樹脂ワッシャーとは
ワッシャーとは座金とも言われ、ネジやボルトなどを締め付ける際に座面とネジなどの間に挟む部品で、座面の安定や緩み止めなどの効果があります。ワッシャーの材質としては金属や樹脂が使われており、樹脂ワッシャーはPTFEやPEEK、PPSなど様々な樹脂が使われています。
樹脂ワッシャーは金属のワッシャーとは異なり、サビが生じない、絶縁されることで腐食を防ぐなどのメリットがあります。一方で樹脂の種類によって特性が大きく変わるほか、経年劣化が起こりやすい、割れやすい、高温に弱いなどのデメリットもあるため、金属ワッシャと比べて適切な材質のものを選定することが重要です。
樹脂ワッシャーに関する規格
樹脂ワッシャーはワッシャーの一つであり、金属ワッシャと同様にJIS規格が定められており、呼び径としてM1.0やM2.5、M6といった形で内径などが定められています。なお、ワッシャーのJIS規格には旧JIS規格と国際規格のISOに合わせた新JIS規格が混在しているのが現状です。ちなみにJIS規格を更に細かく分類すると大ワッシャーと小ワッシャーに分けられ、外形などの形状が微妙に異なっています。
このように複数の規格が混在しているため、精密な設計を行う際にはワッシャーの形状がどの規格に基づいて設計されているか確認が必要です。一方でワッシャーは多少形状が合わなくても必ずしも大きな問題となるわけではないため、寸法が厳密に合っていなくても実際は使用可能な場合もあります。
樹脂ワッシャーの種類
樹脂ワッシャーの種類としては両面が平らな形状をしている平ワッシャー、平らではなく繋がっていないバネ座金が挙げられます。その他、皿ねじや丸皿ねじ用のロゼットワッシャーやベアリングのような回転運動をする部品に適しているスラストワッシャなども樹脂ワッシャーの一種として販売されています。これらのワッシャーはネジをはめる箇所の形状が異なり、表裏も決まっているため、正しい向きで使用することが重要です。
材質
樹脂ワッシャーには、さまざまな材質が使用されています。主要な材質を取り上げると、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン、ファイバー、POM(ジュラコン)などの樹脂があります。また、それぞれの材質で形状が異なる様々なワッシャーが販売されています。
樹脂は材質によって化学構造が大きく異なるため物性も異なります。例えばフッ素樹脂であるPTFEはほとんどの薬品に侵されることがなく、絶縁性や耐久性にも優れますが比較的高価です。また、PPSは耐熱性に優れており200℃での使用が可能であるほか、耐薬品性や耐油性にも優れています。
樹脂ワッシャーを用いる際はワッシャーの形状などを考慮するのはもちろんのこと、使用環境に応じた適切な材質のワッシャーを選定する必要があります。
樹脂ワッシャーの用途
樹脂ワッシャーの用途としては金属ワッシャと同様にネジやボルト、ナットなどを締め付けた際の弛緩の防止や母材の保護、陥没の防止、部品の脱落防止、食い込み防止などの役割があります。樹脂ワッシャーは一般的に座面と母材の間に入れて用いられ、薄い円形で円の中心にはネジやボルトの軸を通す穴があいています。また、樹脂ワッシャーの種類によっては、メタルワッシャー同士で挟んで使用することで弾性ワッシャーとして用いるものもあります。
樹脂ワッシャーは、主に自動車や建築、家電、産業機械などの分野で使用されているほか、DIYといった家庭用の用途でも用いられています。その他、上記の弾性ワッシャーはシールドトンネルの耐震や地盤沈下の対策など土木業界でも用いられています。また化学プラントにおいては様々な腐食性の高い薬品を用いることも多く、耐薬品性が高い樹脂ワッシャーが用いられることがあります。