タングステン加工

タングステン加工とは

タングステン加工とは、「重い石」と訳される粉末焼結金属のタングステンに対する加工のことです。

タングステンは融点や硬度が高く、とても加工が難しい金属です。金属の見た目は銀灰色で、電気抵抗が大きく金属的に安定しています。耐熱性が高いため、熱処理炉のような超高温下で用いる材料として幅広く活用されます。また、熱膨張率が低く超高温での形状安定性が非常に高いです。

高硬度のために加工が難しい一方で機械的には優れていますが、衝撃に弱い一面があるため使用の際は注意が必要です。

タングステン加工の使用用途

タングステン加工は、機械的安定性が要求される分野での使用が多いです。高硬度で加工に時間がかかるため、製品への使用も限定的です。タングステン自体が高価な切削用工具として使われる場合もあります。

工業用や医療用としてタングステンは、普段の生活と密接な関係があります。電子レンジの電磁波発生源となるマグネトロンだけでなく、釣りに使う錘やスポーツ関連商品などにも用いられています。放射線に対する高い遮蔽能力があり、医療現場でも使用可能です。

以前は白熱電球フィラメントに使われていましたが、現在ではほとんどがLEDに置き換わりました。

タングステン加工の種類

タングステン加工の具体例は、旋盤加工フライス加工タップ加工です。

1. 旋盤加工

旋盤加工では、チップ素材の選択で面粗度に差が出ます。例えばサーメットのチップではすくい角が大きくなり、切りくずの厚さが薄く切削抵抗が小さいため、面粗度が上がります。その一方で超硬合金のチップではチップの先端のすくい角が小さく、切りくずが厚く、切削抵抗が大きいため結果として面粗度が荒くなります。

2. フライス加工

フライス加工では荒加工の設定を湿式にして回転数を落とし、乾式で仕上げ加工すると仕上がりが安定します。湿式で仕上げ加工した場合には、仕上がりが安定しません。

3. タップ加工

タングステンなどの難削材のタップ加工は負荷が大きいためタップが折れやすく、送り速度が制限され加工に時間がかかります。荒加工で穴を開けた後にプラネットカッタを用いると、加工時間を短縮できます。

タングステン加工の選び方

1. 旋盤加工

旋盤加工では、特別高硬度のチップを使用すると逆に面が粗くなってしまうため、サーメット (英: CERMET) と呼ばれるチップ使用が推奨されています。CERMETはセラミックとメタルの合成語です。

2. フライス加工

フライス加工では、旋盤加工と同様に回転数を落として湿式で荒加工し、乾式で仕上げ加工が良いとされています。

3. タップ加工

タップ加工も同様で、使用するタップも「プラネットカッタ (超硬合金製のめねじ加工用工具の商品名) 」の使用が推奨されており、下穴を開けた後に使用すると作業時間を大幅に短縮可能です。

4. 切削加工

高硬度工作物の切削加工では「チッピング (バイトの刃先が欠けることで滑りやすくなる現象) 」を考慮し、乾式での荒加工後の仕上げは切削油を使った「クーラント加工」で行う工夫もされています。

タングステン加工の構造

タングステンの原子番号は74で、元素記号はWと表されます。比重は19.3g/cm3であり、金と同等で鉛の1.7倍の重さで、硬度も高いです。融点は金属中でも最高の3,422°Cであり、熱膨張係数は金属中で最小です。

タングステンは密度が高く、放射線遮へい能力に優れています。鉛もガンマ線やX線のような放射線の遮へい材に使用できますが、環境への負荷や人体への影響が大きいです。それに対してタングステンは、放射線遮へい能力は鉛より高いです。環境負荷も小さいため、医療分野でX線CTなどに利用されます。

タングステンは硬度が高いです。炭素と結合するとさらに硬度が高くなって、モース硬度は9になります。タングステンカーバイド (英: tungsten carbide) は、タングステンの炭化物で、化学式はWCです。硬度がとても高く、旋盤やドリルなどの金属の切削工具に使用されています。

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