イプロジオン

イプロジオンとは

イプロジオン (化学式:C13H13C12NO) とは、殺菌剤に分類され、糸状菌や細菌など植物病原菌の有害作用から農作物等を守る用途で使用される農薬の成分です。

ジカルボキシイミド系の殺菌剤であり、農薬の作用機構による分類では、シグナム伝達のグループに該当します。細胞壁合成阻害作用という菌体の伸長を阻害する効果を持ち、菌体を異常に膨潤化させて細菌細胞を破裂させる作用により殺菌作用が得られます。

イプロジオンは持続効果が長い点が特徴です。さらに、各種耐性菌にも効果を発揮し、耐性菌が問題になっているキュウリやイチゴなど多くの農作物の灰色かび病、果樹類などの斑点落葉病、黒斑病、灰星病などにも高い効果を発揮します。

常温常圧では無臭で白色粉末状の個体として存在し、主に水に溶かして使用します。

イプロジオンの使用用途

イプロジオンは野菜・果樹の病気予防・治療を目的として使用されます。効果のある菌は、アルタナリア属菌、ボトリチス属菌、スクレロチニア属菌、モニリア属菌やヘルミントスポリウム属菌、カーブラリア属菌です。使用方法は大きく分類して3種類あります。

1. 農作物に散布する

1つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、水に希釈して散布する方法です。この方法は生育初期から生育後期にかけておこないます。

また、キュウリやナス、イチゴなどの野菜類、ウメやブドウなどの果樹類、シバや茶など登録のある農作物と灰色かび病や灰星病、菌核病、葉枯病など使用できる病気が多いことが大きな特徴です。

2. 種子にまぶす

2つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、種子にまぶして使用する方法です。殺菌剤の種類にもよりますが、種子の重量の0.5%の薬剤を種子に紛衣して使用する登録が多いです。

この方法は、農作物の種子を播種するときに、種子の表面や内部、さらに培土や畑の土に潜む病原菌から種子を守り、安定した発芽のためにおこないます。

イプロジオンの種子消毒により、野菜類のアルタナリア菌による病害の予防やニンジンの黒葉枯病の予防に高い効果があります。

3. くん煙させる

3つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、くん煙させて使用する方法です。この方法は、温室やビニールハウスなどの密閉できる場所でのみ使用できる方法です。

殺菌剤を吊り下げるか、専用の台の上に置き、指定の点火紙に点火して使用します。点火後は煙が蔓延するので、発煙が確認できたら速やかにハウス等の外に出る必要があります。

イプロジオンのくん煙は、キュウリやナス、トマトなどの灰色かび病や菌核病の登録があり、使用できます。また、点火するだけで防除ができるため、作業の省力化につながることが大きな特徴です。

イプロジオンの種類

イプロジオンは使用する成分量で次のような殺菌剤に分けられ、使用されています。

1. ロブラール水和剤

ロブラール水和剤は有効成分にイプロジオンを50.0%含む、粉状の殺菌剤です。野菜類の菌核病やつる枯病、果樹の灰星病や灰色かび病、さらに花き類やシバにも登録があり幅広い農作物に使用できます。

散布方法も水に希釈して散布する方法だけでなく、種子消毒や常温煙霧による使用もできます。

2. ロブラールくん煙剤

ロブラールくん煙剤は有効成分にイプロジオンを20.0%含む、発煙性中空円板状の殺菌剤です。

使用方法はハウスや温室など密閉できる場所で、くん煙にして使用します。トマトやキュウリ、ナスなどの灰色かび病や菌核病に登録があり使用できます。

3. ロブドー水和剤

ロブドー水和剤は有効成分にイプロジオンを16.5%含んでいます。さらにロブドー水和剤はイプロジオン以外に8-ヒドロキシキノリンサン銅も34.0%含む粉状の殺菌剤です。

イプロジオンと有機銅の複合剤でナシ、レタスの主要病害に優れた防除効果を発揮します。また、シバにも登録があり使用できます。

イプロジオンその他情報

使用上の注意点

  • 眼や粘膜に対する刺激が強いため、使用時は手袋、マスク、保護メガネを着用し、眼や鼻、皮膚に直接かからないように注意が必要です。
  • 水生動物に影響がでる可能性があるため、散布液や廃棄液が川や池などに流出しないように注意が必要です。
  • 熱や火花および火炎で発火するおそれがあるため、周囲に火のもとがある環境では使用できません。

酢酸ナトリウム

酢酸ナトリウムとは

酢酸ナトリウム (英: Sodium acetate) とは、酢酸イオンとナトリウムイオンからなる物質です。

酢酸水酸化ナトリウムの中和反応によって得られます。別名、酢酸ソーダとも呼ばれます。分子式はCH3COONaで、分子量は82.03です。酢酸ナトリウムには、無水物と三水和物が存在します。無水物、三水和物ともに常温では白色の結晶で、水に容易に溶けます。

