カムクラッチとは
カムクラッチとは一方向のみにトルクを伝える際に使用されるワンウェイクラッチの一種です。カム式ワンウェイクラッチ、ローラー式ワンウェイクラッチとも呼ばれます。
ワンウェイクラッチの特徴として、自転車のペダルのように一方向にしか回転しないという性質がありますが、カムクラッチも同様の性質を持っており、決められた方向の回転トルクとは逆の回転トルクを与えられた際に内部で噛み合わないことで空回りさせる仕組みになっています。
自動車やヘリコプター、搬送コンベア、その他産業用機械の部品として幅広く使われています。
カムクラッチの使用用途
ワンウェイクラッチの一種ということで、主に一方向にのみトルクを伝えたい場合に使用されます。逆の回転トルクが伝わった際に空回りするという性質を利用して、駆動部品が逆回転してブレてしまわないよう、逆転防止用の部品として使用されることがあります。
また、空転と噛み合いの性質を使い分けることによって、2速駆動用のクラッチとして使用される場合もあります。ギアなどの駆動部品をシャフトに接続し、シャフトの両端に2つのカムクラッチを取り付け、速度の違う別々の駆動モーターをカムクラッチと接続することによって一方のモーターが回転した際にもう一方は空転するという仕組みに出来、2種類の駆動源を使い分けることが出来ます。
駆動部品の組み合わせ方によって、2つの駆動モーターのトルクを合わせる2元駆動なども可能です。
カムクラッチの原理
カムクラッチの内部には外輪と内輪があり、それらの中間にはカムとスプリングが内蔵されています。カムはボールベアリングの玉のように、外輪と内輪の間に一定間隔で敷き詰められています。
カムがボールベアリングの玉と違う点は、その形状です。正円ではなく、特殊な楕円型になっています。下半分が正円、上半分は両辺の違う三角形のような形になっています。これは、カムがクラッチの内部で転倒しないようにするための工夫です。
カムクラッチに噛み合い方向のトルクが加えられた際、カムが外輪と内輪の間でつっかえ棒の役割をすることによって、外輪と内輪を噛み合わせ、同方向の回転トルクを加えます。
カムにはスプリングを取り付けるための溝が切られており、スプリングはカム全体を覆うように設置されています。このスプリングがカムが噛み合い方向に傾きやすくなるよう、カムを締め付けています。逆の回転トルクが伝わった際、外輪と内輪が噛み合わないのはこのスプリングがカムを噛み合い方向へと引っ張っているからです。スプリングによって噛み合い方向に傾けられているカムは、逆の回転トルクが伝わった際に噛み合わずに滑ることでトルクを逃がします。