はすば歯車

はすば歯車とは

はすば歯車

はすば歯車とは、軸に対して歯筋がねじれている形をした歯車で、ヘリカルギアと呼ばれています。軸に対して平行な歯筋をしている平歯車よりも歯車同士の噛み合い率が高いため(歯車同士が噛み合っている面積が広い)強度と静音性に優れています。

各伝達装置や減速機、静音性や高い伝達効率を求められる自動車のトランスミッションなどに幅広く採用されている歯車です。らせん状の角度は種類により様々で、噛み合う歯車同士の角度が合っている必要があります。

はすば歯車の使用用途

振動が少なく、滑らかに噛み合うので、静粛性と乗り心地を良くし、エンジンからの出力を効率良く動力に変えることができる特性から、一般的な乗用車のトランスミッションには、ほとんどがはすば歯車を採用しています。

また、モーターから得た動力源を一定の速度に保つ「減速機」、速度を自在に変更することができる「変速機」などでも採用されています。この2つは、モーターで動かすものには必ずと言って良いほど付いている機械なので、はすば歯車の存在は大きな役割を果たしています。

はすば歯車の原理

平歯車のように断続的に噛み合うのに対してはすば歯車は連続して噛み合うので、高速回転時においても騒音を発生させにくく、強度も高いメリットがある一方、シンプルな平歯車よりも複雑な作りをしているため、製造コストがかかってしまいます。

また、はすば歯車ならではの欠点として、構造上歯車の軸方向に推力が発生してしまいます。(スラスト荷重)

スラスト荷重は、動力が大きくなるほど強くなりますので、これを受け止めるための軸受けが別途必要になります。軸受けがないと、摩耗や回転不良の原因になってしまいます。

歯車とは別にスラスト軸受けが必要になることから、軸受けを設けるためのスペースが必要になります。

応用として、はすば歯車の欠点であるスラスト荷重を抑えるために右ねじれと左ねじれの歯車を組み合わせた「やまば歯車」があります。(ダブルヘリカルギア)

やまば歯車はスラスト荷重が働く方向を打ち消しあう特性があるため、スラスト荷重が発生しません。

はすば歯車の設計

歯直角方式のはすば歯車では、歯の正面で見たかみ合いが平歯車と同じになるため、平歯車と同じ計算式を使用することができます。

計算式はメーカー技術資料に詳しく記載がありますが、歯車の中心間距離など、歯車の取付設計に必要な寸法や、強度計算に必要な値を計算することができます。

気を付けなければならないのが軸方向の力です。はすば歯車は歯が斜めになっているため、歯の接触面で軸方向の力が発生します。ねじれ角が大きいほど力も大きくなり、回転方向とねじれ方向で力の向きが変わります。

そのため、軸受には軸方向の荷重を受けられるものが必要となり、アンギュラベアリングなど軸方向荷重を受けられる軸受を使用します。正転逆転の両方を行う場合には両方向に力が発生するので、組合せベアリングで両方の荷重を受けられるようにします。一般的には片側を軸方向固定とし、もう片側を支持とする方法が多く用いられます。

また、材質も金属や樹脂などがあり、用途にあった材質を選択する必要があります。

はすば歯車のバックラッシ

はすば歯車のバックラッシ量の計算は、JIS規格に規定されている「バックラッシ算出数値表」を使用し、歯厚減少量を求めることで、歯と歯の隙間を算出し、それを角度に変換します。

例えば、JIS5級で、歯直角モジュールを2、歯数を30と60、ねじれ角を30°の歯車では、正面モジュールは2.31、ピッチ円直径が69.3と138.6、となります。これらの条件から歯厚減少量は、小歯車が60~250ミクロン、大歯車が70~300ミクロンとなり、歯の最小隙間は60+70=130ミクロン、最大隙間が250+300=550ミクロンとなります。

使用用途によっては、規定よりも歯の隙間を小さくしたい場合や、隙間の公差範囲を小さくしたい場合があります。この時、またぎ歯厚と呼ばれる値の公差を小さく設定することで、小さくすることが可能ですが、小さくしすぎると潤滑油が不足し、潤滑が不十分になり、歯の摩耗が早くなったり、駆動トルクや騒音が大きくなったりします。特に高速運転では小さくしすぎないように注意が必要です。大きすぎる場合には停止時のガタツキ、負荷変動時の振動などが発生します。

参考文献
https://nagatatekko.co.jp/topics-news/faq/440
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/basic_guide/KHK365.html