酢酸ナトリウムは難燃性であるため、水と接触しても可燃性ガスを発生する恐れはありません。食品添加物としても使用される安全性の高い物質です。

酢酸ナトリウムの使用用途

酢酸ナトリウムは主に下記の用途で使用されます。

1. 試薬

酢酸ナトリウムは試薬として用いられ、緩衝液 (酸や塩基を少量加えてもpHをほぼ一定に保つ働きがある溶液) がその一例です。酢酸と酢酸ナトリウムを混合して作られる緩衝液は、HPLC (高速液体クロマトグラフ) 分析などに用いられています。

2. 食品添加物

酢酸ナトリウムは食品添加物です。微生物の生育を抑制する作用があることから、食品の保存期間を延ばす目的で使用されます。また、酸味を調整する物質としてソース類やマヨネーズにも使われています。

3. 媒染剤

酢酸ナトリウムは、布への染料の付着を促進する働きがある物質です。一例として、麻布を柿タンニンで染色する際に酢酸ナトリウムを加えると、柿タンニンが麻布に付着しやすくなることが報告されています。

その他、医薬品、写真用薬品、メッキ薬剤、脱水剤、有機合成触媒など幅広い用途で使用されています。

酢酸ナトリウムの性質

酢酸ナトリウムは弱酸 (酢酸)と強塩基 (水酸化ナトリウム) の塩です。水溶液中では酢酸イオン (CH3COO) とナトリウムイオン(Na+) に電離しています。

  CH3COONa → CH3COO + Na+

酢酸イオンは、そのままの状態で存在していることはあまりありません。水溶液中では、水の電離により生じた水素イオン (H+) と結びつき、酢酸分子になりやすい性質があります。

  H2O ⇄ H+ + OH
  CH3COO + H+ CH3COOH

H+が消費されて、水溶液中の水酸化物イオン (OH) H+よりも多くなるため、酢酸ナトリウムの水溶液は弱塩基性を示します (pH79) 。酢酸ナトリウムは水によく溶けます。20℃の水100グラムに対する酢酸ナトリウムの溶解度は46.4です。潮解性を有するため、乾燥した場所での保管が必要です。

酢酸ナトリウムの種類

酢酸ナトリウムには、医薬品試験用・食品添加物・試薬特級・1級・工業用などの種類があります。販売されている容量は25グラム、100グラム、500グラム、20キログラムなどです。酢酸ナトリウム溶液も100ミリリットルや500ミリリットルの容量で販売されています。

酢酸ナトリウムのその他情報

1. 酢酸ナトリウムの合成

酢酸ナトリウムは、以下の方法で合成できます。

  • 酢酸と炭酸ナトリウムの反応
    CH3COOH + Na2CO3 → CH3COONa + NaHCO3
  • 酢酸カルシウムと硫酸ナトリウムの反応
    Ca(CH3COO)2 + Na2SO4 → 2CH3COONa + CaSO

2. カイロへの応用

酢酸ナトリウム三水和物は、繰り返し使用できるカイロ (エコカイロ) に応用できる物質です。

まず、酢酸ナトリウム三水和物をプラスチックの袋に封入します。酢酸ナトリウム三水和物の融点は約58℃です。そのため、融点以上の温度まで加熱すると、融解して液体になります。その後室温に戻しても、酢酸ナトリウム三水和物は液体のままです (過冷却) 。そこで、何らかの物理的な刺激を加えると凝固 (結晶化) が始まります。

凝固の際に放出されるのが凝固熱です。凝固が始まると45℃くらいまで温度が上昇し、数十分程度維持されます。この発熱をカイロとして利用できます。酢酸ナトリウム三水和物の融解と凝固は繰り返すことができるため、何度も使える点がこのカイロの利点です。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907055696992389
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/63/5/63_219/_pdf

酢酸カリウム

酢酸カリウムとは

酢酸カリウム (英: Potassium acetate) とは、酢酸のカリウム塩です。

分子式はCH3COOK、分子量は98.14です。酢酸と水酸化カリウム、または酢酸と炭酸カリウムの中和反応によって得られます。常温では、無色または白色の結晶粉末です。

酢酸カリウムは潮解性を有するため、保管の際は注意が必要です。その他、強い酸化剤と激しく反応したり、強酸との接触で分解したりする危険性もあります。毒物及び毒物取締法、労働安全衛生法、消防法などには該当しません。CAS番号は127-08-2です。

酢酸カリウムの使用用途

酢酸カリウムは医薬品や凍結防止剤、研究用試薬として使用されている物質です。

1. 医薬品

下痢や嘔吐、手術の後などに、体内でカリウムが不足することがあります。酢酸カリウムは、こうした不足分のカリウムを補う医薬品として使用される物質です。カリウムイオンには、心臓や筋肉の働きを調節するなどの働きがあります。

