ウィットねじ

ウィットねじとは

ウィットねじとは、1841年にイギリスでウイットウォースによって考案され、ねじ山の角度が55度の三角ねじです。

ねじの各種の寸法がインチ単位で表されるインチねじの1つでもあり、記号としてWで表されます。ウィットねじは、史上はじめて作られたねじの規格でしたが、日本では1968年にウィットねじに関するJIS規格が廃止されました。

しかし、現在もなお水道関係や建築関係において、アンカーボルトやアイボルトなど壁面の固定具のねじなどに多く使用されています。

ウィットねじの使用用途

ウィットねじは水道関係や建築関係において、多く用いられています。例えば、アンカーボルトやアイボルトなど、壁面の固定具のねじなどに有用です。

ウィットねじの原理

ウィットねじの特徴は、ねじ山の角度は55度であることです。私たちが通常使用しているメートルねじや、ウィットねじ以外のインチねじのねじ山の角度は60°です。また、ねじ山の形状は三角形の三角ねじで、メートルねじや他のインチねじと変わりません。

ウィットねじは、ねじのサイズの基本寸法がインチで表されるインチねじの1つです。ねじの外径寸法はインチ寸法 で表わされ,ねじ山のピッチ (となり合うねじ山とねじ山の距離) は、1インチ=25.4mmについての山の数で表されます。インチねじにはウィットねじのほかに、ユニファイねじが挙げられます。

ウィットねじのその他情報

1. ウィットねじの主な材質と主な表面処理

ウィットねじの材質は一般的なねじと同様に、多岐に渡ります。 適切な使い方の項で述べますが、強度に関わりがあるため、特に人命にかかわる機器の設計であれば十分に検討しなければなりません。

また、電蝕対策も重要な要素です。ウィットねじの材質と、相手の機械要素および固定する対象物との材質が異なると、金属の電位差が生じて腐食する場合があります。特にアルミやステンレスの場合は注意が必要です。

ウィットねじの表面処理も一般的なねじと同様に、先に述べた電蝕による腐食対策や、外観品質、価格に応じて選びます。

2. ウィットねじの使い方

ウィットねじは一般的なねじと同様に、適正な使い方をしないと、相手側のナットが破損したり、ウィットねじを使用して組み立てた製品や、機器が破損したりすることがあります。ねじ締結に関するトラブルを防ぐために、基本的な考え方は下記の通りです。

  • ウィットねじと相手側のねじが壊れないよう、締め付ける力が許容範囲内であること。
  • ウィットねじに加わる、繰り返しの力 (振動などによる) が、許容範囲内であること。
  • ウィットねじの座面 (お互いに接触する側の面。工具が触れる面ではない) に加わる圧力で、締め付ける対象物 (金属や木材など) を陥没させないこと。
  • ウィットねじを締め付けることで、締め付ける対象物を壊さないこと。

3. ウィットねじのゆるみ止め

ウィットねじは一般的なねじと同様に、適正に使ったとしても、徐々にゆるんでいくと固定する対象が外れることで、固定する対象によっては人命にかかわる大事故に発展する可能性があります。ゆるみの発生原因には、下記の2つが挙げられます。

  • ウィットねじに加わる繰り返し振動
  • 外気温または固定するもの自体からウィットねじに加わる、繰り返しの発熱

ウィットねじを強く締める方法は一般的なねじと同様に効果がありますが、ウィットねじが折れたり、ねじ穴が破壊することの原因にもなります。特に人命にかかわる機器を設計する場合には、ウィットねじの適正な使い方で述べた通り、締め付ける力の許容範囲の計算をしなければなりません。

購入した製品のねじを締め付けなおす場合、すでに定められた締め付け力の規定があるときは、それに従ってねじの締め付けを行います。その他ゆるみ止めの方法として、ゆるみ止め用接着剤を使う方法や、ダブルナット、ゆるみ止め専用に設計された製品を使う方法もあります。

参考文献
https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/16:1000732
https://neji-no1.com/information/standard/index07.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/

ベルトコンベヤ

ベルトコンベヤとは

ベルトコンベヤ

ベルトコンベヤとは、ベルトを使用して、異なる場所に物品を運搬する物流機器です。

さまざまな形状やサイズの物品を、効率的かつ連続的に運搬するために使用されます。ベルトコンベヤは、大量の物品を迅速かつ効率的に運搬するための優れた方法です。連続的な運動により、物品を一貫して移動させることができます。

