酢酸カリウムとは
酢酸カリウム (英: Potassium acetate) とは、酢酸のカリウム塩です。
分子式はCH3COOK、分子量は98.14です。酢酸と水酸化カリウム、または酢酸と炭酸カリウムの中和反応によって得られます。常温では、無色または白色の結晶粉末です。
酢酸カリウムは潮解性を有するため、保管の際は注意が必要です。その他、強い酸化剤と激しく反応したり、強酸との接触で分解したりする危険性もあります。毒物及び毒物取締法、労働安全衛生法、消防法などには該当しません。CAS番号は127-08-2です。
酢酸カリウムの使用用途
酢酸カリウムは医薬品や凍結防止剤、研究用試薬として使用されている物質です。
1. 医薬品
下痢や嘔吐、手術の後などに、体内でカリウムが不足することがあります。酢酸カリウムは、こうした不足分のカリウムを補う医薬品として使用される物質です。カリウムイオンには、心臓や筋肉の働きを調節するなどの働きがあります。
2. 凍結防止剤
酢酸カリウムは、路面凍結防止剤としても使用される物質です。塩化ナトリウムなどの路面凍結防止剤にみられる金属腐食性がなく、微生物に自然分解されるという長所があります。そのため、環境に優しい路面凍結防止剤として使用されています。
3. 研究用試薬
pHを5付近に調整した酢酸カリウムと酢酸の混合液は、プラスミドDNAを抽出する分子生物学の実験で用いられる溶液です。pH12付近の塩基性の試料にこの溶液を加えると、pHが中性付近となり、試料に含まれる不要なタンパク質や界面活性剤 (SDS) 、染色体DNAが凝集します。こうして目的のプラスミドDNAを不要物から分離することができます。
その他、酢酸カリウムは分析試薬や脱水剤、消火剤の原料、有機合成の原料など、幅広い用途で使用されている物質です。
酢酸カリウムの性質
酢酸カリウムはかすかな酢酸臭があります。比重は1.6g/cm2です。融点は292℃です。酢酸カリウムは弱酸 (酢酸)と強塩基 (水酸化カリウム)の塩です。水溶液中では次のように電離しています。
CH3COOK → CH3COO– + K+
酢酸イオンは、そのままの状態で存在していることはあまりありません。つまり、水溶液中で酢酸イオンは、水が電離して生じた水素イオン (H+) と結びつき、酢酸分子になりやすい性質があります。
H2O ⇄ H+ + OH–
CH3COO– + H+ ⇄ CH3COOH
H+が消費されて、水溶液中の水酸化物イオン (OH–) がH+よりも多くなるため、酢酸カリウムの水溶液は弱塩基性 (pH7.5〜9.0) を示します。
酢酸カリウムは水によく溶けます。20℃の水100グラムに対する酢酸カリウムの溶解度は256です。また、エタノール (C2H5OH) にも可溶です。
酢酸カリウムの種類
酢酸カリウムには、試薬特級や1級などの種類があります。販売されている容量は25g、500g、20kgなどです。酢酸カリウム溶液は、工業用として25kgや250kgの容量で販売されています。
酢酸カリウムのその他情報
1. 酢酸カリウムの合成法
酢酸と水酸化カリウムの反応
CH3COOH + KOH → CH3COOK + H2O
酢酸と炭酸カリウムの反応
2CH3COOH + K2CO3 → 2CH3COOK + CO2 + H2O
2. 強い酸化剤との反応
酢酸カリウムと過マンガン酸カリウムの反応
14CH3COOK + 16KMnO4 → 16Mn + 15K2CO3 + 13CO2 + 21H2O
3. 強酸との反応
酢酸カリウムと塩化水素の反応
CH3COOK + HCl → KCl + CH3COOH
酢酸カリウムとヨウ化水素の反応
CH3COOK + HI → KI + CH3COOH
4. 分解反応
酢酸の生成
2CH3COOK → 2KOH + CH3COOH + 2C