ねじりばね

ねじりばねとは

ねじりばね (英: torsion spring) とは、ねじり力を受けてねじれることによってエネルギーを蓄えるばねです。

ねじりコイルばねまたはトーションばねとも呼ばれます。洗濯ばさみなどの日用品から産業機器まで、広く使用されています。ねじりばねは小さな空間に収められるため、コンパクトな設計に適しています。

これにより、機械や装置のデザインに柔軟性を持たせることが可能です。また、適切な材料と設計のねじりばねは長い寿命を持ち、繰り返しのねじれと解放にも耐えられます。

ただし、ねじりばねは用いられるばね線の一部が強くねじれるため、その部分で応力が集中する可能性があります。これにより、一部に疲労や破損が発生する場合もあるので注意が必要です。

ねじりばねの使用用途

ねじりばねはさまざまな用途で使用されています。その特性を活かして、エネルギーの蓄積や制御、機械の動作などに利用されます。以下は使用例の一例です。

1. DVDドライブ

CDやDVDプレーヤーの蓋を手で軽く押すと、反動で開く仕組みに使われています。そのため、本体の電源を入れなくても開閉することが可能です。ばねを配置するだけで、モーターの配置が不要です。

2. 時計

機械式時計では、振り子やバランスホイールの振動が時計の正確な動作を保証します。ねじりばねはこの振動を制御する役割を果たす部品です。時計のメカニズムがねじりばねからエネルギーを受け取り、それを振り子やバランスホイールの振動に変換します。

3. 建築

ドアや窓の開閉機構にねじりばねが使われることがあります。ドアクローザーや自動ドアの動作制御に利用され、ドアの開閉をスムーズかつ簡単に制御することが可能です。

また、地震などの外部力に対して建物を安定させるため、ねじりばねが用いられる場合もあります。建物の構造に組み込まれ、地震時のねじれや振動を吸収する役割を果たす部品です。

4. 工業機械

工業プロセス内で多く存在するバルブの開閉制御に応用される場合もあります。ねじれ具合を制御することで、弁の開閉速度や力のバランスを調整し、プロセスの正確な制御を行います。

また、機械装置内で特定の部品の位置を調整するために利用される場合も多いです。部品の微調整や位置合わせを行う際に、ねじりばねを介して調整が可能です。

ねじりばねの原理

ねじりばねの原理は、ねじれによるエネルギー蓄積と解放に基づいています。ねじれはばねのばね線に圧力をかけ、その材料がねじれることでエネルギーが蓄積されます。その後、ねじれが解放されるとその蓄積されたエネルギーが解放されるプロセスです。ねじりばねは、捻じれることで材料に応力が加わります。

この応力によって分子間の結びつきが変化し、材料内部にエネルギーが蓄積されます。ねじりが進行するにつれて分子間の相互作用が変化し、ねじり圧力を蓄え貯めることが可能です。ねじりが蓄積されたねじりばねは、ねじりを解放する機構が作用することで解放しようとします。

このとき、ねじれエネルギーが材料内部から外部に向けて放出される仕組みです。ねじりが解放されると、エネルギーはばねの材料を元の形状に戻そうとする力として現れます。これによってねじりばねは元の形状に戻り、その過程で振動や運動を生じることが多いです。

ねじりばねの選び方

ねじりばねを選ぶ際には、さまざまな要素を考慮することが重要です。

1. 材質

ばねに採用される材質は、弾性率や耐久性に影響を与えます。一般的に高品質なばね鋼が材料となる場合も多いです。適切な材質を選ぶことで、ねじりばねが所望の性能を持つかどうかが決まります。

2. ばね定数

ばね定数は、応力とねじり角の関係を示す指標です。高いばね定数を持つねじりばねは、同じねじれ角でより大きな応力を発生させます。ばね定数はねじりばねの性能や用途に合わせて選定することが重要です。

3. 線径

線径は、ねじりばねのワイヤー太さを示します。線径が太い製品は一般に強い応力を持ちますが、同時に剛性も高くなります。適切な線径を選ぶことで、ねじりばねの強度や振る舞いを調整することが可能です。

4. ねじれ角

ねじれ角は、ねじりばねの角度です。ねじれ角が大きいねじりばねは多くのエネルギーを蓄積できる一方、そのねじれを解放するのに必要な力も大きくなります。本部品の用途や動作要件に応じて選択します。

