フランジ加工とは
フランジ加工とは、フランジ (英: flange) を追加する加工のことです。
フランジは「つば」とも訳され、円筒形で部材からはみ出して出っ張った部分の総称です。
フランジは機械部品や電子部品の固定から、建材の設置、流体を流すパイプの接続まで、幅広い分野に使われます。パイプの接続では流体の漏れを防ぐことが大きな課題であり、使う素材に合わせて加工されます。
フランジ加工の使用用途
建物の中で使用される排水管の引き回しを行う配管作業で、管同士の接続や開閉弁のような部品の取り付けにフランジが必要です。
自動車ではタイヤホイールを取り付ける車軸側のフランジだけでなく、シャフトのつなぎやエキゾーストパイプのつなぎにも使われています。鉄道車両では、車輪の内側に見える脱輪防止用のつばに使用されています。
フランジ加工の原理
フランジ加工は、一般的に旋盤加工や切削加工、板金加工などの通常の加工と並行して行います。
1. 旋盤加工
回転対象部材に適用される旋盤加工では、フランジの形状も丸形が基本形です。あとでボルトの通し穴を付けて、必要に応じてねじ切り加工が行われます。
2. 切削加工
切削加工は、角形フランジや形状の複雑なフランジの製作に適しています。
3. 板金加工
板金加工でフランジをつける場合は、プレスによる曲げ加工や絞り加工で行われます。
4. 曲げ加工
曲げ加工には3種類 (V曲げ、L曲げ、U曲げ) の加工法があり、使用目的に合わせて選択可能です。
- V曲げ: 曲げ角度が調整でき、直角以外の角度をつけたフランジ形成に適しています。
- L曲げ: 1面のみに直角フランジを作りたいときに使用されます。
- U曲げ: 2面の直角曲げでフランジを形成したいときに使われます。
5. 絞り加工
絞り加工とは、金型に乗せた部材をブランクホルダーで抑えながらパンチングし、合わせてブランクホルダーで圧を加える加工法のことです。周辺部のフランジ形成と合わせて、容器を製作する際に使われています。
フランジ加工の種類
加工されたフランジには、曲げフランジ、縮みフランジ、伸びフランジ、複合フランジなどの種類があります。
1. 曲げフランジ
曲げフランジは長方形のブランクの端部を曲げるだけです。最も基本的なフランジ加工で、加工線が直線型になります。
2. 縮みフランジ
縮みフランジは加工線が凸型の弧を描きます。端部が扇形に広がっているブランクを使用して、加工で扇部が圧縮され、フランジ部にシワやたるみが生じやすいため注意が必要です。
3. 伸びフランジ
伸びフランジは加工線が凹型の弧を描きます。縮みフランジと逆向きの扇形を端部に有するブランクを用いて、加工の際に引っ張り応力によって素材が引き伸ばされます。縮みフランジとは異なり、割れに注意が必要です。
4. 複合フランジ
複合フランジは曲げ、縮み、伸びの3つを組み合わせた難易度が高い加工です。任意の形状にブランク端部を立ち上げて、全体でフランジの高さを一定に仕上げます。
フランジ加工の選び方
フランジ加工を施すと簡単にネジ穴を作ることが可能です。他の部品を使用せずに金属板にネジ穴が作れて、立ち上がりの高さでネジが切れて固定可能です。
フランジ加工によって立ち上げた先にパイプを溶接すると、根元の角がなくなります。曲面の立ち上がりには汚れが溜まりにくいため、メンテナンスが容易です。フランジ加工によって強度の高い溶接も可能になります。
その一方で、柔らかい材質のフランジ加工には注意が必要です。パンチを押し込むと穴が変形して立ち上がりが作れない場合もあり、立ち上がり部分の強度も低くなります。厚みのある板も、フランジ加工には適していません。負荷が高く、想定したように変形しない可能性があります。
ナットなどと比較すると、フランジ加工によるネジ山の数は少ないです。したがってネジの付け外しを繰り返すと、ネジ山が潰れる場合もあります。ナットを溶接するか、カシメナットの利用など、別の方法を検討する必要があります。