リテーナ

リテーナとは

リテーナ

リテーナとは、ベアリングにおいて玉と玉の間隔を開け高速回転させるためのものです。

様々な業界で使われる用語で業界ごとに意味が異なりますが、ここでは工業製品のベアリングで用いられるリテーナについて紹介します。通常のベアリングは玉同士の摩擦によって高速回転が妨げられていましたが、リテーナを用いることで玉同士の摩擦をなくすことができるため保持器とも呼ばれます。

リテーナの使用用途

リテーナの使用用途はベアリングの外輪と内輪の間に存在する玉が隣の玉と接触しないように隙間を作り出すことです。鋼製のものと樹脂製のものがあり、製造工法の違いや使用環境によって異なるためベアリングメーカーと相談して適切な材料を選ぶことが大切です。

リテーナの原理

ベアリングに用いられるリテーナについて紹介します。ここではリテーナの有無によってベアリングの状態がどのように変化するか説明します。

1. リテーナが無い場合

前述の通り、リテーナはベアリングの中の玉と玉の接触を避ける役割を果たします。逆に言うとリテーナが無い場合は玉と玉が接触して摩擦力が生じてしまうため駆動時にエネルギーの損失が生まれてしまいます。また玉同士の接触による騒音も大きくなるほか、玉の摩耗も引き起こしてしまいます。これらのデメリットがあるため、リテーナがないベアリングは、低い回転数で使われる軸受けとして用いられます。

2. リテーナがある場合

リテーナを設置することで玉同士の接触がなくなります。これによって回転時の玉同士の接触による摩耗、エネルギーの損失、騒音を抑制することができます。その結果、高速回転を行うことが可能になります。

3. リテーナの種類

ベアリングの種類によって用いるリテーナの種類も変わります。ベアリングはボール式とコロ式の2種類に分けられます。これに応じてリテーナも玉式、コロ式の2種類のものが販売されています。玉式の場合には保持器、コロ式の場合にはケージなどとも呼ばれます。

リテーナのその他情報

1. 一般で用いられるリテーナ

主に業務用の機器に用いられることが多いリテーナですが、一般的な場面で用いられているシーンとしては自転車のベアリングが挙げられます。自転車をスムーズに動かすためのベアリングは主に鉄の球とグリスで構成されており、球を固定するためにリテーナが用いられます。最近はメンテナンスが不要のベアリングも一般化してきましたが、ボール式のベアリングとその保持器も用いられることが多いです。

自転車のクランクやハンドル周りで用いられることが多く、工具を活用することでメンテナンスは可能ですが、繊細な性質のため状況に応じて修理業者へ依頼する必要もあります。

2. リテーナの破損の原因

過大な振動や衝撃、回転軸を傾ける荷重であるモーメントによる破損は、荷重条件の見直しが必要です。スムーズな回転には潤滑剤が必要ですが、その潤滑剤が不足して潤滑不良が起きたことによる破損が起こった場合は適正な潤滑剤と量を見直すことで対策が出来ます。傾いた状態など取付自体がうまくできていなかったことによる破損は、取付方法を見直し、誤差をなるべく小さくすることが必要です。

その他、異物が噛みこんでしまうことや、組み込み時の打ち傷などにより破損することもあります。リテーナは材質自体も高い強度を有していません。外部からの力や他の部品の接触などにより傷や変形が出来やすく、そこから破損に繋がる場合もあるため、それぞれに対策が必要となります。

参考文献
https://www.ntn.co.jp/japan/products/rollingbearing/radial_roller.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/care/damage/retainer.html
https://www.jbia.or.jp/about/a_06.html
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/01/column01-03.html
https://koyo.jtekt.co.jp/support/faq/article/001678.php
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/01/column01-03.html
https://www.ntn.co.jp/japan/ntnstory/teach/vol044.html

スクリューコンベヤ

スクリューコンベヤとは

スクリューコンベヤ

スクリューコンベアは主に紛体の搬送に使われる機器となります。基本的にスクリューコンベアはモーターで駆動して紛体を搬送しますので、水分を含んだ排水汚泥なども搬送することができます。

