高電圧コンバータ

高電圧コンバータとは

高電圧コンバータは、産業用の電圧である200Vや400Vなどの高電圧の電流を、変換する装置になります。交流電流から直流電流へ変換するコンバータは、AC/DCコンバータと呼ばれ、直流電流から電圧を変換して直流電流として変換するコンバータをDC/DCコンバータと呼びます。多くのAC/DCコンバータは、MOSFETなどのダイオードを使用して、スイッチングを行うことによって、交流を直流に変換します。DC/DCコンバータは、抵抗などを設置し、電圧降下を起こすことによって、電圧を変動させます。

高電圧コンバータの使用用途

高電圧コンバータは、高電圧の産業用の電源を使用する、多くの産業で使用されます。産業用のDCモータの駆動のための電源供給や、直流電流で動作する産業装置の交流電流からの変換、装置が駆動する定格の電流に変換するための電圧降下などが使用用途です。高電圧コンバータの選定の際には、使用する電流や電圧に対応しているかどうか、サイズ、損失の大きさ、絶縁性能の高さ、安全性などを考慮する必要があります。

高電圧コンバータの原理

高電圧コンバータの動作原理を、AC/DCとDC/DCに分けて説明します。

  • AC/DC高電圧コンバータ
    AC/DC高電圧コンバータは、AC電源接続端子とDC電源供給端子、MOSFETのダイオード、などで構成されています。ダイオードは、4つをダイヤモンド状にして配置されていることが一般的です。交流電流を直流電流に変換するためには、MOSFETのスイッチングの性質を利用します。交流電流がダイヤモンド状のダイオードの集まりを通過する際、正の方向の電流はそのまま通過し、負の方向の電流は正の向きに符号が入れ替わり通過します。その様にして、交流電流を直流電流に変換します。
  • DC/DC高電圧コンバータ
    DC/DC高電圧コンバータは、コンバータの中に抵抗が接続されている場合、トランジスタが搭載されている場合、トランスが搭載されている場合があります。抵抗では、抵抗を回路上に設置することで電圧降下を引き起こし、電圧を低下させます。トランジスタの場合は、スイッチングによって電流をパルス波の様に伝えることで合計の電圧を減らします。トランスは、コイルの巻き数に応じて、電圧を降下させます。コイルの巻き数に応じて、電圧を上昇させることも可能です。

参考文献
https://www.idc-com.co.jp/jp/product/module/dcdc/
https://www.bellnix.co.jp/products/highvolt/
https://www.torex.co.jp/technical-support/application-note/design-guide-for-dcdc-converter/whats-dcdc-converters/

IGBTゲートドライバ

IGBTゲートドライバとは

IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor) ゲートドライバとは、IGBTと呼ばれる半導体デバイスを効果的に動作させるために用いる電気的な回路です。

使用する主な目的は、ゲートとなる端子に正確な信号を提供し、切替動作を制御することです。これにより、電力変換や電力制御などを効率的に実施することが可能になります。

IGBTゲートドライバは過電流や過電圧を検知し、IGBTを保護する機能を持っています。過負荷を検知することでシステムの安全性と信頼性が向上させることが可能です。

高速スイッチングによって生じる電磁干渉を制御する回路が組み込まれることも多く、周辺機器への影響を最小限に抑えられます。

IGBTゲートドライバの使用用途

IGBTゲートドライバは、高電圧・高電流用途で幅広く応用されています。以下は主な使用用途の一例です。

1. インバータ

インバータは、直流電力を交流電力に変換するデバイスです。太陽光発電システムや風力発電システムなどの再生可能エネルギー発電装置で使用されることも多いです。発電された直流電力を家庭や産業用電力に変換します。

IGBTゲートドライバは、インバータ内のIGBTをコントロールするために内蔵されます。IGBTは高電圧・高電流を切替する能力があり、効率的な電力変換を可能にします。本装置でIGBTのゲート信号を増幅して適切な間隔で切替制御を実施し、効率の良い電力変換を実現します。

2. モーター制御

産業用モータや鉄道車両など、さまざまなモーターを制御する目的で利用されます。モータの回転速度やトルクを制御するために、モータに供給される電力の適切な掌握が重要です。

