シール剤

シール剤とは

シール剤とはシーリング剤とも呼ばれ、建物や配管などの防水性や気密性を高めるために、隙間や継ぎ目に塗布・充填する素材です。

建築現場で業務用に使われるだけでなく、一般用としても外壁のひび割れ補修や屋根の雨漏り補修などの応急処置に使用されます。ホームセンターなどでもさまざまな種類のシール剤が販売されており、手に入りやすい素材です。

シール材」という用語は「シール剤」とは意味が異なります。液状やペースト状の溶剤であるシール剤に、シールテープやゴムパッキンなど定形の材料も含めた「シーリング材料」を指す用語です。

シール剤の使用用途

シール剤は、建築物の外装・内装や配管など幅広い場所で、気密性や防水性を強化するために使われます。また、温度変化や振動・圧力などで生じる接合部のズレを防ぐためにも使われます。

一般建築物でシール剤が使われるのは、主に以下の箇所です。

  • キッチンや浴室、洗面台などの水まわり
  • 窓サッシと外壁の間の隙間
  • 外壁材と外壁材の接合部

つまり、シール剤は建物内での水漏れのリスクがある箇所、建物内への水の侵入のリスクがある箇所、部材が緩衝し破損のリスクがある箇所に使用され、効果を発揮します。

さらに、水道管やガス管など配管の継ぎ目にも使われ、水漏れ、ガス漏れから保護します。水道管や給湯配管など飲み水用の給水配管に使用されるシール剤は、気密性だけでなく防錆性、防食性にも優れていることが大切です。

シール剤の原理

シール剤の原理は、原料のポリマーをさまざまな方法で硬化させ、塗布箇所の隙間や接合部を充填・接着することです。

シール剤を硬化させる過程には次の2つがあります。

  • 1成分形
    原料ポリマーを硬化させる成分があらかじめ混合されているタイプ
  • 2成分形
    2つの成分を混練して硬化させるタイプ

1成分形のシール剤は、混合不足や硬化不良が少なく品質的に安定していることや、カートリッジ型で手間がかからないことメリットです。しかし、乾燥に時間がかかります。

2成分形のシール剤は、塗布箇所の環境条件によって硬化の強度や速度がコントロールできることがメリットです。しかし、攪拌機や専用のアプリケータが必要で手間がかかります。また、作業者のカンコツに依存しているため、品質にバラツキがあります。

シール剤の種類

シール剤には1成分形と2成分形の2タイプがありますが、1成分形は、さらに大きく以下の3種類に分かれます。

1. 湿気硬化タイプ

湿気硬化タイプは、原料ポリマーが空気中の水分と反応して硬化します。最も一般的な種類のシール剤です。シリコン系、変成シリコン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系があります。

2. 乾燥硬化タイプ

乾燥硬化タイプは、原料ポリマーが乾燥することで硬化し、粘着力が強いシール剤です。アクリル系とブチルゴム系があります。

3. 非硬化タイプ

非硬化タイプは、酸素に反応して表面に膜が形成されますが、内部は硬化しません。シール剤が使われはじめた頃は、この非硬化タイプが主流でした。油性コーキング材がこのタイプに相当します。耐候性には優れていないため、使用の際には注意が必要です。

シール剤のその他情報

シール材の原料

シール剤にはそれぞれの種類に次のような特徴があります。

  • シリコン系
    比較的安価で、耐久性、密着性に優れ乾燥も早いが、使用後に塗料を上塗りできない
  • 変成シリコン系
    使用可能な材料が幅広く、塗料を上塗りできるが、価格が若干高め
  • ウレタン系
    耐久性が非常に高く、塗料の上塗りもできるが、紫外線に弱い
  • アクリル系
    水性の溶剤で湿った場所にも使用でき、上から塗装することもできるが、耐久性が低い

このような特徴をふまえ、使用する場所、用途に応じて、適切なシール剤を選択することが大切です。

参考文献
https://www.sharpchem.co.jp/caulking/Illustrate-the-type-of-coking-agent.html
http://www.nihon-hermetics.co.jp
https://smile-recipe.com/sealing-coking-difference

シリコンシート

シリコンシートとは

シリコンシート

シリコンシートとは、シリコンゴムをシート状に加工し様々な特性を持った薄いシートのことです。

生活用品から工業用品まで幅広い用途で使用され、様々な機能を持っています。シリコンシートの原色は乳白色の半透明ですが、染料で着色可能なため様々なカラーがあります。メーカーによって「シリコンゴムシート」、「シリコンシート」など表記されますが、いずれも同じものです。

シリコンシートの使用用途

シリコンシートは汎用性が高く、様々な場面で使用されますが、具体的には下記の用途があります。

1. 精密機器の緩衝材や保護シート

シリコンシートの厚みを100μm程度の薄さに加工し、透明度をガラスと同等の95%にして柔軟性を上げると精密機器の緩衝材や、液晶画面やタッチパネルなどの保護フィルムに使用することができます。弾性が高く、薄いフィルム状にすることで自由曲面に合わせて密着させることが可能になります。