5. 巻数

ねじりばねの巻数は、ねじりばねのワイヤが巻かれている回数です。巻数が多いねじりばねは同じ長さのワイヤをよりコンパクトに収めることができますが、それにより本部品の剛性も高まります。用途やスペースに応じて巻数を選ぶことが重要です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0306/

ねじ歯車

ねじ歯車とは

ねじ歯車とは、歯が斜めに切られた歯車です。

はすば歯車同士、または平歯車とはすば歯車を組み合わせた歯車を指す場合が多いです。歯筋がつるまき線としてツイストしていることや、スラスト方向へ軸力が発生することなどが特徴として挙げられます。

ねじ歯車ははすば歯車の亜種ですが、平行軸だけでなく、軸が交差した食い違い軸の場合でも動力を伝達することが可能です。歯車軸は直行している必要はなく、ねじれの位置であっても動力を伝達することができます。

また、ねじ歯車は歯が斜めに配置されており、歯同士の噛み合いが滑らかで連続的です。そのため、騒音や振動が少なく、静かに動作します。ただし、歯が斜めに配置されているので、設計や製造が比較的複雑であり、歯の形状や傾斜角度の正確な計算が必要です。

ねじ歯車の使用用途

ねじ歯車はさまざまな産業・用途で使用されます。以下はねじ歯車における使用用途です。

1. 自動車

自動車の変速機において、ねじ歯車はエンジンの出力を効率的に車輪に伝える役割を果たします。変速機の中で、ねじ歯車は異なるギア比での動力伝達を担当し、適切な速度域でのトルクと速度を提供します。滑らかな変速と静粛性の点において肝要です。

2. 工業用機械

工業用機械では、ねじ歯車が生産ラインの異なる部分で使用されます。コンベアベルトの駆動やコンピュータ数値制御 (CNC) 機械の軸駆動などにねじ歯車が利用されます。これにより、高い精度と信頼性が確保することが可能です。

3. 航空機

航空機において、ねじ歯車はエンジンや操縦系の動力伝達に用いられます。エンジンの回転運動をプロペラやファンに効率的に伝え、操縦系の制御サーボ機構においても使用される場合も多いです。

航空機には高い信頼性と耐久性が求められるため、ねじ歯車はその要件を満たす構造部品の一部です。

4. 発電機

発電機やタービンでは、ねじ歯車が高速回転の動力を発電機部分に伝えるために使用されます。これにより、効率的な発電が可能です。大規模なエネルギー供給が求められるため、ねじ歯車の高耐久な特性と効率が大切です。

ねじ歯車の原理

ねじ歯車は、斜めに切られた歯車が互いに噛み合うことによって、回転運動を伝達しています。歯筋がつるまき線状態であるため、歯車同士の噛み合いの比率が高い点が特徴です。滑らかで連続した噛み合いを実現することができます。

歯車同士が噛み合う際に、歯の先端が順次当たっていき、力が分散される仕組みです。これにより、急激な力の変化を和らげ、動力伝達が滑らかに行われます。

ただし、軸から見るとツイストした歯筋になっているため、回転時にはスラスト方向の推力が発生します。この歯車における軸には、スラスト推力を受けるための軸受が大切です。用いられる軸受としてはアンギュラ軸受が多いですが、重荷重を伝達する場合にはスラスト軸受を使用することもあります。

ねじ歯車の原理は、歯車同士の滑らかな噛み合いと連続的な接触によるものです。この仕組みによって、静粛性や効率性が向上し、高い負荷にも耐える信頼性のある動力伝達が実現することが可能です。

ねじ歯車の選び方

ねじ歯車におけるねじれ具合は右方向と左方向があり、入力軸と出力時の状態で選定する場合がほとんどです。軸が平行状態である場合は、ねじれ方向が同様である製品を使用します。軸が交差しているか、あるいはねじれの関係になっている場合は逆方向の組合せで使用します。

また、シャフトの回転方向によっても右回転と左回転の検討が必要です。ねじれ方向の選定ミスは動力がうまく伝達されないだけでなく、歯車の寿命を縮めることにもなります。

なお、歯車の歯が斜めに配置される角度をヘリカルアングルと呼びます。この角度は、歯車が1回転するごとに進む軸方向の距離です。ヘリカルアングルが大きいほど、歯車同士の噛み合いが滑らかになり、静粛性が向上します。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/catalogs/pdf/screw.pdf
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/pdf/gearabc_c.pdf