そこで、本装置によってモータに駆動信号を供給し、モータの効率的な運転を可能にします。高性能のモータ制御システムでは、高速かつ正確な切替動作が必要です。したがって、本装置の役割が重要となります。

3. レーザー駆動

高パワーレーザーや高速スイッチングレーザーの駆動に、本装置が使用されることも多いです。これにより、レーザーの正確なパルス制御が可能です。

IGBTゲートドライバの原理

IGBTゲートドライバの原理は、IGBTを正確に制御して切替動作を行うことです。 IGBTは比較的高いゲート駆動電流を必要であり、一般的な制御信号では十分な電流供給が難しいため、本装置でゲート信号を増幅します。これにより、IGBTに必要な適切なゲート駆動電流を供給することができます。

また、切替動作には正確な間隔制御が必要です。IGBTゲートドライバは制御信号に応じて適切な駆動パルスを生成し、IGBTのオンとオフを掌握します。これにより、IGBTのスイッチング速度と間隔を最適化し、効率的な電力制御を実現します。

IGBTは、スイッチング時に微小なデッドタイムが必要です。デッドタイムが不適切な場合、IGBTが同時にオンになることで、ショート回路が発生する可能性があります。本装置はデッドタイムを制御して、IGBTの正確な切替動作を確保します。

IGBTゲートドライバの種類

IGBTゲートドライバはさまざまな要件に合わせて異なる種類が存在します。以下は一般的に使用される本装置の種類一例です。

1. シングルチャネル型IGBTゲートドライバ

1つのIGBTを制御するために設計された装置です。主に、単一のIGBTデバイスが使用される用途に適しています。例としては、直流モータの制御や小規模な電力変換装置が挙げられます。

2. マルチチャネル型IGBTゲートドライバ

複数のIGBTを同時に制御することができる装置です。複数のIGBTを同時に切替動作することが必要な用途に適しています。3相インバータ制御や高性能モータ制御などがその一例です。

3. 絶縁型IGBTゲートドライバ

入力と出力の間に高い絶縁性を有する装置です。高電圧用途では絶縁型が電気的な絶縁を提供し、システムの安全性を高めます。

参考文献
https://www.idc-com.co.jp/pdf/jp/product/IGBT_ApplicationManual.pdf
https://www.ti.com/jp/lit/an/jaja489/jaja489.pdf?ts=1610370509863&ref_url=https%253A%252F%252Fwww.google.com%252F

一軸アクチュエータ

一軸アクチュエータとは

一軸アクチュエータ

1軸アクチュエータは、一方向のみに駆動するアクチュエータになります。精密なステージでの位置決めや、製品や部品などの輸送などに使用されます。電気によって駆動する製品が一般的ですが、油圧や空気圧を使用する製品や磁力を使用するリニア式の製品もあります。電気によって駆動する製品では、ボールネジをモータによって回転させることによって1方向に駆動する方法とベルトを巻き上げる様にすることによって駆動する方法があります。

一軸アクチュエータの使用用途

1軸アクチュエータは、製造装置の内部や、家電、自動車、精密機器、機械部品などの製造工程、製品内に使用されます。物体の輸送や位置決めが使用用途です。ボールネジを使用するタイプでは、精密な移動や輸送が可能なため、ステージの位置決めや、溶接装置やハンダ装置などの先端部の位置決めに適しています。1軸アクチュエータの選定の際には、輸送速度や輸送距離、精度、許容荷重、振動の少なさ、形状などを考慮する必要があります。

一軸アクチュエータの原理

1軸アクチュエータの動作原理を、ボールネジを使用するタイプとベルトを使用するタイプで説明します。アクチュエータの先端には、テーブルやスライダー、ロッドなどがついています。

  • ボールネジ
    ボールネジを使用するタイプの1軸アクチュエータは、モータ、ボールネジ、ベアリング、スライダーやロッドなどで構成されています。ボールネジは、ネジの間にボールを挟むことによって、摩擦の抵抗を少なくして輸送できる製品になります。動作時は、モータによってビールネジを回転させます。その回転と連動してステージやロッドが移動することによって、アクチュエータとして機能します。
  • ベルト
    ベルトを使用するタイプの1軸アクチュエータは、モータ、ベルト、スライダーやロッドなどで構成されています。動作時は、ベルトがモータによって移動し、ベルトと連動してステージやロッドが移動し、アクチュエータとして機能します。ボールネジのタイプよりも、素早く動かせることが特徴です。 