密閉構造で作成することで紛体の漏れをほぼ0で作成することも可能です。

また、スクリューなので回転数を変えることで紛体の搬送量を簡単に変えることができます。

そのため紛体の搬送量などが頻繁に変わるプラントでも非常に使いやすいコンベアとなります。

スクリューコンベヤの使用用途

スクリューコンベアの用途はほぼ100%が紛体や個体と関係する工場やプラントになります。

スクリューコンベアは常に一定の供給量で紛体の搬送が可能になるので、珪藻土や砂のような紛体から麦、飼料、豆などの食品関係などの搬送にも多く使用されています。

また、そのほかにもスクリューによる強制的な搬送が可能となるので、排水汚泥のように水分を含んで搬送に力が必要な物体でもスクリューコンベアでは搬送可能となります。

そのため、排水汚泥を処理する排水処理プラントでも多く使用されています。

スクリューコンベヤの原理

スクリューコンベアは大きなスクリューが回転するだけの比較的簡単な構造です。

しかし、スクリューの羽の数や回転数などを変更することにより、紛体の搬送量を変えることが可能になります。逆に排水汚泥のような搬送に力が必要な物体の場合には、羽の設計などが非常に重要なファクターとなります。

また、食品工業でも使用されるスクリューコンベアはSUS304やSUS316などの材質を使用し、さらに内部での接触をなくすことで錆や接触による切粉の発生などをなくしています。

ほかにも摩耗性のある紛体を扱いう場合には耐磨耗性に優れたスクリューコンベアを使用することで対応可能です。

スクリューによる搬送ですので基本的には水平方向の搬送ですが、高所への搬送も可能です。そのため非常に汎用性の高いコンベアとなっています。

欠点としては定量供給の機能は低いので、粉砕機などへの供給で一気に多くの紛体が搬送されると詰まる場合や、定量供給の機能が必要な場合はあまり適していないコンベアとなります。

参考文献
http://www.fluideng.co.jp/products/conveyor/screw_conveyor.html

サニタリー管

サニタリー管とは

サニタリー管

サニタリー管は主に食品工業や製薬工場で使われる配管となります。

サニタリー管はそのすべての材質がSUS304やSUS316などのステンレス鋼で作られています。SUS304やSUS316で作成された配管はほかにもありますが、サニタリー管と普通の配管の違いは表面処理の違いとなります。

基本的にサニタリー管は外面はバフ仕上げ、内面は最低でもBAと呼ばれる光輝焼鈍仕上げがなされており、さらに高級な配管ではEPと呼ばれる電解研磨仕上げがされていて、液だまりが極端に少なくなっています。

サニタリー管の使用用途

サニタリー管は食品業界や製薬業界のように、製品に一切の異物混入やバクテリアなどのコンタミが許されない業界で幅広く使用されています。

食品業界では少しの液だまりなどによりバクテリアが発生し、製品に大きな影響を及ぼします。最悪、消費者まで出回ってしまうと大きな社会問題となります。

製薬業界でも同様に直接体内に作用するものなので、もし異物混入やバクテリアなどによる汚染があると大きな問題となります。

このような製品に清浄性が求められる業界でサニタリー管は多く使用されています。

サニタリー管の原理

サニタリー管はほぼすべてがSUS304やSUS316で作成されています。これらの配管はSUSなので錆が発生せず、さらにCIPと呼ばれるプロセスで使用される温水や苛性ソーダなどの薬品に対する耐性も持ち合わせているので常に清浄性を保つことができます。

また、BAと呼ばれる光輝焼鈍仕上げやEPと呼ばれる電解研磨仕上げになされていることにより、バクテリアの発生源となる微細な液だまりも排除することにより、製品の安全性を大きく保つことができます。

普通のSUS配管ではこのような処理がなされておらず、細かい傷がついたままになっている状態ですので、食品業界や製薬業界向けではありません。このように記載するとすべての配管をサニタリー管で製作すれば非常に高品質な配管を制作できそうですが、普通の配管と比べるとサニタリー管は非常に高価です。

また、継ぎ手なども専用の継ぎ手を使用しないとサニタリー管の効果を100%発揮することができません。

そのため、使用するにはサニタリー管専用の設計知識と施工知識が必要となります。

サニタリー管の規格

サニタリー管はTBSと表され、JIS G 3447で規定されています。呼び径はインチで表され、1S(O.D.=25.4)、1.5S(O.D.=31.8)、2S(O.D.=50.8)…6.5S(O.D.=165.2)となります。呼び径に対する肉厚tは1種類しかなく、例えば1S、1.5Sではt=1.2、2Sではt=1.5、2.5S、3Sではt=2…4.5S、5.5S、6.5Sではt=3となります。サニタリー管の長さは4mまたは6mとなっていて、表面仕上げは内外面共に酸洗のもの、内面バフ研磨品、内外面バフ研磨品があり、オプションで内面電解研磨仕様もあります。

