CO2インキュベーター

CO2インキュベーターとは

CO2インキュベーターとは、細胞培養を安定して行うために使用される培養装置です。

温度・湿度・CO2濃度を一定に保ち、細胞を生理的条件に近い環境で培養することが可能です。

CO2インキュベーターの使用用途

CO2インキュベーターは、CO2濃度を一定に保ち、安定した培養を行うために使用されます。バイオ分野の製造業や研究室など、その用途は多種多様です。

例えば、通気状態で細胞を培養すると、細胞自身の代謝によって培地が酸性に傾いてしまいます。これでは安定した長期培養が難しくなるため、CO2濃度を一定に保たなければなりません。ここでCO2インキュベーターが活躍します。

通例、培養のCO2濃度は、生体内に近い5%前後です。また、乳酸菌や腸内細菌といった酸素が少ない条件に生息している嫌気性を培養する場合、酸素濃度が高いと生育できないので、CO2インキュベーターを使用します。

さらに、哺乳類細胞として一般的な培養細胞 (COS7やHEK) 、ES細胞、iPS細胞のほか、昆虫細胞を用いた実験が可能です。

CO2インキュベーターの原理

CO2インキュベーターは、内側の槽の壁面を加温して槽内温度を制御します。そして、槽内のファンで空気やCO2ガスを攪拌するとともに、CO2センサーでCO2ガスを制御するのが基本的な原理です。

多くの場合、恒温槽の下にバットをおいて自然蒸発させ、体内の環境に近くの湿度95%前後になるような機構をとっています。

CO2インキュベーターの種類

CO2インキュベーターには、「温度制御」「CO2センサー」「ガス濃度制御」の方式によってさまざまな種類があります。

1. 温度制御

温度調節には、内槽外部の空気を加温するエアジャケット方式と、水で満たして加温するウォータージャケット方式があります。

エアジャケット方式は、温度到達時間が短時間で済む代わりに、ドアの開閉などで温度が変化しがちです。

ウォータージャケット方式は温度の安定はいいですが、水を使うため安定までの時間が長く、水道設備が必要です。

2. CO2センサー

CO2センサーは、赤外線式とサーミスタ式があります。赤外線式のほうが精度は高いですが高価です。一方、サーミスタ方式は安価ですが精度が高くありません。

3. ガス濃度制御方式

CO2インキュベーターには、CO2ガスボンベのみを連結する方式とO2ガスボンベ及び窒素ガスンベを連結する方式があります。

O2ガスボンベ及び窒素ガスンベを連結する方式では、酸素濃度の調節が可能です。幹細胞や腫瘍細胞の培養や、虚血実験など、低酸素条件で細胞を培養して分析したい場合に使用します。

CO2インキュベーターの選び方

CO2インキュベーターは、培養の目的に合っているかどうかを吟味して選定します。

例えば、サンプルを長期保存したり、培養で温度設定を変えたりすることがない場合、温度の安定性を重視してウォータージャケット方式を選びます。

また例えば、サンプルを短期保存したり、培養で温度設定を頻繁に変える場合、追従性に優れたエアジャケット方式がおすすめです。

CO2インキュベーターのその他情報

CO2インキュベーターは培養中、細菌や真菌のコンタミネーションが発生すると、誤差を生じるリスクがあります。

この対策として、槽内を高温にして滅菌する乾熱滅菌が可能な機器や、HEPAフィルターを搭載した装置が利用可能です。その他にも、庫内のUV殺菌、過酸化水素滅菌、純銅チャンバー仕様などの機種が発売されています。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/67
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/lab-equipment/co2-incubators.html
https://www.nuaire.com/products/co2-incubators

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