参考文献
https://jpn.surugaseiki.com/dcms_media/other/306_SXM_Web.pdf
https://www.kss-superdrive.co.jp/jp/product/product-06.html
https://www.ea-thk.com/

偏心測定器

偏心測定器とは偏心測定器

偏心測定器は、主にローラやモータのシャフトなどの、回転している物体の偏心を測定する装置になります。偏心は、回転の中心と回転物の形状上の中心点である剛心から、どの程の離れているかを示す量になります。精密機器などの回転部では、偏心が0になるように設計されていることが多く、偏心がずれていると、不具合の原因になるため、注意が必要です。返信の測定方法には、透過した光によって測定する透過型と反射した光によって測定する反射型の2種類が代表的です。

偏心測定器の使用用途

偏心測定器は、工作機械やロボットアーム、ローラなどのモータなどを使用して回転させながら使用する機器の検品やメンテナンスなどに使用されます。偏心測定器の選定の際には、測定方法や測定精度、測定範囲などを考慮する必要があります。

偏心測定器の使用例を以下に示します。

偏心測定器の原理

偏心測定の測定原理を透過型と反射型に分けて説明します。

  • 透過型
    透過型の偏心測定器は、発光素子が取り付けられている発光部と受光素子が取り付けられている受光部で構成されています。発光部と受光部の間に測定対象の回転体がくるように設置します。発光部から発信された光が回転体によって遮られ、一部が透過し、受光素子で受光します。受光素子で受光した光を高速でサンプリングすることによって、どの程度の振れ幅があるかを観測し、偏心を算出します。製品によっては、複数の点で偏心を測定することで、正確に偏心を測定できる装置もあります。
  • 反射型
    反射型の偏心測定器は、受光素子と発光素子が一緒になった装置で構成されています。測定時は、発光素子によって発信されたレーザー状の光を回転体に当て、その反射光を受光して、光の周期のずれから偏心を測定します。透過型に比べて、小型で一方向のみから測定できることが特徴ですが、測定対象が細い場合は、誤差が大きくなることがあるため、注意が必要です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/measure/hakaritai/measuring/deflection/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/82/9/82_803/_pdf

プーリーアイドラー

プーリーアイドラーとは

プーリーアイドラー

プーリーアイドラーとは主にVベルトタイミングベルト駆動チェーンなどのガイドとして使用されるアイドラーで、機械の内部でベルトを抑え、位置を調整する役割を持っています。アイドルギア、アイドルプーリー、アイドルホイールなど、たくさんの呼称があります。

機械の専門用語として、「使われていない」「遊んでいる」を意味するアイドル状態(アイドリング)がありますがプーリーアイドラーの名称もまさにそこから取られており、ベルトのテンションを調整するテンショナープーリーのサポートをする意味合いで組み込まれます。

この記事では主に自動車部品としてのプーリーアイドラーについて説明します。

プーリーアイドラーの使用用途

Vベルト、タイミングベルトを使用する機械の部品として使われることが多く、自動車や工場の産業機械などの部品として幅広く使われています。自動車の場合はファンやエアコン、パワーステアリングの駆動用、エンジン点火にまつわるバルブの開閉用などでVベルト、タイミングベルトが使用されていますが、それらのベルトの張りを調整するのにテンショナープーリーがあり、ベルトを挟んだ真向いの方向にプーリーアイドラーが取り付けられます。
     
ベルト類はゴム製なので長期間使用していると伸びてしまうのですが、伸びてしまったベルト類が駆動中に跳ねやバタつきを起こし、他の部品を傷つけることもあります。なのでテンショナープーリーで張りを調整し、その真向いにプーリーアイドラーを設置し、2つのプーリによってベルトを挟み込むことでベルトの跳ねやバタつきを抑えます。

プーリーアイドラーの特徴

プーリーアイドラーは円形になっており、内側にベアリングが内蔵されています。外側にはベルトを取り付けるための溝が形成されており、Vベルトやタイミングベルトを取り付けることが出来ます。これによりクランクシャフトからベルトを通して駆動トルクが伝わってきた際にプーリーアイドラー自体が回転し、ベルトを挟み込みつつ、カムシャフトへと駆動トルクを伝達します。
   