2. 配管の保護材

キャタピラ型シリコンシート

図1. キャタピラ型シリコンシート

シリコンシートの原料となるシリコンゴムは、オゾンなどの浸食を受けず紫外線に強い特徴があるため、屋内外の配管の保護材などとして利用されています。配管の保護材に使用する場合は図2aおよび図2bに示すようなキャタピラタイプのシリコンシートが用いられます。

3. 生活用品

シリコンシートは化学的に安定した生理的不活性の良い材料で人体への影響もなく、無色無臭で透明性にも優れているため、キッチンまわりの雑貨品やベビー用品などにも使用されています。

4. 滑り止め

凸形状を付けたタイプのシリコンシート

図2. 凸形状を付けたタイプのシリコンシート

パソコンやスマートフォンの底面に貼り付ける滑り止めや、自動車の車内などで使用される滑り止めトレーなどもシリコンゴム製のものが多くあります。滑り止めとして使われる場合は上記のような凸形状をしています。円管状や四角枠形状のシリコンシートはパッキンとしても使用されます。

シリコンシートの原理

シリコンシートは、シリコンゴムを原料として作られます。シリコンゴムは、地球上に酸素の次に多い元素Si (ケイ素) を軸とした有機ケイ素化合物よりなるゴムです。

シリコンゴムは高温での耐油性に優れ、耐熱性・耐寒性にも優れ、電気的な絶縁性をもち、耐候性や耐薬品性も非常に高い物質です。高い電気絶縁性を生かし、基板の部品間の隙間を埋めると共に絶縁するポッティング材として使用されています。

また、高い耐熱性と熱伝導率が低い特性を持つことから、調理器具の持ち手部分などに多く使用されています。耐薬品性に優れていることから、メッキ時のマスキング用ゴムとしても有用です。

シリコンシートの種類

シリコンシートの種類は用途によって様々あるため、適切な種類を選定することが大切です。

1. 粘着性を持ったタイプ

シリコンシートは粘着性があっても簡単に剥がれてしまうため、専用の両面テープや接着剤を使用して貼り付けをします。粘着性がないタイプは接着層が必要となります。

2. 引き裂き強度を高めたタイプ

シリコンシートは引っ張る力に弱く、比較的簡単にせん断し、耐摩耗性も良くないため、引き裂き強度を高めたシリコンゴムシートが製造されました。引き裂き強度を高めたことにより耐摩耗性も確保しています。

3. その他

上記以外に下記のような種類があります。

  • 導電物質を拡散して導電性を持たせたもの
  • 放熱性を持たせてCPU内部など高発熱部位の放熱冷却に適するもの
  • 内部を発砲させてスポンジ状にしたもの
  • 難燃性能をもつものなど
  • 食品用に抗菌加工したもの

シリコンシートのその他情報

1. シリコンシートの特徴

シリコンシートは主に下記のような特徴があります。多様な性能を付加出来るため、工業用品から汎用品、家電品、生活用品など様々な用途で使用でき、人体に及ぼす影響も限りなく少ないです。

  • 耐熱性だけでなく耐寒性にも優れていることから、-100℃〜250℃でも弾力性を保持可能
  • ショア硬さ10度以下から90度以上の幅広く加工可能
  • 撥水性が良好で25℃程度では酸素などのガス透過性が良好
  • 全抜き加工やキスカット加工、スリット加工および単板加工やラミネート加工など各種加工ができ、様々な製品への展開が可能

2. シリコンゴムの身近な用途

電子レンジ扉パッキン模式図

図3. 電子レンジ扉パッキン模式図

シリコンシートの原料となるシリコンゴムは、所定の形状に加工されて電子レンジの扉や冷蔵庫のドアやのように密閉する必要がある家電製品のパッキンなどに使用されています。

参考文献
https://kinokikou.jp/info/knowledge/special-quality-of-silicone-rubber/
https://www.silicone.jp/catalog/pdf/rubber_j.pdf
https://kotec-unicon.jp/
https://www.sk-co-ltd.com/menu/silicone/silicone13_sr_sheet.html
http://sansui-sss.jp/example.html#example-practical
http://www.sunpoly.co.jp/product/product5.php
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/industrial-medical/product/1200457_7256.html

クリップナット

クリップナットとは

クリップナット (英: clip nut) とは、板状のクリップにナットが溶接されているナット、もしくはねじ穴の開いたクリップ状の部品のことです。

対応するねじのサイズや、長さには種類があり用途に応じて選択します。挟み込むクリップ部分のサイズは、挟み込むことができる板材の範囲が決まっており適切なサイズを選択する必要があります。クリップ部、ナット部の素材は金属であることが多いですが、一部自動車用など樹脂製の製品もあります。

クリップナットの使用用途

クリップナットは主に板状の部品や部材を固定するために使われます。自動車の外装では車体前後に取り付けられる樹脂製のバンパーカバー下部と車体床下部の樹脂製アンダーカバーの固定などに使用されます。バンパーカバーへのナンバープレートの固定部に使用されている車種も多いです。

