蔵タンク

工場の液体貯蔵タンクでは、化学薬品量の適切な管理が必要です。電極帯の利用により、タンク内の液面を精密に監視できます。

電極帯の原理

電極帯は水に浸る部分で電流を流し、通電状態を利用し水面を測定する仕組みです。

1. 構造

電極帯は、耐久性の高いステンレス製の電線を塩化ビニル (塩ビ) で覆ったものを使用します。この電線には「割りシズ」と呼ばれる金具が取り付けられており、この割りシズが水に触れると電流が流れる仕組みです。

2. 動作原理

割りシズが水に浸ると電線と水が導通し電流が流れます。割りシズが水面より上に出ると通電が途切れるため、この通電の有無を検知し、水面の高さを判別します。

電極帯の種類

電極帯には用途や環境に応じて、いくつかの種類があります。代表的な分類は下記の3つです。

1. 構造の違い

基本型
3本の電線と3つの割りシズで構成され、水位の高低を検知するシンプルなタイプです。主に浮遊物が少ない受水槽や飲料水用のタンクなど、安定した環境での使用に適します。シンプルな構造のため、設置やメンテナンスも比較的容易です。

追加型
水量の変化が多い環境や、深い槽で使用されるタイプです。割りシズを追加して細かく検知できます。割りシズの追加により水量を細かく検知でき、必要に応じて複数のポイントで監視可能です。正確な制御や異常検知が求められる工場や排水処理施設などに適します。

2. 設置環境

耐腐食型
化学薬品や塩分を含む液体がある環境で使用されるタイプです。腐食しやすい液体に対応するため、割りシズや電線の被覆材には耐腐食性に優れた素材を用います。化学工場や海水を扱う施設で使用されます。

耐高温型
高温の液体を扱う環境で使用されるタイプです。高温に耐えられる特殊な被覆材や金具を使用しているため、熱による劣化や変形を防ぎます。主にボイラーや熱処理装置内の管理に利用されます。

3. 機能の違い

標準型
水位の高低をシンプルに検知するシンプルなタイプです。満水もしくは渇水、明確な状態を判断するのに適しており、コストパフォーマンスに優れます。一般的な受水槽や小型タンクで利用されます。

多段階型
満水、渇水以外にも中間の水量を細かく検知するタイプです。割りシズを複数の高さに配置することで、細かな水位変化を把握できます。特に工場の液体貯蔵タンクや浄水場など、精密な管理が求められる現場で活躍します。

電極帯のその他情報

1. 電極帯と電極棒の違い

電極帯と電極棒は、どちらも水槽などの液面を感知する装置ですが、その構造や用途に違いがあります。

  • 電極棒
    棒状の部品で構成され、主に水槽内の水位を感知する仕組みです。液体に直接設置するため、浮遊物が少なく清潔な環境での使用に適します。
  • 電極帯
    電線と金具 (割りシズ) で構成される点が特徴です。長さや形状を調整しやすく、深い槽や浮遊物が多い排水層などの厳しい環境に適します。

受水槽のような浮遊物が少ない環境では電極棒の使用が一般的です。しかし排水層のように浮遊物が多く、電極棒では故障が起きやすい場所では、設置条件に対応しやすい電極帯が採用されます。

2. 電極帯の施工方法

電極帯は正確な水位管理のために、適切な位置への取り付けが重要です。まず設置する槽の深さや用途に応じて電極帯の長さを調整します。電極帯は割りシズと呼ばれる金具があり、これを電線に取り付け液面を測定します。割りシズの取り付け位置は、満水、中水、低水など管理ポイントに合わせた正確な設定が不可欠です。その後、電極帯を槽の内側に固定し、必要な配線を接続して制御機器に接続します。

電動パレットトラック

電動パレットトラックとは

電動パレットトラック

電動パレットトラックとは、その名の通り、パレットを持ち運ぶための運搬用のリフトや走行用のトラックが電動式のものを言います。

電動ハンドリフト(ハンドフォーク)とも呼ばれ、現在の自動車のEV化の流れの中で、物流関係の市場において世界的にも急成長している分野です。

通常のフォークリフトのような資格や経験が不要であり、フォークリフト有資格者の不足や作業者の高齢化に悩む、昨今の物流の現場で広く受け入れられています。

電動パレットトラックの使用用途

電動パレットトラックは、パレットの上げ下げと持ち運びを、狭いエリア内でも正確かつスムーズに行える利点があるために、各物流の現場や倉庫内で広く使用されています。

特に人力のハンドリフトはその手軽さから以前から使用されていましたが、ハンドゆえにパレットの重量制限があり、重量の重いパレットの上げ下げと自走含めた持ち運びの使用用途に対して、電動式のハンドリフトに自走が可能である電動パレットトラックが登場しています。