RTD

RTDとは

RTD

RTDは、Resistance Temperature Detectorの略です。温度センサーの一種で、測温抵抗体とも呼ばれます。

RTDは、金属の電気抵抗が温度の上昇に伴い増加する性質を利用した温度センサーで、金属の電気抵抗を測定することで温度を検出します。

RTDの温度検知部分であるRTDエレメントには、白金、ニッケルなど、電気抵抗の温度係数が大きく直線性のいい金属が使われます。金属の抵抗と温度との関連が正確に分かっているため、RTDは精度の高い温度測定が可能です。

RTDの使用用途

RTDは高精度で安定性・再現性に優れた温度センサーであるため、ビルや工場の空調の配管・ダクト・室内の温度測定、太陽光発電の状態監視、半導体工場のクリーンルームや冷蔵庫・冷凍庫、サウナ・プール・温泉、ビニールハウスなどの温度管理、食品の内部温度の測定など、さまざまな分野で使用されています。

特に、電気的ノイズの影響が少ないことから、RTDは工場のモーター、発動機、高電圧機器などの周辺温度の精密測定によく使われます。

RTDの特徴

金属の電気抵抗は、一般的に温度にほぼ比例して変化します。これは、温度が上昇するにつれ金属原子の動きが活発になり、電子が通りにくくなって電気抵抗が大きくなるためです。

RTDはこの原理を利用して温度を測定します。具体的には、RTDに一定の電流を流し、RTDの両端の電位差を測定して、オームの法則(E=IR)から抵抗値を算出し、RTDエレメントに使われている金属の規準抵抗値表から温度を求めます。

RTDの抵抗測定のための導線形式には、2導線式、3導線式、4導線式があり、それぞれ測定回路が異なります。

2導線式は、配線費用が安価ですが、内部の導線抵抗が全て測定抵抗値に加算されるため、抵抗値の低いRTD では測定誤差が大きくなります。

3導線式は、導線抵抗が測定回路のブリッジ両端で相殺されるため、導線抵抗を事実上無視することができ、工業計測用としては最もよく使われます。

4導線式は、電流供給端子と電圧検出端子が別々に存在しているため、導線抵抗の影響を受けることがなく、3導線式よりもさらに精密な測定が可能です。

RTDには、高精度、安定性に優れている、温度に対する感度がよく常温付近の温度測定に適しているなどの長所を持つ反面、高温測定に不向き、内部構造が微細で機械的衝撃や振動に弱いなどの短所もあります。

参考文献
https://hayashidenko.co.jp/about_sensor.html
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp
https://www.jp.omega.com/prodinfo/rtd.html

コネクタ付ケーブル

コネクタ付ケーブルとはコネクタ付ケーブル

コネクタ付きケーブルとは、異なるデバイスや機器を接続するためのケーブルです。

データや映像などの信号を送受信するために使用されます。コネクタはケーブルの一方または両方の端に取り付けられており、異なるタイプの入出力装置に簡単に接続することが可能です。

コネクタ付ケーブルはプラグアンドプレイの原則に基づいており、特別な設定や工具が不要で接続することができます。古くなったり破損したりした場合にも、比較的容易に交換することが可能です。これにより、デバイス全体を交換する必要がなくなります。

ただし、デバイス間の互換性を確認する必要があります。古いコネクタと新しいコネクタの間で互換性がない場合、アダプタや変換ケーブルが必要になることも多いです。

コネクタ付ケーブルの使用用途

コネクタ付きケーブルは、さまざまな用途で使用されます。以下は代表的な使用用途です。

1. データ転送

USB (Universal Serial Bus) ケーブルを使用することで、異なる種類のデバイス間でデータを転送することが可能です。高速データ転送と高出力充電をサポートする新しい規格であり、スマートフォンなどのデバイスとコンピュータを接続することができます。これにより、ファイルの転送やバックアップなどの作業を行うために使用されます。

2. 充電

スマートフォンやタブレットなどの電子機器は、バッテリーの充電を行うためにコネクタ付ケーブルを使用します。iPhoneやiPadにはLightningコネクタがあり、AndroidデバイスにはUSB-Cコネクタが使われることが多いです。これらのコネクタを充電ポートに接続し、デバイスの充電や同期を行います。

3. ビデオ/音声伝送

HDMI (High-Definition Multimedia Interface) ケーブルによって、高品質な映像と音声の伝送が可能です。テレビやモニターとDVDプレーヤーなどを接続して、高解像度の映像や音声を楽しむことができます。また、オーディオケーブルはスピーカーの接続などに使用され、音楽や音声を伝送します。

