万能研削盤とは
万能研削盤とは、一台で回転研削箇所の汎用性と自由度を高く設定できる円筒研削盤に属する工作機械のことです。
万能研削盤ならではの特徴として、外面研削時に砥石 (といし) 台と工作物の主軸台を自由に旋回でき、任意に角度変更ができる構造になっており、作業範囲が広い点が特徴です。
万能研削盤は、外面研削のみならず、内面研削加工やテーパー研削、端面加工にも対応可能であり、そのための専用装置も取り付けできる構造になっています。
万能研削盤の使用用途
通常は工作物の外面や内面を回転する砥石を用いて研削する用途に用いられますが、万能研削盤は円筒研削盤の中でもその汎用性が高い点が特徴です。そのため、通常は円筒状になっていることの多い工作物において、形状がテーパー状になっている工作物などにも用いられることもあります。
なお、円筒研削盤は他のセンターレス (心なし) 研削盤などと比較して、特に工作物の真円度や表面仕上げの加工寸法に対して、高い精度が求められる場合に使われることが多い傾向にあります。
万能研削盤の原理
万能研削盤は円筒研削盤の一種であることから、円筒研削盤が高精度の切削加工が可能な理由を説明します。
円筒研削盤はセンターレス研削盤と異なり、工作物の両端を主軸台や心押し台で固定します。工作物がしっかりと固定 (チャック) された状態で回転研削するため、心がなく工作物の外形の状態や真円度に影響を受けやすいセンターレス研削盤と比較して研削の加工精度を高くすることが可能です。
また、高い精度で加工できるもう1つの理由には砥石台の使用があげられます。砥石とは砥粒 (とりゅう) と呼ばれる硬度の高い粉末を、結合剤等で固めた石のことです。砥粒はまさに削る刃物に相当しますが、回転した砥石からは摩耗した砥粒がはがれて落ちて、次の表面上の新しい砥粒が使えるので、砥石はエンドミル (ドリル) のように再研磨が不要なことも特徴で、加工精度を高く保てます。
なお、砥粒の材料には硬度の高いダイヤモンド粒子やCBN砥粒などが一般に用いられますが、研削したい工作物に適した砥石材料は異なるために、用途に応じ砥石を使い分けることが重要です。
さらに、万能研削盤ならではの特徴的な構造として、研削箇所の自由度をあげるために砥石台が二重に旋回可能な構造のものもあります。内面研削加工の専用装置については、上方へのはね上げ式が一般的ですが、中には砥石台を180度旋回することで対応する砥石台の後方設置式もあります。
万能研削盤の種類
万能研削盤を構成する工具の種類として主軸ユニット、割り出し装置、作業台、万能バイスの4種類が挙げられます。
1. 主軸ユニット (スピンドル)
主軸ユニットとは、研削砥石を正確に回転させる役割を担って部分のことです。特に、高速回転時の振動を最小限に抑えるように設計されており、ベアリングの選択や冷却システムの組み込みが一般的です。
2. 割り出し装置 (インデックス装置)
万能工具研削盤の特徴である多用途性を支えるのが、割り出し装置です。工具を正確な角度に位置決めする役割を持ち、特にエンドミルやタップのような複雑な工具形状の加工に不可欠です。
割り出し装置には高精度なギアシステムが採用されており、細かな角度調整が可能です。さらに、手動式や自動式の選択肢があり、加工の複雑さや生産性に応じて使い分けられます。割り出し装置の精度が高ければ高いほど、再現性のある研削加工が実現できます。
3. 作業台 (テーブル)
作業台は、工具を固定して安定した加工を実現するための基盤となる部分です。万能工具研削盤の作業台は、通常、3軸または2軸の手動操作が可能なスライド機構を備えています。
スライド機構は、精密なリニアガイドやボールねじを使用しており、工具を微細な単位で移動させることが可能です。さらに、耐摩耗性の高い材料で作られているため、長期間の使用にも耐え、常に安定した研削作業を実現します。
4. 万能バイス
万能バイスは、工具を固定するため部品のことです。研削中の工具のズレや振動を防止することで、加工の精度を確保します。万能バイスは、様々な形状やサイズの工具に対応できるよう、角度調整機能や多様なチャックが装備されています。