サニタリー製品は錆・汚れを嫌うため、サニタリー管はステンレス鋼製となっており、ステンレス鋼の中でも耐食性の良いオーステナイト系ステンレス鋼が使用されています。具体的には、多くの用途でSUS304が使われ、仕様によりSUS304L、SUS316、特に塩素イオン濃度が多い場合(医薬関係、一部の食品関係)にはさらに耐食性が優れているSUS316Lが使用されます。

サニタリー継手

サニタリー継手は「ISOヘルールユニオン継手」、「ISOネジユニオン継手」、「フランジ継手」があります。

代表的な継手はISOヘルールユニオン継手で、各サイズのエルボ(45°/90°/流れ勾配を考慮した88.5°)、チーズ、クロス、異形サイズを接続するレジューサー、ヘルール端をふさぐヘルールキャップ、配管用、タンク用それぞれ溶接用のヘルール、ヘルール同士をジョイントするクランプ(2分割、三分割、手締め、ボルト締め)など、様々なヘルール取り合いの継手があります。

ISOネジユニオン継手、フランジユニオン継手もほぼ同様の種類の継手があり、様々な配管システムを組み上げることができます。

尚、フランジ継手はJIS規格のフランジとは互換がありません。

サニタリー継手用ガスケット

サニタリー継手用のガスケットはISOネジユニオン用のL型ガスケット、ISOヘルールユニオン用のヘルールガスケット、フランジユニオン用のL型ガスケットがあります。

ガスケットの材質はシリコン、EPDM、FKM、テフロン、テフロン被覆(中芯はEPDM)があり、用途に応じて選定します。サニタリー配管用のガスケットは閉めこんだ時に配管の内側に出ないように設計されており、管内の流れを妨げたり液溜まりを作ったりすることはありません。

参考文献
https://www.osaka-sanitary.co.jp/product/tbs-tps.html
https://www.osaka-sanitary.co.jp/product/fitting.html

オーディオプロセッサ

オーディオプロセッサとは

オーディオプロセッサ

デジタルプロセッサーとは正式名称デジタルシグナルプロセッサーの略称である。文字通り音源より出力された信号に補正するプロセスを加え、アンプスピーカーから理想の音響を出音させる介在機器のひとつです。

もっともメジャーな使用方法は車内オーディオシステムを構築する際に使用されています。標準的なカーナビを音源とする場合に活躍する音響機器です。騒音やガラスの反響で聴きたい音にならない壊れた音域を補正し臨場感を作り出します。

オーディオプロセッサの使用用途

使用用途は簡易にまとめると音のデジタル信号を修正する音響補正全般です。車のオーディオアクセサリー、エレキ楽器の出力調整、シンセサイザ、ボーカルエフェクト、ハモンドオルガン、ライブハウス、ホールのコンソールルームなど規模も機能も多彩です。

例えばボーカルならば音割れする域を抑える、低域を強調する。ギターなら粒の揃った短音の高速リフ、スピーカー側では同時発音数が限られる場合過剰な流入信号入力を抑える時に使用します。

オーディオプロセッサの原理

オーディオプロセッサー(略してOPSと表記されているものも同義です)の本意である音のデジタル信号の伝達補正に欠かせないのが「タイムアライメント」と呼ばれる機能です。

車にに搭載されている2個もしくは3個のスピーカーを運転席で聞く場合、片側のスピーカーが遠いアンバランスなリスニングポイントになっています。それを中心で聴いているように左右の出力にタイムラグを作り出します。近い方のスピーカーからはちょっと遅れて出力されるので同時に耳に届くと言うわけです。

ツインギター編成のV系バンドのCDなどは、上手ギターと下手ギターの演奏が左右に振り分けてありライブ感覚を再現しています。聴こえている立体音響はボーカル音域を含め位相、音像の前後左右を故意的に収録しています。

車内でのリスニングではこの均衡がどうしても崩れてしまうため、運転席で聴くとツインギターの掛け合いなどは平べったく聞こえてしまいます。

下手のエッジの利いたリフのバッキングと上手の流暢なソロの音像は同格の位置付けでないとかっこよく聴こえない、そんなときにOPSを介在させ信号補正することでベストリスニングを復元できるというわけです。

参考文献
http://www.emotion-jp.com/digital-processor/

図面ホルダー

図面ホルダーとは

図面ホルダーは過去には図面を運ぶのに多く用いられました。

昔はCADもなく今のように図面をDXFやPDFで送付することはできなかったので、印刷して持ち歩いていました。その際に不用意に追ってしまうとその部分が判断できなくなったり、微妙に長さが変わるときもあったので図面は折り曲げ厳禁でした。