自動車の内装においては、狭い部位の樹脂製内装部品の固定に使用されていることがあります。オートバイの外装部品固定に使用されていることも多いです。建築関係においては、高速道路の防音壁 (吸音壁) や高所の壁面固定に使用されます。

クリップナットの原理

クリップナットは主に材料や部品を挟み込むクリップ部と、ねじやボルトを固定するナット部で構成されています。部材に挟み込んで仮固定できることから、ナットを止めるスペースがないときや多数の箇所に使用するときにあらかじめ部材に取り付けておくことができるため、締め付け工数の低減も可能です。

挟み込む部分に位置決めの突起を有した製品もあります。クリップ部はU字、またはJ字の断面をしておりクリップ部の幅や挟み込むことができる板厚に応じて適したサイズを選択します。材質は金属であることがほとんどで、鉄 (鋼) 製の金属や鉄表面に錆防止のための表面処理としてクロメートメッキ処理をされたものがあります。鉄のほかにはステンレス素材でできた製品もあるが鉄製に比べてやや高価です。

クリップナットのナット部は主にメートルねじに対応したものとタッピングビス (ねじ) に対応したものの2種類あります。メートルねじに対応したクリップナットは、M3、M4などJIS規格に対応したねじ (ボルト) 太さ、挟み込む板材の厚みから選択します。部材の穴径や重さ、必要とする締め付けトルクから適切なサイズを選択します。適応ねじサイズに応じてクリップ部のサイズも大きくなるので取り付け予定のスペースの確認も必要です。タッピングビスに対応したクリップナットビスの太さや長さ、板材の厚さから適切なサイズを選択します。

参考文献
http://www.kfc-net.co.jp/products/cat01/46.html
https://www.esco-net.com/wcs/escort/ec/detail?hHinCd=EA949GS-208&mode=LINE
https://tanida-web.co.jp/cgi-bin/juran/page.cgi?act=page&p_id=8&id=34

エアレギュレータ

エアレギュレータとは

エアレギュレータとは、圧縮空気の圧力を高圧から低圧へ減圧する機器です。

入力された空気やガスの圧力を一定の範囲内に保ちながら、必要な流量を提供します。これにより、特定の作業やプロセスに必要な圧力や流量に調整します。エアレギュレータには圧力調整用のつまみがあり、基本的には出力圧力を調整可能です。

圧力設定を変更することで、異なるニーズや要件に対応することができます。これにより、多様な用途に対して柔軟に対応可能です。圧力を調整することで、装置やシステムの安全性確保にも寄与します。過剰な圧力上昇を防ぐことで、機器の故障や事故のリスクを低減することにもつながります。

また、減圧することで、エネルギーの効率的な使用も可能です。減圧することで出力エネルギーの無駄な消費を防ぎ、コスト削減などに貢献します。

エアレギュレータの使用用途

エアレギュレータはさまざまな分野・用途で使用されます。特に、製造業において使用される場合が最も多いです。

1. 製造業

製造業では、圧縮空気を使用する機器に対して使用されます。エアリフトやコントロールバルブがその一例です。圧縮空気の入力圧力を制御し、一定の範囲内に保つ役割を果たします。

また、エアツールの運用においても、エアレギュレータは広く使用される機器です。エアツールとは圧縮空気を使用した工具であり、エアーペイントスプレーやエアーインパクトレンチなどがその一例です。塗装や機械組立工事などで広く使用されています。

2. 医療業界

医療分野でもエアレギュレータは使用されます。酸素供給装置や人工呼吸器など、医療機器において正確な圧力や流量の制御が必要な場合に使用されます。患者の治療やケアにおいて、安全性と信頼性を確保するために重要な機器です。

エアレギュレータの原理

エアレギュレータは本体、圧力調整器、制御弁などで構成されます。

1. 本体

本体は一般的に金属製またはプラスチック製です。内部の部品を保持し、エアレギュレータを取り付けるための接続ポイントの役割を持ちます。

2. 圧力調整器

圧力調整器は、ばねまたはダイヤフラムと呼ばれる機械的な構造です。圧力の変動に応じて変形し、それによって制御弁の開度を変化させます。

また、圧力の調整を行うための調整ダイヤルが備わっていることが多く、これを使用して所望の圧力に設定可能です。

3. 制御弁

制御弁は圧力制御用の部品です。一般的に弁体と弁座から構成され、互いに密着することで流路を狭めます。弁体の開閉によって圧力の調整を行います。

エアレギュレータの選び方

エアレギュレータにはさまざまな要素があるため、以下を考慮しながら選定することが必要です。

1. 圧力範囲

エアレギュレータには設定可能な圧力範囲が存在するため、使用圧力に留意して選定する必要があります。まず、使用可能圧力を確認します。使用可能圧力とは、入口圧縮空気に許容される最大圧力です。

入口の空気圧力が使用可能圧力を超過すると機器の故障や破裂が発生して危険なため、超過しないように選定します。また、設定圧力範囲も重要です。設定圧力範囲はエアレギュレータで設定可能な圧力の範囲です。出力機器で必要とされる圧力に設定できる機器を選定します。