また、異なる高さや角度に対応することが可能です。さまざまな形状やサイズの物品を運搬できるため、多様な産業や応用用途に対応しています。

ただし、定期的なメンテナンスが必要です。ベルトの張力や摩耗、動力装置の機能などを定期的に点検します。また、ベルトが切創した場合などには、修理や交換が必要です。

ベルトコンベヤの使用用途

ベルトコンベヤは、さまざまな分野で使用される機器です。以下はベルトコンベヤの使用用途一例です。

1. 製造業

ベルトコンベヤは、自動車製造工程で重要な役割を果たす機器です。部品を組み立てるための製造ラインにおいて、ベルトコンベヤが使用されます。エンジン部品、ボディパーツ、内装などが運搬されます。

また、電子機器の組み立てやテストラインにおいても、ベルトコンベヤが使用されることが多いです。基板、部品、完成品などが効率的に運搬され、次の工程に運搬することができます。

2. 物流

倉庫内の物品の運搬や仕分けに使用されます。荷物が入荷されたり出荷されたりする際に、ベルトコンベヤを使用して効率的に処理することが可能です。また、仕分け作業や物品の格納場所への運搬にも利用されます。

製品の包装工程においても使用されます。製品が包装材料に移動し、ラベル貼りや封入などの工程へ搬送することが可能です。

3. 食品製造・加工

ベルトコンベヤは、食品製造業において多く使用されます。食品製造業では、食品の安全性や環境の清潔性が求められ、ベルトコンベヤも例外ではありません。食品製造業で使用するベルトコンベヤは、耐環境性に優れた材料を使い、洗浄やメンテナンスが容易である点が特徴です。

ベルトコンベヤの原理

ベルトコンベヤの基本的な原理は、コンベヤーベルトと呼ばれる連続的なベルトを使用して物品を運搬することです。コンベヤーベルトは、耐久性のある素材で作られた連続的なベルトであり、物品を運搬するために使用されます。ベルトは複数のローラーまたはプーリーによって支持され、駆動装置によって動力が与えられます。

駆動装置は、モーターやエンジンなどの動力源から動力を供給される装置です。通常はベルトの一端に接続され、ベルトを回転させる力を提供します。駆動装置は、ベルトコンベヤの長さや運搬物品の重さに合わせて選定されることが多いです。

ベルトコンベヤでは、ベルトの張力を適切に保つためのテンション装置が使用されます。テンション装置は、ベルトの張力を調整するための装置であり、ベルトの適切な動作と安定性を確保します。ベルトの張力は、種類や負荷によって決定されます。

ベルトコンベヤの選び方

ベルトコンベヤを選ぶ際に考慮すべき要素は多岐にわたります。以下に、ベルトコンベヤを選ぶ際に重要な要素をいくつか示します。

1. 運搬物品

ベルトコンベヤの選択において、運搬する物品の性質は非常に重要です。物品のサイズや表面の特性などを考慮する必要があります。大型の重い物品を運搬する場合は、強力な駆動装置と頑丈なベルトが必要です。

2. 距離と速度

運搬する距離と必要な速度も考慮する必要があります。長距離の運搬や高速運転を必要とする場合は、適切な駆動装置とベルトの設計が必要です。また、制御システムやスピード調整装置が必要な場合もあります。

3. 環境要件

ベルトコンベヤを設置する環境に関しても考慮する必要があります。温度、湿度、化学物質の有無など、環境要件によっては特定のベルト材料や保護対策が必要となる場合も多いです。また、防塵や防水の要件があるときは、適切なシールや保護カバーが必要です。

参考文献
http://www.maruyasukikai.co.jp/seminar/period1-1.html

タンタル電解コンデンサ

タンタル電解コンデンサとは

タンタル電解コンデンサ

タンタル電解コンデンサとは、電解コンデンサの1種で、誘電体にタンタルの酸化物が使われているものです。

電解コンデンサとは、アルミニウムやタンタルなどの酸化皮膜を誘電体として用いたコンデンサを指します。一般的な特徴として、「静電容量が大きいこと」「電圧の極性があること」が挙げられますが、タンタルコンデンサはレアメタルであるタンタルの表面を酸化させて五酸化タンタル (Ta2O5) を形成し、それを誘電体としたものです。

タンタル電解コンデンサはアルミ電解コンデンサよりも小型で寿命が長く、温度変化にも強く周波数特性が良い特徴があります。一方、主材料のタンタルは非常に高価なので、コンデンサとしては比較的価格が高いものです。

また、壊れたときに電極間がショートする危険性があります。そのため、適切な使い方を守ることが大切です。

タンタル電解コンデンサの使用用途

タンタル電解コンデンサの用途は幅広く、携帯電話、パソコン、テレビゲーム機、カーナビ、オーディオ機器等々、あらゆる電子機器で使われています。アルミ電解コンデンサと比較すると高周波特性や温度特性に優れているため、高い周波数で電流をON-OFFするスイッチング電源の平滑回路に採用されます。

また、電源回路のスパイクノイズを吸収するデカップリングコンデンサも最適な用途の1つです。さらに、バックアップコンデンサとして、一時的な電源の保持を目的とした使い方もあります。

