ジシクロヘキシルアミン

ジシクロヘキシルアミンとは

ジシクロヘキシルアミンの基本情報

図1. ジシクロヘキシルアミンの基本情報

ジシクロヘキシルアミン (英: Dicyclohexylamine) とは、脂肪族アミンに属する有機化合物の1つです。

2つのシクロヘキサン環が窒素原子で架橋された構造をしている第二級アミンです。IUPAC命名法による名称ではN-シクロヘキシルシクロヘキサンアミンとなります。化学式C12H23N、分子量181.32、融点-0.1℃、沸点255.8℃であり、常温においては無色ないし黄色の液体です。

生臭い臭いを有します。密度は0.912 g/mL、CAS登録番号は、101-83-7です。 エタノール、アセトンに極めて容易に溶け、水にはほとんど溶けません。

ジシクロヘキシルアミンの使用用途

スルフェンアミド系加硫促進剤の例

図2. スルフェンアミド系加硫促進剤の例

ジシクロヘキシルアミンの主な用途は、防錆剤、ゴム薬品、エマルジョン系加工油等の原料、界面活性剤、染料原料、農薬などです。各種産業において幅広く用いられています。軟質ウレタンフォーム合成の際の触媒にも利用されます。

また、ジシクロヘキシルアミンは各種有機合成化学の中間原料としても有用な化合物です。具体的には、スルフェンアミド系加硫促進剤や、粘液溶解薬、鎮痛剤、気管支拡張薬などの医薬品などに使用されています。加硫促進剤の例として、ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドを挙げることができます。

ジシクロヘキシルアミンの性質

ジシクロヘキシルアミンは、第二級アミンに分類されている有機化合物です。酸解離定数pKaは10.4であり、水溶液は強塩基性を示します。

通常の保管条件では安定と考えられる物質ですが、光により分解する可能性があります。高温、直射日光、熱、 炎、静電気などを避けることが必要です。また、強酸化剤とは反応するため、保管の際は混触を避けるべきです。

ジシクロヘキシルアミンの種類

ジシクロヘキシルアミンは、研究開発用試薬製品、及び工業用化学薬品として販売されています。研究開発用試薬製品としては、5g、100g、500g、2kg、25mL、500mLなどの容量の種類があります。通常室温で取り扱い可能な試薬製品です。有機合成原料などに用いられます。

工業用化学製品としては、16kg缶や180kgドラムなどで提供されている薬品です。ゴム薬、エマルジョン系加工油等の原料や防錆剤などの用途を想定されており、工場などで扱いやすい大容量で提供されます。

ジシクロヘキシルアミンのその他情報

1. ジシクロヘキシルアミンの合成

ジシクロヘキシルアミンの合成例

図3. ジシクロヘキシルアミンの合成例

ジシクロヘキシルアミンの主な製造法の1つは、ルテニウムやパラジウムを触媒としてアニリンを水素化する方法です。この方法では主生成物はシクロヘキシルアミンですが、副生成物として少量のジシクロヘキシルアミンを得ることが可能です。

なお、改良法では、ニオブ酸やタンタル酸を用いた報告があります。また、別法としては、アンモニアもしくはシクロヘキシルアミンを用いたシクロヘキサノンの還元的アミノ化反応が挙げられます。

その他の方法は、ルテニウム触媒存在下でのジフェニルアミンの加圧水素添加や、水素雰囲気下4mmHgの条件における、Pd/C触媒を用いたシクロヘキサノンとシクロヘキシルアミンの反応などです。

2. ジシクロヘキシルアミンの法規制情報と有害性

ジシクロヘキシルアミンは、引火点100℃の引火性の物質です。消防法では「第4類危険物」「第三石油類水溶性液体」に指定されています。港則法では、「危険物・腐食性物質」に分類されています。法令を遵守し、正しく取り扱うことが必要です。

指摘されているジシクロヘキシルアミンの主な有害性は下記の通りです。

  • 飲み込むと有毒
  • 皮膚に接触すると有毒
  • 吸入すると有害
  • 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
  • 重篤な眼の損傷
  • 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
  • 長期又は反復ばく露による神経系の障害のおそれ