4. ネットワーク

イーサネットケーブルは、コンピュータネットワークを構築するために使用されます。家庭やオフィスのネットワーク機器同士を接続し、データ通信を行うことが可能です。カテゴリー5eなどの規格があり、高速で安定したネットワーク接続を提供します。

コネクタ付ケーブルの原理

コネクタ付きケーブルの原理は、異なるデバイス間で情報や電力を伝送するための物理的な接続を行うことです。ケーブル内部には導体やシールドなどが組み込まれており、これらの要素が信号や電力の伝送を可能にします。

1. 導体

導体は電流を通す役割を果たし、銅線やアルミニウム線が使われることが多いです。

2. 絶縁体

絶縁材は導体間を電気的に絶縁し、ショートや信号干渉を防ぐための役割を果たします。

3. シールド

シールドはケーブル内部の信号を外部からの干渉やノイズから保護するための層です。導電性の材料で作られており、電磁波やラジオ周波数の干渉を減少させる役割を果たします。

4. コネクタ

コネクタは、ケーブルの末端に取り付けられており、異なるデバイスやポートと物理的に接続させます。コネクタには導体が露出したピンやプラグが含まれており、デバイス間で電気的な接続を形成する仕組みです。

コネクタ付ケーブルの種類

コネクタ付きケーブルには、さまざまな種類があります。以下はその一例です。

1. USBケーブル

USBケーブルは、データ転送や充電に使用される非常に一般的なケーブルです。USB規格にはさまざまなコネクタがあります。例えば、USB-C、Micro USB、Mini USBなどがあります。

2. HDMIケーブル

HDMIケーブルは、高解像度の映像と音声を伝送するためのケーブルです。ケーブル長が長い場合、接続方向が決まっていることがあるため注意が必要です。

3. イーサネットケーブル

イーサネットケーブルは、コンピュータネットワークを構築するために使用されるケーブルです。主にRJ-45と呼ばれるコネクタが使用され、Cat 5eやCat 6などの規格があります。

4. VGAケーブル

VGA (Video Graphics Array) ケーブルはアナログ映像信号をコンピュータなどに伝送するためのケーブルです。D-sub 15ピンコネクタが一般的です。

参考文献
https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/basic-knowledge-series/basic-knowledge-of-connectors
https://www.jae.com/column/01-advantages-of-connectors/

コンベヤチェーン

コンベヤチェーンとは

コンベヤチェーン

コンベヤチェーンとは、主に生産ラインにおいて、製品を搬送するコンベヤの中でも、特にチェーン式のコンベアに使用されている駆動用部品です。

温度や重量搬送、耐久性などに対するスペックが高く、ベルトコンベアでは対応できない難しい場所でも採用されています。コンベアチェーンはスプロケットと呼ばれる歯車形状の部品と噛み合わさって使用されるチェーンです。

モーターと連結したスプロケットが回転すると、コンベアチェーンが駆動して製品が運ばれていきます。

コンベヤチェーンの使用用途

コンベアチェーンは、ベルトコンベアでは対応できない高荷重や高温環境下、高い耐久性が求められる場所で使われるチェーンです。具体例には、以下のようなものがあります。

1. ATC用チェーン/工具ポット

マシニングセンタのように複数のドリルやエンドミルなどの工具を使用する加工機で、工具を格納している装置がATCです。マシニングセンタが特定の工具を呼び出すと、ATCのコンベアチェーンが駆動して、主軸との交換位置に指定の工具を搬送します。

2. ごみ焼却処理用

ごみ焼却設備において、焼却物を焼却炉内に運ぶときにコンベアチェーンが使用されています。高温などの使用環境から、耐摩耗性が高いコンベアチェーンが必要です。

コンベアチェーンの原理

コンベアチェーンはローラチェーンの一種であり、原理も同じです。ローラチェーンは短いプレート同士をピンで連結し、外周にあるローラがチェーンを駆動するスプロケットと嵌合します。ピンとローラの間にはブッシュがあり、滑り軸受としてローラとピンとの摺動の際に荷重を受けながら、滑らかに動作させる役割を担う部品です。

プレートは外プレートと内プレートの2種類があり、それぞれ交互に連結されています。ピンはプレートとしまりばめで固定されていたり、Tピンで固定されているものもあります。