近年では小型化が進んでおり、高さ0.5mmの製品も登場していて、携帯電話やパソコン等の小型化に貢献しています。

タンタル電解コンデンサの原理

タンタル電解コンデンサは、謡極、誘電体、陰極の3つで構成されています。

1. 陽極

材料はタンタルで、焼結された金属棒を介して電極に接続されています。

2. 誘電体

陽極のタンタルを酸化した五酸化タンタルの薄膜が誘電体となります。五酸化タンタルと陰極との間では一種のダイオードが形成され、逆バイアスが維持されている状態では静電容量を持ちますが、順方向に電圧が印可されると大きな電流が流れてしまいます。

これが、タンタルコンデンサに極性がある理由です。なお、五酸化タンタルの層は極めて薄いため、静電容量を大きくすることができます。

3. 陰極

陰極材料としては、二酸化マンガンもしくは導電性高分子が使われ、電極との間の導通を確保します。導電性高分子は二酸化マンガンより抵抗値が小さく、ESR特性が優れています。

さらに、陰極と電極の間に銀やグラファイトなどの通電用の金属類を挟んで、抵抗値を下げる工夫がなされています。アルミ電解コンデンサでは電解液を使いますが、その電解液が徐々に蒸発して比較的寿命が短いことが短所です。

一方、タンタル電解コンデンサは全て固体材料で構成されているため、長寿命が期待できます。

タンタル電解コンデンサのその他情報

1. タンタル電解コンデンサの使用上の注意点

タンタル電解コンデンサが故障する主な原因は、コンデンサの誘電体が局所的にショートした状態になることです。電源ラインなどの低インピーダンス回路に接続されていると、大きな電流がショートした箇所に集中して発熱し、発火に至ることがあります。

タンタル電解コンデンサが一旦発火すると、炎を発して燃焼を続け、燃え尽きます。そのため、高信頼性を求められる機器や常時通電する設備を製造するメーカーの中には、タンタル電解コンデンサの使用を一切禁止しているところもあります。

電池を電源とするポータブル機器においても、タンタル電解コンデンサの焼損は報告されているため、使用する際は十分な注意と回路検証が必要です。一般的な対策としては、「いかなる場合も逆電圧を印加しないこと」「コンデンサにかかる電圧に対して十分余裕を持った定格電圧のコンデンサを選定すること」の2つが挙げられます。

特に電源回路に採用する場合は、その電源電圧の2倍以上、可能であれば3倍の定格電圧のタンタル電解コンデンサを採用する事が望ましいとされています。また、流入するリップル電流が大きい場合は、コンデンサ内部の発熱で劣化が進行する可能性があるので、放熱に有利な大きめのパッケージを選定することも有効です。

2. タンタル電解コンデンサの極性表示

タンタル電解コンデンサは有極性であり、指定された極性を誤ると大きな電流が流れ、最悪の場合発火に至ります。そのため、電極の極性表示を理解しておくことが必要です。

タンタル電解コンデンサはその構造から、チップ型、金属ケースハーメチックシール形、樹脂ディップ形の3種類に分類できます。これらのタンタル電解コンデンサの極性は、以下のように読み取ります。

チップ型
黒いモールドのケースの上面に静電容量や定格電圧とともに白い帯が印刷されていますが、その帯の下側の電極が陽極になります。

金属ケースハーメチックシール型
高信頼性が要求される用途向けですが、丸い筒状の形状の表面に静電容量、定格電圧などとともに+記号が印刷されています。その+記号側のリード線が陽極です。

樹脂ディップ型
縦型構造ですが、樹脂表面に静電容量、定格電圧とともに+記号が記されています。+記号が近い側のリード線が陽極です。また、リード線長が不等で陰極側のリード線が短くなっています。

なお、同じように有極性のアルミ電解コンデンサには負極側に表示があり、タンタル電解コンデンサとは表示方法が異なります。アルミ電解コンデンサからタンタル電解コンデンサに置き換える場合、極性を間違えないよう注意して下さい。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/capacitors/tc_what1
https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/pdf/m9808.pdf

30度台形ねじ

30度台形ねじとは

30度台形ねじ

私たちの身の回りの製品を組み立てる時に欠かせない部品がねじです。ねじには様々な種類がありますが、それぞれのねじ山の形状によって,ねじ山が三角形の「三角ねじ」,角形の「角ねじ」、および台形をしている「台形ねじ」のなどに分類されます。

このうちねじ山の形状が台形をしている、台形ねじには、ねじ山の角度が30度や29度のものがあります。これらは、それぞれヨーロッパやアメリカで使われていました。このうちヨーロッパで使われていた、ねじ山の角度30度のねじが「30度台形ねじ」とよばれるねじです。

