変流器

変流器とは

変流器は一次電流に比例した量の電流を二次電流として出力する装置です。

変圧器と同様の構造をもち、円環状の鉄心に一次と二次の巻線が取り付けられた「巻線形」と、一次側は直線形の導体でその周囲に鉄心を置いて二次側巻線を取り付けた「貫通型」があります。

一次側の電流を計測できる量の電流値へと変換して二次側に出力します。

近年では、省エネの観点から電力使用量の監視システムに対する関心が高まっており、変流器を用いた電流計測を行うことが可能です。 

変流器の使用用途

変流器は、高圧または低圧配電線を流れる電流を、電流計器で計測できるように電流値を変換するために用いられます。

一次側の電流値が大きい場合、より巻線数の多い二次側で電流値を下げ、電流計器の微小抵抗によって電流を測定します。

その結果、電力消費量のモニターとして使用したり、異常検知を目的として使用したりすることも可能です。

そのため変流器は電流値を測定したい回路のあらゆる地点で、回路系統の一部に差し込まれる形で取り付けられています。 

変流器の原理

変流器は、変圧器と同様に鉄心を透過する磁界の変化を利用した誘導電流により、一次側から二次側へと電流を伝達します。

一次巻線に電流を流すと鉄心中に磁束が発生し、その磁束が二次巻線中を透過します。

このとき二次巻線には巻数に応じた電流が流れます。二次側の巻数が多いほど透過する電流は小さくなります。

この現象は電磁誘導によるもので、レンツの法則によって説明されます。

レンツの法則は、コイルを透過する磁束が変化すると、コイルにはその変化を妨げるように磁束を発生しようとするものです。このときコイルに誘導電流が流れます。

コイルの巻数が多いほど誘導電流は小さくなり、1ループあたりの誘導起電力が小さくなることになります。

実際に変流器を扱う場面での注意として、二次側を開放し電流が流れない状況が考えられます。

この場合、二次側に誘導電流が流れないため、鉄心内の磁束を打ち消す作用が働きません。

そのため鉄心内を磁束が透過し続け、磁気飽和と呼ばれる限界値に達することがあります。この場合、鉄心の異常加熱のリスクがあり、注意する必要があります。

参考文献
https://www.fujielectric.co.jp/technica/beans/05.html
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%89%E6%B5%81%E5%99%A8-1590220
https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/b_sensor/0807/index.html

ボールバルブ

ボールバルブとは

ボールバルブ

ボールバルブ (英: Ball Valve) とは、弁体は球状 (ボール形)で中央に穴あけされ、ボディ (弁箱) 内のシート (弁座) に挟まれ組み込まれているバルブです。

液体や気体などの流体を、弁体のボールを90 度回転させることで、流体を遮断して流路を閉止します。ボールバルブは、JIS B0100 バルブ用語 Glossary of terms for valves で、「弁箱内で弁棒を軸として球状の弁体が回転するバルブの総称。弁体には、全面球及び半面球がある。」と規定されています。

開弁時に弁体のボールが流路に残らないため圧力損失が小さく、流量調節での使用はせず全開・全閉で使用されます。

ボールバルブの使用用途

ボールバルブ_図1

図1. ボールバルブの使用例

ボールバルブは、操作が容易でシンプルな構造でコンパクトなため、家庭用、一般産業用、など幅広く使用されています。一般的にボールバルブは、ボールの中間位置の開度で使用すると、ボディ (弁体) とボール (弁体) の間に流体が溜まるため、全開もしくは全閉で使用します。したがって、止弁として遮断目的で使用されるバルブです。

ボールバルブのボール (弁体) は、ステム (弁軸) に取り付けられたハンドルを90度回すことで、開弁・閉弁ができるため、操作性に優れ操作時間が短いという長所があります。また、開弁中にボールが流路に残らないので、圧力損失が小さくなります。

流路に段差などが少なく、スラリーや固形物を含む流体の配管にも使用可能です。スラリーとは、固体と液体との混合物で、細かく粉砕した石炭や鉱石などと水を混ぜて泥状にして、搬送するために使用します。

ボールバルブの原理

ボールバルブ_図2

図2. ボールバルブの開閉弁状態と流体の流れ

ボールバルブは、ボディ (弁箱) 内部のボール (弁体) とシート (弁座) の面接触で、流体を閉止しています。この状態でボールの穴中心は、ボディ開口部中心に対して90度に位置しています。ボールを90 度回転させると、ボールの穴中心はボディ開口部中心と同芯になり、流体が流れる仕組みです。

