炭酸水素カリウムとは
炭酸水素カリウムとは、炭酸のカリウム塩で、別名重炭酸カリウム、酸性炭酸カリウム、二炭酸カリウムとも呼ばれる物質です。
分子式KHCO3で表され、分子量は100.12g/molです。化学物質固有番号であるCAS番号は298-14-6が割り当てられています。炭酸水素カリウムは、炭酸カリウム溶液に二酸化炭素を作用させることで製造されます。
常温常圧では、白色の単斜晶系結晶として存在しており無臭です。また、水に対する溶解度は20℃で52.8g/100mlと溶けやすく、水溶液の性質は炭酸水素ナトリウム水溶液とよく似ており、弱アルカリ性を示します。それに対し、エタノールやグリセリンなどには溶けないという性質を持っています。
炭酸水素カリウムの使用用途
炭酸水素カリウムの使用用途は幅広く、主に、生化学用試薬、分析用試薬、緩衝剤、有機合成原料、医薬、食品添加物 (膨張剤) などの分野に用いられます。代表的な使用用途を以下の通りです。
1. 純炭酸カリウムの製造
炭酸水素カリウムを200℃に加熱することで、二酸化炭素と水とを失い、炭酸カリウムを生じます。これは純炭酸カリウムの製法として知られています。炭酸カリウムは無機化学薬品として広範な製品に使用されています。
主にガラス原料に投入することで、溶融性を高めるとともに、透明性や光沢性を高める効果があります。液晶パネル用のガラス基板などのガラス類の製造原料として有用です。その他にも、中華麺に添加するかんすいの原料、チタン酸カリウム (主に自動車用のブレーキパッドの原料) 、衣料用洗剤や食器用洗剤、カリウム塩類などの原料や医農薬の中間体原料などにも使用されます。
2. ワインの除酸剤
基本的に炭酸水素カリウムは人体への安全性が高く、分解物であるカリウムイオンおよび炭酸イオンは広く天然に存在しており、環境にやさしい物質です。そのため、葡萄酒の除酸剤として使用されています。葡萄酒中の過剰な酒石酸は酒石を形成することにより、葡萄酒の品質を著しく低下させます。
そこに炭酸水素カリウムを加えることで、炭酸水素イオンにより葡萄酒中の酸を中和するとともに、カリウムイオンが葡萄酒中の酒石酸水素イオンと反応して、難溶性の酒石酸水素カリウムとして沈殿することで酒石酸を除去できます。
3. 農薬 (殺菌剤)
炭酸水素カリウム水溶剤は、農薬として使用されています。主にうどんこ病・さび病・灰色かび病などに対して効果的です。即効性が高く、カリウムイオンが植物病原菌の細胞に入り込むことで細胞内のイオンバランスを崩します。その後、細胞機能に障害を起こすことで病斑を消滅させます。ミツバチや蚕、魚介類に対しては影響が少ない農薬です。
炭酸水素カリウムの性質
炭酸水素カリウムは燃焼により強熱分解されると、有害ガスである一酸化炭素や二酸化炭素ガスを発生する恐れがあります。しかし、炭酸水素カリウム自体は不燃性なので、引火性や爆発性の心配は不要です。
ただし、吸湿性もあるため、保管する際は湿気の少ない場所が推奨されます。
炭酸水素カリウムのその他情報
1. 炭酸水素カリウムの法規情報
- 消防法: 非該当
- 毒物及び劇物取締法: 非該当
- 化学物質排出管理促進法 (PRTR法) : 非該当
- 航空安全法及び航空法: 非該当
- 水質汚濁防止法: 生活環境項目 (施行令第三条第一項)
- 輸出貿易管理令: キャッチオール規制
- 化学物質審査規制法 (化審法): 一般化学物質
- 農薬取締法: 登録農薬
2. 炭酸水素カリウムの取扱い及び保管上の注意
- 酸性物質と反応することで二酸化炭素が発生する恐れがあるため、接触を避ける。
- 直射日光を避け、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管する。
- ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス容器などで保存する。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0327JGHEJP.pdf;