ジクロロエチレン

ジクロロエチレンとは

ジクロロエチレンの異性体 (1)

図1. ジクロロエチレンの異性体 

ジクロロエチレン (英: Dichloroethene, DCE) とは、化学式C2H2Cl2で表され、分子内に1つ二重結合を有する有機塩素化合物です。

塩素の結合位置により、「1,1-ジクロロエチレン」および「1,2-ジクロロエチレン」の2つの構造異性体があり、1,2-ジクロロエチレンには更にE体とZ体の2つの幾何異性体があります。CAS登録番号は、順に、75-35-4 (1,1-ジクロロエチレン) 、156-59-2 (1,2-ジクロロエチレン、Z体) 、156-60-5 (1,2-ジクロロエチレン、E体) 、540-59-0 (1,2-ジクロロエチレン、混合物) です。

ジクロロエチレンの使用用途

1. 1,1-ジクロロエチレンの使用用途

1,1-ジクロロエチレン (1,1-DCE) は、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどのポリマーを合成する際にコモノマーとして加えられる物質です。

主に各種合成原料として用いられ、家庭用ラップ、包装用フィルム、人工芝、漁網、塩化ビニリデンラテックス、難燃性繊維原料などの製造原料として利用されます。また、半導体工学では、純粋な二酸化ケイ素フィルムを製造するのに使われます。

2. 1,2-ジクロロエチレンの使用用途

1,2-ジクロロエチレン (1,2-DCE) は、主に他の塩素系溶剤の合成原料として使用されます。その他の使用用途は、樹脂、香料、染料の低温抽出溶剤、洗浄剤などです。

ジクロロエチレンの性質

1. 1,1-ジクロロエチレン

1,1-ジクロロエチレンの基本情報

図2. 1,1-ジクロロエチレンの基本情報

1,1-ジクロロエチレン (1,1-DCE) は、分子量96.94、融点-122℃、沸点32℃であり、常温においてはクロロホルム臭のする無色液体です。密度は1.221g/mL (20℃) であり、アルコール、炭化水素、エーテルに容易に溶解します。水へは難溶であり、溶解度は、2,420mg/Lです。

2. 1,2-ジクロロエチレン

1,2-ジクロロエチレンの基本情報

図3. 1,2-ジクロロエチレンの基本情報

1,2-ジクロロエチレン (1,2-DCE) は、E体 (トランス型) 及びZ体 (シス型) の幾何異性体があります。どちらも常温において無色の刺激臭のある液体ですが、融点はZ体が-81.5℃、E体が-49.4℃、沸点はZ体が60℃、E体が47.2℃です。密度はZ体が1.28g/mL、E体が1.26g/mLです。

ジクロロエチレンの種類

ジクロロエチレンは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。前述の通り、異性体に1,1-ジクロロエチレンや1,2-ジクロロエチレンがありますが、どちらも販売されています。容量の種類は、5g、25g、100g、500mLなどです。

また、重水素標識された1,1-ジクロロエチレン-d2も販売されています。重溶媒としてNMR分析の際に用いられる物質です。

ジクロロエチレンのその他情報

1. 1,1-ジクロロエチレンの法規制情報

1,1-ジクロロエチレンは、引火点が-28℃と低く、引火性が極めて高い物質です。また、人体にとっても有害性の高い物質であり、吸入により中枢神経系に影響をおよぼします。特に、高濃度では鎮静、酩酊、痙攣、昏睡などの症状が出ます。

このため、1,1-ジクロロエチレンは各種法令による規制のある物質です。消防法においては、「第4類引火性液体」「特殊引火物」に指定されています。また、労働安全衛生法では、「危険物・引火性の物」「有害物ばく露作業報告対象物、名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されています。

2. 1,2-ジクロロエチレンの法規制情報

1,2-ジクロロエチレンは、引火点は6℃であり、引火性のある物質です。また、人体へは麻酔作用があり、高濃度では嘔吐を催すなど、中枢神経への影響が報告されています。

これらの性質により、消防法においては、「第4類引火性液体」「第一石油類 (非水溶性液体) 」に指定されています。労働安全衛生法においては、「名称等を通知すべき有害物」「危険物・引火性の物」「第1種有機溶剤等」です。また、化学物質排出把握管理促進法においても、「第一種指定化学物質」に指定されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0128.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-35-4.html

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