電動パレットトラックの原理

一般に電動パレットトラックは、フォークリフトのように運転者が乗車して、フォーク上のアームを用いてパレットの出し入れをする訳ではなく、ハンドル部分を作業者が立った状態でけん引したり押したりしながら一緒に走行します。そのために経験の浅い現場の作業者でも、専用のフォークリフト資格が不要であり、比較的簡便に操作ができる電動式のトラックです。

なお、最大積載荷重が1トン以上のフォークリフトでは「フォークリフト運転技能講習」の受講が必要となり、実技や試験もあります。

リフト部はフォークリフト同様に2本の平行したフォーク(爪)をパレット底部に入れます。電動パレットトラックの機種は幅広くありますが、通常1トンから2トン程度までのパレット積載重量に対応しているものが多いです。ただし、電動式や手動式を問わずハンドリフトの場合はフォークの間の間隔が狭く、例えば木製のパレットの事例など、その種類によっては取り扱えないパレットもあります。使用可能なパレットの種類や積載重量が実際の現場の用途に適合するか、事前によく確認することが大切です。

ちなみに駆動用の電動部に関しては専用充電器で100Vの家庭用コンセントで充電可能なものや、リチウムイオンバッテリー搭載型の機種など様々なものがあります。

塗工機

塗工機とは

塗工機

塗工機は、塗料を対象物に塗布するための機器で、別名「コーター」とも呼ばれています。

この機械は、塗布と固化という2つのプロセスを組み合わせた機能を持っており、塗料が対象物に塗布される際には、対象物と塗料との「濡れ性」が重要な要素となります。

さらに、塗布方法は対象物の形状や使用する塗料の特性、そして目的に応じて異なるため、様々な用途に対応した機器が選ばれます。代表的な機器として、ロールコータースピンコーター、ディップコーター、スリットコーターなどがあります。

塗工機の使用用途

塗工機は、光学機器やエレクトロニクス業界をはじめ、事務用品や日用品の製造にも広く利用されています。特にエレクトロニクス業界では、非常に高い需要があり、フレキシブル基板や電池の電極、導電フィルム、絶縁テープ、さらには各種電子部品の製造において頻繁に使用されます。

例えば、パソコン、液晶テレビ、スマートフォン、タブレットなどのデバイスを製造する際には、薄型、高機能、高密度化が求められます。こうした半導体製造のプロセスでは、フォトリソグラフィ技術を使用してフォトレジストを均一に塗布するために、スピンコーターやスリットコーターといった塗工機が活用されます。これらの技術は、フラットパネルディスプレイの製造にも重要な役割を担っています。

また、二次電池、太陽電池、自動車部品などの多岐にわたる分野でも塗工機は使用されており、特に住宅建材、繊維、医療分野において求められる機能性フィルムやシート状製品の製造には、ロールコーターや薄膜塗布用の専用機が数多く活用されています。

塗工機の原理

塗工機は、塗料やコーティング材を素材の表面に均等に塗布するための装置で、その動作原理は使用する塗布方法や機構に依存しています。代表的な塗布方式には、ロールコーター方式とスプレー方式があります。

  • ロールコーター方式
    回転するロールに塗料を付け、その塗料を素材の表面に転写する仕組みです。この方法は、塗膜の厚みを均一に保つことが重要な場合に適しており、高精度な塗布が可能です。
  • スプレー方式
    ノズルから塗料を微細な霧状にして噴射し、表面に塗布する技術で、複雑な形状を持つ素材や広い範囲の塗布に特に効果を発揮します。

さらに、近年では、より精密な塗布を実現する「インクジェット方式」や「ディッピング方式」などの技術も採用されており、塗工機は、用途や産業の要望に応じて最適な塗布方法を選ぶことで、効率的かつ高品質な加工が可能になります。