この開閉操作に必要な力は、ボールの球面とシートとの摩擦抵抗に比例します。バルブ呼び径が大きくなるほど開閉操作に必要な力も増加します。したがって、呼び径の大きいバルブはギヤ操作機 (減速機) を搭載した回転ハンドルを採用されています。

ボールバルブは、ボディ内部と出入口配管の流路面積に差が少ない、フルボアポートバルブも多く、流路はほぼ直線のため、全開時の圧力損失が極めて小さいことが特長です。

ボールバルブの構造

ボールバルブ_図3

図3. ボールバルブの構造

ボールバルブは主に、ボディ (弁箱) 、ディスク (弁体) 、ステム (弁軸) 、ハンドルなどで構成されています。ボールバルブは、ハンドルまたはアクチュエータによって操作されます。

ハンドルはステムに取り付けられ、回転をステムに伝達するのが役割です。開弁時はハンドルの回転でボールが90度回転し、閉弁時はボールが逆回転します。

ボールバルブの種類

1. 開閉操作方式による分類

ボールバルブ_図4

図4. ボールバルブの操作・駆動方式

ボールバルブは、主に下記3種類の開閉させるための操作・駆動方式があります。

  • 手動式
    ハンドルなどでステムを回転
  • 空動式
    空気作動式アクチュエータでステムを回転
  • 電動式
    電動アクチュエータでステムを回転

2. ボア形状による分類

ボールバルブは、下記の3種類のボア形状があります。ボアとは、ボディ内の流路内径です。

  • スタンダードボア
    バルブの呼び径 (配管内径) に対してボア径が1サイズ小さい
  • レデューストボア
    バルブの呼び径 (配管内径) に対してボア径が1サイズ以上小さい
  • フルボア
    バルブの呼び径 (配管内径) とボア径がほぼ同じ

3. ボールの支持方法による分類

ボールバルブ_図5

図5. ボールの支持方法

ボールバルブは、下記2種類の回転するボールの支持方法があります。

フローティング式 (遊動ボール形)
フローティング式は、ボディ内部に取り付けられたシートで、ボール挟み込み支持する構造です。ボールの溝にステム角型端部がはまり込み、ボールを回転させます。

ボールの溝は、全閉時に流体流れ方向と平行となり、ボールがわずかにスライドして、流体圧力でシールに押し付けられ密閉性を確保します。低圧 (~JIS20K、CL300) 、小口径 (~DN200) に使用されるのが一般的です。

トラニオン式 (固定ボール形)
トラニオン式は、ボール上部はステム (弁軸) 、下部はトラニオン (回転軸) で支持され回転する構造です。ボールの上下を回転軸に支えられ、流体圧力の影響を受けにくく、シートはシートホルダに内蔵されたばねに押され、ボールに接触して密閉します。高圧 (JIS30K、CL600以上) 、大口径 (DN250以上) に使用されるのが一般的です。

4. ボディの材質による分類

  • ねずみ鋳鉄品 JIS G5501 FC200
  • 球状黒鉛鋳鉄品 JIS G5502 FCD400
  • 圧力容器用炭素鋼鍛鋼品 JIS G3202 SFVC 2A
  • 高温高圧鋳鋼品 JIS G5151 SCPH2、SCPH21
  • ステンレス鋼鋳鋼品 JIS G5121 SCS13A、SCS14A
  • 銅及び銅合金鋳物 JIS H5120 CAC401 青銅鋳物1種
  • 銅及び銅合金の棒 JIS H3250 C3771 鍛造用黄銅

ボディ材質は、下記のような要件に基づき選定します。詳細は各メーカのカタログ等を参照してください。

  • 流体の種類、圧力、温度、流速、不純物の有無
  • 耐食性対応の要否
  • 適用される法規、規格

5. シートの材質による分類

一般的にボールバルブのシートは、樹脂や炭素繊維製のソフトシールと金属製のメタルシートがあります。

ソフトシール
PTFE (テフロン) やPTFEにカーボン系剤など充填したものがあります。最高使用温度は、PTFE単体で約150℃、PTFEにカーボン系剤など充填したもので約300℃になります。

PTFE製のシートは、耐薬品性と摩擦抵抗が小さく操作性に優れていることが特長です。また、炭素繊維素静のシートがあり、最高使用温度は約500℃になります。

メタルシート
炭素鋼やステンレス鋼素材に、シートのボール接触面に高硬度ニッケル合金を溶射しています。この場合は、ボール方面も同じ溶射を施工しています。

メタルシートは、最高使用温度は約500℃までで、ソフトシートでは対応が困難な高温流体、粉体、スラリー、粘性流体に適用します。

参考文献
https://www.kitz-valvesearch.com/kiso/type_ballvalve.html

リベット

リベットとは

リベット

リベットとは、材料の接合道具の一つです。

比較的簡単に取り付けられて強度があります。振動で緩むことがなく、ボルトナット接合などと締め付け力は同程度です。ただし一度接合すると取り外しが難しく、リベット自体を壊すことで取り外せます。

