免震装置とは
免震装置とは、地震動を建物や構造物に直接伝えないようにするための装置です。
免震装置は、地震の振動エネルギーを遮断または吸収することで、建築構造物の損傷や内部設備の破損を防止します。従来の耐震構造が建物全体で地震エネルギーを吸収し耐える方式であるのに対し、免震装置は建物を地盤から機械的に分離する点に特長があります。
主な構成部材には、鉛系減衰要素を組み込んだゴム弾性体、摩擦力を利用した可動支持機構、およびオイルや鋼材を用いた減衰装置などがあり、これらが振動エネルギーの吸収と水平変位の抑制を担います。構造物の基礎と上部構造の間に設置されることが一般的であり、特に高層建築物や病院、データセンターなど、機能の維持が求められる重要施設での採用が増えています。さらに、地震後の点検や性能確認が比較的容易である点も利点です。
免震装置の使用用途
免震装置の主な使用用途を以下に示します。
1. 建築分野
住宅、オフィスビル、病院、公共施設などでは、地震被害防止が主な目的です。
住宅では、積層ゴム系支持体などの免震部材を基礎に設置することで地震エネルギーの伝達を抑え、家具の転倒や構造の亀裂を軽減します。病院やデータセンターでは、免震によって医療機器やサーバーなどの精密設備を安定して保護します。
2. 産業施設分野
産業施設では、生産ラインやプラント設備全体の操業継続性を確保するために免震装置が導入されています。
特に化学プラントや発電設備では、液化ガス貯槽や制御システムなどへの振動影響を抑えることが重要であり、積層ゴム系支持体や摩擦すべり機構、エネルギー吸収装置が多用されます。これにより、地震時の運転停止リスクを低減し、設備の安定稼働を実現します。
3. インフラ施設分野
橋梁、鉄道駅舎、上下水道処理場などのインフラ施設でも免震装置が活用されています。
橋梁では、橋脚部に免震支承を設けることで、地震動による橋桁の落下を防止します。鉄道施設では、駅舎や信号制御棟などに免震構造を採用することで、地震後の輸送機能の早期回復が可能です。