塗工機の種類

塗工機の主な役割は、被塗材に塗料やコーティング材を適切に接着させ、表面処理を通じて機能性を向上させることです。この目的を達成するために、様々な用途に対応した塗工機が開発され、状況に応じて使い分けられています。以下では、代表的な6種類の塗工機について説明します。

1. ロールコーター

ロールコーターは、薄型のフィルムやシート状の基材に塗工材料を塗布する装置です。複数のローラーを組み合わせて、理想的な塗布面を実現します。グラビアコーターやリバースコーターなど、塗布方法に応じて分類されます。

ロールtoロール方式で高速塗布が可能です。塗布液と基材の間に形成される「ビード」の安定性が品質に大きく影響します。高品質な塗布が可能で、薄膜から厚膜まで幅広い対応が可能です。

2. スピンコーター

スピンコーターは、回転するテーブルと塗布機構を組み合わせて、遠心力を利用して薬液を均等に広げる装置です。フォトリソグラフィ工程など、極薄膜を必要とする製造プロセスに適しています。

均一で非常に薄い膜を形成することができますが、連続生産には適しておらず、大量生産には向いていません。

3. ディップコーター

ディップコーターは、対象物を塗液に浸してから引き上げることで塗布を行う方式です。

対象物の形状に関係なく適用でき、塗布液のロスが少なく、均一な薄膜を形成することができます。塗布液の粘度や引き上げ速度によって膜厚を調整することができます。

4. スリットコーター

スリットコーターは、スリット状のノズルから塗液を吐出し、精密に膜を形成する装置です。ダイコーターやスロットダイとも呼ばれます。

高精度で均一な膜厚を実現します。幅広い基材に対応可能で、連続生産に適しており、生産性が高いです。

5. スプレーコーター

スプレーコーターは、塗液を霧状にして基材に均一に噴霧する方式を採用した装置です。ガラスなどの表面処理や薄膜塗布に使用されます。

特定の形状や面積に対応しやすく、複雑な表面にも均等に塗布が可能です。

6. インクジェットコーター

インクジェットコーターは、高精細なパターンを非接触で塗布する技術を使用しています。エレクトロニクス分野の基板製造や微細パターン形成に利用されます。

製版不要で、デザイン変更が柔軟にできるため、非常に高精細かつ精密な塗布が可能です。材料ロスが少なく、効率的です。

塗工機のその他情報

1. コーティングの欠陥

高性能な塗工機を使用しても、塗液の性質や塗布条件によっては、期待通りの塗布面が得られない場合があります。塗布や乾燥の過程では、さまざまな欠陥が発生する可能性があり、それらに対する適切な対策を講じることが重要です。

2. 塗布によって発生する欠陥

塗布工程で生じる代表的な欠陥とその原因、対策については以下の通りです。

空気同伴
塗布中に空気が塗液に巻き込まれ、それが排出されずに残ることが原因で発生します。対策として、塗液の粘度や表面張力を調整して、空気の巻き込みを防ぎます。

リブすじ
塗布方向に逆圧力勾配が生じ、塗布面に筋状の模様が現れる現象です。対策として、塗布速度や圧力分布を適切に管理し、均一な塗布環境を整えます。

すじやホール
塗液中の気泡が原因で、表面に筋や穴のような欠陥が発生します。対策として、塗布前に塗液を脱泡処理し、気泡を完全に除去します。

3. 乾燥によって発生する欠陥

乾燥工程で発生する典型的な欠陥とその原因、対策については以下の通りです。

ゆず肌
乾燥が速すぎることにより、塗膜表面が不均一に収縮し、凹凸が生じる現象です。対策として、乾燥条件を適切に調整し、塗液の表面平滑性を向上させます。

風紋
熱風乾燥中に、風の流れが塗膜表面に影響を与えて模様ができる現象です。対策として、乾燥機内の風速や温度分布を均一に保ち、安定した環境を確保します。

割れ
塗膜の収縮が大きくなることにより内部応力が発生し、ひび割れが生じる現象です。対策として、塗液に柔軟性を持たせる添加剤を加え、乾燥工程を最適化します。

乳鉢

乳鉢とは

乳鉢

乳鉢とは、固体の粉砕や複数の固体の混合に用いられる鉢状の器具です。

通常は乳棒と共に使用されます。世界各地で古くから用いられており、穀物の脱穀や顔料の粉砕などに使用されてきました。

少量の固体を取り扱う場合が多く、大量の粉体を処理する場合には通常粉砕機や粉体混合機が用いられます。乳鉢・乳棒での粉砕を自動化した自動乳鉢や同様の原理を用いた粉砕機である擂潰機なども製品として販売されています。

