炭酸ナトリウムとは
炭酸ナトリウムとは、白色で吸湿性のある粉末で、化学式Na2CO3で表されるアルカリ性の金属炭酸塩の一種です。
別名としてソーダ灰、炭酸二ナトリウム、無水炭酸ソーダなどがありますが、さらに省略されて炭酸ソーダ、ソーダとも呼ばれます。
炭酸ナトリウムの使用用途
炭酸ナトリウムは、様々な化学製品の原料として用いられています。例えば炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩の製造原料、グルタミン酸などのアミノ酸、醤油などの食品原料、重曹 (炭酸水素ナトリウム) 等の製造原料などがあります。
また、炭酸ナトリウムには、ガラス関連での用途もあり、板ガラスやガラス製品類の製造、水ガラスの製造などにも用いられます。
その他、繊維関係で、綿糸布や羊毛等の洗浄、染料の製造や、粉末石鹸、脱硫剤、パルプ、医薬品用途でも炭酸ナトリウムが利用されています。
炭酸ナトリウムの性質
炭酸ナトリウムは分子量が105.99、比重が2.533、融点が851℃の白色で吸湿性のある無臭の固体です。空気中では徐々に水を吸収します。また加熱すると400℃でCO2を失い始めます。炭酸ナトリウムが空気中のCO2を吸収すると、炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) が生成されます。
1%水溶液のpHは11.3で、水中では以下のように電離しOH–イオンを生じてアルカリ性を示します。
Na2CO3 + H2O → 2Na+ + HCO3– + OH–
炭酸ナトリウムの水溶液からは、32℃以下で10水和物、32〜35℃で7水和物、35℃以上で1水和物が生成されます。10水和物は、洗濯ソーダとも呼ばれ、空気中に放置すると分解し、1水和物が生成されることがあります。
炭酸ナトリウムのその他情報
1. 炭酸ナトリウムの製造方法
産業上、重要な化学製品である炭酸ナトリウムは、様々な方法で製造されています。製造方法として、アンモニアソーダ法、塩安ソーダ法、苛性ソーダの炭酸化法などがあります。中でもアンモニアソーダ法はソルベー法とも呼ばれる、古くから工業的に作られている方法です。原料は塩化ナトリウム (NaCl) 、アンモニア (NH3) の他に海水、石灰石 (CaCO3) が用いられ、天然由来原料を主体とする方法です。製造方法を以下で説明します。
1.塩水の精製
海水に塩化ナトリウムを溶解させ、塩化ナトリウムの飽和溶液を作ります。海水にはカルシウム塩やマグネシウム塩などが含まれるため、これらを除くための精製処理を行います。
2.アンモニアの吸収
精製した塩化ナトリウム水溶液にアンモニアを吹き込みアンモニアと塩化ナトリウムの混合水 (アンモニアかん水) をつくります。
3.炭酸化
石灰石とコークスを石灰炉で加熱することで炭酸ガスを発生させます。この炭酸ガスをアンモニアかん水に吹き込み、炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) を生成し析出させます。
- 石灰炉での炭酸ガス生成
CaCO3 → CaO +CO2
C + O2 → CO2 - アンモニアかん水への炭酸ガス吹き込み
NaCl + NH3 + H2O + CO2 → NaHCO3 + NH4Cl
この反応で副生するNH4Clは、炭酸ガスを生成させる際に副生する酸化カルシウム (CaO) と水を反応させてできる水酸化カルシウムと反応させることで再びアンモニアに戻ります。このアンモニアは蒸留された後、再利用されます。
- アンモニアのリサイクル
CaO +H2O → Ca(OH)2
2NH4Cl + Ca(OH)2 → 2NH3 + CaCl2 +2H2O
4.炭酸水素ナトリウムの固液分離と煆焼
析出した炭酸水素ナトリウムを固液分離により、塩化アンモニウム水を除去します。粗炭酸水素ナトリウムを回転式の加熱炉にいれて加熱焼成 (煆焼) を行います。これにより炭酸水素ナトリウムから水と炭酸ガスが除去されて、炭酸ナトリウムが得られます。
2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2