形状は細い針のような棒にピンがついた形をしており、打ち込むことで不要な針部分を自動で切断します。片側からの作業のみで取り付け可能で、手が入らない場所でも使用可能です。

リベットの使用用途

リベットは大きい例では船やジェット機、身近な例では鍋やフライパンなど、幅広く使用可能です。工場内での幅広い機器の金属板接合部や金属網の接続にも用いられます。

建物の大梁接合部や筋交いの接合にもリベットが使用され、緩むことなく建築物を支えています。見た目も綺麗に仕上げられて外観を損ないません。

リベットの特徴

リベット接合は長所と短所を理解し、目的や用途に合わせて選択することが大切です。

長所

リベット接合は作業が簡単なため、手順を守れば初心者でも可能です。強度が高く接合部が緩みにくいです。母材の湾曲やひび割れが起きない限り、リベット接合は緩まないため安全性に優れています。その一方で接合部を破壊すれば取り外し可能です。熱を加える場合でもリベットの先端のみを加熱するため母材が損傷しにくいです。

短所

主に銅やステンレスのような重い金属を用いるため、接合部が多いと製品が重くなります。パイプ状や湾曲した母材は穴開けが非常に難しく、板状の母材に限定されます。リベット接合では突起が目立つため見た目があまり良くありません。衝撃でできた凸凹部分が残るため、デザイン重視の製品には適していない方法です。

リベットの使い方

リベットの締め付けではまず打ち込むために使用するリベットに対応する径の下穴を開けます。下穴にリベットをセットしてリベッターを使用して実際に打ち込むと自動で不要部分を切り取ってくれます。不要部分をリベッターから取り出して繰り返しリベット打ち込み作業が可能です。

締結の原理はリベットをリベッターで引っ張るとリベット先端に付いた玉が引き上げられてリベットが変形します。この変形によりパイプ状の部分が押しつぶされ、固定する材料の手前の皿と奥 (押しつぶされる側) の皿で締め付けて固定可能です。

リベッターには手動で行うハンドリベッター、電気を使用する電動リベッターコンプレッサなどの圧縮エアーを使用するエアーリベッターなどがあります。リベットの個数にもよりますが、大量にリベットを打つ場合は電動リベッターやエアーリベッターを使用すると作業時間の大幅な短縮と労力の低減が可能です。

リベットの種類

主にリベットにはブラインドリベット、中空リベット、樹脂リベットの3種類があります。

1. ブラインドリベット

最も使用されるリベットで、部材の片側から作業でき、裏側に工具が入らない場合に多く使われます。締結圧は細い心棒の破断耐力により、同じ径のリベットよりも小さいです。

心棒を空気圧やリベッターで引っ張ると円筒状のリベット内側を変形させ、心棒を引きちぎります。初心者でも容易に使えて、強度のある締結が可能です。規格やサイズが豊富で、DIYなどにも用いられます。

2. 中空リベット

リベットのシャフトになる箇所が空洞で軽量です。専用工具が必要ですが、小学生のランドセルのパーツや文房具で用いるバインダーなど、使用用途は幅広いです。用途に応じて適切な形状や規格を選択できます。

3. 樹脂リベット

素材が柔らかい樹脂製のリベットです。プラダンの接合、車の内装やフェンダー部分の接合、バイクのカウリングなどに使われます。金属製とは異なり、分別せずに廃棄できるリベットが多いです。強度が高く、取り外しが可能なタイプもあります。専用工具なしで締結できる種類が多く、DIY向きで初心者が容易に使用できます。

参考文献
https://e-neji.info/%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF
https://www.byora.co.jp/index/products/fastening/blind/index.html

軸継手

軸継手とは

軸継手

軸継手 (英: Shaft coupling) とは、カップリングやジョイントとも呼ばれ、軸と軸を接続する部品の総称です。

主に機械側 (従動側) の間に軸継手を接続してモーターから与えられた駆動力をスムーズに伝えます。

たわみ軸継手は軸継手の中で一般的に多く使われており、軸のずれに許容範囲を持たせて振動を吸収します。たわみ性があると軸受にかかる負荷を低減したり、装置に与える衝撃や振動を吸収可能です。