2. 凍結防止剤

酢酸カリウムは、路面凍結防止剤としても使用される物質です。塩化ナトリウムなどの路面凍結防止剤にみられる金属腐食性がなく、微生物に自然分解されるという長所があります。そのため、環境に優しい路面凍結防止剤として使用されています。

3. 研究用試薬

pHを5付近に調整した酢酸カリウムと酢酸の混合液は、プラスミドDNAを抽出する分子生物学の実験で用いられる溶液です。pH12付近の塩基性の試料にこの溶液を加えると、pHが中性付近となり、試料に含まれる不要なタンパク質や界面活性剤 (SDS) 、染色体DNAが凝集します。こうして目的のプラスミドDNAを不要物から分離することができます。

その他、酢酸カリウムは分析試薬や脱水剤、消火剤の原料、有機合成の原料など、幅広い用途で使用されている物質です。

酢酸カリウムの性質

酢酸カリウムはかすかな酢酸臭があります。比重は1.6g/cm2です。融点は292℃です。酢酸カリウムは弱酸 (酢酸)と強塩基 (水酸化カリウム)の塩です。水溶液中では次のように電離しています。

  CH3COOK → CH3COO + K+

酢酸イオンは、そのままの状態で存在していることはあまりありません。つまり、水溶液中で酢酸イオンは、水が電離して生じた水素イオン (H+) と結びつき、酢酸分子になりやすい性質があります。

  H2O ⇄ H+ + OH
  CH3COO + H+ CH3COOH

H+が消費されて、水溶液中の水酸化物イオン (OH) H+よりも多くなるため、酢酸カリウムの水溶液は弱塩基性 (pH7.5〜9.0) を示します。

酢酸カリウムは水によく溶けます。20℃の水100グラムに対する酢酸カリウムの溶解度は256です。また、エタノール (C2H5OH) にも可溶です。

酢酸カリウムの種類

酢酸カリウムには、試薬特級や1級などの種類があります。販売されている容量は25g、500g、20kgなどです。酢酸カリウム溶液は、工業用として25kgや250kgの容量で販売されています。

酢酸カリウムのその他情報

1. 酢酸カリウムの合成法

酢酸と水酸化カリウムの反応

  CH3COOH + KOH → CH3COOK + H2O

酢酸と炭酸カリウムの反応

  2CH3COOH + K2CO3 → 2CH3COOK + CO2 + H2O

2. 強い酸化剤との反応

酢酸カリウムと過マンガン酸カリウムの反応

  14CH3COOK + 16KMnO4 → 16Mn + 15K2CO3 + 13CO2 + 21H2O

3. 強酸との反応

酢酸カリウムと塩化水素の反応

  CH3COOK + HCl → KCl + CH3COOH

酢酸カリウムとヨウ化水素の反応

  CH3COOK + HI → KI + CH3COOH

4. 分解反応

酢酸の生成

  2CH3COOK → 2KOH + CH3COOH + 2C

酢酸アンモニウム

酢酸アンモニウムとは

酢酸アンモニウムの基本情報

図1. 酢酸アンモニウムの基本情報

酢酸アンモニウム (Ammonium acetate) とは、示性式CH3COONH4で表される有機アンモニウム塩の1種です。

別名、エタン酸アンモニウムとも呼ばれます。CAS登録番号は631-61-8です。分子量 77.08、融点は112℃であり、常温では白または無色の結晶体です。

水に極めて溶けやすく、エタノールに溶けやすい性質があります。水への溶解度は、(148g/100g, 4℃) です。弱いアンモニア臭と酢酸の臭いをもち、潮解性があります。密度は1.17 g/mL、酸解離定数pKaは9.9です。

危険物等には当たらない化学物質であり、毒物及び劇物取締法、消防法、及び、労働安全衛生法などの法規には、特に指定を受けてはいない物質です。

酢酸アンモニウムの使用用途

酢酸アンモニウムは、各種試薬や有機合成緩衝剤、酵母培養用薬品、脱硫触媒、食品 (肉) の保存剤などの用途があります。

分析分野では、試薬や緩衝剤として用いられることが多い物質です。例えば、鉄やの抽出比色定量における緩衝剤や、HPLCなどの分析における添加剤などとして使用されています。

また、合成原料としては、各種薬品や抗生物質をはじめとする、医薬品の原料としても利用されている物質です。さらに、工業的な用途では、コンデンサ用薬品や写真用薬品、金属表面処理剤、メッキ薬剤、ビニル樹脂の製造、染色用pH調整剤などの用途があり、幅広く利用されています。

酢酸アンモニウムの性質

酢酸アンモニウムは、弱酸と弱塩基の塩であるという特質から、強い緩衝性をもちます。しばしば緩衝液を作るために、利用される物質です。生分解性の除氷剤に使われることもあります。