2. 接続方法

接続方法配管と接続する方法を指します。一般的にはねじ込み接続の製品が多いです。ねじ込み方式にはRとRcという規格があり、Rcの方が気密性が高い特徴を持ちます。

接続口径は1インチを基準にされることが多く、1/8や1/4などと表記されます。一般的には1インチ以下の小口径の製品が多いです。必要流量が多い場合は、口径が大きくなる傾向です。

3. 仕様

エアレギュレータにはいくつかのオプションが存在します。エアフィルターが付属したフィルタレギュレータが販売されています。

圧縮空気中の水分を除去することが可能なため、広く使用される機器です。また、小型タイプや外付タイプも販売されているため、用途に合わせて選定します。

参考文献
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/pisco-sinku/book/pisco-sinku-P0460.pdf
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/25/

高圧ポンプ

高圧ポンプとは高圧ポンプ

高圧ポンプとは差圧を用いて動作するポンプの中でも、吸引・吐出のための圧力が高いポンプのことを指します。

「高圧」といっても圧力値に関する明確な定義はありません。

メーカーによって「超高圧ポンプ」という名称の商品を1,000MPa以上の性能の機種に対して呼ぶこともあれば、300MPa程度の性能の機種に対して同様に呼んでいることもあります。

同様に、高い揚程(流体をくみあげることのできる高さ)を可能にするポンプのことを高圧ポンプと呼ぶこともあります。 

高圧ポンプの使用用途

高圧ポンプは、発電用ボイラの給水ポンプ (BFP: Boiler Feed Pump) に用いられたり、洗濯機、冷蔵庫、自動車等の製造工程ではデスケーリングポンプとして、さらに、海水淡水化の(中東など、水不足が深刻な地域で海水から真水を生成して飲料水に利用する)技術の用途に用いられたり等、非常に幅広い分野で用いられています。

また、高圧ポンプを使用すれば、少ない水量で強力な洗浄、剥離を行うことが可能であること(いわゆる「ジェット洗浄」)から、高圧洗浄機にも使用されます。 

高圧ポンプの原理

高圧を生み出すポンプは非容積式ポンプのうち、遠心ポンプにより実現されます。

遠心ポンプの圧力を生み出す能力は、渦巻ポンプタービンポンプ、多段渦巻ポンプの順に高くなりますのでこれらのタイプの原理について順に説明します。

渦巻ポンプにはケーシング内部に羽根車があり、モータで羽根車を回転させます。羽根車が取り付けられる回転軸の方向から液体を吸い込むと、内部に満たされた液体は羽根車が回転すると中心部と外周部との間に圧力差が生じます。液体は低圧の中心部から吸い込まれると、遠心力により軸直角方向(遠心方向)、つまり、外側へ押し付けられ、ケーシング内の渦形室(ボリュート)でさらに圧力が高められて最終的に吐出口から送り出されるしくみになっています。

タービンポンプの場合は、これに加え、回転する羽根車の外周に案内羽根(ガイドベーン)と呼ばれる回転しない固定された翼が配置されており、羽根車から出た液体の速度が案内羽根に導かれ、その案内羽根の間を通過するうちに徐々に減速し、代わって圧力エネルギーへと変換されて、最終的に高圧の液体が吐出されるしくみになっています。

多段渦巻ポンプでは一つの軸に回転羽根とケーシングを何段も重ね、段階的に揚程を上げるしくみになっており、これにより、更に高い揚程の実現が可能になります。

参考文献
https://www.ebara.co.jp/about/technologies/abstract/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/08/24/251_P04.pdf
https://www.ebara.co.jp/about/technologies/abstract/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/08/24/251_P04.pdf
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4599#h3_5

負荷試験機

負荷試験機とは

負荷試験機とは、発電施設の性能を確認するために電気負荷を生み出す機械です。

発電機などの発電装置を非常用発電機として運用する場合、有事の際に十分な能力を発揮する必要があります。スプリンクラー設備や屋内消火栓ポンプ、排煙機などの運転がその一例です。これらの発電機が能力を定格仕様どおりに発揮できることを確認するために、負荷に電気を供給する試験を定期的に行う必要があります。

ただし、実際にスプリンクラーなどを運転するのが困難な場合も多いです。そのような場合は、疑似負荷による試験を実施することが一般的です。この疑似負荷に負荷試験機が使用されます。

負荷試験機を使用することで、発電機を最大出力で運転しながらテストすることができます。これにより、発電機の性能を最大限に引き出し、効率的にテストを行うことが可能です。また、発電機に異なる負荷をかけてテストすることができるため、動作特性や性能を様々な状況で評価することが可能です。

負荷試験機の使用用途

負荷試験機は主に発電機を有する場合に使用します。以下は用途の一例です。

1. 病院・公共施設

病院では電力供給の断絶に備えて独自の発電機を備えていることが多いです。負荷試験機はこれらの発電機の定期的なテストや定格負荷下での性能評価に使用されます。これにより、発電機が要求される負荷に対して十分な電力を供給できることを確認することが可能です。

病院以外にも、老人ホームなどの介護施設や上水道の汲み上げポンプなどに発電機を利用することもあります。これらの施設に電力が供給されていることは、地域住民の生命維持の観点から重要です。したがって、定期的に負荷試験機で性能を評価する必要があります。