軸継手の使用用途

軸継手は駆動や従動の伝達機構を使う機器に広く用いられています。例えばポンプやブロア、攪拌機などの回転機では、モーター (駆動側) とインペラ側シャフト (従動側) を繋ぐ箇所に使用され、動力伝達を行います。

1. たわみ軸継手

ミスアライメントが出やすい機器や振動が比較的大きな機器に使用可能です。フランジとボルトの間にあるブッシュで振動を吸収します。

2. 固定軸継手

伝達容量を多く取りたい機器によく使用されます。

軸継手の原理

駆動側と従動側のシャフトにそれぞれ取付継手同士をボルトで固定して、回転動力を伝達します。シャフトと軸継手の固定方法には複数あり、キー材とセットボルトを使用したり、焼き嵌めの嵌め合いで固定します。

1. たわみ軸継手

ボルトで固定する場所ごとにゴムなどで作られたブッシュをはめ込みます。軸の振れ、振動、ミスアライメントなどを吸収し、スムーズに動力を伝達します。経年劣化によりひび割れなどを引き起こすと柔軟性が失われ、十分に振動を吸収できません。したがって定期的な点検や交換が重要です。

2. 固定軸継手

ボルトで固定され、ミスアライメントがないように芯出し調整をする必要があります。ブッシュがなく動力伝達にロスがないため、大きな動力を伝達する場面で活躍します。

軸継手の種類

軸継手の種類にはたわみ軸継手や固定軸継手以外にも、自在軸継手やオルダム軸継手もあり、軸継手を使用する場合には機器の仕様に合わせた選定が重要です。

1. たわみ軸継手

たわみ軸継手の広く使用されている構造には2種類あり、マフカップリングとフランジ形です。マフカップリングは結合する軸2つの外周に共通の筒形のボスをかぶせています。フランジ形はフランジを両側の軸端に挿入してリーマボルトで締めて連結可能です。

2. 固定軸継手

固定軸継手の種類は、フランジ形たわみ軸継手、積層板ばね軸継手、チェーン軸継手、歯車形軸継手、ゴム軸継手などに分けられます。

3. 自在軸継手

連結した2軸の芯ずれ量が大きいときや2軸が交わる際に用います。自在軸継手には2種類あり、等速形と不等速形です。

4. オルダム軸継手

連結した2軸が平行で、2軸の軸心のずれ量が小さいときに使います。

軸継手の構造

軸継手の構造はリジッド形、金属スリット形、金属コイルばね形、マグネット形、ピン・ブッシュ形、ディスク形、高減衰性能積層ゴム形、ジョー形、樹脂ベローズ形など数多くあります。そのため用途や特徴に合わせて選択する必要があります。

軸継手の選び方

1. フランジ形たわみ軸継手

幅広く用いられている構造です。両側の軸端に入れるフランジをつなぐボルトの片端にゴム製ブッシュをはめ、圧縮強さでトルクを伝えます。ゴムの可撓性によって軸心の偏角に対応しやすいです。

2. 積層板ばね軸継手

継手フランジを積層板ばねで連結します。積層板ばねでトルクを伝え、軸芯ずれと角度ずれに可撓性によって対応可能です。

3. チェーン軸継手

連結する2軸に付けるハブ外周に同じ歯数のスプロケットを設置して2列1本のチェーンでつなぎます。あまり可撓性を大きく作れません。

4. 歯車形軸継手

連結する2軸に付ける内筒にある外歯と連結フランジのボス部外筒にある内歯をかみ合わせ、大きいトルクを伝えます。

5. ゴム軸継手

フランジ形たわみ軸継手よりゴムを全面的に使用します。ゴム弾性体で軸継手本体を結合し、各方向の軸芯ずれに対応可能です。

参考文献
https://www.nbk1560.com/resources/coupling/article/powertransmission-about/
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/FlexibleCouplings/about.html

吊り具

吊り具とは

吊具

吊り具とは、重量物の荷揚げ、降ろし、運搬に使用する道具のことを指します。

一般的には、チェーンブロック、レバーブロック、ウインチ、ホイストクレーンなどです。

また、これらと合わせて使うワイヤーやスリング、シャックル、リング、アイボルト/ナット、ビームクランプ等も併せて吊り具と呼ぶこともあります。各作業場所や工場によっても認識が異なる為、道工具の準備時などには作業責任者に確認しながら作業を進めることが大切です。