酢酸アンモニウムを空気中に放置すると、吸湿性があるため空気中の水分を取り込みます。保管に際しては、高温と直射日光、湿気を避け、強酸化剤との接触を避けることが必要です。

想定される有害な分解生成物は、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物ですが、通常の保管条件では安定な化合物であると言えます。

酢酸アンモニウムの種類

酢酸アンモニウムは、主に研究開発用試薬製品や、工業用薬品として販売されている物質です。研究開発用試薬製品では、25g , 500g , 20kgなどの容量の種類があります。室温で保存可能な試薬製品として取り扱われ、試薬製品の中では比較的大容量で販売されている物質です。

用途も有機合成原料を始め、HPLCやMSなどの分析用緩衝液の調製、生化学分野における核酸のエタノール沈殿など幅広いです。試薬製品の中には、純物質だけでなく、10M bufferなどとして最初からバッファーとして調製されているものもあります。

工業用では、1kgや20kgなどの容量規格での販売があります。通常、紙袋などの荷姿で販売されており、様々な産業分野に広く供給されている物質です。

酢酸アンモニウムのその他情報

1. 酢酸アンモニウムの合成

酢酸アンモニウムの合成

図2. 酢酸アンモニウムの合成

酢酸アンモニウムは、氷酢酸をアンモニアまたは炭酸アンモニウムと中和反応させることによって合成されています。

2. 酢酸アンモニウムの化学反応

酢酸アンモニウムの化学反応

図3. 酢酸アンモニウムの化学反応

酢酸アンモニウムは、クネーフェナーゲル縮合 (Knoevenagel condensation) の触媒として用いられることが知られています。この反応は、活性メチレン化合物 (E−CH2−E’) を、アルデヒドまたはケトンと縮合させてアルケンを得る手法です。

酢酸アンモニウムは、この反応において、活性メチレン化合物からカルバニオンを発生させる、反応初期の段階に関わっています。また、酢酸アンモニウムは加熱を進めると、アセトアミドと水に分解します。アセトアミドは、加水分解によって酢酸とアンモニアに変換され、脱水によってアセトニトリルを生じる物質です。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907001446719609

赤りん

赤りんとは

赤りんとは、りんの同素体の一つで、等軸晶系結晶の赤褐色の粉末です。

りんには赤りんの他にも白りん、紫りん、黒りんの同素体が存在します。これらの中で赤りん、紫りん、黒りんは安定性が高く有毒性が低い物質ですが、白りんだけが、空気中で発火する危険性と、高い毒性を有します。ただし、赤りんは白りんから作られるため、白りんが含まれていることがあるため、取扱いには注意が必要です。

なお、白りんは徐々に赤りんに変化する性質があり、白りんに赤りんなどの不純物が含まれると黄色くなることから、白りんは通常、黄りんと呼ばれています。労働安全衛生法や毒物及び劇物取締法などの法令における名称も、黄りんで登録されています。

赤りんの使用用途

赤りんは、花火やマッチ等の原料として使用されていることで有名です。これ以外にも以下のような用途で赤りんは使用されています。

1.難燃剤

赤りんは、発火性の高い危険物ですが、可燃性の樹脂に少量の赤りんを混ぜることで燃えにくくなるという特徴があります。これは赤りんを含んだ樹脂に着火すると、赤りんが空気中の酸素と水と反応してりん酸の縮合物を生成します。この縮合物と、樹脂の炭化によってできた炭素が結合して酸素の遮断膜として作用します。これにより酸素の供給が絶たれて火が消えます。このため、赤りんは、環境にやさしい難燃剤としても使用されています。

2.肥料用原料

植物が生育するために必要な肥料の3要素として、窒素、りん酸、カリの3つが挙げられます。このうちのりん酸の供給源となる窒素として、りん酸アンモニウムが使われており、赤りんはこの原料として使われています。

3.その他

高純度の赤りんは、半導体分野でも利用されており、例えば、半導体ドーパント材料や化合物半導体材料などとして使用されています。また、りん酸やりん化水素、無水りん酸、りん青銅、医薬、農薬などの製造や有機合成にも、赤りんが用いられています。

赤りんの性質

赤りんは、分子式P4で分子量は123.9です。常圧においては400℃で昇華しますが、高圧化では590℃の沸点を持ちます。水やアルカリ水、二硫化炭素、エーテル、アルコールにはほぼ溶けません。

赤りんの比重は2.2ですが、白りんが1.82、紫りんが2.36、黒りんが2.69と同素体ごとに異なっています。

赤りんは、白りんよりも安定で、白りんが空気中で自然発火する危険性があるのに対して、空気中に放置しても自然発火することはありません。しかし、酸化剤と混合したり、摩擦を加えると低い温度でも容易に発火します。特に塩素酸カリウムとの混合物はわずかな衝撃でも爆発します。そのため、赤りんは、消防法で危険物第二類として可燃性固体に分類されています。火気を近づけない、酸化剤と混合しないようにし、引火性物質、発火性物質、爆発性物質とは隔離して冷暗所に保管する必要があります。