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/101-83-7.html

ジクロロエチレン

ジクロロエチレンとは

ジクロロエチレンの異性体 (1)

図1. ジクロロエチレンの異性体 

ジクロロエチレン (英: Dichloroethene, DCE) とは、化学式C2H2Cl2で表され、分子内に1つ二重結合を有する有機塩素化合物です。

塩素の結合位置により、「1,1-ジクロロエチレン」および「1,2-ジクロロエチレン」の2つの構造異性体があり、1,2-ジクロロエチレンには更にE体とZ体の2つの幾何異性体があります。CAS登録番号は、順に、75-35-4 (1,1-ジクロロエチレン) 、156-59-2 (1,2-ジクロロエチレン、Z体) 、156-60-5 (1,2-ジクロロエチレン、E体) 、540-59-0 (1,2-ジクロロエチレン、混合物) です。

ジクロロエチレンの使用用途

1. 1,1-ジクロロエチレンの使用用途

1,1-ジクロロエチレン (1,1-DCE) は、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどのポリマーを合成する際にコモノマーとして加えられる物質です。

主に各種合成原料として用いられ、家庭用ラップ、包装用フィルム、人工芝、漁網、塩化ビニリデンラテックス、難燃性繊維原料などの製造原料として利用されます。また、半導体工学では、純粋な二酸化ケイ素フィルムを製造するのに使われます。

2. 1,2-ジクロロエチレンの使用用途

1,2-ジクロロエチレン (1,2-DCE) は、主に他の塩素系溶剤の合成原料として使用されます。その他の使用用途は、樹脂、香料、染料の低温抽出溶剤、洗浄剤などです。

ジクロロエチレンの性質

1. 1,1-ジクロロエチレン

1,1-ジクロロエチレンの基本情報

図2. 1,1-ジクロロエチレンの基本情報

1,1-ジクロロエチレン (1,1-DCE) は、分子量96.94、融点-122℃、沸点32℃であり、常温においてはクロロホルム臭のする無色液体です。密度は1.221g/mL (20℃) であり、アルコール、炭化水素、エーテルに容易に溶解します。水へは難溶であり、溶解度は、2,420mg/Lです。

2. 1,2-ジクロロエチレン

1,2-ジクロロエチレンの基本情報

図3. 1,2-ジクロロエチレンの基本情報

1,2-ジクロロエチレン (1,2-DCE) は、E体 (トランス型) 及びZ体 (シス型) の幾何異性体があります。どちらも常温において無色の刺激臭のある液体ですが、融点はZ体が-81.5℃、E体が-49.4℃、沸点はZ体が60℃、E体が47.2℃です。密度はZ体が1.28g/mL、E体が1.26g/mLです。

ジクロロエチレンの種類

ジクロロエチレンは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。前述の通り、異性体に1,1-ジクロロエチレンや1,2-ジクロロエチレンがありますが、どちらも販売されています。容量の種類は、5g、25g、100g、500mLなどです。

また、重水素標識された1,1-ジクロロエチレン-d2も販売されています。重溶媒としてNMR分析の際に用いられる物質です。

ジクロロエチレンのその他情報

1. 1,1-ジクロロエチレンの法規制情報

1,1-ジクロロエチレンは、引火点が-28℃と低く、引火性が極めて高い物質です。また、人体にとっても有害性の高い物質であり、吸入により中枢神経系に影響をおよぼします。特に、高濃度では鎮静、酩酊、痙攣、昏睡などの症状が出ます。

このため、1,1-ジクロロエチレンは各種法令による規制のある物質です。消防法においては、「第4類引火性液体」「特殊引火物」に指定されています。また、労働安全衛生法では、「危険物・引火性の物」「有害物ばく露作業報告対象物、名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されています。

2. 1,2-ジクロロエチレンの法規制情報

1,2-ジクロロエチレンは、引火点は6℃であり、引火性のある物質です。また、人体へは麻酔作用があり、高濃度では嘔吐を催すなど、中枢神経への影響が報告されています。

