高電圧コンバータとは
高電圧コンバータとは、産業用に利用される200Vや400Vの高電圧電流を、必要な電圧へと変換する装置です。
交流 (AC) から直流 (DC) へ変換する装置をAC/DCコンバータ、直流のまま電圧を変える装置をDC/DCコンバータと呼びます。多くのAC/DCコンバータは、MOSFET (英: Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) やダイオードを用いてスイッチングを行い、交流から直流に変換します。
高電圧コンバータの使用用途
高電圧コンバータは、自動車、半導体、食品、医療などの産業で使用されます。AC/DCコンバータは直流で動作する産業装置への電圧変換、DC/DCコンバータは装置の定格電圧への適合に利用します。具体的な使用用途は以下の通りです。
- 車載用高電圧バッテリーから、モータ駆動用の低電圧に降圧
- 半導体加工装置に必要な高精度の電圧に調整
- 食品生産ラインで用いる加工装置に適した電圧に調整
- 医療用精密機器での細かな電圧調整
高電圧コンバータ選定時は、電流や電圧要件、出力安定性、サイズ、損失、絶縁性能、安全性を考慮する必要があります。
高電圧コンバータの原理
高電圧コンバータの動作原理を、AC/DCとDC/DCに分けて説明します。
1. AC/DC高電圧コンバータ
AC/DC高電圧コンバータは、AC電源接続端子、DC電源供給端子、スイッチング用MOSFET、ダイオードなどで構成されます。ダイオードやMOSFET4つをダイヤモンド状に配置するブリッジ整流回路の利用が一般的です。
交流電流がダイオードやMOSFETを通過する際、正の電流はそのまま通過し、負の電流は正の向きに入れ替わり出力されます。その後MOSFETのスイッチングにより、オンとオフを短い間隔で繰り返します。この間隔の変更により、要求電圧へ調整可能です。
2. DC/DC高電圧コンバータ
DC/DC高電圧コンバータは、変換の方法により、スイッチングレギュレータ型、リニアレギュレータ型、電荷ポンプ型、絶縁型コンバータに分かれます。
- スイッチングレギュレータ型
MOSFETの高速スイッチングとインダクタ・コンデンサを用いて電圧を昇降圧します。エネルギー損失が少ない一方で、ノイズが発生しやすくフィルタやシールド対策が必要です。 - リニアレギュレータ型
余分な電圧を熱として放出し調整する方式です。ノイズが少ない反面、効率は低い傾向にあります。 - 電荷ポンプ型
コンデンサの充放電を利用して電圧を調整します。回路がシンプルで部品が少ないため、省スペース設計に適しています。 - 絶縁型コンバータ
スイッチング動作とトランスを組み合わせて電圧を変えます。入力と出力が絶縁される安全性の高さが特徴です。
高電圧コンバータの選び方
高電圧コンバータを選ぶ際には、電力要件、変換効率、安全性、設置環境の4つを中心に検討します。
1. 電力要件
使用する電源の入力電圧、負荷が要求する出力電圧や電流に対応しているか確認します。要件に合わない高電圧コンバータを選定すると、装置が正しく動作しません。
2. 変換効率
入力電圧に対する出力電圧の割合を確認します。高い変換効率の高電圧コンバータは運用コストを削減できますが、初期コストが高くなりがちです。用途や運用条件に応じ、適した変換効率の高電圧コンバータを選定します。
3. 出力の安定性
出力する電圧や電流の安定性の確認が必要です。例えば精密機器は、わずかな誤差が装置の性能に影響を与えます。目的に合わせた製品選びが大事です。
4. 安全性
絶縁性能や過電流保護の安全機能の有無を確認します。絶縁型コンバータの選定により、漏電や感電のリスク軽減が可能です。特に医療機器や高電圧装置は安全性が重要です。
5. 設置環境・耐久性
高電圧コンバータのサイズ、防塵、防水、冷却方式、ノイズ対策が適切か確認が必要です。工場・野外設備は過熱やホコリ、湿気が故障の原因となります。設置環境に合った製品選びにより、トラブルを防ぎ長期間の安定稼働が期待できます。
参考文献
https://www.idc-com.co.jp/jp/product/module/dcdc/
https://www.bellnix.co.jp/products/highvolt/
https://www.torex.co.jp/technical-support/application-note/design-guide-for-dcdc-converter/whats-dcdc-converters/