赤りんと酸素を加熱し反応させると、十酸化四リンが生成されます。高分子の赤りんは、りんの同素体の一つである白りんを、空気を遮断した高温環境で長時間加熱し、りん分子を重合させることで生成されます。

赤りんのその他情報

赤りんの製造方法

赤りんはりん鉱石から白りんを経由して、以下のようにして製造されます。

1. 白りんの製造
りん鉱石、コークス、ケイ石の3つの原料を混合して粉砕した後乾燥します。この混合物を電気炉中で加熱溶融させると、以下の反応により、りんの蒸気と一酸化炭素が発生します。

  2Ca3(PO4)2 + 6SiO2 + 10C → 6CaSiO3 + 10CO + P4

このりん蒸気を凝縮器に導入して水中にりんを凝集させて回収したものが白りんになります。

2. 赤りんの製造
黄りんを鉄製の転化反応槽に入れて、外気を遮断して常圧に保ちながら、280℃で約1週間加熱すると赤りんに転化します。得られた赤りんを水中で微粉砕し、未反応の黄りんを水酸化ナトリウムで洗浄し、水洗した後、真空乾燥することで赤りんの粉末が得られます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1383.html

硝酸尿素

硝酸尿素とは

硝酸尿素の構造

図1. 硝酸尿素の構造

硝酸尿素 (英: Urea nitrate) とは、化学式CH5N3O4で表される有機化合物です。

硝酸HNO3と尿素 CO(NH2)2 が結合した尿素複塩の1つであり、示性式はHNO3・CO(NH2)2と表されます。別称には、尿素ニトラート、尿素硝酸塩などがあります。

硝酸尿素は、尿素硝酸の反応によって沈殿として生じます。CAS登録番号は、124-47-0です。熱や衝撃で爆発しますが、その感度はかなり低く、通常の状況では比較的安全です。

硝酸尿素の使用用途

硝酸尿素の主な使用用途は、爆薬増感剤、爆薬、脱硫剤、有機試薬です。

1. 爆薬

爆薬は一般に、可燃剤およびそれを酸化する酸化剤を必要としますが、硝酸尿素は、可燃剤と酸化剤がひとつの物質内に存在する爆薬です。中でも硝酸尿素は起爆剤を必要としない、二次爆薬に分類されます。なお、硝酸尿素は濡れた状態では爆発する可能性が低く、水の存在下で穏やかに尿素と硝酸に分解します。

硝酸尿素を広義に含む、硝酸アンモニウムベースの爆薬は、即興爆発装置 (IED) として知られている物質です。尿素および硝酸はともに肥料産業において大量生産されています。これらの入手の容易さと硝酸尿素の合成の容易さから、現代の紛争においてIEDが製造使用されるという事態が起こっています。

2. その他

硝酸尿素は窒素原子を含むため、窒素肥料としての実用化が検討されたこともありますが、酸性度が高すぎるため現在のところは実用化に至っていません。また、種々の物質との反応性があるため、有機試薬としても用いられます。

硝酸尿素の性質

硝酸尿素は、分子量123.068、融点152℃ (分解) であり、常温での外観は白色結晶です。水溶液中では尿素を遊離して酸性を示します。熱水に溶けやすく、硝酸には溶けにくいです。

吸湿性及び潮解性はありませんが、炭酸カルシウムなどの無機塩が混合すると吸湿性が大きくなります。密度は1.59g/mL、水への溶解度は9.30g/100g (0℃) 、エタノールへの溶解度は14.2±0.1mg/mLです。エーテル、クロロホルム、ベンゼンには不溶です。

硝酸尿素の種類

硝酸尿素は主に研究開発用試薬製品として販売されています。爆発性のある物質であるため、通常は約25%水湿潤品として販売されます。実験室で取り扱いやすい容量で提供されており、25gなどの容量の種類が主流です。

硝酸尿素のその他情報

1. 硝酸尿素の化学反応

硝酸尿素を用いたニトロ尿素の合成

図2. 硝酸尿素を用いたニトロ尿素の合成

硝酸尿素は、化学反応性の高い物質です。加熱すると激しく燃焼又は爆発することがあり、衝撃、摩擦又は振動によって爆発的に分解することがあります。また、多くの化学物質と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす物質です。

危険有害な分解生成物は、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などです。これらの性質により、熱、火花、裸火、高温、喫煙などの着火源との接触は避けるべきとされます。また、硝酸尿素は、濃硫酸との反応によりニトロ尿素を生成します。