乳鉢の使用用途

乳鉢の使用用途は固体の粉砕や複数種類の固体の混合ですが、手動で作業するため主に比較的少量の固体を取り扱います。

乳鉢は同様の用途に用いられる機械類と比較すると処理量が少ない反面、少量の固体を粉砕・混合する場合には手軽さや歩留まりの良さなど、多くの利点を持った製品です。

少量かつ高価な固体で広く使用されており、実験・分析用途や薬品の調合のみならず、調味料などの食品の粉砕・混合や鉱物を含む顔料の調合などにも用いられています。

乳鉢の特徴

乳鉢の適切な素材は擦り潰す固体で異なり、特徴を抑えて選ぶ必要があります。

1. 石

汚れを落としやすく、頑丈で力強い粉砕可能です。石素材の重たい乳棒を用いるため、コーヒー豆、ナッツ、医薬品などの硬い固体も容易に粉砕できます。古典的なデザインや天然大理石の美しいタイプなどもあります。

2. ステンレス

扱いやすい素材で、水洗いで汚れが落ちやすく、サビに強いため手入れが容易です。胡麻、香辛料、にんにく、薬などの粉砕に用いられます。にんにくの強い香りが残りにくく、清潔な状態で使用できます。

3. ガラス

離乳食作りなど、キッチン用品に使用されます。石やステンレスより軽量で持ち運びやすく、滑らかい食感のベビーフードやフルーツの擦り潰しに適しています。シンプルで目立たず、食器棚に置いても違和感がありません。

乳鉢の種類

乳鉢に使用される材質は数多くあり、メリットやデメリットを考慮して選ぶ必要があります。

1. メノウ製

比較的軽くて粒度が細かい素材に使用可能です。複数の形状があり、深型は粉砕中の飛散を抑えます。特大の口径を持つタイプは実験前に大量のサンプルが必要な際の粉砕に向いています。

2. タングステンカーバイド鋼製

硬くて脆い少量の試料の粗砕きや摺り潰しに利用可能です。乳鉢や乳棒が試料と接触する箇所には超硬質鋼のタングステンカーバイドをライニングしています。外面はステンレス鋼で覆って錆を防止し、台は安定しています。

3. チタン製

比較的軽量で、金属のコンタミネーションを避ける場合に使用されます。

4. ステンレス製

耐食性に優れ、錆びにくいです。

5. ジルコニア製

部分安定化ジルコニア (英: partially stabilized zirconia) は耐摩耗性に優れており、破壊靭性に強いです。

6. 炭化ホウ素製

モース硬度が9.3で、ダイヤモンドに次ぐ硬度を有します。軽くて高強度かつ低摩耗性が特徴で、ファインセラミックのような硬い素材を粉砕できます。

7. 石英ガラス製

モース硬度が7の硬質ガラスを使用します。耐食性や耐熱性に優れ、硬度が高いため摩耗による試料へのコンタミネーションは非常に微量です。

8. PEEK製

ポリエーテル・エーテルケトンを指し、絶縁性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性などに優れています。

乳鉢の選び方

乳鉢は用途に応じてサイズや形状、材質を選定する必要があります。少量の固体処理を目的とする製品が多く、手動で作業するためあまり大きな製品は用いられません。乳鉢の形状は深めの椀状と浅めの皿状のものに大別され、固体を粉砕する場合には椀状、混合または微細化する場合には皿状のものが一般的に用いられています。

乳鉢は様々な種類の材質が販売されていますが、材質によって処理できる固体が異なるだけでなく、使用方法も異なるため注意が必要です。比較的硬度の低い固体を粉砕する場合には磁製やガラス製の製品が用いられます。通常磁製やガラス製の乳鉢の表面を荒く仕上げることで圧搾粉砕を容易に行えますが、衝撃には弱いため打ち砕くような使用は厳禁です。その一方で比較的硬い固体を粉砕する場合には金属製やメノウ製の製品が多く用いられています。金属製やメノウ製は硬度が高く丈夫で、表面が平滑に加工されているため乳棒を打ち付けて粉砕可能です。