30度台形ねじの使用用途

30度台形ねじは、工具機械、操作装置、昇降機器やフォークリフト射出成形機、 組立ラインでなどの調整可能ねじや主ねじなどとして、様々な場面で使用されています。

台形ねじは、他の種類のねじと比べるとバックラッシュ(運動方向に意図して設けられた「隙間」や「遊び」)が小さく、強度が高いこと、また製作が容易であることや、高精度な加工が可能であること、さらに、軸の回転運動を軸方向の移動に変えるときに効率的がよい、などの特徴をもっているため、その用途は多岐にわたっています。

30度台形ねじの原理

機械部品に用いられるねじには、一般に三角ねじが選ばれます。これは、ねじ山の形状が三角形である三角ねじは、ねじ山が四角の角ねじや、台形の台形ねじと比べて摩擦力が大きいく、締結に向いていると考えられるからです。

一方、ねじ山の形状が台形である台形ねじは、高い強度を持つため、正確な運動伝達性が必要な、旋盤などの工作機械の送りねじや、バルブ開閉用など、動力を伝達するものに適しています。台形ねじのうち、台形の角度が30度のねじは「30度台形ねじ」とよばれ、主にヨーロッパで用いられる台形ねじの規格です。

また、ねじ山が四角の角ねじも、同様に大きい摩擦力が期待されますが、この角ねじと比べると台形のねじ山は比較的製作が容易で、微細な加工が可能です。したがって高精度のピッチが要求される箇所には30度台形ねじが使われています。

軸の回転運動を軸方向の移動に変えるときに効率的がよいため、重量の大きい物を持ち上げるジャッキや、プレス機のネジなどにも用いられます。

参考文献
https://nagatatekko.co.jp/topics-news

ウェッジプーリー

ウェッジプーリーとは

ウェッジプーリー

プーリーは、自動車をはじめ、さまざまな機械や設備に使われている滑車形の部品です。通常、機械などの動力源から動力を伝達するときにはベルトを用いて動力伝達を行いますが、この時、プーリーはベルトとあわせて用いられます。

ウェッジプーリーは、細幅Vベルトであるウエッジベルトと組み合わせて用いられます。

ウェッジベルトは、同じ幅の他のタイプのベルトと比べてより強い摩擦力を生じます。その結果、大きな伝達能力を発揮して、高速で高動力な伝動が可能です。

ウェッジプーリーの使用用途

ベルトを用いて動力伝達を行う際、ベルトの規格に合ったプーリーを選ばなくてないけません。ウェッジベルトを用いるときは、ウェッジプーリーを組み合わせて使います。

ウェッジプーリーとあわせてウェッジベルトを用いることによって、伝動装置の省スペース化、省エネルギー化などの効果を実現できます。さらにウェッジベルトは通常のベルトと比べて寿命が長いこともあり、近年盛んに用いられています。例えば、大型ポンプ・コンプレッサ・鍛圧プレス・鋳造機・製紙機械・クラッシャ・ハンマーミル発電機・帯鋸盤・大型工作機械・振動ローラ・グラインダ・冷凍庫など、様々な分野で用いられています。

ウェッジプーリーの原理

ウェッジプーリーは、ウェッジベルトと組み合わせて動力源からの動力を伝達するために使用されるプーリーです。

くさび形の形状をしているウェッジベルトは、一般的な同じ幅の他のタイプのベルトと比べて、より強い摩擦力を生じます。そのため、ウェッジプーリーと共にウェッジベルトを用いると、通常のプーリーとともに平ベルトⅤベルトを用いた場合より大きな伝達能力を発揮し、高速高動力伝動が可能となります。その結果、標準的なベルトを使用した場合より伝動装置のスペースを小さくすることが可能となり、装置の省サイズ化を実現することができます。

またウェッジプーリーとウェッジベルトを用いると効率的な動力伝達も可能となるため、省エネルギー効果も持ち合わせていると言えます。

さらに効率的な運転が可能であるためベルトの寿命も長くなります。このように従来のプーリーとあわせて平ベルト、Ⅴベルトを用いた場合と比べて、ウェッジプーリーをウェッジベルトと組み合わせてを用いると、様々な利点があります。

参考文献
https://kurashi-no.jp/I0019796

昇圧レギュレータ

昇圧レギュレータとは

昇圧レギュレータは、電気回路において入力電圧を昇圧して出力するための電圧変換方式のことを言います。供給する電源電圧が低く、電気回路を動作させるための電圧が不十分な時などに用いられます。昇圧レギュレータを使用し供給する電圧を高くすることで、回路の駆動に必要なエネルギーが印加され、回路が停止したり誤動作したりすることを防ぎ、安全に動作させることが可能になります。