2. 硝酸尿素の有害性

硝酸尿素の人体への有害性

図3. 硝酸尿素の人体への有害性

硝酸尿素は、物理的危険性や人体への有害性がある物質です。GHS分類では下記のように分類されています。

  • 火薬類: 等級1.1
  • 皮膚腐食性・刺激性: 区分3
  • 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 区分2B
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分3 (気道刺激性)

取り扱いの際は局所排気装置を設置し、保護衣や保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。

3. 硝酸尿素の法規制情報

前述の火薬としての危険性により、硝酸尿素は法令によって規制を受ける物質です。火薬類取締法では第2条火薬類に指定されており、船舶安全法では、危規則第3条危険物告示別表第1火薬類です。

航空法では輸送禁止であり、 港則法では施行規則第12条危険物告示火薬類に指定されています。主に輸送の上で注意が必要な物質です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/cas-124-47-0.html

炭酸水素カリウム

炭酸水素カリウムとは

炭酸水素カリウムとは、炭酸のカリウム塩で、別名重炭酸カリウム、酸性炭酸カリウム、二炭酸カリウムとも呼ばれる物質です。

分子式KHCO3で表され、分子量は100.12g/molです。化学物質固有番号であるCAS番号は298-14-6が割り当てられています。炭酸水素カリウムは、炭酸カリウム溶液に二酸化炭素を作用させることで製造されます。

常温常圧では、白色の単斜晶系結晶として存在しており無臭です。また、水に対する溶解度は20℃で52.8g/100mlと溶けやすく、水溶液の性質は炭酸水素ナトリウム水溶液とよく似ており、弱アルカリ性を示します。それに対し、エタノールやグリセリンなどには溶けないという性質を持っています。

炭酸水素カリウムの使用用途

炭酸水素カリウムの使用用途は幅広く、主に、生化学用試薬、分析用試薬、緩衝剤、有機合成原料、医薬、食品添加物 (膨張剤) などの分野に用いられます。代表的な使用用途を以下の通りです。

1. 純炭酸カリウムの製造

炭酸水素カリウムを200℃に加熱することで、二酸化炭素と水とを失い、炭酸カリウムを生じます。これは純炭酸カリウムの製法として知られています。炭酸カリウムは無機化学薬品として広範な製品に使用されています。

主にガラス原料に投入することで、溶融性を高めるとともに、透明性や光沢性を高める効果があります。液晶パネル用のガラス基板などのガラス類の製造原料として有用です。その他にも、中華麺に添加するかんすいの原料、チタン酸カリウム (主に自動車用のブレーキパッドの原料) 、衣料用洗剤や食器用洗剤、カリウム塩類などの原料や医農薬の中間体原料などにも使用されます。

2. ワインの除酸剤

基本的に炭酸水素カリウムは人体への安全性が高く、分解物であるカリウムイオンおよび炭酸イオンは広く天然に存在しており、環境にやさしい物質です。そのため、葡萄酒の除酸剤として使用されています。葡萄酒中の過剰な酒石酸は酒石を形成することにより、葡萄酒の品質を著しく低下させます。

そこに炭酸水素カリウムを加えることで、炭酸水素イオンにより葡萄酒中の酸を中和するとともに、カリウムイオンが葡萄酒中の酒石酸水素イオンと反応して、難溶性の酒石酸水素カリウムとして沈殿することで酒石酸を除去できます。

3. 農薬 (殺菌剤)

炭酸水素カリウム水溶剤は、農薬として使用されています。主にうどんこ病・さび病・灰色かび病などに対して効果的です。即効性が高く、カリウムイオンが植物病原菌の細胞に入り込むことで細胞内のイオンバランスを崩します。その後、細胞機能に障害を起こすことで病斑を消滅させます。ミツバチや蚕、魚介類に対しては影響が少ない農薬です。

炭酸水素カリウムの性質

炭酸水素カリウムは燃焼により強熱分解されると、有害ガスである一酸化炭素や二酸化炭素ガスを発生する恐れがあります。しかし、炭酸水素カリウム自体は不燃性なので、引火性や爆発性の心配は不要です。

ただし、吸湿性もあるため、保管する際は湿気の少ない場所が推奨されます。

炭酸水素カリウムのその他情報

1. 炭酸水素カリウムの法規情報

  • 消防法: 非該当
  • 毒物及び劇物取締法: 非該当
  • 化学物質排出管理促進法 (PRTR法) : 非該当
  • 航空安全法及び航空法: 非該当
  • 水質汚濁防止法: 生活環境項目 (施行令第三条第一項)
  • 輸出貿易管理令: キャッチオール規制
  • 化学物質審査規制法 (化審法): 一般化学物質
  • 農薬取締法: 登録農薬

2. 炭酸水素カリウムの取扱い及び保管上の注意

  • 酸性物質と反応することで二酸化炭素が発生する恐れがあるため、接触を避ける。
  • 直射日光を避け、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管する。
  • ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス容器などで保存する。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0327JGHEJP.pdf;