テンション調整の意味合いで組み込まれるテンショナープーリーとは違い、プーリーアイドラーにはスプリングを掛けるための取り付け穴や位置を調整するためのブラケットの長穴などが存在しません。回転するためのベアリングとベルトを取り付けるための溝があるだけです。テンショナープーリーとセットで使わなければ、ただ回転するだけのプーリーでしかないのが大きな特徴と言えます。
   
しかしテンショナープーリーだけではベルトを片側でしか押さえつけることが出来ないため、両側からベルトを挟み込みたい場合に必須となる部品です。

プーリーアイドラーはベアリングが内蔵されている為、定期的に交換しないと固着や焼き付きなどによってベアリングが回転できなくなる場合もあります。自動車の場合は10万キロなどの一定距離を走った際にVベルト、タイミングベルトと共にプーリーアイドラーも交換するのが良いでしょう。

参考文献
https://www.193motors.com/dictionary/2015/10/post-2.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0077.html

盤用ヒーター

盤用ヒーターとは

盤用ヒーター

盤用ヒータとは、電気盤や制御盤などの機器内で使用される暖房装置です。

結露や凍結などから、制御盤を保護するために使用されます。スペースヒーターと呼ばれることも多いです。盤用ヒーターによって適切に温度管理することで、電気装置の寿命を延ばすことが可能です。

過度な熱や冷気にさらされることで、電子部品や配線などの劣化や破損が起こる場合があります。盤用ヒーターによって適切な温度範囲を維持することで、これらの問題を軽減できます。

ただし、盤用ヒーターは電気装置内部で使用されるため、安全性にも留意が必要です。適切な絶縁や過熱保護機能、過電流保護などの安全対策をしっかり行います。

盤用ヒーターの使用用途

盤用ヒーターは、さまざまな電気装置や制御盤で使用されることがあります。以下は盤用ヒーターの使用用途一例です。

1. 制御盤

盤用ヒーターは、制御盤内で使用されることが一般的です。電気制御盤は、産業プロセスや機械の制御を担当し、内部の電子部品や制御回路を適切な温度で保つために盤用ヒーターが使用されます。低温環境下での動作による問題を防ぎ、信頼性の高い制御を実現することが可能です。

2. 通信

通信設備やネットワーク機器は、安定した動作温度を必要とします。盤用ヒーターは、通信機器内の電子部品や回路の結露を防ぎ、信頼性の高い通信環境を提供するために使用されることも多いです。特に屋外の通信設備では、低温や湿度の変動による影響から保護するために盤用ヒーターが採用されることがあります。

3. キュービクル

盤用ヒーターはキュービクルと呼ばれる電気設備の一部として使用されることがあります。キュービクルは、電力の配電や保護を行うためのコンパクトな電気装置です。

キュービクル内には、電子部品や回路が配置されており、これらの部品を適切な温度で保つために盤用ヒーターが使用されます。盤用ヒーターは、キュービクル内の結露や凍結を防ぎ、電子部品や回路の正常な動作を維持することが可能です。

盤用ヒーターの原理

盤用ヒーターは、一般的には抵抗加熱によって動作します。ヒーターエレメントと呼ばれる導電性の材料が電流を通過することで抵抗を発生させ、その抵抗によってエネルギーが熱に変換する仕組みです。

ヒーターエレメントは、ニクロム合金やステンレススチールなどの高抵抗材料で作られることが多いです。電流が流れることでヒーターエレメントが加熱され、周囲の空気や物体に熱を放射します。

盤用ヒーターの電力供給は、制御装置や制御回路を介して制御されます。制御装置は電力の供給を調整し、必要な温度を維持するためにヒーターエレメントに電力を供給することが必要です。制御装置は温度センサーやタイマーなどの機能を備えており、適切な温度制御を実現します。

盤用ヒーターの選び方

盤用ヒーターを選ぶ際には、以下のような要素を考慮することが重要です。

1. 出力

盤用ヒーターの出力は、保温が必要な電気装置や盤のサイズ、環境条件に合わせて選ぶことが必要です。適切な出力を選ぶことで、目標温度を維持するのに十分な熱を供給できます。