2. 商業施設

商業施設では建物内の電力供給の信頼性を確保するために負荷試験機が使用されます。これにより、発電機やUPSなどのバックアップシステムが適切に機能するこかをテストすることが可能です。特に、生鮮食品や食料品を扱う場合、冷凍機が停止しないようにバックアップすることで、食品廃棄を防止します。

3. データセンター

データセンターでは電力供給の安定性が極めて重要なため、UPSを使用して電力供給することが多いです。UPSは電力が一時的に失われた場合に、データセンターの運用を継続するために使用されます。負荷試験機を使用してUPSが実際の負荷条件下で正常に機能することを確認し、データセンターの可用性と信頼性を担保します。

4. 発電所

発電所では、発電機が安定して電力を供給できるかを確認するために負荷試験機が利用されます。これにより、発電所が電力需要の変動に迅速に対応できることを評価します。また、定期的な保守や点検時にも負荷試験機が使用され、発電機の性能の変化や問題を早期に検出することが可能です。

負荷試験機は様々な容量・電圧に対応しています。特に変圧器を組み合わせることにより、高圧 (6600/3300V) や特別高圧 (11~77kV) の試験にも対応可能であり、したがって、大型の発電機の負荷試験にも容易に対応することが可能です。 

負荷試験機の原理

負荷試験機は以下のような部品・機器によって構成されます。

1. 抵抗器

負荷試験機の大部分は抵抗器です。抵抗器は電流を流すと発熱する素子であり、電力を消費して熱エネルギーに変換します。これにより、負荷試験機は電力を消費し、発電機やUPSに負荷をかけることが可能です。

2. 遮断器

負荷試験機は発電機に対する負荷をON/OFFさせるために遮断器が備えられています。遮断器は電気回路を開閉して負荷を接続または切断する役割を果たします。これにより、負荷試験機は必要に応じて負荷を調整し、適切な試験条件を確保することが可能です。

3. 制御装置

負荷試験機の操作や制御は制御装置によって行われます。制御装置は冷却ファンや遮断器、抵抗器などの各部品を制御し、負荷試験機の動作を調整する重要な機器です。また、負荷の変化や試験条件の設定なども制御装置を介して行われます。

制御装置にはコンピューターやPLCなどが使用されることが多いです。

4. 冷却ファン

負荷試験機は運転すると発熱するため、熱を効果的に放熱する必要があります。そのため、冷却ファンが搭載されていることが多いです。冷却ファンは負荷試験機内の熱を外部に排出し、装置の過熱を防ぐ役割を果たします。

負荷試験機の選び方

負荷装置を選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 電源の種類

負荷試験機は接続する発電・蓄電系統の電源電圧に対応している必要があります。一般的には商用電源には交流が使用され、バッテリーなどの蓄電装置のテストには直流電源が使用されます。使用する電源の周波数や電圧または相数を確認し、適切な負荷試験機を選択することが重要です。

2. 負荷容量

負荷試験機の負荷容量は装置が生成できる最大の電力負荷を示します。選択する負荷試験機はテスト対象の負荷要件に合わせて適切な負荷容量を選ぶことが必要です。一般的に負荷容量はkWやkVAなどの単位で表されます。

3. 分解能

負荷試験機の精度はテストの正確性と信頼性に影響を与えます。分解能は負荷を変化させることができる最小単位を示す指標です。より高い分解能と精度を持つ負荷試験機によって、正確なテスト結果を出すことが可能です。

参考文献
https://www.yodohen.co.jp/product/test/load/
https://kyushu-lts.com/load-test/two-methods/
http://www.sougo-ds.co.jp/gijifuka/index3.html
「消防用設備等の点検要領一部改正について(通知)」(消防予第373号。平成30年6月1日)

荷重試験機

荷重試験機とは

荷重試験機

荷重試験機とは、材料の主に強度を調べるための試験装置です。

荷重試験機で行われる多くの試験においては、試験用のテストピースを作製します。荷重試験装置は通常、上下の動きを試験片に対する引張・曲げ・圧縮・せん断などの荷重として加えることによって、荷重に対する材料の変形、伸びや破断といった挙動を確認します。

荷重試験機は試験装置メーカーによっては通称、万能試験機  (英: universal testing machine) とも呼ばれます。荷重試験機は主に鉱業を含む各種産業界の企業、研究機関、大学において利用される試験機です。

金属、非金属、複合材料、医薬品、食品、木材、アルミニウム、プラスチックプロファイル、ワイヤーおよびケーブル、紙、フィルム、ゴム、繊維といった、幅広い材料の機械的特性試験に有用です。

荷重試験機の使用用途

荷重試験機は、品質管理・研究開発の分野で広く利用されている試験装置です。ある特定の材料の特性を調べる場合はもちろん、溶接やろう付け、接着の強度を確認するためにも用いられます。

荷重試験機による測定技術の需要を産業別にみると、自動車、航空機、鉄道車輛、食品・包装、繊維・衣料、電子部品・電気機器、建築・家具、化粧品、医療機器・医薬品、スポーツ、工場管理等、非常に多岐にわたります。