吊り具の使用用途

吊り具の使用用途は上述の通り、重量物の移動を行う場面で広く使用されます。建物の1階から5階などへ重量物を持ち運ぶのは困難な場合などに役立ちます。また、倉庫内での重量物運搬時も手で運ぶことは困難ですので、活躍します。

機械の整備などで使用する場合は、該当する機器の上部にある梁などにビームクランプを設置しそこからチェーンブロックや電動ウインチなどをたらし、機器側にはアイボルトなどにワイヤーを通し吊り上げていきます。

吊り具の原理

吊り具の原理は各吊り具によって異なります。

チェーンブロックは、チェーンを一方のチェーンを巻き上げることで、減速されもう一方のフックが付いたチェーンが巻き上がる構造をしており、重量物を昇降させることができます。チェーンの巻き上げ量は多くなりますが、減速しているため重量物を軽い力で持ち上げることが可能です。

電動ウインチは、電気(モーター)の力を減速させトルクを増加させることで、重量物を昇降させます。チェーンブロックは手動ですがウインチは電動ですのでより簡単に重量物の移動が可能です。

ワイヤーやスリングは重量物の玉掛け作業に使用します。重量物に巻き付けたり、アイボルトなどと組み合わせることで重量物と固定し昇降装置とつなげることができます。ワイヤー径によって重量の許容が決まっているため、適切な太さのワイヤーを選定することが大切です。

ビームクランプは、IビームやH鋼などの梁に取り付け使用します。クワガタのはさみのような形状をしており、下方向の荷重がかかるとはさみ込む部分がより内側に力がかかるようになり、外れにくくなります。

参考文献
https://www.kondotec.co.jp/products/lifting/
https://www.webshiro.com/hoist_sc/Harness.html

電動ウィンチ

電動ウィンチとは

電動ウィンチ

電動ウィンチとは、電動ドラムでロープやワイヤーを巻き付上げることで対象物を引っ張るものの総称です。同じ構造をした手動のものを手動ウインチと呼びます。

電動ウィンチは重量物の昇降で使用したり、車や船舶の引き上げにも使用します。ホイストなどと原理は同じですが、ホイストは水平方向に移動することが可能ですが、電動ウインチは固定されています。

用途に応じて大きさに種類があり、持ち運びできる小型のものや据え置きの大型のものまで様々です。

電動ウィンチの使用用途

電動ウィンチは上述の通り、重量物の昇降や車や船舶の引き上げに使用されます。作業現場上部に電動ウィンチを設置し、重量物を昇降することで作業効率が向上しスムーズに作業を行えます。また、人が持ち上げるときに発生する事故リスクを下げることが可能です。

車が道路わきに外れ段差に落ちてしまった場合などに、トラックに電動ウィンチを取付、巻き上げることで車を引き戻すことができます。また、船舶を岸に近づけるために、フックを船舶と岸に固定し巻き上げることで船舶を岸に寄せることが可能です。

電動ウィンチの原理

電動ウィンチの動作原理は、ドラムをモーター(電気)で回転させ、それにロープやワイヤーを巻き取ることで対象物を引っ張るというものです。電動ウィンチに付属しているモーターは小型で、モーター単体での出力は小さくなっています。その出力を一度減速機を介すことで減速させトルクを上げることで、数倍もの出力とし重量物を引っ張ることが可能となります。ワイヤーの先端にはフックがついており、これを対象物に引っ掛けて使用します。本体にもフックがついているタイプは、固定する側にフックを引っ掛け使用します。フックではなく、ビームに固定するタイプのものはビームにボルトナット等で固定します。

引っ張る対象物の重量によって使用する電動ウィンチを選定します。モーターの出力(kW)や、使用しているロープ、ワイヤーの材質や太さ、フックの耐荷重など様々な部品の仕様を確認し選ぶことが大切です。

急な事故などが発生した際にも、狭い場所で使用できることから活躍することもあります。トラックの荷台に装備しておけば緊急時に役立ちます。

CAN

CANとは

CAN

CANとは「Controller Area Network」の略で、ドイツのBoschが開発したシリアル通信プロトコルのことを指します。

CAN通信プロトコルが完成したのは1985年です。自動車業界に幅広く使われている通信プロトコルですが、量産車に採用されたのは1990年であり、その後国際標準化機構によって標準規格として定められました。

CANは自動車業界だけでなく、FA(ファクトリーオートメーション)領域でも多く利用されている技術です。

CANの使用用途

CAN通信プロトコルは、自動車業界での使用を前提として開発されました。主な用途はECU(Electronic Control Unit)間での通信です。

近年の自動車は電子制御されており、各デバイスが高速に正確に通信できる必要があります。CAN通信はホストコンピュータがなくとも、デバイス同士が相互に通信できるように設計されており、さらに耐ノイズ性も高いため、信頼できる通信技術として自動車には欠かせない通信プロトコルといえます。