これらの性質により、消防法においては、「第4類引火性液体」「第一石油類 (非水溶性液体) 」に指定されています。労働安全衛生法においては、「名称等を通知すべき有害物」「危険物・引火性の物」「第1種有機溶剤等」です。また、化学物質排出把握管理促進法においても、「第一種指定化学物質」に指定されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0128.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-35-4.html

樹脂ワッシャー

樹脂ワッシャーとは

ワッシャーとは座金とも言われ、ネジやボルトなどを締め付ける際に座面とネジなどの間に挟む部品で、座面の安定や緩み止めなどの効果があります。ワッシャーの材質としては金属や樹脂が使われており、樹脂ワッシャーはPTFEやPEEK、PPSなど様々な樹脂が使われています。

樹脂ワッシャーは金属のワッシャーとは異なり、サビが生じない、絶縁されることで腐食を防ぐなどのメリットがあります。一方で樹脂の種類によって特性が大きく変わるほか、経年劣化が起こりやすい、割れやすい、高温に弱いなどのデメリットもあるため、金属ワッシャと比べて適切な材質のものを選定することが重要です。

樹脂ワッシャーに関する規格

樹脂ワッシャーはワッシャーの一つであり、金属ワッシャと同様にJIS規格が定められており、呼び径としてM1.0やM2.5、M6といった形で内径などが定められています。なお、ワッシャーのJIS規格には旧JIS規格と国際規格のISOに合わせた新JIS規格が混在しているのが現状です。ちなみにJIS規格を更に細かく分類すると大ワッシャーと小ワッシャーに分けられ、外形などの形状が微妙に異なっています。

このように複数の規格が混在しているため、精密な設計を行う際にはワッシャーの形状がどの規格に基づいて設計されているか確認が必要です。一方でワッシャーは多少形状が合わなくても必ずしも大きな問題となるわけではないため、寸法が厳密に合っていなくても実際は使用可能な場合もあります。

樹脂ワッシャーの種類

樹脂ワッシャーの種類としては両面が平らな形状をしている平ワッシャー、平らではなく繋がっていないバネ座金が挙げられます。その他、皿ねじや丸皿ねじ用のロゼットワッシャーやベアリングのような回転運動をする部品に適しているスラストワッシャなども樹脂ワッシャーの一種として販売されています。これらのワッシャーはネジをはめる箇所の形状が異なり、表裏も決まっているため、正しい向きで使用することが重要です。

材質

樹脂ワッシャーには、さまざまな材質が使用されています。主要な材質を取り上げると、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン、ファイバー、POM(ジュラコン)などの樹脂があります。また、それぞれの材質で形状が異なる様々なワッシャーが販売されています。

樹脂は材質によって化学構造が大きく異なるため物性も異なります。例えばフッ素樹脂であるPTFEはほとんどの薬品に侵されることがなく、絶縁性や耐久性にも優れますが比較的高価です。また、PPSは耐熱性に優れており200℃での使用が可能であるほか、耐薬品性や耐油性にも優れています。

樹脂ワッシャーを用いる際はワッシャーの形状などを考慮するのはもちろんのこと、使用環境に応じた適切な材質のワッシャーを選定する必要があります。

樹脂ワッシャーの用途

樹脂ワッシャーの用途としては金属ワッシャと同様にネジやボルト、ナットなどを締め付けた際の弛緩の防止や母材の保護、陥没の防止、部品の脱落防止、食い込み防止などの役割があります。樹脂ワッシャーは一般的に座面と母材の間に入れて用いられ、薄い円形で円の中心にはネジやボルトの軸を通す穴があいています。また、樹脂ワッシャーの種類によっては、メタルワッシャー同士で挟んで使用することで弾性ワッシャーとして用いるものもあります。

樹脂ワッシャーは、主に自動車や建築、家電、産業機械などの分野で使用されているほか、DIYといった家庭用の用途でも用いられています。その他、上記の弾性ワッシャーはシールドトンネルの耐震や地盤沈下の対策など土木業界でも用いられています。また化学プラントにおいては様々な腐食性の高い薬品を用いることも多く、耐薬品性が高い樹脂ワッシャーが用いられることがあります。