特に航空機について、日本では設計・製造された航空機の構造・強度が「耐空性審査要領」と呼ばれる航空法関係規則の要目・基準に合致することの証明が必要です。そのために地上で行われる機体構造の荷重試験は、厳格に実施されます。 

荷重試験機の原理

荷重試験機 (万能試験機) には駆動源により、主に電子式と油圧式、その両方を用いる方式がありますが、構造的および作動原理は次に示すとおりです。

荷重試験機には2本の垂直方向のねじ付きシャフトがあり、これらをスライドする形で可動クロスヘッドが通っています。引張試験の場合、材料試験体をクロスヘッドと可動ヘッドジョーの間に置き、圧縮試験の場合は材料試験体を可動ヘッドとテーブルの間に置きます。

荷重試験機には速度コントローラーがあり、これは2本の垂直方向のねじ付きシャフトの速度を制御するものです。可動クロスヘッドが動くと、材料試験体にかかる荷重が変化します。変化する荷重の大きさと変形量との関係を記録してチャートに表せば、材料の荷重に対する歪み特性がわかります。 

荷重試験機の構造

荷重試験機は大きく5つの要素で構成されています。

1. ロードフレーム

ロードフレームは、試験片に引っ張りや圧縮を加えるための支えとなる骨格です。荷重試験機では試験片のわずかな塑性変形を検出することもあるため、試験荷重に対して十分な剛性を持っています。

2. ロードセル

ロードセルは、試験片に加わる荷重を検出するセンサーで通常は試験装置の上側、可動ヘッドに取り付けられてます。ロードセルは歪みゲージによって荷重の大きさを電気信号として検知するセンサーです。正しい試験結果を得るために、ロードセルは定期的な校正が必要です。

3. ロッククランプ

ロッククランプは試験片を固定し、荷重が試験片に加わるように保持します。さまざまな種類の材料や試験片を固定できるように、複数の治具が取り付けられるようになっています。

4. ひずみ検出

例えば、材料の引張試験であれば、加えた荷重と試験片の伸びを正確に測定しなければなりません。ひずみ検出は1μmの精度で変形量を検出します。

5. 制御部

荷重試験では、試験片に与える荷重の変化の速度も大切です。制御部は試験条件に合わせた荷重が付加されるように制御します。また、与えた荷重とひずみの大きさを記録していきます。

参考文献
https://www.nakanihon.co.jp/gijyutsu/Shimada/easymaterial/StrgthMaterial/chapter090103.html
https://www.haidatestequipment.com/Universal-Testing-Machine-Working-Principle
https://www.hydraulicuniversaltestingmachine.com/universal-testing-machine-working-principle-pdf.html
https://www.forcegauge.net/catalog/products/top
https://www.forcegauge.net/knowhow/industry/top
https://extrudesign.com/universal-testing-machine/

差圧スイッチ

差圧スイッチとは

差圧スイッチとは、流体の圧力差を検知してスイッチング動作を行う装置です。

一般的には流体の流れるパイプやチューブに取り付けられ、圧力差がある場合にスイッチをオンまたはオフにするために使用されます。通常は2つの入力ポートを持ち、それぞれに流体が接続されます。

一方のポートには高い圧力が入力され、もう一方のポートには低い圧力が入力されます。このポート間圧力差を検知する装置が差圧スイッチです。差圧スイッチは設定された圧力差があるときに、スイッチが動作するように調整されます。

圧力差が設定値を超えると、内部の機構が動作してスイッチの状態を変化させます。測定圧力差が小さい場合は、微差圧スイッチと呼ばれることもあります。 

差圧スイッチの使用用途

差圧スイッチは、さまざまな産業や分野で使用されます。

1. 流体の供給や排出の制御

差圧スイッチは、流体の供給や排出を制御するために使用されます。差圧を検知してポンプを運転・停止制御することが可能です。ポンプがエアーを噛み込んで吐出口・吸込口間で差圧が小さくなった際、ポンプを停止するなどの制御に組み込みます。

2. フィルターの詰まりや圧力降下の監視

フィルターに流体が通過する際に圧力差が発生します。差圧スイッチは設定された差圧を検知して警告を発したり、フィルターの交換を促したりします。また、これらの使い方はさまざまな産業分野で応用されています。プロセス系の工場やインフラシステム、自動車など使用分野は幅広いです。

差圧スイッチの原理

差圧スイッチには、ベローズ やダイヤフラムが使用されます。ベローズとは、蛇腹構造を持った伸縮管で、ダイヤフラムは力の変動に応じて変形する薄い柔軟な膜状の部品です。通常は金属や合成材料で作られています。

ダイヤフラムにはスプリングが付属し、ダイヤフラムを元の位置に戻す力を提供しています。レインジスプリングとも呼ばれており、スイッチングの設定圧力差もスプリングの応力で決定します。スプリングの設定によって、スイッチの作動点や設定値が決まる仕組みです。