万能研削盤

万能研削盤とは

万能研削盤

万能研削盤とは、一台で回転研削箇所の汎用性と自由度を高く設定できる円筒研削盤に属する工作機械のことです。

万能研削盤ならではの特徴として、外面研削時に砥石 (といし) 台と工作物の主軸台を自由に旋回でき、任意に角度変更ができる構造になっており、作業範囲が広い点が特徴です。

万能研削盤は、外面研削のみならず、内面研削加工やテーパー研削、端面加工にも対応可能であり、そのための専用装置も取り付けできる構造になっています。

万能研削盤の使用用途

通常は工作物の外面や内面を回転する砥石を用いて研削する用途に用いられますが、万能研削盤は円筒研削盤の中でもその汎用性が高い点が特徴です。そのため、通常は円筒状になっていることの多い工作物において、形状がテーパー状になっている工作物などにも用いられることもあります。

なお、円筒研削盤は他のセンターレス (心なし) 研削盤などと比較して、特に工作物の真円度や表面仕上げの加工寸法に対して、高い精度が求められる場合に使われることが多い傾向にあります。

万能研削盤の原理

万能研削盤は円筒研削盤の一種であることから、円筒研削盤が高精度の切削加工が可能な理由を説明します。

円筒研削盤はセンターレス研削盤と異なり、工作物の両端を主軸台や心押し台で固定します。工作物がしっかりと固定 (チャック) された状態で回転研削するため、心がなく工作物の外形の状態や真円度に影響を受けやすいセンターレス研削盤と比較して研削の加工精度を高くすることが可能です。

また、高い精度で加工できるもう1つの理由には砥石台の使用があげられます。砥石とは砥粒 (とりゅう) と呼ばれる硬度の高い粉末を、結合剤等で固めた石のことです。砥粒はまさに削る刃物に相当しますが、回転した砥石からは摩耗した砥粒がはがれて落ちて、次の表面上の新しい砥粒が使えるので、砥石はエンドミル (ドリル) のように再研磨が不要なことも特徴で、加工精度を高く保てます。

なお、砥粒の材料には硬度の高いダイヤモンド粒子やCBN砥粒などが一般に用いられますが、研削したい工作物に適した砥石材料は異なるために、用途に応じ砥石を使い分けることが重要です。

さらに、万能研削盤ならではの特徴的な構造として、研削箇所の自由度をあげるために砥石台が二重に旋回可能な構造のものもあります。内面研削加工の専用装置については、上方へのはね上げ式が一般的ですが、中には砥石台を180度旋回することで対応する砥石台の後方設置式もあります。

万能研削盤の種類

万能研削盤を構成する工具の種類として主軸ユニット、割り出し装置、作業台、万能バイスの4種類が挙げられます。

1. 主軸ユニット (スピンドル)

主軸ユニットとは、研削砥石を正確に回転させる役割を担って部分のことです。特に、高速回転時の振動を最小限に抑えるように設計されており、ベアリングの選択や冷却システムの組み込みが一般的です。

2. 割り出し装置 (インデックス装置)

万能工具研削盤の特徴である多用途性を支えるのが、割り出し装置です。工具を正確な角度に位置決めする役割を持ち、特にエンドミルやタップのような複雑な工具形状の加工に不可欠です。

割り出し装置には高精度なギアシステムが採用されており、細かな角度調整が可能です。さらに、手動式や自動式の選択肢があり、加工の複雑さや生産性に応じて使い分けられます。割り出し装置の精度が高ければ高いほど、再現性のある研削加工が実現できます。

3. 作業台 (テーブル)

作業台は、工具を固定して安定した加工を実現するための基盤となる部分です。万能工具研削盤の作業台は、通常、3軸または2軸の手動操作が可能なスライド機構を備えています。

スライド機構は、精密なリニアガイドやボールねじを使用しており、工具を微細な単位で移動させることが可能です。さらに、耐摩耗性の高い材料で作られているため、長期間の使用にも耐え、常に安定した研削作業を実現します。

