ポリカーボネート加工とは
ポリカーボネート加工とは、熱可塑性樹脂であるポリカーボネートの切断、切削、曲げ、溶接などの加工のことです。
ポリカーボネートで現在流通している板の形状には、平板、中空板、波板の3種類があります。
ポリカーボネートは耐衝撃性 (アクリルの50倍) や対候性に優れ、自己消化性があり、透明度も高いです。その一方で、有機溶剤に対し応力腐食性が強く、有機溶剤配合の接着剤は使用できず、表面に傷がつきやすいことも欠点です。
ポリカーボネート加工の使用用途
ポリカーボネートは金属では対応が難しい分野の製品として、切削加工や板形状の切断、曲げ、溶接のような加工が行われます。切断加工では材質の硬いことが、利点でもあり欠点です。切断面が鋭利となるため、切断加工後の面取りは欠かせません。
ポリカーボネート加工された製品は、メガネレンズやスマートフォンのケースを代表として、透明性を活かしたパーテーションなどに利用されます。
ポリカーボネート加工の種類
主にポリカーボネート加工では、切断加工とそれに伴う面取り、曲げ加工、切削加工、接着を行います。溶接も可能ですが、金属で利用するような電気溶接機やアーク溶接機は使えないため、ホットジェットなどの熱風による専用溶接機が使用されます。
1. 切断加工
切断加工では、アクリルカッターが使われています。数が少なければディスクグラインダーでの切断や、薄い平板なら金切りバサミでも切断できます。
2. 曲げ加工
曲げ加工も加熱して曲げができないため、アルミサッシで行うような溝へのはめ込みに似た加工が使われます。
3. 切削加工
切削加工は金属に対して行う加工に比べ、マシニング加工や旋盤加工でも手軽な方法です。精巧な製品を製作できるため、コスト面での優位性が発揮できます。
4. 接着
接着は溶剤もしくは接着剤による接着のいずれも可能です。溶剤の選択を誤ると、透明性などの本来の特性を損ねる可能性があり、注意が必要です。
ポリカーボネート加工の原理
ポリカーボネートの各種加工には、板棒や丸棒に成形された材料を用います。
ポリカーボネートのマシニング加工では、まず加工する製品の図面に基づいて、NCデータを準備します。加工に用いる工具の動く速度、方向、回転数のような各種加工条件を設定可能です。ポリカーボネート板材を少し大きめの長さや幅にカットします。NCルーターに材料をセットして、NCデータに従い側面を削って穴を開けます。加工後にはバリを取り除き仕上げを行い、最後に正しく穴径や寸法などを加工できているか検査が必要です。
ポリカーボネート加工の構造
ポリカーボネート樹脂は、分子構造内に炭酸エステル構造を有する熱可塑性の非晶性樹脂です。炭酸エステル構造の化学式は-O-(C=O)-O-と表されます。主原料にビスフェノールAを用いて、ポリカーボネート樹脂は製造されます。
ポリカーボネート加工の選び方
ポリカーボネートはエンジニアリングプラスチックの代表であり、プラスチックの中でも非常に高い耐衝撃性を持っています。同じ厚みで比較すると、ガラスのおよそ200倍で、アクリルのおよそ30倍の耐衝撃性です。燃えにくく衛生的で、長期的に低温から高温まで使用できます。耐熱温度は120°Cで熱にも強く、光線透過率はガラスと同じ85〜91%で、透明度のある採光材です。
その一方でポリカーボネートは、アルカリ性や有機溶剤に弱く、耐薬品性が悪いです。ポリカーボネートの製品にアルカリ性の薬品が付着するとひびが入り、変形する可能性があります。流動性や成形性も悪いです。
ただし他の樹脂と混ぜて、双方の特性を補う原料も作り出されています。具体的には、流動性の改善のためにABS樹脂とアロイ化したグレードのほか、耐薬品性の向上のためにPBT樹脂やPET樹脂のような結晶性樹脂とアロイ化したグレードも知られています。