金型温調配管洗浄機

金型温調配管洗浄機とは

金型温調配管洗浄機とは金型の温調配管の内部を洗浄するための機器です。成形工程において、金型の温調は安定した品質の製品の作成、成形サイクルの安定化にとって非常に重要な因子です。一方で金型の温調は水などの液体を循環させ続けているため、経時的に配管の中には汚れやサビなどが蓄積して、温調が不安定になることがあります。

このような汚れやサビを除去する機器が金型温調配管洗浄機です。この機器は配管内部のサビなどを洗浄、除去するとともに防錆加工を配管表面に付与できるなどの効果もあります。また、洗浄機によっては水だけを用いるものもあり、低コストで洗浄することも可能です。

なお、配管内部に蓄積される汚れの一つに循環水に由来するスケールと呼ばれるものがあります。スケールは水に含まれる二酸化ケイ素が塩基と反応したものや、カルシウムイオンが二酸化炭素と反応したものなどに由来しており、洗浄の際は薬液で溶解する必要があります。そのため、金型温調配管洗浄機の種類によっては使用する薬液が酸性のものもあり、配管やOリングなどの部品が十分な薬品耐性があるか確認が必要です。

金型温調配管の構造と洗浄機の用途

金型温調配管は金型の温調を制御するための配管で、内部に循環水などが流れています。金型は200℃以上の高温下で用いられる一方で、成形プロセスを安定化させるためには0.1℃での温度制御が必要なこともあります。このような高温かつ精密な温度制御を行うために金型温調配管が用いられています。

一方で、金型温調配管の内部には経時的にサビなどが蓄積するため、本来の精度で温度制御ができなくなる場合があります。こういった配管内部の汚れを除去するためには金型温調配管洗浄機が用いられます。

金型温調配管洗浄機は射出成形機押出成形機など金型を用いた様々な製造機に用いることができ、金型配管を分解すること無く洗浄を行うことが可能です。また、洗浄と配管内部の乾燥、内部表面の防錆加工といった一式の作業を行える洗浄機もあります。

金型温調配管洗浄機は多くの金型や温調配管に対応可能となるように設計されています。ただし、機種によっては金型や配管の材質がアルミ、亜鉛またはこれらの金属の合金であると使用できない場合があります。

金型の配管部の汚れ

金型温調配管洗浄機は、温調配管内に発生したサビや水に含まれる不純物を除去する機器です。温調配管の冷媒としては水が用いられることが多いため、長期の使用によって配管のサビが生じたり、不純物の層であるスケールが水中の金属イオンなどが由来で生じたりします。一般的には水の硬度が高いほどスケールができやすくなると考えられています。

配管内部に発生するスケールの種類としてはシリカスケールとカルシウムスケールが挙げられます。シリカスケールは水中に含まれる二酸化ケイ素が塩基と結合することによって生じるもので、カルシウムスケールはカルシウムイオンが水中の二酸化炭素と反応して生じる炭酸カルシウムが原因です。両者ともに析出すると非常に硬く、固着力も高いため配管内部で経時的に積み重なっていきます。

金型温調配管の洗浄法

従来は金型温調配管を洗浄する際、金型を分解して手作業で1本ずつ配管内部を棒やドリルなどを用いてスケールを削り、掃除を行っていました。このような面倒で長時間必要な作業を削減するために金型温調配管洗浄機が使われています。洗浄機は金型を分解すること無く洗浄可能です。

金型温調配管洗浄機はスケールなどを化学的に分解して溶解させる洗浄液を配管内部に流すことによって配管内部を洗浄します。配管内部に洗浄液を十分流すため、複雑な形状の配管でも洗浄可能です。一方でスケールを溶解させるため、洗浄液には酸性の薬液を使用しているため配管やOリングなどの部品の薬品耐性を事前に確認する必要があります。