コンベアチェーンの構造

コンベアチェーンは以下の部品から構成されています。

1. プレート

スプロケットが回転したときに、実際に張力がかかるのが、外プレートと内プレートです。そのため、衝撃荷重に対する強靭性と耐疲労性が得られる構成になっています。

2. ピン

チェーンがローラーで折り返しして屈曲したときに、チェーンにかかる荷重を支える部品です。ピンは軸受け部品として、強力な抗剪断力と耐摩耗性が必要となります。

3. ブシュ

チェーンとスプロケットの接触時の衝撃を受けます。軸受部として、強靭性と耐摩耗性が必要な部品です。

4. ローラ

チェーンとスプロケットが接触するときに発生する衝撃をやわらげます。ローラは衝撃に対する耐摩耗性が必要です。

コンベアチェーンの種類

コンベアチェーンには、形状によっていくつかに分類できます。

1. Rローラ形

ローラの外径がプレートの幅よりも大きいタイプです。コンベアチェーンの基本形であり、汎用性が高いのが特徴です。主にスラットコンベア、パレットコンベア、フライトコンベアに用いられます。

2. Fローラ形

Rローラ形にガイドレールの案内になるフランジを追加したものです。フランジによって横振れが防止されます。すらっとコンベアや傾斜バケットコンベア、パンコンベアに用いられます。

3. S・M・Nローラ形

いずれもスプロケットとの噛み合う際に、衝撃や摩耗を緩和する効果があります。3つの違いはローラ外径の大きさです。

Sローラ形のローラ外径はプレート幅よりも小さいもの、Mローラ形はローラ外径はSローラよりもやや大きいもの、Nローラ形はローラ外径をMローラ外径と同じのまま、ピン径を大きくすることによって強度を高めたタイプです。主にバケットエレベータ、フローコンベアに使われています。

参考文献
http://www.kana.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/10/e1fd6bf8f2878d405c9f395bc5cd2049.pdf
https://www.senqcia.co.jp/products/chain/conveyor/

ウォームギア

ウォームギアとは

ウォームギアの概要

ウォームギア (英: Worm Gear) とは、ねじ状の歯付きシャフトのウォーム (ウォームシャフト) と、ウォームの軸方向と90度方向が回転軸となる斜歯歯車 (はすば歯車) の「ウォームホイール」とで構成されたねじ歯車の一種です。

ウォームが回転することで、ウォームに噛み合うウォームホイールの歯を送り、ウォームホイールを回転させる機構のことをウォームギアと呼びます。ウォームギアは、ウォームからウォームホイールへ回転を伝達しますが、逆にウォームホイールからウォームへ回転を伝達できません。

このように出力軸側からは回転できないことをセルフロック (自動しまり) と言います。したがって、必ずウォーム側が入力軸側になり、動力装置が取り付けられ、ウォームホイール側は出力軸側となり、動力を伝達する装置を取り付けます。この特徴から、ウォームギアは減速装置に使用される場合が多いです。

ウォームギアの使用用途

ウォームギアは軸方向を90度変えて動力を伝達し、小型で大きな減速比を得ることができることから、工場設備のベルトコンベア、スクリュージャッキ、自動車のハンドルのステアリングシステム、ワイパーの駆動装置、扇風機の首振り機構、食品製造装置の材料投入部分、オルゴール、弦楽器のペグなど、さまざまな分野で使用されています。

また、ウォームギアのセルフロック機能を活用した例として、エレベータやエスカレータの減速装置があります。ウォームギアが逆転しない現象を利用することによって、安全装置としての機能を持たせることが可能です。

ウォームギアの原理

ウォームギアの原理は、ウォームが (入力側) が1回転すると、ウォームホイールが1歯分回転します。この場合のウォームの条数 (歯数) を1条と言います。ウォーム2条の場合は、ウォーム1回転でウォームホイールが2歯分回転します。

ウォームギアの減速比は下記によって求めることができます。

   減速比 = ウォームホイールの歯数 ÷ ウォームの条数

また、ウォームギアの回転方向は、双方向 (例えば入力軸側から見て時計方法、反時計方向) 回転が可能です。これはウォームのねじれ方向を右ねじれ、左ねじれで選択することで実現できます。