差圧スイッチはオンとオフの状態を切り替えるために、内部の電気的な接点を備えています。ダイヤフラムの変形によって接点が開閉され、スイッチの状態を変化させます。

これらの部品は保護や絶縁の目的で、エンクロージャ内に収められます。エンクロージャは金属やプラスチックで作られている場合が一般的です。内部の構成部品を保護する役割を果たします。また、エンクロージャにはスイッチの取り付けや配線のための穴やコネクタが設けられています。

差圧スイッチの選び方

差圧スイッチを選ぶ際は、さまざまな要素が存在します。以下は差圧スイッチの選定要素一例です。

1. 接点数・接点種類

差圧スイッチは接点の数や接点種類を選ぶことが可能です。一般的な差圧スイッチは1接点の製品が多いですが、2接点のスイッチも販売されています。また、微弱電圧用途の場合は金接点のスイッチを選定することも可能です。

その他、接点動作に関しても選定する必要があります。差圧上昇によって動作する接点や、下降によって動作する接点が販売されています。

2. 圧力範囲

使用する用途に適した圧力範囲を選択する必要があります。必要な最小圧力と最大圧力を特定し、その範囲内で動作する差圧スイッチを選定します。一般的には数kPaの微差圧から数百kPaの高差圧まで幅広いラインナップが存在します。

3. 隔膜材質

ダイヤフラムやベローズの材質は、測定流体に合わせて選定します。フッ素ゴムやニトリルゴムなどから選びます。酸素配管などに使用する場合は、禁油処理を施した隔膜を選定する必要があります。

4. 接続口

スイッチの接続口は、使用するシステムや配管に合わせる必要があります。一般的な接続口にはネジ式やフランジ式などがあり、ねじ式の製品が多いです。ねじ式の場合、おねじ又はめねじから接続口に合った製品を選定します。

参考文献
https://yamaden-sensor.jp/case/?id=1454994165-589725&mode=0&ca=3
https://www.variohm.com/news-media/technical-blog-archive/what-is-a-differential-pressure-switch-
https://www.appeng.co.uk/products/pressure-and-vacuum/differential/
https://www.dwyer-inst.com/ApplicationGuides/?ID=13

外径測定器

外径測定器とは

外径測定器とは、主に円柱状もしくは円筒状の物品の外径を測定する装置です。

外径測定器には、光を用いて測定する非接触式のものと接触子が実際に物品に触れて測定する接触式があります。現在では、半導体レーザー (緑色のLED光線) を使用した非接触式の物が多く使用されています。

光源として半導体レーザーを使用していることで、装置の小型化が可能です。さらに、非接触で測定するため、被測定物に影響を与えることなく高精度で測定が可能です。

外径測定器の使用用途

外径測定器のうち、非接触式の外径測定器の主な使用用途は、材料の外観検査や異品判別です。鉄鋼・金属工業、繊維素材メーカーの製品開発や製造過程などが主な使用分野です。具体的には、大量生産の現場や検査室で、検査・判別対象となる材料の外径をリアルタイムかつ非接触高精度で連続測定しています。

外径測定器には、自動検査 (インライン検査:ライン生産方式に外観検査工程を組み込んだもの) をするものと、手動検査 (オフライン検査:ラインとは別工程で測定をおこなうこと) にも対応しているものもあります。 

外径測定器の原理

非接触式の外径測定器の基本的な構造は、所定の距離をもって配される投光部と受光部、受光部内で光が遮られた状態の光から画像を作成して外径を計測する計測部です。

投光部から、半導体レーザーを受光部に向けて照射します。レーザーの照射形状は、平行な帯状や円筒状などです。例えば、平行な帯状で照射されたレーザーの中を円柱状の被測定物が横切ると、被測定物によりレーザーが遮られて受光部はその部分が欠けた状態の光を受けます。

受光部には、イメージ (画像) センサーがあり、被測定物により遮られた光から画像を作成します。そして、画像の欠けた部分の位置や長さから外径を計測および算出する仕組みです。

透過型と呼ばれる上述の測定方法では、照明や対象物の表面状態に左右されないため、高精度測定を実現できます。

外径測定機のその他情報

1. イメージセンサー

非接触式の外径測定機では、イメージ (画像) センサーとして、CMOSと呼ばれるデバイスが使用されていることがあります。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductor (相補性金属酸化膜半導体) の略です。これはデジタルカメラなどに用いられる撮像用のデバイスです。

2. 測定バリエーション

非接触式の外径測定機には、外径測定のほかに以下のような測定ができるものがあります。

間隙測定
所定の間隔で配されている2つの部材の間隔を測定します。2つの部材がレーザー光の照射範囲に入るようにすれば、間隔の部分に光が透過します。この光を利用すれば間隔測定が可能です。

コネクタのピン径および間隔の測定
複数のコネクタピンが所定の間隔で配されている被測定物の、ピンの直径および間隔の測定も可能です。被測定物をレーザー光の照射範囲に配すれば、ピンの部分は光を遮り、間隔部分は光が透過します。よって、光が欠けている部分からピンの直径、光が透過した部分から間隔の測定が可能です。