封かん機

封かん機とは

封かん機 (封緘機)とは主に工場や倉庫等において段ボール箱のテープ貼り作業を半自動、もしくは自動で行う機械を指し、カートンシーラと呼ばれることもあります。

封かん機を導入することにより、梱包作業におけるテープ貼りの工程を効率化することができ、人手や作業用のスペースを削減することができます。

安価なものではテープ張りの機能のみとなりますが、ライン作業に組み込むことを目的とした高性能のものでは段ボール箱のフラップの折り込み等も同時に行うことが可能です。

封かん機の使用用途

封かん機は生産工場やEC向けの出荷倉庫でのカートンの組み立て、テープ貼りのために幅広く使用されています。

最も一般的なものは段ボールを対象としたものですが、発泡スチロールや缶、封筒など多彩な用途に合わせた機械が開発されており、側面へのテープ貼りや糊付け、書類の折り込みなど独自の機能を持っています。

封かん機の導入は人手の削減に繋がるだけではなく、梱包の見栄えの向上や不十分な梱包による事故防止等にも効果的です。

封かん機の原理

段ボール向けの封かん機の場合、装置は搬送用のベルトコンベア及びフラップの折り込み部位、テープユニットから構成されています。

底面を組み立てたカートンに出荷対象品を詰めてベルトコンベアに載せるとカートンが装置内へと送り込まれ、適切な位置に到達すると上面後方を除いた、もしくは全てのフラップが自動的に折り込まれます。そしてフラップが折り込まれたカートンはテープユニットへと送り込まれ、上面がテープ張りされた後、装置内より搬出されます。

サイズの調整はハンドル等を用いた手動式とランダム式の2種類の方法があり、ランダム式では箱のサイズに合わせ、エアシリンダー等で装置の可動部を調整することにより、様々な大きさを持った箱の組み立て、テープ張りを行うことが可能です。

封かん機の動力としては基本的に電気を使用しますが、ランダム式等自動で機械内部の調整を行うものについてはエアー供給が必要となる製品も存在します。

養生テープ

養生テープとは

養生テープ

養生テープは、マスキングテープのひとつです。マスキングは「覆い隠す」「包み込む」といった意味があります。

マスキングテープは、金属表面処理のマスキング材料として使用されます。用途別に分類すると、塗装用と電気メッキ用の2種類に分けられます。

しかし、養生テープは、主に荷運びのときに建造物の保護材として使用されます。そのほかの用途としては、工事における建材の保護や塗料のはみ出し防止、仮止め、一時固定として利用されています。近年、色合いも豊富ですが、これは剥がし忘れを防止する目的があります。

養生テープの使用用途

養生テープは、コンクリート工事におけるせき板部を対象とした養生材料としても使用されています。養生は、コンクリートに所要の性能を付与するための重要な工種です。

コンクリートの硬化過程で、セメントの水和が継続されるように、温度や湿度をしっかりと管理する必要があります。コンクリートは、若材齢時に緻密な硬化組織が形成されていません。したがって、大気中に水分が一散しやすいです。この問題を解決するために、型枠の存置期間を延ばしたり、直接外気にコンクリートの表面がさらされる場合は、被膜養生剤を用いて表面を保護するなど、さまざまな対策が講じられています。

しかし、工期におよぼす影響や被膜効果に影響することから、型枠に代わるせき板部の養生材料としてコンクリート表面に直接貼り付けて、乾燥を防止する養生用保水テープが開発されました。

この研究と適用効果の検証は「コンクリート工学年次論文集. Vol. 24. No. 1. 2002」に掲載されています。

養生テープの原理

養生テープは、一般にクロスタイプとフィルムタイプが販売されています。養生テープは、表面の基材と裏面の粘着剤で構成されています。また、利便性を向上させるために下塗り層や背面処理層を設けている製品も販売されています。

クロスタイプは、基材が縦糸と横糸を交互に重ねており、強靭なつくりですが、どこからでも手で切ることができます。

フィルムタイプは、基材が縦糸のみで、柔軟なつくりです。しかし、横糸がないため、文字が書きやすく、表面も平滑です。

養生テープに限った話ではないですが、テープが物体に張り付くためには、分子レベルで近づく必要があります。物が接着するのは、分子と分子の間に電気的な力が作用し、お互いを引きつけるためだといわれています。この力を分子間力と呼びます。そして、この力の代わりを担っているのが、粘着剤です。

粘着剤は、固体の表面にある凹凸を液体や液体に近い物質の代わりとして、なじむことで接着します。よって、テープを貼る被着体によくなじむテープ(粘着剤)を選ぶことが重要です。

