ねじ切り加工とは
ねじ切り加工とは、金属の工作物を削り、らせん状のギザギザした「ねじ山」を作る切削加工のことです。
ボルトのような「雄ねじ (おねじ) 」とナット内側の溝を切った部分の「雌ねじ (めねじ) 」の2種類があり、規格に定められた径やピッチに対応します。
ねじ切り加工の使用用途
ねじ切り加工は、ねじを必要とする以下のような用途に使われます。
1. 部品同士を固定する
ねじ切り加工を用いて、部品を固定するための雄ねじと雌ねじを作ります。多くの場合、雄ねじにはボルト、雌ねじにはナットを加工します。
2. 配管を通る流体の量を調整する
ねじ切り加工を用いて、配管の出入り口の内径に雌ねじを、出入り口を塞ぐための雄ねじを作ります。雄ねじは回転させることにより直動するので、配管を通る気体や液体の流量を調整が可能です。
3. 位置を決める
ねじ切り加工を用いて、位置を決めるためのねじを加工します。例えば、顕微鏡のピントを合わせる際に使われる「調整ねじ」のように、微調整しながら部品の位置を決める、また固定することが可能です。
4. 部品を送る
ねじ切り加工を用いて、工作物を送るねじを加工します。例えば、旋盤の工具の送りに使われるねじです。部品を固定しながらねじを回して直動させて加工します。
ねじ切り加工の原理
ねじ切り加工には2つの原理があります。工作物を削ってねじを切る方法と、工作物を変形させてねじを切る方法です。
1. 切削加工
切削加工とは、工作物を削ってねじを切る方法です。さらに、ねじの仕様通りの凹凸を施した工具を使って削る方法と、旋盤に「バイト」と呼ばれる刃を取り付けて削る方法に分類されます。工作物が大型の場合、「ねじ切り盤」と呼ばれる大型のねじ切り加工に特化した旋盤を使います。
2. 転造加工
転造加工とは、工作物を変形させてねじを加工するのが転造加工です。ねじの仕様通りの凹凸を施した工具に工作物を固定し、回転させながら圧力をかけて成形します。工作物を削らないので、削りくずが出ません。また、精度が高いねじを切れるので、大量生産に向いています。
ただし、転造加工では変形が可能な柔らかい素材を使う必要があるため、使える素材は限定されます。
ねじ切り加工の種類
ねじ切り加工には、雄ねじ加工に「ダイス」、雌ねじ加工に「タップ (タップ加工) 」を使う場合、「バイト」と呼ばれる工具を使う場合、工作物を圧力により変形させてねじを切る使う場合があります。
1. ダイスとタップを使用する場合
ダイスとタップにはねじと同じギザギザが付いていて、回転させながらねじを切ります。手動加工の場合、ダイスやタップにハンドルをつけます。機械加工の場合、ダイスやタップを旋盤のチャックに固定します。
2. バイトを使用する場合
バイトはねじの仕様によってさまざまな種類があります。旋盤に工作物を固定して回転させながらバイトを押しつけてねじを切ります。
バイトを送る方向を使い分ければ、「右ねじ (時計方向) 」あるいは「左ねじ (反時計方向) 」に加工が可能です。旋盤の作業をコンピューター制御によって自動化する「NC旋盤」を使えば大量生産が可能になります。
3. 圧力により変形させる場合
塑性変形が可能な素材を使って、あらかじめねじの仕様に合わせた凹凸を施した工具に工作物を固定し、圧力をかけながら回転させてねじを成形します。これが切りくずの出ない「転造」というねじ加工で、加工時間を短縮し、大量生産も可能にします。
ねじ切り加工のその他情報
切削加工と転造加工の違い
ねじ切り加工では、「切削加工」と「転造加工」で下記のような違いがあります。違いを理解したうえで、加工方法を選択することが必要です。
1. 初期投資費用や生産時間
切削加工の場合、旋盤やフライス盤、マシニングセンタなどの工作機械を使用してダイスやタップを取り変えることにより、さまざまな形状のねじを製造します。手間と時間をかけた小量多品種のねじの生産に最適です。
転造加工の場合は、目的の製品の仕様や形状にあわせた転造盤が必要なため初期投資費用が高めです。しかし、加工時間が短く耐久性も高いため、大量生産に向いています。
2. 強度
金属素材には「ファイバーフロー」と呼ばれる金属組織の流れがあります。切削加工では、このファイバーフローを切断するため、ねじの強度が低下します。
一方、転造加工ではファイバーフローが切断されず強度が低下しません。そのため、切削加工よりも転造加工の方が強度が高いのです。
3. 切りくず
切削加工は材料を切削するため切りくずが出ますが、転造加工は圧力をかけて材料を変形させるため切りくずが出ません。そのため切削加工よりも転造加工の方が無駄がなく環境にも優しい加工方法と言えます。