そのため、図面ホルダーで丸めて図面を入れて持ち歩いていました。

今ではそのようなことは少なくなりましたが、逆に制御盤の中などに電気図面などを保管するのに使用されています。

図面ホルダーの使用用途

図面ホルダーは制御盤、キュービクル操作盤などの中に仕様書や電気図面を保管しておくのに使用されます。

制御盤や操作盤の中にはブレーカやマグネット、それ以外にもリレーやPLCなどがあるので配線の数が膨大でその線1本1本を追って作業していくのは非常に困難です。

そのため、工事する際に線番などを確認するのに図面が必要となるので、すぐ確認できるように図面ホルダーの中に図面を入れておくことで、図面をすぐ確認できるようにします。

図面ホルダーの原理

基本的に図面ホルダーは制御盤の中に取り付けられるような箱のような形をしています。

入れる図面の量や大きさに応じて深さや高さなど数多くの種類があり、用途に応じて購入する大きさを決定します。

また、多くの図面ホルダーが両面テープで取り付けることができるので、制御盤を制作した後でも取り付けることができます。

制御盤の中に図面や仕様書類をそのまま放置することもありますが、美感的にも非常に悪く、もし高圧線などに触れた際はショートなどの原因になりかねます。ブレーカが落ちるだけならいいですが火災などにつながると、大きな問題になります。

そのようなことを回避するためにも図面ホルダーに図面をしまうことが必要となります。

また、電気の盤類の中は配線も多くよほど熟知している人でないと、パッと見で配線構成などはわかりません。そのため改造工事や追加工事などで制御盤をなにか工事する際にも図面が手元にあると非常に便利となります。

参考文献
https://www.shinohara-elec.co.jp/products/detail/prod_info.php?bun=10&bcat=10&ccat=5&prod=P29100

スライドコア

スライドコアとは

スライドコア

スライドコアとは、主に樹脂成型において使用される金型部品の1つです。

一般的な金型内に取り付けられた可動部品で、樹脂成型プロセスにおいてアンダーカットや内側に複雑な形状を持つ製品を製作するときに使用されます。一般的に、1つの金型の中にスライドコアの機構を織り込むことで、一度の成形工程で目的の形状を得ることを可能とします。

一方で、細かな金型と動作が増えるため、金型費用が増加することには注意が必要です。また、金型の跡 (パーティングライン) などが増え、意匠面の悪化につながる懸念もあります。

スライドコアの使用用途

図1. スライドコアを使用した製品の例

スライドコアは主に樹脂成型品のうち、アンダーカットと呼ばれる部位に対処するために使用されます。アンダーカットは、成形物を金型から抜き出す際に通常の抜け道に障害物がある形状のことです。スライドコアを使用することで、一度の成形でこれらのアンダーカット部位を形成し、製品を金型から取り出すことが可能となります。

身近な例として挙げると、シンプルな取手の付いていないコップのような形状であれば、通常の金型でも抜くことが可能ですが、取手の付いたコップになると、アンダーカット形状が発生してしまうためスライドコアが必要です。このほか、建築部品の窓枠やドアハンドル、電子機器のハウジングなどをはじめ、さまざまな樹脂成型品の製造で使用されています。

複雑な形状の部品ほど、アンダーカット形状が発生しやすいため、部品を分割してアンダーカット形状を避けるなどの対策が重要です。

スライドコアの原理

図2. スライドコアの動き

スライドコアは、アンダーカット部位を持つ製品を樹脂成型する際に、金型内で特定の部位を移動させることで、製品を金型から取り出す仕組みです。一般的に、「ピン」や「カムブロック」などを使った開閉機構で構成され、金型が開く動きに連動して、金型の開く方向と直交する方向に自動的にスライドコア部分が開閉するようになっています。これにより、様々な形状を作ることが可能です。

一方で、必要となる箇所が増えるほど、金型構造は複雑となり、起型コストは大きくなります。また、耐久性やメンテナンス性の面でも通常の金型に劣るという短所もあります。

このため、製品設計上、やむを得ない形状は出てきてしまいますが、初期コストや部品単価などのコストダウンを行うためには、部品を分割するなどの方法でアンダーカット形状を削減できないかどうかを検討する場合も多いです。

