赤りん

赤りんとは

赤りんとは、りんの同素体の一つで、等軸晶系結晶の赤褐色の粉末です。

りんには赤りんの他にも白りん、紫りん、黒りんの同素体が存在します。これらの中で赤りん、紫りん、黒りんは安定性が高く有毒性が低い物質ですが、白りんだけが、空気中で発火する危険性と、高い毒性を有します。ただし、赤りんは白りんから作られるため、白りんが含まれていることがあるため、取扱いには注意が必要です。

なお、白りんは徐々に赤りんに変化する性質があり、白りんに赤りんなどの不純物が含まれると黄色くなることから、白りんは通常、黄りんと呼ばれています。労働安全衛生法や毒物及び劇物取締法などの法令における名称も、黄りんで登録されています。

赤りんの使用用途

赤りんは、花火やマッチ等の原料として使用されていることで有名です。これ以外にも以下のような用途で赤りんは使用されています。

1.難燃剤

赤りんは、発火性の高い危険物ですが、可燃性の樹脂に少量の赤りんを混ぜることで燃えにくくなるという特徴があります。これは赤りんを含んだ樹脂に着火すると、赤りんが空気中の酸素と水と反応してりん酸の縮合物を生成します。この縮合物と、樹脂の炭化によってできた炭素が結合して酸素の遮断膜として作用します。これにより酸素の供給が絶たれて火が消えます。このため、赤りんは、環境にやさしい難燃剤としても使用されています。

2.肥料用原料

植物が生育するために必要な肥料の3要素として、窒素、りん酸、カリの3つが挙げられます。このうちのりん酸の供給源となる窒素として、りん酸アンモニウムが使われており、赤りんはこの原料として使われています。

3.その他

高純度の赤りんは、半導体分野でも利用されており、例えば、半導体ドーパント材料や化合物半導体材料などとして使用されています。また、りん酸やりん化水素、無水りん酸、りん青銅、医薬、農薬などの製造や有機合成にも、赤りんが用いられています。

赤りんの性質

赤りんは、分子式P4で分子量は123.9です。常圧においては400℃で昇華しますが、高圧化では590℃の沸点を持ちます。水やアルカリ水、二硫化炭素、エーテル、アルコールにはほぼ溶けません。

赤りんの比重は2.2ですが、白りんが1.82、紫りんが2.36、黒りんが2.69と同素体ごとに異なっています。

赤りんは、白りんよりも安定で、白りんが空気中で自然発火する危険性があるのに対して、空気中に放置しても自然発火することはありません。しかし、酸化剤と混合したり、摩擦を加えると低い温度でも容易に発火します。特に塩素酸カリウムとの混合物はわずかな衝撃でも爆発します。そのため、赤りんは、消防法で危険物第二類として可燃性固体に分類されています。火気を近づけない、酸化剤と混合しないようにし、引火性物質、発火性物質、爆発性物質とは隔離して冷暗所に保管する必要があります。

赤りんと酸素を加熱し反応させると、十酸化四リンが生成されます。高分子の赤りんは、りんの同素体の一つである白りんを、空気を遮断した高温環境で長時間加熱し、りん分子を重合させることで生成されます。

赤りんのその他情報

赤りんの製造方法

赤りんはりん鉱石から白りんを経由して、以下のようにして製造されます。

1. 白りんの製造
りん鉱石、コークス、ケイ石の3つの原料を混合して粉砕した後乾燥します。この混合物を電気炉中で加熱溶融させると、以下の反応により、りんの蒸気と一酸化炭素が発生します。

  2Ca3(PO4)2 + 6SiO2 + 10C → 6CaSiO3 + 10CO + P4

このりん蒸気を凝縮器に導入して水中にりんを凝集させて回収したものが白りんになります。

2. 赤りんの製造
黄りんを鉄製の転化反応槽に入れて、外気を遮断して常圧に保ちながら、280℃で約1週間加熱すると赤りんに転化します。得られた赤りんを水中で微粉砕し、未反応の黄りんを水酸化ナトリウムで洗浄し、水洗した後、真空乾燥することで赤りんの粉末が得られます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1383.html

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