テープやシートの厚みの測定
テープやシートを送るドラムと、所定の間隔をもって光を遮る指標部材を設置します。この2つをレーザー光の照射範囲に置くと、ドラムと光を遮る指標部材の間だけ光が透過した状態になります。このとき、ドラムの上にテープやシートを配すると、その部分も光が遮られます。そのため、ドラムと指標部材間の距離とテープと指標部材間の距離を比較すれば、テープやシートの厚さが分かる仕組みです。

3. 接触式の外径測定器

近年では、半導体レーザーを使用した非接触式の外径測定器が多く使用されていますが、その一方で、接触子を使用した外径測定器も使用されています。接触式の外径測定器は、一対の接触子で被測定物を挟み、その距離から被測定物の外径を測定する仕組みです。

測定には、温度や湿度に影響されないマスターケージ (基準ピンゲージ) を使用します。また、非接触物に接触する接触子の選定により精度が変わってしまうため、接触子の選定も重要になります。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/knowledge/082

プリズムミラー

プリズムミラーとは

プリズムミラー

プリズムミラーとは、プリズムとよばれる三角柱の形をしたガラスデバイスの斜面もしくは直角同士の2面に光を反射するためのコーティングが施されたミラーです。

斜面にコーティングをした斜面コートタイプは、45°傾けての設置する際の光軸調整時間を短縮することができます。また、直角な2面をコーティングした直角構成面コートのタイプは、きた光を反転させて反射させることが可能です。

目的にあわせてコーティング (例えば広帯域誘電体や金属) 、基材となるガラスなど選択する必要があります。

プリズムミラーの使用用途

1. 斜面コートタイプ

斜面コートタイプは、光を45°傾けて反射させたいときに使用されます。平面ミラーでも実現可能ですが、光軸調整の時間を短縮することができ、例えば、分光光度計などの計測機器で使用されています。

2. 直角構成面コートタイプ

直角構成面コートタイプは、イメージの反転を高速に行う時や干渉計など来た光の光軸に平行な方向に反射させたい時に使用されます。また、太陽光採光で光を取り入れるためのミラーとしても有用です。

3. BBARコーティングを使ったタイプ

広帯域の反射防止BBARコーティングを使ったプリズムミラーは、幅広い低出力レーザーラインアプリケーションで使用されています。プリズムミラーの大きな特徴は、外部の機械応力に対してミラーよりも強い (変形が少ない) ので、音響や慣性負荷が厳しい用途に適しています。

プリズムミラーの原理

直角構成面コートタイプは、空気とガラス間の屈折率差を利用して光を波長ごとに分散 (分光) させる機能をもたせることもできます。ミラー面には、コーティングと呼ばれるガラスとは異なる材質の膜を塗布します。

なお、コーティングの種類は、金属コーティングと広帯域誘電体コーティングなどさまざまです。

1. 金属コーティング

金属は光の反射率が高いため、コーティングをした面への入射光は全反射します。入射光をプリズムミラーに当てることで、角度を変えることが可能です。

2. 広域誘電体コーティング

広域誘電体コーティングとは、入射光のガラス面に対する反射を抑えて、ガラス体の中へ突き進んでいく光の透過を助ける働きを持つコーティングです。空気からガラス面へ透過する際、入射光の一部は反射してしまいます。これは空気とガラス面の屈折率の差が激しいため生じてしまう現象です。

そこで、空気とガラス面の間に中間の屈折率を持つ素材をコーティングします。空気から誘電体、誘電体からガラス面へと入射光が進む際に、意図しない反射光を抑えることが可能です。

1枚の誘電体コーティングでも反射光を抑える効果を見込めますが、複数の異なる屈折率を持つ誘電体をコーティングすることでさらなる透過率を取得することができます。

プリズムミラーのその他情報

1. プリズムミラーの接着

プリズムを接着固定する際は、線膨張係数の違いに注意が必要です。線膨張係数の違いが大きいと温度をあげたり下げたりしたときに、プリズムが割れてしまうリスクが発生します。

柔軟性のある接着剤を使うことで回避できますが、その場合は柔軟性がある分、接着時の安定性が悪くなるリスクも発生するので注意が必要です。

2. 全反射

異なる屈折率を持つ媒質に入射しようとする光は一部は屈折し、一部は反射する性質を持ちます。入射角が一定以上になると屈折光が無くなり、全ての光が反射光となります。この現象が全反射です。入射角を徐々に上げていった際に、初めて全反射が起こる角度を臨界角と呼びます。

全反射は臨界角以上の入射角で発生し、金属コーティングされたプリズムミラーはこの全反射の原理を利用して入射光の角度を変えています。

3. 金属コーティングの種類

金属コーティングでは、紫外域に強いアルミや赤外域に強い金など、一般的なミラーで使用されているコーティングを行うことができます。母材となるプリズムは光を通す必要がない場合はBK7、精密形状ができるN-BK7、紫外域を透過させる必要がある場合は合成石英などが使用されます。

温度変化に強くする必要があれば、線膨張係数が低いガラス材を使用することも可能です。

参考文献
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/chuo-sougou/book/chuo-sougou-P0943.pdf