CANの特徴

CANは自動車のECUへ対応するための通信プロトコルとして開発されたため、それに起因する特徴がいくつもあります。

自動車は年々高性能化していったため、制御内容が複雑になりました。制御内容が複雑になればECUへの入出力も増えていき、ECU間でデータのやりとりをするための配線も増加します。それではECUは大型化してしまい、重量や部品点数も多くなり、製造コストが肥大します。

この問題を解決するために、少ない配線で高速かつ信頼度の高い通信技術が必要とされ、その結果誕生したのがCAN通信プロトコルなのです。

前述の背景の中誕生したCAN通信プロトコルは、以下の特徴を持ちます。

  • 少ないハーネスでECU間を接続できる
  • 拡張性が高い
  • ECU同士の通信が容易に実現できる
  • ひとつの情報を複数のECUで共有できる
  • ネットワーク全体の故障診断や処理が1箇所でできる

CAN通信プロトコルのこのような優れた特徴は、複雑化する自動車制御分野においてブレークスルーをもたらし、日本車をはじめとする世界の自動車の高機能化に大きく貢献しました。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/candata/base.jsp

CO2インキュベーター

CO2インキュベーターとは

CO2インキュベーターとは、細胞培養を安定して行うために使用される培養装置です。

温度・湿度・CO2濃度を一定に保ち、細胞を生理的条件に近い環境で培養することが可能です。

CO2インキュベーターの使用用途

CO2インキュベーターは、CO2濃度を一定に保ち、安定した培養を行うために使用されます。バイオ分野の製造業や研究室など、その用途は多種多様です。

例えば、通気状態で細胞を培養すると、細胞自身の代謝によって培地が酸性に傾いてしまいます。これでは安定した長期培養が難しくなるため、CO2濃度を一定に保たなければなりません。ここでCO2インキュベーターが活躍します。

通例、培養のCO2濃度は、生体内に近い5%前後です。また、乳酸菌や腸内細菌といった酸素が少ない条件に生息している嫌気性を培養する場合、酸素濃度が高いと生育できないので、CO2インキュベーターを使用します。

さらに、哺乳類細胞として一般的な培養細胞 (COS7やHEK) 、ES細胞、iPS細胞のほか、昆虫細胞を用いた実験が可能です。

CO2インキュベーターの原理

CO2インキュベーターは、内側の槽の壁面を加温して槽内温度を制御します。そして、槽内のファンで空気やCO2ガスを攪拌するとともに、CO2センサーでCO2ガスを制御するのが基本的な原理です。

多くの場合、恒温槽の下にバットをおいて自然蒸発させ、体内の環境に近くの湿度95%前後になるような機構をとっています。

CO2インキュベーターの種類

CO2インキュベーターには、「温度制御」「CO2センサー」「ガス濃度制御」の方式によってさまざまな種類があります。

1. 温度制御

温度調節には、内槽外部の空気を加温するエアジャケット方式と、水で満たして加温するウォータージャケット方式があります。

エアジャケット方式は、温度到達時間が短時間で済む代わりに、ドアの開閉などで温度が変化しがちです。

ウォータージャケット方式は温度の安定はいいですが、水を使うため安定までの時間が長く、水道設備が必要です。

2. CO2センサー

CO2センサーは、赤外線式とサーミスタ式があります。赤外線式のほうが精度は高いですが高価です。一方、サーミスタ方式は安価ですが精度が高くありません。

3. ガス濃度制御方式

CO2インキュベーターには、CO2ガスボンベのみを連結する方式とO2ガスボンベ及び窒素ガスンベを連結する方式があります。

O2ガスボンベ及び窒素ガスンベを連結する方式では、酸素濃度の調節が可能です。幹細胞や腫瘍細胞の培養や、虚血実験など、低酸素条件で細胞を培養して分析したい場合に使用します。

CO2インキュベーターの選び方

CO2インキュベーターは、培養の目的に合っているかどうかを吟味して選定します。

例えば、サンプルを長期保存したり、培養で温度設定を変えたりすることがない場合、温度の安定性を重視してウォータージャケット方式を選びます。

また例えば、サンプルを短期保存したり、培養で温度設定を頻繁に変える場合、追従性に優れたエアジャケット方式がおすすめです。

CO2インキュベーターのその他情報

CO2インキュベーターは培養中、細菌や真菌のコンタミネーションが発生すると、誤差を生じるリスクがあります。

この対策として、槽内を高温にして滅菌する乾熱滅菌が可能な機器や、HEPAフィルターを搭載した装置が利用可能です。その他にも、庫内のUV殺菌、過酸化水素滅菌、純銅チャンバー仕様などの機種が発売されています。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/67
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/lab-equipment/co2-incubators.html
https://www.nuaire.com/products/co2-incubators