4. 万能バイス

万能バイスは、工具を固定するため部品のことです。研削中の工具のズレや振動を防止することで、加工の精度を確保します。万能バイスは、様々な形状やサイズの工具に対応できるよう、角度調整機能や多様なチャックが装備されています。

マグボール

マグボールとは

鋼材や鉄板などに、下穴をあけたり、ネジ穴加工すなわちネジ立て作業をする場合、通常はボール盤を用いてドリルやタップにて加工しますが、その作業スタンドが磁石により取り付け可能になっている器具をマグボールといいます。

卓上の小型のボール盤の土台に相当する箇所がマグネット(磁石)式になっており、作業スタンドを鋼材にフレキシブルに設置する事ができるため、作業性の向上や、加工に際しての場所を含め汎用性を上げることができます。

マグボールの使用用途

マグボールはその特徴から、使用用途としては複雑な形状の鋼材の側壁への穴あけや、持ち運びが困難な金属板へのボール加工およびタップ作業に特に適しています。もちろん通常のボール盤としての作業にも使用可能です。

またその用途に応じて、簡易的な手回し型のハンディタイプの機種から、電動式の高速な反復繰り返し作業が対応可能な機種まで、多様な機器がそろっており、自分の使用用途に適した機種が選べるようになっています。

マグボールの原理

マグボールの最大の特徴である土台の吸着部のマグネット(磁石)には、電磁式のものと永久磁石式のものがあります。吸着部は丸形の形状であることが多く、裏あて材を用いることで、薄い金属板への穴あけもできます。

ボール盤での穴あけや、タップでのネジ立ての作業には、手回し式のタイプと電動式のもの、およびラチェット式など、用途に応じて多様なタイプがありますが、その各々にマグネット吸着部が設置されています。取り付け金具の交換により、穴開け用のドリルからネジ立て作業用のタッパーへの工具変換が行える機種が多いです。そのためにマグボールはマグタップと呼ばれることもあり、二つの役目を兼ねた機種になります。

マグボール自体が使用環境を選ばず、汎用性を上げる目的のため、小型以外に持ち運びが容易で軽量であることを特徴としている機種もあり、そのような機種の場合は、例えばタップ立てを鋼材の平面のみならず、側面に取り付けて容易に作業ができるのが魅力です。

キャスター付き作業台

監修:山金工業株式会社

キャスター付き作業台とは

キャスター付き作業台

キャスター付き作業台とは、天板と脚部によって構成された作業台の脚先又は底面部に移動用のキャスターが取り付けらた作業用のテーブルです。

会社などで使用される会議用のキャスター付きテーブルと異なり、外観のデザインよりも天板に積載する物の質量や、作業によって発生する荷重・衝撃に耐えられる機能を優先した製品です。

積載物を載せたまま移動できるタイプや、移動時は積載物を載せずにレイアウト変更を簡単に行える機能に限定したタイプなど様々にあります。

キャスター付き作業台の使用用途

キャスター付き作業台は、大きく分けて積載物を載せたまま移動できるタイプと、移動時に積載物を載せずにレイアウト変更を簡単に行える機能に限定したタイプがあります。

積載物を載せたまま移動ができるタイプは積載物が重量物であるケースが多く、工程間を積載製品を移動させる為に都度台車等で積み降ろしをしなくても良いように作業台に載せたまま次工程に移動する事ができる為、効率的にも安全面でもメリットは多いです。さらに加工作業や組立て作業を行う際にはペダル操作によってキャスター機能からアジャスターによる固定機能に切替が簡単にできます。

一方、移動時には積載物を載せずにレイアウト変更を簡単に行える機能に限定したタイプは主に軽量の製品を扱うケースが多く見られ検品・検査、包装、組立てなど流通加工業やアッセンブリー工場などで使用されています。

キャスター付き作業台の原理

一般的な作業台の構造は、天板と天板を支える天枠部材と全体を支える脚部 (鳥居脚) から成り立っています。

横揺れを防止するために脚部にはツナギパイプという間口方向に取付ける部材で剛性を保つ構造になっていますが、キャスター付き作業台の場合はさらに脚先や底面にキャスターが予め取りつけられている構造です。