マスキングテープ

マスキングテープとは

マスキングテープ

マスキングは「覆い隠す」「包み込む」といった意味があります。マスキングテープは、主に金属表面処理のマスキング材料として使用されます。用途別に分類すると、塗装用と電気メッキ用の2種類に分けられます。

塗装用は、塗料の吹き付けやハケ塗りに使用されるため「密着性」「剥離製」「耐溶剤性」「マスキング面の変色・汚染」が必要条件として求められます。

マスキング材料としては、伸長性と柔軟性を有しているクレープ紙粘着テープが、航空機や自動車などの高級塗装仕上げに利用されています。また、クレープ紙粘着テープは、特に湾曲面のマスキングにも適していることから好まれています。

電気メッキ用は、主にメッキ液から基盤の端子を保護する目的として使用されます。そのため「密着性」「剥離製」のほかにも「耐薬品性」「耐熱性」「多様な金属表面への適性」が求められます。

また、電気メッキ用は、アメリカのマスキング材料を参考にすることができます。なぜなら、日本のメッキ技術は、アメリカからの技術導入により発展したこともひとつの要因として挙げられるからです。

アメリカのマスキングテープとしては、Michigan Chrome &Chemical Co.,社製のビニルテープやポリエステルテープ、鉛ハクテープ、アルミニウムハクテープ、固形ワックスが代表的なマスキング材料として考えられています。

マスキングテープの使用用途

現在、マスキングテープは、塗装用や電気メッキ用以外でも使用されています。例えば建築関係のシーリングと床材の保護が挙げられます。また、和紙や紙のマスキングテープが販売されるようになり、きれいに剥がせて、文字が書け、カラフルな色合いが多いことから一般家庭や芸術分野でも注目を集めるようになりました。

特に芸術分野では、カモ井加工紙株式会社が、テープアートの周知を目的とした「mt art project」を開催したことや文具・雑貨としてのマスキングテープ「mt」を発売したことも、テープアートが世界中に広がった理由のひとつです。

マスキングテープの原理

マスキングテープの起源は、粘着テープとされています。

粘着テープは、1874年、ロバート・ウッド・ジョンソン氏が、天然ゴムをもとに松脂や植物性の充填剤などを加えて、常温でも粘着性に優れたばんそうこうの製造と販売を始めました。

その後、ロバート・ウッド・ジョンソン氏は、1886年に兄弟でジョンソン・エンド・ジョンソンを創業し、1890年には薬品を含まないばんそうこうを発売しました。このばんそうこうが、外科用テープとして広く活用されました。

こういった背景があり、電気絶縁テープの始まりであるブラックテープが発明されたり、後のマスキングテープの発明につながります。

そして、1920年、車体塗装のために医療用テープが利用され始めます。アメリカのデトロイトで自動車産業が活況にわいたことで、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の販売する医療用テープが多く売れました。しかし、医療用テープは、マスキング用にはつくられていないため、隙間から塗料が内部に浸透してしまうなど、さまざまな問題が発生してしまいます。

そこで、1925年にミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング・カンパニー社(現: 3M社)のR.G.Drew氏が、マスキングテープを改良したことによって常温や指圧で、各種の物体に吸着し、吸着表面からきれいに除去できるマスキングテープを開発しました。

このとき、R.G.Drew氏は、クレープ紙にニカワを含有させることで、粘着剤を塗ってテープにしても表裏の層割れや毛羽立ちを生じないマスキングテープを開発しています。

封緘機

封緘機とは

封緘(ふうかん)とは、封をとじることを指します。「封緘機・封函機(ふうかんき)」は、別名でインサーターやケースシーラー、ステープラーとも呼ばれています。

封緘機は、手動と自動の製品が販売されています。手動のタイプは、主に物流業界で使用されています。かしめ工具としての機能を有しており、一般に荷造りでバンドを固定するプラスチックや帯鉄用のシール金具をかしめるために使用されます。自動のタイプは、一般企業や郵便局、官公庁、地方公共団体で多く使用されています。封筒やクリアファイル、ダンボールに書類などを自動封入することができます。