炭酸ナトリウム

炭酸ナトリウムとは

炭酸ナトリウムとは、白色で吸湿性のある粉末で、化学式Na2CO3で表されるアルカリ性の金属炭酸塩の一種です。

別名としてソーダ灰、炭酸二ナトリウム、無水炭酸ソーダなどがありますが、さらに省略されて炭酸ソーダ、ソーダとも呼ばれます。

炭酸ナトリウムの使用用途

炭酸ナトリウムは、様々な化学製品の原料として用いられています。例えば炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩の製造原料、グルタミン酸などのアミノ酸、醤油などの食品原料、重曹 (炭酸水素ナトリウム) 等の製造原料などがあります。

また、炭酸ナトリウムには、ガラス関連での用途もあり、板ガラスやガラス製品類の製造、水ガラスの製造などにも用いられます。

その他、繊維関係で、綿糸布や羊毛等の洗浄、染料の製造や、粉末石鹸、脱硫剤、パルプ、医薬品用途でも炭酸ナトリウムが利用されています。

炭酸ナトリウムの性質

炭酸ナトリウムは分子量が105.99、比重が2.533、融点が851℃の白色で吸湿性のある無臭の固体です。空気中では徐々に水を吸収します。また加熱すると400℃でCO2を失い始めます。炭酸ナトリウムが空気中のCO2を吸収すると、炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) が生成されます。

1%水溶液のpHは11.3で、水中では以下のように電離しOHイオンを生じてアルカリ性を示します。

  Na2CO3 + H2O → 2Na+ + HCO3 + OH

炭酸ナトリウムの水溶液からは、32℃以下で10水和物、32〜35℃で7水和物、35℃以上で1水和物が生成されます。10水和物は、洗濯ソーダとも呼ばれ、空気中に放置すると分解し、1水和物が生成されることがあります。

炭酸ナトリウムのその他情報

1. 炭酸ナトリウムの製造方法

産業上、重要な化学製品である炭酸ナトリウムは、様々な方法で製造されています。製造方法として、アンモニアソーダ法、塩安ソーダ法、苛性ソーダの炭酸化法などがあります。中でもアンモニアソーダ法はソルベー法とも呼ばれる、古くから工業的に作られている方法です。原料は塩化ナトリウム (NaCl) 、アンモニア (NH3) の他に海水、石灰石 (CaCO3) が用いられ、天然由来原料を主体とする方法です。製造方法を以下で説明します。

1.塩水の精製
海水に塩化ナトリウムを溶解させ、塩化ナトリウムの飽和溶液を作ります。海水にはカルシウム塩やマグネシウム塩などが含まれるため、これらを除くための精製処理を行います。

2.アンモニアの吸収
精製した塩化ナトリウム水溶液にアンモニアを吹き込みアンモニアと塩化ナトリウムの混合水 (アンモニアかん水) をつくります。

3.炭酸化
石灰石とコークスを石灰炉で加熱することで炭酸ガスを発生させます。この炭酸ガスをアンモニアかん水に吹き込み、炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) を生成し析出させます。

  • 石灰炉での炭酸ガス生成
    CaCO3 → CaO +CO2  
    C + O2 → CO2
  • アンモニアかん水への炭酸ガス吹き込み
    NaCl + NH3 + H2O + CO2 → NaHCO3 + NH4Cl

この反応で副生するNH4Clは、炭酸ガスを生成させる際に副生する酸化カルシウム (CaO) と水を反応させてできる水酸化カルシウムと反応させることで再びアンモニアに戻ります。このアンモニアは蒸留された後、再利用されます。

  • アンモニアのリサイクル
    CaO +H2O → Ca(OH)2
    2NH4Cl + Ca(OH)2 → 2NH3 + CaCl2 +2H2O

4.炭酸水素ナトリウムの固液分離と煆焼
析出した炭酸水素ナトリウムを固液分離により、塩化アンモニウム水を除去します。粗炭酸水素ナトリウムを回転式の加熱炉にいれて加熱焼成 (煆焼) を行います。これにより炭酸水素ナトリウムから水と炭酸ガスが除去されて、炭酸ナトリウムが得られます。

  2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/497-19-8.html

二酸化炭素

二酸化炭素とは

二酸化炭素とは、化学式CO2で表される無色無臭の気体です。

二酸化炭素の気体は炭酸ガス、液体は液化炭酸ガス、固体はドライアイス、水溶液は炭酸水と呼ばれます。地球上に存在する自然な炭素循環の一部として、植物や生物の呼吸などで生成され、植物の光合成によって消費されます。