CO2ロガー

CO2ロガーとは

CO2ロガーのイメージ

図1. CO2ロガーのイメージ

CO2ロガーとは、環境中のCO2濃度変化を経時的に測定、記録するための装置です。

装置本体に測定値を表示する機構が搭載されていますが、数値の経時変化は装置にデータとして記録されるため、分析のために出力することが可能です。通常、環境維持の観点から、CO2濃度と合わせて温度、湿度等が同時に測定されます。

CO2ロガーの使用用途

CO2ロガーは、主にオフィスや会議室などの閉鎖空間の換気の促進を目的としたCO2濃度管理の目的で用いられる装置です。学校、幼稚園、講堂、美術館など、多くの人が集まる施設でも、積極的に活用されている装置です。また、植物の生育の温室においても利用されており、植物生育促進や水耕栽培等の農業研究などの用途があります。

現在値を測定するCO2センサーCO2モニタが工事現場やマンホール等、酸欠事故防止のためにも使用されるのに対し、経時変化を測定するCO2ロガーは農業用の温室やスポーツジム、オフィス等における環境維持に特化して使用されています。

CO2ロガーの原理

一般的なCO2ロガーはCO2濃度測定に非分散型赤外線吸収 (NDIR) 方式を利用しています。

1. 非分散型赤外線吸収 (NDIR) 方式の概要

CO2ロガーに用いられるセルの模式図

図2. CO2ロガーに用いられるセルの模式図

NDIR方式とはガスが特定の波長の赤外線を吸収する性質を利用して、該当波長の赤外線をガス試料に照射したのちに透過光を計測する仕組みです。CO2は波長4.26μmの赤外線を選択的に吸収する性質があることが知られています。

CO2ロガーの測定機構では、ガスセル内に検出対象の気体を流し、セル内に設置した赤外線ランプより波長4.26μmの赤外線を照射します。透過した量はセンサーで測定され、CO2濃度が求められる仕組みです。

後述するランベルト・ベールの法則により、赤外線エネルギーの吸収量の変化は、CO2のガス濃度と測定セルの長さによって決まります。また、CO2濃度とエネルギー吸収は指数関数的な関係になっています。

2. ランベルト・ベールの法則

ランベルト・ベールの法則

図3. ランベルト・ベールの法則

ランベルトの法則により、光が均一な媒質 (この場合はCO2ガスを含む試料) を透過する際、透過光の強度の減少量は光の強度と媒質の厚さ (光路長) に比例します。また、ベールの法則により、媒質の厚さが等しければ、吸収される光の量は濃度に比例します。これらを合わせたものがランベルト・ベールの法則です。 

   A = log (I0/I) = ε・c・l

(A: 吸光度、I0: 入射光強度、I: 透過光強度、ε: 吸光係数、c: 濃度、l: 光路長)

3. 他の物質との干渉・校正

空気中の主要成分であるN2やO2等は赤外領域に吸収スペクトルを持たないため、CO2を選択的に検出することが可能です。しかし、CO及びH2Oに関しては一部吸収スペクトルが重なっており、測定結果に影響を及ぼします。

NDIR方式の濃度測定は誤差が発生するため定期的な校正が必要になりますが、CO2ロガーは連続作動して数値を記録する性質を活かし、一定期間で最も低いCO2の数値が基準値となるように自動で補正されます。

CO2ロガーの種類

CO2ロガーには、機能や仕様に様々な種類があります。例えば、測定上限値は5,000ppm前後のものが多いですが、中には200,000ppmを上限とする高濃度対応のものもあります。

測定間隔は、15分単位や1分単位で測定できるものから、1秒単位で測定できるものまで製品によって様々です。また、従来は装置本体の記録媒体やSDカードなどへデータを記録し、取り出す方法が主でしたが、最近ではBluetoothやWi-Fi等を用い、リモートで測定値を確認することが可能な機種も発売されています。用途に合わせたものを選択することが必要です。

参考文献
http://www.weather.co.jp/catalog_html/hobo/MX1102.htm
https://www.endokagaku.co.jp/product/testo160-iaq/
https://www.nicera.co.jp/products/gas-sensor/about-gas-sensor