封緘機の使用用途

封緘機は、幅や高さ、奥行きが約450mmの製品からライン生産方式のような大型の製品があります。

小型の製品は、印刷機の周辺にも設置することが可能でダイレクトメールや社内資料の折込みに活用できます。小型の製品でも約1000通の封入と封緘をおよそ1時間で完了する性能を有している製品が販売されています。

大型の製品は、より多くの機能を有しており、チラシなどの紙だけではなく、ノベルティーといった異物型にも対応することが可能です。また、封入する包装形態にもとらわれません。

封緘機の原理

手動の封緘機は、片手で扱うタイプと両手で扱うタイプがあります。

片手で扱うタイプは、主にダンボールの封緘で用いられます。このタイプは、ステープラーと呼ばれており、封緘にステープル(コの字形の針)を使用します。シングルダンボールとダブルダンボール用でステープルが異なります。

両手で扱うタイプは、PPバンド(ポリプロピレンバンド)や紙バンド、帯鉄バンドでまとめることができるものに使用します。バンドにシール金具を取り付けてかしめることで封緘します。このタイプの封緘機は、先端にかしめ機構が付属しており、両手でハンドルを開閉させることで使用します。

自動の封緘機は、封筒などを封緘するタイプとダンボールを封緘するタイプがあります。

封筒などを封緘するタイプは、インサーターと呼ばれています。主にオフィスで利用されており、比較的小型の製品が多いです。液晶やフルカラーのタッチパネルが付属しているため、利便性が高いです。封入する文書と封筒を機器の台に載せて、条件をパネルから入力することで動作させることができます。
ダンボールを封筒するタイプは、ケースシーラーと呼ばれています。大型の製品が多く販売されており、オフィスではあまり利用されません。ベルトコンベアの上を荷詰めされたダンボールが移動し、自動で封緘する機器です。家庭でも利用できる単相100V電源の製品も販売されていますが、多くが三相200V電源を必要とする製品です。

インサーターとケースシーラのどちらもライン生産方式に組み込むような大型の設備として利用することができます。

ポリチューブ製袋プリンター

ポリチューブ製袋プリンターとは

ポリチューブ製袋プリンターとはポリチューブと呼ばれる梱包や包装に用いられるシート状のポリエチレンを元に、印字、熱溶着、カットという一連の工程を行うことでポリ袋を製造する機器です。ポリチューブの材質としては低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの両方が使われており、強度や透明度など用途に応じて使い分けられています。

ポリチューブ製袋プリンターは熱転写法やグラビア印刷法などで印字します。小さく細かな字やバーコードなどの記号なども印字することが可能で、大量生産も可能であるためポリチューブ製袋プリンターは様々な業界で使用されています。また大型の袋用の製袋プリンターも販売されており、こちらの装置も原料の投入から印字、熱溶着、カットといった一連の工程を行うことが可能です。

ポリチューブとは

ポリチューブとは梱包や包装に用いられるポリエチレンを原料とした筒状のシートです。使用する際はシートを引っ張り、対象を包んだのちにシートをカットして紐などで縛ったり、テープで両端を止めて梱包完了となります。

ポリチューブの材質としては低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)の両方が使われており、高密度ポリエチレンのほうが強度面で優れています。一方で低密度ポリエチレンは柔らかく透明であり、厚みを大きくすることも可能です。その他、超高分子量ポリエチレンで作られたポリチューブもあり、硬く加工性には劣るものの、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性などに優れています。

ポリチューブの材質

ポリチューブの材質であるポリエチレンは強度、耐薬品性、潤滑性に優れた高分子であり、様々な用途に用いられています。ポリエチレンはLDPE、HDPEの2種類に大別され、両者は繰り返し単位の化学構造が同一でも密度等が異なり、物性も異なります。

LDPEは分岐を持つ高分子が多く含まれており、1つ1つの分子が離れやすくなるため密度が小さくなります。そのため、透明で柔らかいという特徴があり、スポーツ用品の梱包や簡易ダクト、ホースなどに用いられています。

一方でHDPEは分岐が少なめで結晶性が高く、密度が高めです。そのため、透明度が低い一方で衝撃に強く、耐熱温度も高いという特徴があります。ただしHDPEはLDPEよりも硬いため、加工性は若干劣ります。