キャスター付き作業台のその他情報

天板表面素材の違いによる用途拡大

1. 低圧メラミン化粧板
パーチクルボードを芯材とし、メラミン含侵シートを熱圧一体成型した化粧板です。表面硬度は7Hです。

2. ポリエステル化粧合板
パーチクルボード芯とペーパーコア芯により非常に軽く移動も苦になりません。表面硬度は3Hです。

3. 塩ビシート
パーチクルボードに塩ビシートを貼った天板です。弾力性がありワークへのキズを防ぎます

4. メラミン化粧板
メラミン化粧板は硬度があり、芯材はパーチクルボードやペーパーコア仕様で耐荷重別に様々です。表面硬度は8Hです

5. スチール
粉体塗装を施した金属製天板です。強度は高いですが鋭利なもので引っかくと表面の塗膜にキズが付くため注意が必要です。

本記事は軽量作業台を製造・販売する山金工業株式会社様に監修を頂きました。

山金工業株式会社の会社概要はこちら

ケガキゲージ

ケガキゲージとは

ケガキゲージとは、ケガキや墨付けと呼ばれる加工位置の決定と材料への書き込みを行うための工具です。外観はT字状に直尺を組み合わせた形状であり、縦棒部分がノギスと同様に副尺構造となっているため、横棒部分を基準線とした場合の平行線を容易に引くことが可能です。またノギスと同様に主尺と副尺が同軸方向にあることから、線間距離を測定することも可能です。

ノギスと類似した構造ですが、ノギスは長さの計測のみに用いられ、対象物を挟み込んで測定を行うのに対し、ケガキゲージは対象物や基準線と平行にケガキを行うことが出来、さらに対象物に引っ掛けたり、添えたりすることでも正確な測定が可能となります。

ケガキゲージの使用用途

ケガキゲージの使用用途としては、第一に基準線と平行にケガキを行うことが挙げられます。ケガキゲージは主尺の先端部分がT字の横棒のように広がっていることから、ここに基準線を合わせるか、対象物に引っかけるように固定することで、正確に平行線をけがくことができます。主軸先端部分に目盛りを打った製品もあるため、2軸方向のケガキも容易であり、平板への穴あけの位置決定などにも有効な工具です。

第二の使用用途としては線間距離の測定が挙げられます。通常は直尺やノギスを用いて行う作業ですが、直尺が対象物に添えて、またノギスが対象物を挟んで測定するのに対し、ケガキゲージは対象物に引っ掛けた形で測定が可能です。このため平板での端からの距離や、対象物が設備や機会に固定された状態での測定などに効果的といえます。

ケガキゲージの特徴

ケガキゲージの特徴は、平行線をケガくことに特化した構造であるということにあります。副尺を固定することで、同じ幅の平行線を容易にケガくことが可能なため、用途によっては高い精度を保ったまま、作業時間を大幅に短縮することが可能です。一方でケガキゲージは構造上、基準線が出ないものを取り扱うには適しておらず、歪みやバリなどがあると正確なケガキや測定が困難であることには留意する必要があります。

平行線をケガくことと同様に、平行線や製品の長さを測定することも可能ですが、構造上の点から主尺外寸での測定となります。同様の用途に用いられるノギスは内寸での測定となることから、混同しないように注意が必要です。また同様の線間距離の測定が行える製品にハイトゲージがあります。ハイトゲージは高精度な測定が可能である一方、大型であるために機器の固定が必要であり、更に縦方向の測定にのみ特化した製品です。これに対してケガキゲージは軽量で持ち運びが可能であり、複数軸方向の測定に使用可能であるという特徴があります。

溶接マグネット

溶接マグネットとは

溶接マグネット

溶接マグネットとは溶接などの作業時に部材を適切な位置で固定するための磁石付きの治具のことであり、別名マグネットホルダーやマグホールドとも呼ばれます。

溶接作業では溶接する二つの材料を溶接したい位置で固定又は保持し、作業を行う必要があります。軽く小さな材料であれば片手で保持した状態でもう一方の手で溶接することも可能ですが、片手での作業は安定性が悪く、正しい位置での溶接が困難なばかりか、やけどや材料同士による作業者の挟まれなどの危険を伴います。また重量物を取り扱う場合には手での保持は困難です。そのような場合に溶接マグネットを用いることによって2つの金属材料一定の角度で保持・固定できることから、両手が空いた状態で溶接作業を行うことができます。