スライドコアの種類

図3. アンダーカット処理の例

スライドコアにはその動きから、いくつか種類があります。代表的なものは、以下の3つです。

1. スライドコア方式

主にアンギュラピンを用いた機構です。固定側にアンギュラピンを所定の角度で固定しておき、可動型側に設けたスライドコアを動かします。構造が単純で、故障が少ないことが特徴です。

2. 傾斜スライド方式

エジェクタプレートにスライドユニットを設け可動型に傾斜穴、製品アンダーかっと部分に傾斜スライドを配置します。傾斜スライドはスライドロッドにより、可動型の傾斜穴を通り、スライドユニットにつながっています。

型を取るだけのときは、可動型と成形型は離れずに一緒に移動します。押し出し (エジェクト) のタイミングで、エジェクタプレートに連動して、スライドユニット、スライドロッド、傾斜スライドが押し上げられながら、先端が製品の内側に移動する仕組みです。

3. 油圧駆動スライド方式

油圧シリンダを使用して、スライドコアを移動させます。アンギュラピンでは駆動が難しい部位に対して、よく使用されるスライド方式です。

固定型側にスライド機構がある場合に、よく使用されます。型開きとは、別のアクションとしてスライドを移動できるたり、大きなスライドコアを動かせたりするのが特徴です。

スライドコアのその他情報

スライドコアの活用

スライドコアだけを変える使い方もあります。外観形状は同一の型を使用しながらも、可能な範囲でアンダーカット部位の形状のみを変更します。これによって、例えば同一の箱形状でありながら、取って部の形状のみ異なるバリエーションを製造することも可能です。

一方で、金型が増え、金型構造が複雑化する分だけ、起型コストが増加したり、耐久性やメンテナンス性が劣ったりするリスクが増えます。また、可動型と固定型の境目の跡 (パーティングライン) やバリの増加にもつながります。

参考文献
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1304/17/news019.html
https://d-engineer.com/mold/undercut.html
https://news.aperza.jp/

オイルミストコレクター

オイルミストコレクターとはミストコレクター

オイルミストコレクターは吸引した空気の中に含まれる油滴を取り除くための機器です。主に加熱により油煙が発生する場合や、工作機械の金属加工に伴い発生するオイルミストを捕集します。

オイルミストに含まれる油分は人体に悪い影響を与えます。オイルミストを取り除くことで作業環境の改善はもちろんですが、周辺の床のべたつきを防ぎます。床のべたつきを防ぐことで人が滑って転倒するリスクも防げることから、安全性の観点から必須の機器です。

オイルミストコレクターの使用用途

オイルミストコレクターには種類がいくつか存在します。

1つがフィルター式です。ブロワーによって吸引されたオイルミストをフィルターに通すことで油分を濾過する装置です。非常に構造がシンプルで軽量コンパクトなのが特徴です。

もう一つが遠心分離式です。オイルミストに含まれる油分を遠心力を利用して分離する装置です。フィルター式と同様に構造はシンプルです。メンテナンス性が良く設置が簡単であることが特徴です。またフィルターはありません。

オイルミストコレクターの原理

フィルター式オイルミストコレクターは複数のフィルター層からなっています。まず1次フィルターで大きな油滴を取り除き、2次フィルターで更に細かい油滴を取り除きます。複数のフィルターを通すことでブロワーの汚れを防ぎます。

遠心分離式オイルミストコレクターは内部にディスクやドラムといった形状の高速回転装置が内蔵されています。吸引された空気は高速回転装置によって遠心力をかけられ、油滴のみ外側へ飛ばされます。飛ばされた油滴は装置の内壁に衝突させることで回収されます。このような原理から、1マイクロメートル以下のサブミクロン粒子は軽いため分離することができません。

電気集塵式オイルミストコレクターはオイルミストが荷電極を通過することで粒子を帯電させます。その際にコロナ放電が発生しています。アース極板の静電力によって油分を吸着しています。このような捕集方式の為、1マイクロメートル以下のサブミクロン粒子も捕集することができます。

参考文献
https://www.apiste.co.jp/gme/technical/detail/id=4340
https://www.kousakukikai.tech/mist_collector/

パワーアナライザ

パワーアナライザとは

パワーアナライザ

パワーアナライザとは、電気機器で発生する電力を測定するための装置です。

電力を測定することで、エネルギーの変換効率や電圧降下による機器の異常を確認することができます。パワーアナライザではなくても、電力自体は電力計で測定することは可能です。