2. 電源要件

盤用ヒーターの電源要件とは、電圧や周波数などです。使用する電源に適合していることを確認します。また、必要な電源容量に基づいて電気回路の設計や配線も検討する必要があります。

3. サイズ

盤用ヒーターのサイズは、設置する電気装置や盤の寸法に合わせて選ぶことが必要です。設置スペースや配線のレイアウトなども考慮して、適切なサイズを選択します。また、盤用ヒーターの設置方法も確認し、適切に設置できるかを検討します。

4. 制御

盤用ヒーターには温度センサーや制御装置が組み込まれている場合も多いです。これにより、目標温度の制御や温度監視が容易になります。必要に応じて、適切な制御機能を持つ盤用ヒーターを選択することが重要です。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/cooling_fan/hma/features/
https://www.orimvexta.co.jp/support/specialcontents/no7/
https://www.nippon-heater.co.jp/products/gas/mts/

サイクロ減速機

サイクロ減速機とは

サイクロ減速機は、なめらかな曲線である、トロコイド曲線をもつ歯車によって、すべりが少なく減速を行うことができる減速機になります。そのため、矩形状の歯を持つ歯車よりも、摩耗や振動が少なく、長寿命で駆動できることが特徴です。モータやピストンなど、回転することで機器を駆動させる製品の内部で多く使用されています。大きい径の歯車の内部に小さい径の歯車がある様な構造となっており、高い減速比を出せる製品が多くあります。

サイクロ減速機の使用用途

サイクロ減速機は、産業用ロボットや産業機器などの生産ラインから、ポンプ、自動車の駆動部分や船のスクリュー部分、航空機のプロペラ部分、風力発電のプロペラ部などに使用されます。エンジンのピストンや電気駆動のモータなどから得られた回転とトルクを、その他の機器で使用するレベルのトルクや回転数に変換するために使用されます。サイクロ減速機の選定の際には、減速比や摩擦による損失、サイズ、メンテナンス性などを考慮する必要があります。

サイクロ減速機の原理

サイクロ減速機の動作原理を説明します。サイクロ減速機は、2つの取り付け軸と2つの減速用の歯車、軸を支えるベアリング、歯車部を支える偏心のベアリングで構成されています。歯車は、トロコイド曲線という、円が曲線をすべらないように移動するとき、その円の外点の軌跡の曲線状に歯がある歯車になります。歯車は、1つの歯車の中にもう1つの歯車がある機構となっています。

動作時は、回転速度が速い方の軸から、回転が伝わり、高速回転側の歯車に伝わります。高速回転側の歯車は内部の歯車であることが多く、偏心用のベアリングと共に、外部の低速回転用の歯車の内周を回転します。その回転によって、外部の歯車が回転し、減速され、出力用の軸から、入力のトルクよりも高く、低速回転で伝えられます。

歯車には、穴が開いており、外ピンなどを使用し、偏心用のベアリングへの負荷を減らす様な機構を採用している製品もあります。 

サイクロ減速機のメリット

サイクロ減速機のメリットとして以下の3つが挙げられます。

一つ目は、高減速比で、ギヤ同士の歯数差を少なく設計出来るため、1/150程度まで設定することができます。

二つ目は、コンパクトさで、1段で高減速比が得られるため、多段にする必要が無く、薄型設計が可能です。

三つ目は、高効率な点で、すべり歯車ではなく、転がり歯車なので摩擦ロスが小さく、伝動効率が高いのが特徴です。

これらの特徴から、いろいろな用途に採用される代表的な減速機として知られています。

サイクロ減速機のオイル交換

サイクロ減速機には潤滑油が使用されています。潤滑油の量はオイルゲージで確認することができますが、確認する場合は、運転中ではなく、停止状態で確認します。これは運転中はオイル量が変動するので、正確なオイル量が分からないためです。

オイル量は多すぎても少なすぎても悪影響を与えます。多すぎる場合、モーター側へのオイル侵入、オイル漏れ、温度の異常上昇が起こる場合があります。少ない場合は、歯車や軸受の潤滑が十分に行われず、異常摩耗が発生したり、冷却効果が不足して温度上昇が起こる場合もあります。