溶接マグネットの使用用途

溶接マグネットの使用用途は、溶接作業や組み立て作業時に複数の金属材料をある一定の位置や角度で保持・固定することです。その名の通り溶接作業において用いられることが多く、特に手では保持が困難な重量物や、細かな作業が必要な場合などで多く用いられます。製品によって保持できる角度は様々であり、製品によっては丸パイプや丸棒を保持可能な製品もあるため、用途に応じた選定が可能です。

また、溶接以外の金属材料の加工や組み立て作業時の仮止めにも用いることが可能であり、簡易的なマグネットホルダとして用いることもできます。

溶接マグネットの選び方

溶接マグネットの選び方として、最も一般的なポイントは保持できる角度です。溶接マグネットは部材を保持する角度を一定に保つことが大きな特徴であることから、保持できる角度の種類が多い製品が一般的には使用しやすいといえます。

一方で複数の角度を有する製品の場合、角度をつける位置によっては大型の部材は使用が困難になるため、注意が必要です。

次のポイントは磁石の種類です。通常の溶接マグネットは鉄やアルミなどで成形した外枠の側面に強力な永久磁石をつけているため、重量物は適切な位置への設置や溶接後の脱着が困難なことや、位置の微調整が困難なこと、鉄粉などの磁性を帯びたごみを吸着してしまうため、不具合の原因となる可能性があります。

このような場合には、電磁石を用いることで時期をオンオフ可能としたスイッチ付きの製品が市販されています。 更に溶接マグネットはマグネットの種類によって保持できる重量が決まっています。大型の材料を固定する場合などに、保持重量以下のマグネットを用いると落下などの危険が高まることから、注意が必要です。

ラウンドスリング

ラウンドスリングとは

荷物の吊り上げや運搬に使用するベルト器具を言います。ラウンドスリングは、ほかのスリング(つり索)に比べて素材とベルトとしての構成が非常に柔らかい点が特徴であり、ワイヤロープや、チェーンスリングよりも運搬の際に荷物を絞りやすいという利点があります。

よってその柔軟性を生かし、重量機器の玉掛けなどにもよく使用されます。
基本的にはシャックルなどと共に使用しますが、ラウンドスリングを機器にまきつけて玉掛け作業を行うこともあります。

ラウンドスリングの使用用途

ラウンドスリングの場合には、荷物をくるむための使用用途が主になります。

ホイストやクレーンなどでの荷物の吊り上げ、吊り卸し時の手法には、一般にチョーク(絞り)吊り、バスケット(籠)吊りやストレート(一本)吊りなどがあります。

ラウンドスリングが柔軟な素材で荷物にフィットするスリングであるために、ワイヤーロープやチェーンなどに比べて運搬時に加重がかかった際に荷物を傷つけにくく、軽量かつコンパクトということで、使用時に持ち運びに便利なベルトであると言えます。

ラウンドスリングの原理

一般にラウンドスリングは、JIS(日本工業規格)に準じて製造されています。

ラウンドスリングは、ベルトスリングとは違い、最大使用荷重を幅で判断できないために、このJISで決められた色で最大使用荷重を判断しますが、一本で上げ下げするストレート吊りの場合は最大使用荷重がそのまま荷物の重量に相当にするのに対して、チョーク(絞り)吊り、バスケット(籠)吊りの場合には、必ずしも荷物の重量とスリングの色の最大使用荷重値が同じにはならない点に注意が必要です。

この辺の色と最大使用荷重の吊り方での関係は、スリングの長さにも依存するため使用する前に製造販売メーカーに、よく確認をしましょう。

さらに実際に現場にて角張った物を吊り上げる場合や、横滑りのおそれのある際は、角度によっては荷重による応力が集中し強度が低下する懸念があります。ラウンドスリングの保護のためにコーナーパットや当て布などで補強する配慮が大切です。

また前述の玉掛け作業を行う場合には免許が必要で、労働安全衛生法に定められた有資格者が行わなければなりせん。

なおラウンドスリングの素材には、一般のポリエステルより強度が高いとされる、強力ポリエステル糸の束をナイロン素材の表面布で包んだ構造がよく用いられています。