しかし、電力以外にも電圧、電流、周波数など様々なパラメータを測定できることが、電力計にはないメリットです。結果表示画面には、複数のチャンネルが存在しています。チャンネルを設定することで、必要なパラメータだけを表示させることが可能です。

パワーアナライザの使用用途

パワーアナライザは太陽光発電や風力発電など、自然のエネルギーを利用した発電効率の測定に用いられています。太陽光発電や風力発電のような自然エネルギーを利用した発電は、再生可能エネルギー発電と呼ばれます。

再生可能エネルギーの利用は環境に優しいため、普及が進んでいる状況です。一方で、エネルギーの供給が気候に左右され、火力発電などよりも発電効率が悪いというデメリットも存在します。

発電効率を測定することで、電力がきちんと供給されているか確認しています。エネルギー不足により発電効率が低下している場合には、バックアップシステムが作動させる取り組みも行われています。

パワーアナライザの原理

パワーアナライザは、電気機器での電力流れを測定します。直流回路と交流回路では、電力計算手法が異なります。

直流回路では、電力量は測定した電圧と電流を掛け合わせることで計算可能です。しかし、交流回路の場合、電流値は一定ではないため単に電圧と電流を掛け合わせただけでは測定できません。電力流れを測定する際は、電気信号の実効値決定が必要です。

パワーアナライザでは周波数サイクルをデジタルに検出して、電力変換中に信頼できる実効値を計算可能です。実効値がわかると、計測器が実施する計算が明確化します。交流回路の場合、直流相当の値を算出するために2乗平均平方根で実効値を表現します。

パワーアナライザの特徴

現在のパワーアナライザは、以下の様な特徴があります。

1. 携帯性

太陽光パネルなどフィールドでの測定が必要な場面が多いため、小型軽量化がされています。従来ハードウェアで行っていた演算機能を電力解析エンジンに凝縮するなどの技術を用いて実現しています。

2. 環境適応性

恒温室や温度変化の激しいエンジンルームなど、過酷な温度環境下でも高精度な測定ができるように設計されています。

3. データの送信が可能

Bluetoothなどの無線技術対応アダプタを併用することで、データロガーの様な機器に測定値を送信できます。

4. インターフェイスの多様性

USB、LAN、GP-IB、RS-232C、外部制御、2台同期と多種多様な規格に対応しています。

パワーアナライザの種類

高精度で電力測定を行うパワーアナライザですが、近年は様々な発展型が各メーカーから発売されています。

1. オシロスコープ統合型

従来のパワーアナライザは波形観測の機能がなかったため、別途デジタルオシロスコープなどの波形測定機器を用意する必要がありました。2015年に高分解能オシロを統合したタイプが発売され、1台で電力と波形の両方を同時に測定することが可能となりました。現在は、複数社で同様のオシロスコープ統合型が発売されています。

2. 高精度測定機種

パワーアナライザの中には電力測定と電力測定の周波数範囲で高い精度を誇る機種があります。高級機種の一部は、100 kHz以上や1 Hz以下の範囲を測定可能です。

変化幅の大きな現象の高精度測定及び、インバータのスイッチング駆動測定に適しています。

パワーアナライザの選び方

パワーアナライザは価格帯から、普及価格機と高級機に機種が分けられます。どちらを使用するかは、電力測定における正確さと周波数範囲を考慮したうえで選定します。

100kHz以上や1Hz以下を含む周波数範囲を測定する場合や高度な測定確度を求める場合は、高級機を使用するのが一般的です。変化幅の大きな現象 (待機電力 / フルパワー) の高精度測定やインバータ・スイッチング駆動の測定に適した機種は、やや高価な普及価格機 (中級機) ~高級機の中から選定します。それ以外の場合は、普及価格機で対応可能です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/detail/?product_key=649
https://www.hbm.com/jp/8099/what-is-a-power-analyzer-the-working-principle-explained/
https://www.fluke.com/ja-jp/products/electrical-testing/high-precision-power-analyzers
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Basic-Topics-017/
https://ednjapan.com/edn/articles/2003/16/news010.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/outline/index.html
https://eleking.net/k21/k21t/k21t-power.html
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48192
https://electric-facilities.jp/denki1/souden.html
https://news.mynavi.jp/article/20150130-a126/
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Basic-Topics-017/

ホーニング盤

ホーニング盤とは

ホーニング盤

ホーニング盤とは、金属加工の中でも表面仕上げに用いる機械であり、主に円筒の内径面を仕上げるための工作機械です。

ホーンと呼ばれる工具に回転運動と往復運動を与えて、ホーンに取り付けた複数の砥石で、筒状の内面を押しつぶしながら回転し、内面を仕上げていきます。ホーニング盤では、一度にたくさん削ることができません。