オイル交換の目安は各社の技術資料に記載されていますが、定期的に油量を確認し、適正量になるように補充します。一般的に初回のオイル交換は早い時期に行い、そのあとは定期的に行うようにします。

また、オイル内に鉄粉などが混入している場合は、歯車や軸受で摩耗が発生している可能性があるので、歯車と軸受の検査・メンテナンスが必要になる場合もあります。粘度の低下なども故障の原因になるので、注意が必要です。

定期点検時は、オイル量、オイルの状態(汚れなど)だけでなく、周囲にオイル漏れはないか、回転時の温度上昇、回転時の音などを通常運転時と比較することで、異常を早期に発見することができます。そのため、通常運転時のデータ(温度、振動、音など)を記録しておくとメンテナンス時に役に立ちます。

参考文献
https://cyclo.shi.co.jp/product/gmoter/saikuro6000/

マイクロメーターヘッド

マイクロメーターヘッドとは

マイクロメーターヘッド

マイクメーターヘッドは、マイクロメーターで測定対象を挟んで測定する際に、移動して、測定対象と触れる部分を指します。通常は、ヘッド部分のつまみを回転させることによって、測定対象を挟むようにして移動させます。目盛りが付いている製品が一般的で、目視で測定できるうえ、最近では、デジタル式のマイクロメーターヘッドが多く発売されています。先端部分は、通常は、円柱状になっていますが、円錐状や球面状、フランジ状などになっている製品もあります。

マイクロメーターヘッドの使用用途

マイクロメーターヘッドは、産業機器や製品の検品やメンテナンス、実験場や研究室などの試験物の寸法測定などに使用されます。ノギスなどで測定するよりも、高精度の測定が必要な製品で使用されます。マイクロメーターヘッドの選定の際には、測定精度や誤差の出やすさ、デジタル式かアナログ式か、メンテナンス性などを考慮する必要があります。マイクロメーターヘッドは、接触することによって測定するため、接触によって、形状が変形するゴムなどの測定には向いていないので注意が必要です。

マイクロメーターヘッドの原理

マイクロメーターヘッドの特徴を説明します。マイクロメーターヘッドは、測定部、スピンドル、取り付け部、目盛り付きのスリーブ、粗動つまみ、微動つまみなどで構成されています。粗動つまみ、微動つまみとスピンドルは、歯車によって、接続されており、つまみの回転に合わせてスピンドルが変動する機構になっています。微動つまみの部分にも目盛りが付いていることが一般的で、より微小な量の測定が可能になります。取り付け部では、ねじやナット、すり割りを使用する締付などの取り付け方法がある製品が発売されています。

読み取り時は、粗動つまみを動かすことによって、スピンドルを動かし、測定対象に軽く接触させます。その後、微動つまみを調整することで、測定対象に完全に接触させます。微動つまみは、接触後は、スピンドルが進まない機構になっており、完全に接触するまで回転させることができます。その後、スリーブに書かれている目盛りと、微動つまみ部に書かれている目盛りを調べることで測定することができます。 

マイクロメーターヘッドの使用例

マイクロメーターヘッドの使用例としては、多軸ステージ等の可動域の調整や、部品の検査治具など大量に検査する必要があるものに使用されます。

マイクロメーターヘッドクランプ

マイクロメーターヘッドをクランプとして使用する場合には、可動域に合わせたストッパを利用することで使用可能です。また、製品によりクランプ付きのものを選定するとよいでしょう。クランプ付きの製品を選定することにより操作の緩みを防ぐことができます。

マイクロメータヘッドの固定方法

マイクロメータヘッドの固定方法としては、マイクロメータヘッドの取り付け軸(ステム)がストレートタイプ、ナット付きタイプいずれかにより変わります。

  • ストレートタイプの固定方法
    軸受け側の部品をすり割り部品にし、取り付け軸に合わせネジ等でクランプして固定します。軸受け側の穴に取り付け軸を通し、止めねじで固定します。
  • ナット付きタイプの固定方法
    軸受け側の穴に取り付け軸を通し、取り付けられているナットで固定します。

マイクロメータヘッドの耐荷重

マイクロメータヘッドの耐荷重については、取り付け方法や、静荷重か動荷重か、作動させて使用するかストッパとして使用するかなど使用する条件により変わります。したがって、定量的な定めがありません。