昇圧レギュレータは昇圧型DC/DCコンバータなどの電圧変換ICに用いられる方式です。

昇圧レギュレータの使用用途

昇圧レギュレータは低電圧の電源を供給して電気機器を利用する時などに用いられます。

具体的な例としては、低消費電力で駆動する機器などが多く、単三電池を電源とするポータブル電気機器などに用いられることがよくあります。駆動させる電圧に対して、機器に挿入できる単三電池が2、3本しかないような小型の機器において、内部の電気回路を動作させるためには、2、3本の単三電池の電圧のみでは足りないことがあります。そのような場合に昇圧レギュレータにより電気回路が駆動する動作電圧値まで昇圧させることで機器を駆動させます。

昇圧レギュレータの原理

昇圧レギュレータの原理を説明します。まず、回路構成について説明します。昇圧レギュレータの回路構成は入力電源、インダクタMOSFET(スイッチ)、ダイオード、コンデンサ、出力端子となっております。スイッチがOFFの時、入力電源→インダクタ→ダイオード→コンデンサ・出力端子(並列接続)→入力電源の順に電流が流れる回路となります。スイッチがONの時、入力電源→コイル→MOSFET→入力電源の順に電流が流れる回路となります。

続いて動作原理を説明します。MOSFETスイッチがONの時、インダクタに電流が流れ、インダクタがエネルギーを蓄積します。続いてMOSFETスイッチがOFFの時、インダクタに蓄積されたエネルギーと、入力電源のエネルギーが合算された電圧がコンデンサおよび出力端子に印加されます。インダクタに蓄積されたエネルギーが加算されるため、入力電源より高い電圧を出力させることができるという原理です。このON・OFF動作を高速で繰り返すことで、安定的に入力電圧を昇圧させることができるのです。

参考文献
https://emb.macnica.co.jp/articles/1754/

カップ砥石

カップ砥石とは

カップ砥石

カップ砥石は、砥粒を結合剤で結合させて円盤状に成型した砥石の一種です。カップ状の形状をしており、主に平面研削や円筒研削や内面研削などの加工に使用されます。
カップ砥石は直径が小さく、平面加工や円筒加工、内面加工などの細かい加工が必要な場合に使用されます。また加工する材料に応じて砥粒や結合剤の材質を変えることで、材料の性質に合わせた研削が可能です。
カップ砥石は金属や樹脂、ガラスなどの硬質材料の加工に適しています。特に内面研削ではカップ状の形状が非常に有効で、内径面の研削が容易です。

カップ砥石の使用用途

  1. 金属の研削
    カップ砥石は金属の研削に適しています。特に硬質な金属の加工に使用されることが多く、鋼材や鉄、ステンレス鋼などの加工に使用されます。
  2. 鉄筋の切断
    鉄筋の切断にもカップ砥石が使用されます。鉄筋は硬いため切れにくいことがありますが、カップ砥石を使うことで比較的容易に切断できます。
  3. コンクリート面の研磨
    建築現場などでコンクリート面を仕上げる際にカップ砥石が使用されます。砥石を回転させてコンクリート面を削り取り、平滑な面を作り出します。
  4. 木材の研削
    木材の研削にもカップ砥石が使用されます。特に細かい部分の研削に適しており、狭い場所や角度がついた場所の研削に使用されます。
  5. 精密加工
    カップ砥石は刃先が細くて高い精度で加工できるため、精密加工にも使用されます。例えばベアリングや歯車などの加工に使用されることがあります。

カップ砥石の種類

カップ砥石にはいくつか分類方法があります。砥石のボンド (接合剤) によって分類した場合の種類の一部は以下の通りです。メーカーによって名称は異なる場合があります。

  1. レジンボンドカップ砥石
    レジンボンドカップ砥石は、合成樹脂をボンドに使用している砥石です。柔らかいボンドを使用しているため、砥石の砥粒が抜けやすく、砥石が短時間で消耗する傾向があります。しかし研削能力が高く、加工面に精度が出るため、高精度加工に適しています。また、低温での加工にも適していることが特徴です。
  2. メタルボンドカップ砥石
    メタルボンドカップ砥石は、金属をボンドに使用している砥石です。ボンドが硬いため砥粒が抜けにくく、消耗が遅いため、長時間の加工に適していて、また耐熱性に優れており、高温での加工にも適しています。ただし研削時に加工面に熱が集中しやすいため、加工面に歪みが生じることがあります。
  3. 無機系結合カップ砥石
    無機系結合カップ砥石は、無機物をボンドに使用している砥石です。ボンドが硬くて砥粒が抜けにくいため、耐久性に優れています。また研削面に熱が集中しにくいため、歪みが生じにくいことが特徴です。高精度加工に適しています。
  4. ハイブリッドカップ砥石
    ハイブリッドカップ砥石は、複数の種類の砥粒を組み合わせた高性能な砥石です。一般的に、金属ボンドとレジンボンドの両方を使用して作られます。
    ハイブリッドカップ砥石は、従来のカップ砥石よりも高速で加工でき、より精度の高い表面仕上げが可能です。また金属ボンドとレジンボンドを組み合わせることで、切削力や振動を低減できます。