ウォームギアの特徴

ウォームギアの特徴は下記の通りです。

  • 入力側と出力側で軸方向を直交させることができる (逆に言うと同軸方向には動力伝達できない) 
  • 大きな減速比が得られる (例: 1/10~1/100など) 
  • バックラッシュ (歯車間の隙間、あそび) が少ない。そのため、歯の噛み合いがよく、嚙み合い音も小さい。
  • 小さな入力トルクから、大きな出力トルクが得られる。
  • セルフロック現象が発生する。出力軸側から入力軸を回すことができないため、エレベーターなど落下事故などの発生を防ぐための逆転防止歯車機構としても利用される。
  • ウォームギアでは特に大きな減速比を得ることができため、小さな入力トルクで減速させることができる。結果的に減速機などは、比較的小型省スペースな設計が可能です。

上記のようなメリットに対して、歯車間の滑りが大きいため摩擦による熱が発生し焼き付きを起こしやく、歯車が摩耗しやすくいなどのデメリットもあります。歯車間の潤滑が重要で、耐極圧性の高い潤滑剤を使用する必要があります。

ウォームギアのその他情報

ウォームギアの材質

一般的なウォームギアの材質は下記の通りです。

  • ウォーム
    炭素鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼で歯面に熱処理等を施し硬度を上げ、歯面を研磨して耐摩耗性を向上させています。
  • ウォームホイール
    銅合金鋼などウォームより摩耗しやすい材質を使用して、焼き付き防止をするのが一般的です。他にはALBEC (アルミニウム青銅)  や、POM (ポリアセタール樹脂) など、耐摩耗性の高いエンジニアリングプラスチックも使用されます。

ラフガイド

ラフガイドとは

ラフガイドとは、工作機械や組付け機、検査機などで使われる製品を固定する治具部品の一つです。

その使用目的は大きな意味でいうと、精密な位置決めを行うまえに、ある程度の位置を事前に決めるための部品です。
主にロボットなどでセットする場合では無く、作業者が製品を治具にセットする時に使われます。

ラフガイドを使用することで、ある程度の位置に自動で製品を固定できるので、精密な位置決めが早くなるメリットがあります。

ラフガイドの使用用途

ラフガイドには以下のような使用例があります。

  1. ワークの外観形状に合わせてラフに位置決めする
    ワークの形状に対して、面と面で位置を合わせるために、治具にブロックなどをセットします。
    ブロックの取付穴は長穴になっていたり、取付ボルトより数mm大きい穴が用意されていて、実際の作業で使いやすい位置にセットできるようになっていることが多いです。
  2. ワークの素材穴などに細いピンを入れてラフに位置を決め
    精密な位置決めでは、素材穴では無くて加工した、寸法管理された穴を使用しますが、ラフガイドであれば、数mm小さいピンを入れるので素材穴でも構いません。

ラフガイドの特徴

ラフガイドにはいくつかの種類があり、特徴が異なります。
例えば以下のようなラフガイドでは、それぞれ下記のような特徴があります。

  1. L字型ブロックラフガイド
    加工する製品の角部をラフにガイドするための部品です。
    製品の角部とラフガイドの間に数mmの隙間をもたせて、ラフガイドを設置します。
    ラフガイドは通常、対角線上に2か所用意されていて、製品の位相を決められるようになっています。
    ラフガイドの製品をガイドする部分は、一般的に60度程度の傾斜がつけられていて、製品がその傾斜をたどっていくと、自動的に適切な位置へ誘導されるようになっています。
  2. ピン型ラフガイド
    製品の素材穴や加工穴に、数mm細い径のピンを複数いれて製品の位置や位相をラフにガイドします。
    製品の穴内を傷つけないように、ピンの先端にはRがつけられていたり、樹脂が材質に選ばれていたりします。
    ただし樹脂製の場合は、鉄くずなどが刺さった状態で使用していて、かえって製品の穴内に傷をつけることがあるので、使用する環境を考慮する必要があります。

定荷重ばね

定荷重ばねとは

定荷重ばねとは、引き延ばされた距離に関わらず一定の荷重が発生するばねのことです。

一定の荷重を支える必要がある場合に、使用されます。日常的によく使われるばねは線ばねと呼ばれ、金属線をコイル状に巻きあげたばねです。定荷重ばねは薄板をドラムに巻き付けた構造になっていて、ばねの外側を引っ張るとドラムが回転してばねが引き出されます。

定荷重ばねは比較的シンプルな構造であり、設計や取り付けが比較的容易です。そのため、製造コストを抑えることができます。また、適切に設計・製造された定荷重ばねは、長期間にわたって安定した性能を維持することが可能です。