また、燃焼反応や工業製品の製造工程などにより大量に排出されることもあります。

二酸化炭素の使用用途

二酸化炭素は、炭酸ナトリウムの製造など、化学工業で広く利用される他に、炭酸飲料などの清涼飲料水や医薬品などとしても使用されています。固体はドライアイスと呼ばれ、冷却剤として、魚類、乳製品、冷凍食品などの保存、低温輸送用などに利用されています。

液化炭酸ガスは、冷却用の他に清涼飲料水の原料、消火剤、炭酸塩の工業製品の原料、殺虫剤、酸化防止剤、植物の成長促進用など、他用途に使用されています。

断熱材などに使用されるウレタンフォームなどに含まれている泡の組成は、ウレタンフォームの原料を混合して反応が起きる際に副生する二酸化炭素を利用したものです。二酸化炭素の大量放出が地球温暖化の原因の1つとされているため、二酸化炭素の排出量削減が求められています。

二酸化炭素の性質

二酸化炭素は、空気中に約0.03%存在している、無色無臭の気体です。二酸化炭素には、水に溶けやすい性質があります。二酸化炭素の水溶液は炭酸水となり、炭酸イオンを生じ、弱酸性を示します。二酸化炭素は、固体から気体へ昇華するという特性を持ちます。

二酸化炭素は、不燃性ガスで空気より重たい気体であることから、消火剤としても使用されています。二酸化炭素が、上部に拡散することなく低所に滞留し、燃焼面を覆うことで、窒息効果により消火を行います。二酸化炭素には、中毒性があるため、使用には注意が必要です。

二酸化炭素のその他情報

1. 二酸化炭素の製造方法

原料である粗二酸化炭素ガスとして、工業的には発酵ガス、天然ガス、石油精製の副生ガス、アンモニア合成の際の副生ガスなどが主に用いられます。これらは二酸化炭素濃度が高いですが、水素、メタン、酸素、窒素、無機・有機硫黄の不純物、水蒸気などの不純物が含まれています。

これを物理的洗浄法 (水洗洗浄) 、活性炭、シリカ、アルミナによる吸着、化学的洗浄法 (過マンガン酸カリ溶液洗浄法) 、炭酸ナトリウム溶液洗浄法などを組合わせて精製します。液化炭酸ガスは、上記のようにして得られた二酸化炭素のガスを1.01MPaに圧縮して冷却することで得られます。

また、ドライアイスは8.08MPaに圧縮して得られた液化炭酸ガスを細孔から噴出させることで、断熱膨張により雪片状に凝結させながら、型に詰めて圧縮成形して得られます。

2. 二酸化炭素による温室効果

二酸化炭素は温室効果ガスとして働き、赤外線の特定の波長帯域に強い吸収帯を持ち、地球温暖化の主な原因とされています。二酸化炭素は産業革命以前の濃度は280ppmでしたが、2015年には世界の年平均二酸化炭素濃度が400ppmに到達しました。

排出量が莫大であるため、各国で排出量の削減を目指す取り組みが進められています。これには、エネルギーや農業・畜産業など人為起源の二酸化炭素の排出量を抑制する取り組み、森林の維持・育成、二酸化炭素回収貯留 (CCS) 技術の開発などが含まれます。また、排出権取引を活用した取り組みも行われており、海洋酸性化も懸念されています。

3. 二酸化炭素の回収・分離の取り組み

地球温暖化を抑制するためには、二酸化炭素の新たな排出を減らすだけでなく、排気からの回収や大気からの回収技術 (Direct Air Capture, DAC) 、植林や負の排出も必要です。DACはアメリカ、カナダ、スイスなど15か所で開発施設があり、日本も2050年の実用化を目指しています。

DACには二酸化炭素を、化学吸収・吸着法、物理吸着法、膜分離法、ドライアイス化させる深冷法などがあります。回収した二酸化炭素は地中に貯留するか、原料として利用できます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/124-38-9.html

三重水素

三重水素とは

三重水素は、質量数が3になっている水素の同位体です。陽子1つと中性子2つから構成されています。トリチウム(tritium)とも呼ばれます。

三重水素は、水素に似た性質を持ちますが放射性物質です。半減期が約12年と比較的に短いことと、放射されるエネルギーが小さいことからその毒性は弱いとされています。

宇宙から飛んでくる宇宙線などによって自然界でも生成され、大気中の水蒸気や雨水、海水などに微量ながら含まれます。人工的には、核実験や原子炉内の核反応によって生成されます。

三重水素の使用用途

三重水素は、自然界にも存在しますが、単独で取り出すことが難しく非常に高価な物質です。そのため、費用対効果が見込まれる分野において使用されます。使用される分野の1つが原子力発電です。三重水素は、核融合反応を起こしやすい性質を持つため核融合炉燃料として使用されます。

その他、三重水素は、研究分野で用いられ、生体試験用トレーサーとして使用されます。なお、対象となる物質の行動や分布状態、化学反応の過程を追跡するために目印として外部から加える物質をトレーサーと呼びます。