カップ砥石の原理

カップ砥石が切削する過程を説明します。

  1. 準備
    カップ砥石は、通常、電動工具や研削機に取り付けられます。まず、適切なサイズと形状のカップ砥石を選択して工具に取り付けます。
  2. 調整
    カップ砥石の位置と角度を調整します。これにより、素材を正確に切削できます。一般的に刃を素材に対して垂直に保つことが重要です。
  3. 切削
    カップ砥石が適切に設定されたら、電動工具を起動し、素材に対して砥石を接触させます。砥石の回転によって摩擦と圧力が生じ、素材の表面を削り取れます。
  4. 冷却
    カップ砥石は高速で回転し、切削中に熱を発生させます。熱が過剰に蓄積すると、砥石や素材が損傷する可能性があります。したがって切削中には冷却液や水を使用して熱を抑えることが一般的です。
  5. 研削の繰り返し
    切削作業を繰り返し行いながら、素材の表面を均一に削ります。
  6. 仕上げ
    切削作業が終了したら、仕上げのために別の砥石や研磨剤を使用することがあります。これにより、切削によってできたギザギザや粗い表面を滑らかに仕上げられます。

カップ砥石の構造

一般的なカップ砥石の構造は、砥粒と呼ばれる砥料がボンド (接合剤) で結合されたものです。砥粒は研削面に取り付けられており、ボンド剤は砥粒を固定するために使用されます。またカップ砥石には金属リングが含まれていますがが,これは砥粒を固定するためのものです。

ボンドには様々な種類があり、例えばセラミックスや樹脂などがあります。ボンドによって砥石の硬度や強度が異なり、また砥粒の種類によって砥石の研削性能が異なります。

カップ砥石の表面には砥粒がランダムに配置されており、これにより砥石の表面が滑らかで均一な切削ができるのが利点です。切削材料と砥石の接触面積が少なくて切削熱が逃げやすいため、高速切削にも対応できます。

また一部のカップ砥石には表面に溝が刻まれているものがありますが、この溝により砥石の表面に切削材料が詰まりにくくなり、切削性能が向上します。

カップ砥石の特徴

長所

カップ砥石の主な長所は「広い研削面積」、「柔軟性と適応性」、「高い研削能力」、「高い耐久性」、「経済性」です。以下にて説明します。

広い研削面積
カップ砥石は円盤状の大きな砥石であり研削面積が広くなるため、広い面積を効率的に研削できます。大きな面積の加工や一度に多くの材料を削る場合に適しています。

柔軟性と適応性
カップ砥石はさまざまな形状やサイズの研削対象物に適用でき、平面研削、円筒研削、凹凸面研削など多様な形状の加工に対応できます。また異なる砥粒サイズや結合剤のバリエーションがあり、研削の目的や要件に合わせて選択できるので便利です。

高い研削能力
カップ砥石は、精度の高い研削が可能です。適切な砥粒サイズや結合剤を選ぶことで、砥石の切削性能や切り粉の排出効率を最適化できます。

高い耐久性
カップ砥石は、優れた耐久性を持っているため長時間の研削作業に耐えられます。よって砥石の寿命が長くなり交換頻度を減らせます。

経済性
カップ砥石は一つの砥石で広い面積を研削できるため、作業効率が高まります。また耐久性が高く交換頻度が低いため、砥石のコスト面でも経済的です。さらに、適切な冷却や潤滑を行うことで砥石の寿命を延ばし、経済性をさらに向上できることも利点の一つです。

短所

カップ砥石の主な短所は「精度の制約」、「切り粉の排出」、「切削速度の制限」、「取り付けの制約」です。以下にて説明します。

精度の制約
カップ砥石は広い研削面積を持っていますが、その一方で細かい精度や仕上げが必要な作業には制約があります。砥石の形状や接触面積の広さにより、微細な加工や狭い曲線面への研削が難しくなる場合があります。

切り粉の排出
カップ砥石は中央部がくりぬかれているため、切り粉や削りカスの排出が効率的に行われるとは限りません。特に、研削面積が広く切削量が多い場合には、切り粉が砥石内部にたまりやすくなることがあります。切り粉や削りカスが砥石内部にたまり、それが砥石と材料の間に詰まると、切削力が増加し、加工品質が低下する可能性があることが短所です。

切削速度の制限
カップ砥石の形状により、切削速度に制限が生じることがあります。特に砥石の外周部分の周速度が高くなりやすく、砥粒の摩耗や砥石の寿命の問題が発生することがあります。