ただし、定荷重ばねは特定の荷重に対して設計されており、その範囲外の負荷に対しては脆弱である場合があります。予期せぬ負荷がかかる可能性があるときは、適切な安全マージンを考慮することが大切です。

定荷重ばねの使用用途

定荷重ばねはさまざまな用途で使用されます。以下は定荷重ばねの使用用途一例です。

1. 建築・構造物

建築物や構造物では、定荷重ばねがさまざまな目的で使用されます。橋梁の支持において、橋の荷重や車両の通行によって発生する荷重を支える役割です。定荷重ばねは、橋梁の荷重分布を均一化することで、安定性を確保できます。

また、建物の基礎部分の支持にも利用されます。建物の重さを安定的に支える役割を果たし、地盤の沈下や建物の歪みを抑制します。特に、地震などの自然災害に対しても耐久性を高める場合に効果的です。

2. ドアヒンジ

ドアヒンジなどの開閉機構では、一定の重さを支える定荷重ばねが利用されます。これにより、開閉時にドアやがスムーズに動き、安定した動作を確保することが可能です。特に大型のドアでは、定荷重ばねが重要な役割を果たします。

3. 工業製品の重量調整

産業機械や生産ラインなどでは、製品の重量を調整する必要がある場合があります。定荷重ばねは、製品の重さを一定に保つために使用されることが多いです。これにより、製品の品質を一貫して保ち、生産ラインの安定性を確保します。

また、製品の重量が変動することで生じる機械の不調和を防ぎ、トラブルを減らすことにも役立ちます。

定荷重ばねの原理

定荷重ばねは、一定の荷重を支えるための特殊なばねであり、その原理は力学に基づいています。定荷重ばねの主な原理は、フックの法則と作用・反作用の法則です。

フックの法則とは、弾性体の変形に対する応力と変位の関係を示す力学の法則です。この法則によれば、弾性体の変形が比例する範囲では、応力と変位は直線的な関係にあります。定荷重ばねはこのフックの法則に基づいて設計され、荷重がかかると変形することで反力を生じ、一定の荷重を支える能力を持ちます。

また、定荷重ばねは設計された荷重範囲内で、一定の変位を示すように調整されていることが多いです。このため、定荷重ばねにかかる外力と、ばねが発生する反力が均衡することが重要です。均衡が成立することで、一定の荷重を支えられます。

定荷重ばねは、このようなフックの法則と均衡条件に基づいて、一定の荷重を支えるために設計されています。適切な材料や寸法を用いて、目的に応じた定荷重ばねを製造することで、安定性や信頼性の高い構造や装置を実現することが可能です。

定荷重ばねの選び方

定荷重ばねを選ぶ際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。以下はその一例です。

1. ばね材質

定荷重ばねの材質は、ばねの弾性特性や耐久性に影響を与えます。一般的に、鋼やステンレス鋼が使われることが多いです。材質によって、ばねの弾性変形の範囲や強度が異なるため、選択する材質は目的に応じて適切に決定する必要があります。

2. ドラム材質

定荷重ばねが巻き取られているドラムの材質も重要な要素です。ドラムはばねを巻き取って保持する部分であり、強度と耐久性が必要です。一般的に、鋼や硬質樹脂がドラムの材質として使用されます。

ドラムの材質によって、ばねの適用範囲や耐久性が異なります。したがって、使用環境と目的に応じて適切なドラム材質を選択することが必要です。

3. 定格荷重

定荷重ばねの定格荷重は、ばねが設計された荷重の範囲を示します。選ぶべきばねの定格荷重は、使用する装置や構造物にかかる荷重に応じて適切に決定することが必要です。定格荷重を超えるような過大な荷重がかかると、ばねの変形が予想外の範囲に及ぶ可能性があり、安全性や性能に問題が生じる恐れがあります。

4. 寸法

定荷重ばねの寸法は、ばねの設計において非常に重要です。寸法には、ばねの長さや外径、巻数などが含まれます。これらの寸法は、ばねの剛性や変形量、応力分布などに影響を与えます。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td04/a0077.html
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/accur-sougou/book/accur-sougou-P0091.pdf

ハンドバルブ

ハンドバルブとは

工作機械や搬送装置、検査装置など様々な生産設備では、圧縮エアーが動力源として使われています。

圧縮エアーが生産設備に送られて、それによりエアーシリンダーが駆動して製品が搬送されたり、ロボットが製品をクランプしたり、製品の清掃用にエアブローを当てたりします。