一例として下記に推奨の耐荷重限度を記載します。

  • マイクロメータヘッドの耐荷重
    標準形(スピンドルピッチ0.5 mm): 4 kg程度まで
    高機能形 スピンドルピッチ0.1 mm/0.25 mm : 2 kg程度まで
    高機能形 スピンドルピッチ0.5 mm : 4 kg程度まで
    高機能形 スピンドルピッチ1.0 mm : 6 kg程度まで
    高機能形 スピンドルピッチ直進式 : 2 kg程度まで
    高機能形 MHF極微動用(差動機構付): 2 kg程度まで
  • 取り付け方法別静荷重
    締付ナット方式 : 8.63~9.8 kN(880~1000 kgf)で本体破損
    スリ割締付方式 : 0.69~0.98 kN(70~100 kgf)で取付金具より脱落
    ねじ止め方式 : 0.69~1.08 kN(70~110 kg)で止めねじ破損

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/micrometer.jsp

カムクラッチ

カムクラッチとは

カムクラッチ

カムクラッチとは一方向のみにトルクを伝える際に使用されるワンウェイクラッチの一種です。カム式ワンウェイクラッチ、ローラー式ワンウェイクラッチとも呼ばれます。

ワンウェイクラッチの特徴として、自転車のペダルのように一方向にしか回転しないという性質がありますが、カムクラッチも同様の性質を持っており、決められた方向の回転トルクとは逆の回転トルクを与えられた際に内部で噛み合わないことで空回りさせる仕組みになっています。

自動車やヘリコプター、搬送コンベア、その他産業用機械の部品として幅広く使われています。

カムクラッチの使用用途

ワンウェイクラッチの一種ということで、主に一方向にのみトルクを伝えたい場合に使用されます。逆の回転トルクが伝わった際に空回りするという性質を利用して、駆動部品が逆回転してブレてしまわないよう、逆転防止用の部品として使用されることがあります。

また、空転と噛み合いの性質を使い分けることによって、2速駆動用のクラッチとして使用される場合もあります。ギアなどの駆動部品をシャフトに接続し、シャフトの両端に2つのカムクラッチを取り付け、速度の違う別々の駆動モーターをカムクラッチと接続することによって一方のモーターが回転した際にもう一方は空転するという仕組みに出来、2種類の駆動源を使い分けることが出来ます。

駆動部品の組み合わせ方によって、2つの駆動モーターのトルクを合わせる2元駆動なども可能です。

カムクラッチの原理

カムクラッチの内部には外輪と内輪があり、それらの中間にはカムとスプリングが内蔵されています。カムはボールベアリングの玉のように、外輪と内輪の間に一定間隔で敷き詰められています。

カムがボールベアリングの玉と違う点は、その形状です。正円ではなく、特殊な楕円型になっています。下半分が正円、上半分は両辺の違う三角形のような形になっています。これは、カムがクラッチの内部で転倒しないようにするための工夫です。   

カムクラッチに噛み合い方向のトルクが加えられた際、カムが外輪と内輪の間でつっかえ棒の役割をすることによって、外輪と内輪を噛み合わせ、同方向の回転トルクを加えます。
   
カムにはスプリングを取り付けるための溝が切られており、スプリングはカム全体を覆うように設置されています。このスプリングがカムが噛み合い方向に傾きやすくなるよう、カムを締め付けています。逆の回転トルクが伝わった際、外輪と内輪が噛み合わないのはこのスプリングがカムを噛み合い方向へと引っ張っているからです。スプリングによって噛み合い方向に傾けられているカムは、逆の回転トルクが伝わった際に噛み合わずに滑ることでトルクを逃がします。

超低温冷凍庫

超低温冷凍庫とは

超低温冷凍庫

超低温冷凍庫とは、非常に低い温度を維持することができる冷蔵庫です。

一般的な冷蔵庫が0℃から10℃程度の温度を維持するのに対して、超低温冷蔵庫はそれ以下の温度帯域に対応しています。超低温の温度定義はメーカーでさまざまですが、一般的な超低温冷蔵庫の温度範囲は-80℃から-196℃程度です。さらに、低温が必要な場合には、液体ヘリウムを用いた超低温冷凍機を使用することもあります。