取り付けの制約
カップ砥石の取り付けには適切な工具や設備が必要となる場合があり、特に大型のカップ砥石は重くて取り扱いが難しく、取り付けや交換作業に手間がかかることがあることが短所です。

カップ砥石のその他情報

カップ砥石には様々な形状があり、円筒形のものや円錐形のもの、平面形のものなど、加工対象によって使い分けられます。またカップ砥石は金属加工だけでなく、木材やプラスチックなどの加工にも利用されます。

カップ砥石は、刃物や工具の研ぎ出し、表面仕上げ、穴の拡大など、様々な用途で使われている工具です。特に金属加工においては、高い剛性や精度を持ち大量生産に適しているため、自動車部品や航空機部品などの製造に広く使用されています。

トルクリミター

トルクリミターとは

トルクリミターとは、設備保護機能がついたカップリングの一種です。

通常のカップリングは、モーターなどの駆動源と負荷とを接続し、力を伝達するだけのものですが、トルクリミターは力の伝達に加え、負荷側からカップリングへ所定以上のトルク(力)がかかった場合、カップリング部で滑らせることで、駆動源側への力の伝達を遮断(駆動源と負荷を切り離す)する機能を有しています。ここで、この滑りのことをスリップともいいます。

トルクリミターの使用用途

トルクリミターは工場内などのモーターに多く使用されています。

モーターは交流、直流、油圧式などさまざまですが、比較的効果なものへ取付ける場合が多いです(故障した時のメンテナンス費が高価になるため)。また、トルクリミターは比較的小さいトルクに対して採用されることが多いです。

多くのトルクリミターは遮断するトルクの設定ができるため、負荷側とのフランジ面が合っていれば、トルクが違っても同じトルクリミターを使用することが可能です。

トルクリミターの原理

トルクリミターの構造はメーカーによりさまざまです。過負荷時にばねの力により駆動源を断つものや、圧接している金属部品を切り離すことで、カップリング部を切り離すものなどがあります。

一例としては、トルクリミターのハブへ、ボール状の金属が圧接(液状にしない溶接)してあり、負荷側からのトルクが設定値以上(トルクの設定はスプリングの力により変更)となった時に、このボールがハブから切り離される(溶接がはがれる)ことで、ハブとボス部とのトルク伝達を遮断し、結果的にカップリングの縁が切れることになります。カップリングの縁が切れることで、負荷側からの力は駆動源側へは伝達されず、設備を保護することができます。

また、このタイプのトルクリミターの場合、圧接したボールがはがれてしまうため過負荷が解消されても、トルクリミターを再度使用することはできず、取替えを行う必要があります。また、多くのトルクリミターは、正回転・逆回転どちらの回転方向に対しても順応できます。

アニール炉

アニール炉とは

アニール炉

アニール炉とは、アニール加工を施すための大型の加熱装置のことです。金属や半導体、ガラスなど様々な材質を高温に熱することができます。アニールとは、物体を加熱することでその材質のゆがみを矯正したり安定性を高めたりする技術のことです。例えば、プラスチックを加熱することで結晶化を高めたり、金属を加熱することで硬度を均一にしたりしています。アニール炉は、産業用や研究用に様々な材料をアニール加工するために広く使われているのです。

アニール炉の使用用途

アニール処理が必要となる材料は多いので、様々な場所でアニール炉は使用されています。

  • 結晶性プラスチックの処理
    結晶性の樹脂を加熱することで結晶化度を高めることができ、安定性の向上が図れます。
  • プラスチックの水分除去
    プラスチックは空気中も水分を吸収し、膨張してしまいます。そのため、アニール炉で過熱して水分を飛ばしサイズや寸法を正します。
  • 金属の処理
    金属を加熱することで、硬度を均一にすることができ、安定性が高まります。

アニール炉の原理

アニール炉には様々な過熱方法があります。熱風式や赤外線式など使用されていますが、ここでは性能の高い遠赤外線アニール炉についてご紹介します。

遠赤外線アニール炉とは遠赤外線の「輻射」という性質を利用して加熱されるアニール炉です。一般的な加熱方法としては、加熱対象に熱源を直接当てる方法や熱風を当てて暖める方法があります。しかし、どちらも対象に触れる必要があり、非接触での加熱ができませんでした。これらに比べて遠赤外線を使った方法では、物体に直接触れずに温度を上昇させることができます。

遠赤外線とは可視光よりも波長の長い電磁波のことです。遠赤外線を対象に照射することで、物体を構成する分子が振動して熱エネルギーを発生させます。この熱エネルギーによって物体が暖められるため、非接触で加熱が可能です。また、短時間で高温の状態を作り出すことができます。さらに、使用される遠赤外線の波長の違いによって加熱温度が変わり、加熱対象によって細かく使い分けができるという点でも優秀です。