ハンドバルブは切り替え用のレバーやハンドルを使用して、作業者が手動で配管やエアーチューブ内のエアーの流れる方向を変えたり、止めたり、流量を調整するための装置です。

ハンドバルブの使用用途

ハンドバルブは以下のような使用例があります。

  1. 搬送装置の速度制御
    工作機械から製品を取り出して、後工程に搬送する装置(ローダーやシフターなど)は移動速度が速すぎると、製品が振動で落下したり、位置がずれたりします。
    ハンドバルブでエアー流量を調整して、問題の無い速度に変えることができます。
  2. 交換式治具の切り替えバルブ
    多品種を流動する設備で、機種変更する時に治具を交換することがあります。
    エアーシリンダーのクランパーがついている治具では、エアーホースを一度外して、付け替える作業があります。
    切り替えバルブで治具に供給するエアーを止めてから、ホースを外せばエアー漏れが防げます。

ハンドバルブの特徴

ハンドバルブにはさまざまな種類があり、それぞれの特徴を説明します。

  • 残圧抜きバルブ
    生産設備が異常で途中停止したときなどに、設備内にエアー圧が残った状態で異常処置すると、非常に危険です。
    何かの拍子でシリンダの引っ掛かりが外れて、突然反動で動いて作業者が挟まれる恐れがあります。
    そのために残圧抜きハンドバルブを配管経路につけておけば、残圧を抜いてから異常処置ができます。
  • 方向切換え弁
    エアーの流れる方向を変えて、設備の動作を変えます。
    弁本体についているレバーハンドルに、エアーが流れる方向が図示されています。
    例えばクリーンエアーを供給する検査装置では、エアー配管にフィルターを設置します。
    フィルターは定期清掃が必要ですが、清掃中に設備を動かせなくなると生産がストップしてしまいます。
    そこでフィルターを2つ並列回路で用意しておき、方向切換え弁で清掃しない側の回路を選択すれば、生産をストップせずに清掃が可能になります。
  • 流量調整弁
    弁本体にネジ式のつまみがついていて、つまみを絞っていくと弁内部のエアー流路が徐々に塞がれていくようになっていて、通過するエアーの流量が絞ります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M1900000000/M1908000000/M1908010000/

治具部品

治具部品とは

治具とは工作機械などで、大量に同じ品質の製品を作るために使用される位置決め装置です。

また製品を固定するのための器具が用意されています。
治具に製品をセットして固定すると、製品が常に同じ位置にセットされて、穴あけ加工などの位置が安定します。
その治具には、製品の位置を決めるために幾つかの部品が取り付けられています。

具体的には、位置決めピンや、基準座ブロック、クランパーラフガイドといった部品です。

治具部品の使用用途

治具部品には以下のような使用例があります。

  1. 加工用治具
    マシニングセンタ旋盤フライス盤などの工作機械で、治具を活用すると作業者が製品ごとに位置だし調整をする必要が無くなります。
  2. 組み立て用治具
    組み立て工程では産業用ロボットなどを使用して、ボルトの組付けなどの部品の取り付けなどを行います。
    作業者と違い、必ず同じ位置に製品がセットされていなければ、産業用ロボットの場合、組付け不良を起こしてしまいます。
  3. 検査用治具
    検査工程では画像処理を使用した検査の場合、登録された画像データと照合して判定をするため、製品の位置決めが安定していないと、問題が無い製品でも異常判定されてしまいます。

治具部品の特徴

治具部品の特徴について各治具部品ごとに説明します。

  • 位置決めピン
    製品の加工基準となる素材穴に入れるピンです。
    通常は2本で一対となっており、1本は先端が丸型、もう一本がダイヤ型になっています。
    丸型ピンで製品の位置を決めて、ダイヤ型で位相を決めます。
    片側のピンがダイヤ型になっている理由は、両方が丸ピンだと製品のセットが難しくなるためです。
  • 基準座ブロック
    製品の平行を確保するために、治具に取り付けられている部品です。
    製品の基準座と呼ばれる位置を受けるように、用意されています。
    通常は3点で受けることが多く、その理由は4点以上になると当たらない基準座が出てしまうからです。
    製品のセットが間違っていないか、毎回確認するために、基準座にはエアー穴がついていて、基準座内部の圧力を確認しているものもあります。
  • クランパー
    製品が加工中の負荷で動かないように固定する部品です。
    バネやエアー、油圧など色々な動力源で固定をしますが、加工中の負荷に耐えられるクランプ力を確保できるものを選定します。