これらの冷蔵庫は高度な冷却技術を利用して、液体ヘリウムの沸点である-268.9℃近くまで温度を下げることが可能です。研究用途では-80℃などフリーザーが該当します。

研究室などで使用される超低温冷凍庫は深型であり、その形状からディープフリーザーと呼ばれることも多いです。超低温冷凍庫は非常に低い温度を実現できるため、特に低温下での保存や処理が必要な物質や試料に適しています。

超低温冷凍庫の使用用途

超低温冷凍庫はさまざまな用途で使用される装置です。以下は超低温冷凍庫の使用用途一例です。

1. 医療関係

超低温冷凍庫は、生物学的試料や医薬品の保存に使用されます。例えば、細胞やDNA、ワクチンなどを超低温下で保存し、品質と安定性を維持することが可能です。また、研究用途では低温下での実験や解析にも利用されます。

再生医療などの分野でも重要です。組織の保存や輸送に使用される場合があります。臨床研究では、生体試料の保存やバイオバンクの管理にも利用されます。

一般的に、病院などで血液や尿などといった生化学サンプルの保管のためにも使用されますが、世界中で血液バンクの数が増加しているためシェアが向上している最中です。設置コストが高い一方で、温室効果ガスの排出量が少ない点が特徴です。

2. 食品

冷凍食品の製造や保存に使用されます。食品を非常に低い温度で急速に凍結することで、品質を保ちながら長期間の保存が可能です。超低温下では微生物の成長が抑制され、食品の鮮度や風味が維持されます。

超低温冷凍庫は、さまざまな種類の食品を冷凍することが可能です。野菜や魚介類など、幅広い食品が凍結および保存されます。これにより、季節を問わず食品の供給が可能となり、流通や輸送の効率が向上します。

3. 製造業

半導体産業では、超低温冷凍庫が欠かせない存在です。超低温下での製造プロセスや材料の冷却が必要であり、液体窒素を使用した超低温冷凍庫などが使用されます。材料合成や触媒反応、超伝導材料などにも利用されることが多いです。

超低温冷凍庫の原理

超低温冷凍庫は、非常に低い温度を実現するために特殊な冷却技術を使用します。特に蒸発冷却や冷媒循環による冷却などが使用されることが多いです。

蒸発冷却では液体窒素や液体ヘリウムなどの冷媒が使用され、これらの冷媒が蒸発する際に熱を奪います。冷蔵庫内の温度を下げるために、冷媒を冷蔵庫内の容器やチューブに導入し、蒸発させることが多いです。蒸発する冷媒が熱を吸収することで、周囲の温度を下げる冷却効果が生じます。

冷媒の循環による冷却では、フロンなどの冷媒を循環させることで冷却する方法が一般的です。冷媒は冷凍庫内の温度を下げるための冷却効果を得た後に、冷媒ポンプや冷凍機によって再び圧縮されます。この循環により、冷媒は繰り返し冷却効果を発揮し、超低温を維持します。

なお、現在の冷媒種としては主としてR32やR410Aなどが主流です。近年では二酸化炭素などを冷媒として製品も開発されています。

超低温冷凍庫の選び方

超低温冷蔵庫を選ぶ際には、容量や冷却温度、必要ユーティリティなどの要素を検討します。

1. 容量

保存する物品の量やサイズによって異なるため、必要な容量を正確に把握してスペースを確保します。また、将来的な需要の変化を考慮して、余裕のある容量を選ぶことも重要です。

2. 冷却温度範囲

超低温冷凍庫は、異なる温度範囲を提供することが可能です。保管する物品の要件に応じて、必要な冷却温度範囲を確認します。一般的な冷却温度範囲は-80℃から-196℃の間ですが、特定の用途によってはそれ以上の低温が必要な場合も多いです。

3. 機能性

冷凍庫には温度制御やドアロックなど、さまざまな機能があります。必要な機能を選ぶ際には、試料や製品管理のニーズに基づいて検討します。

参考文献
https://01.connect.nissha.com/blog-gassensor-refrigerants02/
https://www.galilei.co.jp/wp/wp-content/themes/mod/asset/pdf/digital_catalog/FMS_Japanese.pdf
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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201202/k10012741381000.html