あらかじめ中ぐり盤などで円筒状の切削を行ったあとに、最終仕上げとしてホーニング盤を用いるのが一般的です。ホーニング盤は内面研削盤と似ていますが、ホーニング盤のほうがより精密な穴精度、真円度、さらには高い面粗度で加工することができます。

ホーニング盤の使用用途

ホーニング盤の主な使用用途は、エンジンシリンダの内面仕上げです。ホーニング盤ではほぼ鏡面仕上げに近い状態の面粗度で仕上がりますが、小さな線状の傷を交差するようにつけることができます。

エンジンのシリンダではこの小さな傷の中にエンジンオイルを残留させ、オイルの油膜を保つことによって、シリンダをピストンリングとの摩擦から守ります。この特徴的な加工目は、クロスハッチと呼ばれるものです。

エンジンではシリンダ以外にも、ロッカーアームやコネクティングロッドの摺動部、遊星歯車のピニオンの内径の仕上げ加工にも、ホーニング盤が用いられます。ピニオンの内径はベアリングの外輪の役割を果たし、オイルによる潤滑効果が期待される部位です。遊星歯車は、自動車用の変速機などに用いられています。

ホーニング盤の原理

ホーニング盤ではホーンと呼ばれるスティック状の工具に、回転と上下運動を与えます。ホーンの側面には複数の砥石が取り付けられており、ホーンの中心から外に向けて、ばねや油圧によって加工する内径面に押し付けられます。円筒に対して砥石を押し付けあて、回転と上下運動によって除去加工を行うのがホーニング加工の原理です。

砥石による除去加工では熱が生じるため、大量の切削油をかけながら加工します。ホーニング盤では複数の砥石を全て密着させて加工を行うので、砥石を取り付けているスティックの外径を超えての加工はできません。それぞれの加工物の内径に合わせたスティックと、そのスティックに取り付ける砥石も別々で用意する必要があります。

ホーニング盤の種類

ホーニング盤の多くは円筒の内径を仕上げるための工作機械ですが、以下のようなホーニング盤もあります。

1. 平行平面ホーニング盤

平行平面ホーニング版は、2枚の円盤型砥石でワークを挟み込み、回転と往復運動を与えるながら加工します。複数のワークを同時に均一の高さに揃えることができ、それぞれのワークには高い平行度と平面度、面荒さが得られるのが特徴です。

また、ワークには自転と公転運動が与えられるため、加工面にはクロスハッチが得られます。

2. 液体ホーニング盤

液体ホーニング盤は、水と砥粒を混ぜた混合液をワークに吹きかけて表面の艶消し仕上げを行う工作機械です。ショットブラストのようなイメージに近いもので、入り込んだ複雑な形状のワークに対しても使用できます。

ホーニング盤のその他情報

1. ホーニング加工のクロスハッチ

ホーニング加工でできた細かな網目状の傷を「クロスハッチ」と呼びます。クロスハッチはホーン (砥石) の回転運動と往復運動の繰り返しを利用し、ホーンが下に向かうときの角度と、上に向かっていくときの角度の違いにより意図的に作った傷です。

クロスハッチを得るためには最初に、荒削りとして番手の粗い砥石を用いて、比較的遅い回転数で角度の大きな網状を作ります。そのあと、仕上げ加工として、番手の細かい砥石で回転数を上げて加工し角度の小さな傷を作り、最終的には角度20°から60°ほどの交差する傷が形成されます。

クロスハッチを作ることにより、金属同士が摺動し合う部位においてオイルがクロスハッチの溝に入り込み、油膜の保持を高めることが可能です。

2. ホーニング盤と内面研磨の違い

ホーニングと研磨 (内面研削) はどちらも仕上げ加工として高い精度で穴加工することができますが、加工方法が異なります。ホーニング盤では円筒状に取り付けられた複数の砥石を押し付けて、往復運動をしながら加工していくのに対して、内面研削では砥石の1点のみをワークに当てて、ワークと砥石を回転させながら加工します。

ホーニング盤は内面研削よりも高い真円度、面粗度で加工することができますが、前工程であけた穴に沿う形で加工するので修正が利きません。一方で、内面研削ではある程度の修正が可能であること、また加工精度は芯だし作業によって決まります。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/honing/
https://sakaitec.co.jp/engineering/machinetool/258
http://www.honing.co.jp/smarts/index/45/