参考文献
https://www.yumoto.jp/technology/onepoint/annealing-treatment
http://ecom-jp.co.jp/product/farinfrared.html
http://www.pbi-am.com/20190725-5883

ケミカルフィルタ

ケミカルフィルタとは

ケミカルフィルタ

ケミカルフィルタとは、空気中に存在する有毒ガスや酸性・塩基性の微少な粒子を除去するためのフィルタです。

主に液体や気体の流体を処理する際に利用されます。空気中分子状汚染物質の除去が可能で、精密機器の製造過程や医療現場で広く使用されています。取り除きたい有害物質は何種類もある場合が多いので、異なるフィルタが組み合わされて作られることも多いです。

ただし、ケミカルフィルターは一定の寿命を持っており、定期的に交換する必要があります。フィルターメディアの交換コストや廃棄物処理コストを考慮しなければなりません。

ケミカルフィルタの使用用途

ケミカルフィルタはさまざまな場面で使用されます。以下はケミカルフィルタの使用用途一例です。

1. 半導体デバイスの製造、加工

半導体デバイスの製造過程でも使われます。微少な粒子はデバイスの不具合を引き起こしたり、酸性・塩基性の気体は絶縁不良を引き起こしたりする危険性があるためです。

2. 文化財の保護

美術館や博物館で貴重な文化財の保護にも使われます。古くからある芸術品や文化財は空気中も気体の影響を受けやすいため、ケミカルフィルタを使用して有害物質を取り除くことが必要です。

3. 医療機関

医療機関でもケミカルフィルタは使われます。具体的には、医療装置や手術室の除菌です。

ケミカルフィルタの原理

ケミカルフィルタは除去したい有害物質によって様々な吸着剤や樹脂が使われます。以下の3種類を使用する場合が一般的です。

1. イオン交換樹脂

酸性や塩基性の有害物質の除去には、イオン交換樹脂が利用されます。これは、物質のイオン反応によって有害な物質から無害な物質に交換するという方法です。

酸性の物質には水素イオン、塩基性の物質には水酸化物イオンが含まれており、イオン交換樹脂と結合することで人体に無害な水や二酸化炭素に交換できます。

2. 活性炭

活性炭には微少な穴が空いており、気体を通すことで有害物質はここに侵入します。穴の大きさによって除去できる粒子の大きさも変わりますが、様々な有害物質を吸着させて取り除くことが可能です。

3. ギガソープ

多くの穴を持つポリウレタンと微少な球状活性炭を組み合わせた物質です。通常の活性炭と比べて高効率な除去が可能です。また、通気性が優れているため圧力損失も少なく済みます。

ケミカルフィルタの選び方

ケミカルフィルタを選ぶ際は、SV値と呼ばれる指標を考慮することが必要です。SV値は「空間速度」と呼ばれ、以下の式で表されます。

   SV値 (1/h) = 通風量 (m3/h) ÷ 吸着剤充填体積 (m3)

SV値は、吸着剤のあるケミカルフィルタ内を時間あたりに通過する風量を示しています。ケミカルフィルタの目的は通過する空気の中にある有害物質の捕集です。そのため、時間あたりに通過する空気量が多いほど、ケミカルフィルタで捕集できる有害物質は少なくなります。

有害物質濃度の高い空気、高効率での捕集を目的とするならば、SV値を小さく設定する必要があります。 また、通過する空気量が少ないほど、吸着剤の寿命が向上します。ケミカルフィルタは、SV値の小さい製品を選定するのが有利です。

ケミカルフィルタのその他情報

ケミカルフィルタの寿命

ケミカルフィルターには寿命があり、寿命に近づくほど有害物質の吸着性能が悪くなります。性能が悪化したケミカルフィルタは、寿命を迎える前に新しいフィルタへ交換が必要です。ケミカルフィルタの寿命は各メーカーごとに基準日が存在しますが、同製品でも使用する環境が異なれば寿命に差がでます。

寿命を決定する要素は温湿度、使用する箇所に浮遊している有害物質の濃度、有害物質の成分、1日の使用時間などです。この項目を考慮して寿命試験を実施することで、ある程度の寿命を算出できます。

ケミカルフィルタを導入する際は、複数に連なって設置することも多くあります。これにより、1台のケミカルフィルタが寿命でも他のケミカルフィルタで有害物質を取り除くことが可能です。

参考文献
https://www.nipponmuki.co.jp/media/2016/12/13/2
https://www.nitta.co.jp/resources/catalog/airclean/Chemical_Filters(2F-39-P).pdf
https://cambridgefilter.com/wp/wp-content/uploads/2015/11/chemarrest.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/20/3/20_3_220/_pdf 中島啓之