ポリチューブ製袋プリンターの構造

ポリチューブ製袋プリンターは筒状のポリチューブを取り付けるホルダー、ポリチューブに印字するプリンター部位や熱溶着を行うことでポリチューブを袋状にするシーリング部位、チューブをカットする部位から作られます。ポリチューブ製袋プリンターの印字方法としては主に熱転写による手法が用いられています。

ポリチューブ製袋プリンターは印字、熱溶着、カットという一連の操作を自動で行うことが可能なため、ポリ袋を大量に作成することが可能です。また、細かく印字したり、バーコードなどの記号や図形も印字できるため、商品や部品の情報を細かく埋めることもできます。

その他にポリチューブへ印字する方法としては、グラビア印刷法が挙げられます。グラビア印刷法は圧胴とインクが漬けられた版胴と呼ばれるシリンダの間をフィルムが通過する際に加圧されることで絵柄を印刷します。ポリチューブ製袋プリンターではフィルム状のポリチューブの状態で印刷を行ったのちに熱溶着で袋状にした後にカットすることで印字した袋を製造しています。

ポリチューブ製袋プリンターの用途

ポリチューブ製袋プリンターはポリ袋の製造に用いられているほか、食品や医療、電子、農業分野などの様々な業界で用いられています。ポリチューブ製袋プリンターは10センチメートル程度の小さなポリ袋の製造から、横30センチメートル程度、縦1メートル程度までの長いポリ袋の製造にも使うことが可能です。また大量生産、大型のポリ袋を製造する大型機器では原料の投入からインフレーション形成、印刷、ガゼット、製袋までを自動で行えます。

鋳造加工

鋳造加工とは

鋳造加工

一般には、この加工方法によって製造された製品を、鋳物(いもの)といいます。

鋳造加工は、作製する形と同じ形状の空洞部を持つ型(鋳型)に、溶かした金属を流し込んで冷却する加工方法です。鋳造加工の最大の特徴は、金属を溶かして型に流し込んで製造するため、製品形状の制約が少ないことです。鋳造加工後に、鍛造加工、切削加工や熱処理を組みあわせた部品加工が一般的です。

鋳造加工の起源は、を溶かして型に流し込んだのが始まりです。メソポタミア地方で紀元前4,000年頃といわれています。

鋳造加工の使用用途

よく使用される鋳鉄、鋳鋼、銅合金の用途は下記です。

  1. 鋳鉄:車のエンジン部品、車の部品ケースなど、
  2. 鋳鋼:建設機械の部品、鉄道用連結器など、
  3. 銅合金:ポンプ・配管の部品、釣り鐘、仏像など。

また、ニッケル合金はタービンブレード、バルブボディなど、チタン合金はペースメーカー、人工関節など、マグネシウム合金はノートパソコン躯体、携帯電話躯体など、亜鉛合金はドアノブ、コネクタ部品などに使用されています。

鋳造加工の種類

鋳造加工は、先ず、電気炉などを用いて高温で素材を溶融します。次に、溶融させた素材を鋳型に流し込み固めます。そして、冷却後、最後に鋳物を鋳型から取り出して完成です。
鋳造加工は、色々な鋳型の種類・注湯方法があります。
耐熱性鋳型を使用する金型鋳造、また、砂型鋳造は、砂で製造した鋳型を使用します。
精密鋳造の代表的なインベストメント鋳造法は、模型本体に低融点の材料を用い、その周りに液状の耐火物を何層にも塗布します。その後、加熱することで模型部分が溶けて鋳型になる鋳造方法です。高精度の寸法精度が得られます。
上記の他に、発泡スチロールを使用した消失模型鋳造、耐熱鋼を使用した重力金型鋳造、ダイカストなどの方法もあります。

通常の鋳造加工は型を使用した一品毎のバッチ製造ですが、連続鋳造は、主に鉄鋼業で使われ、溶湯から製品を連続的に製造する方法です。溶けた金属材料を連続的に鋳型に注湯することにより歩留まりと生産性が向上し、コストも低下するなど大量生産に向くという特徴があります。