CPUクーラ

CPUクーラとは

CPUクーラ

CPUクーラとは、パソコンなどに代表されるコンピュータのCPUを冷却するための部品です。

CPUは稼働中に発熱し、適切な冷却を行わないとCPU内部の半導体が熱暴走して誤動作を起こす可能性があります。そのため、冷却するCPUの消費電力に応じたCPUクーラが取り付けられます。

CPUクーラには、大きく分けて空冷式と水冷式の2種類です。市販されているパソコンのCPUクーラのほとんどは空冷式で、水冷式はハイエンドのゲーミングPCや自作パソコンに使用されることが多いです。

CPUクーラの使用用途

CPUクーラは、CPUを冷却するために使用されます。CPUを冷却し、発熱による温度上昇を抑えることにより、熱暴走を防いで安定動作を実現しています。そのため、CPUクーラは市販のデスクトップパソコンやノートパソコンに取り付けられている場合がほとんどです。

また、パソコンを自作するためにCPUクーラが単体でも販売されており、CPUの消費電力、メーカ、形式など種類はさまざまです。

CPUクーラの原理

CPUクーラは、主に空気もしくは水を媒体として熱交換を行うことにより冷却を行っています。

1. 空冷式

空気を媒体とする空冷式の場合は、CPUが発生した熱を熱伝導率に優れたアルミニウムできたヒートシンクに移動させます。そのヒートシンクにファンもしくは自然対流で空気を流し、放熱させることで冷却を行います。

2. 水冷式

水を媒体とする水冷式の場合は、CPUが発生した熱を水へ移動させ、その水をラジエータへ運んで放熱させます。

CPUクーラの構成

1. 空冷式

空冷式CPUクーラの構成部品は、ベースプレートとヒートパイプ、ヒートシンク、電動ファンの4つです。CPUから吸収した熱を空気に放熱するまでの熱の経路は、「CPU→ベースプレート→ヒートパイプ→ヒートシンク→空気」の順です。ヒートパイプと電動ファンは省略されたものも存在します。

CPUクーラは効率良く放熱するために、材質や構造が工夫されています。構成部品の材質は、熱伝導率や空気への熱伝達率を考慮し、銅やアルミニウムの合金です。また、CPUからベースプレートに効率よく熱を伝えるために、接触面には熱伝導グリースが塗布されています。

ヒートシンクから空気に放熱するために、多くのCPUクーラは電動ファンにより強制的に空気の流れを発生させています。電動ファンによる空気流はヒートシンクだけでなく、マザーボード (基盤) 上のメモリなど他の素子の冷却に用いられることもあります。ヒートシンクから熱を奪い温度が上昇した空気は、コンピュータのケースの外部にスムーズに排出される必要があるため、ケース内の空気の流れについても考慮し設計されます。

空冷式の放熱能力を上げるためには、ヒートシンクの大きさが重要です。消費電力が大きいCPUの冷却には、大きなヒートシンクが必要になりますが、ケース内の設置スペースによる大きさの制限を受けます。

2. 水冷式

水冷式CPUクーラの構成部品は、空冷式の熱伝導の役割を持つヒートパイプと冷却水ホース、放熱するためのヒートシンクをラジエータに置き換えたものです。ラジエータはケースの外側に設置できるため、容易にサイズを大きくでき冷却能力を向上させやすい特徴があります。

しかし、冷却水漏れによる故障のリスクがあります。

CPUクーラの選び方

CPUクーラは次の4つの観点で選択します。

1. 対応しているCPUソケット

CPUクーラによっては一部のCPUソケットしか対応していない場合がありますので、対象となるCPUソケットが対応しているか確認します。

2. 冷却性能

最近のCPUは熱暴走を防ぐために、一定温度の以上になると動作クロックを下げて発熱を小さくする仕組みがあります。つまり、冷却できないとCPUの性能が発揮できません。

一般的に高性能なCPUほど発熱量は大きいので、対応した冷却性能を持つCPUクーラが必要です。CPUクーラの仕様でTDP (熱設計電力) を記載している場合は、対象CPUのTDPをカバーできているか確認してください。

3. 静音性

静音性が必要な場合は、仕様のノイズレベルを確認した上で選択します。30dbが目安です。

4. サイズ

CPUクーラがメモリや拡張ボードなど他のパーツと干渉しないか確認する必要があります。

参考文献
https://www.biccamera.com/bc/i/topics/osusume_cpu_cooler/index.jsp
https://www.ask-corp.jp/guide/pc-parts-cpu-cooler.html