エラストマー

エラストマーとは

エラストマ

エラストマー(英語: elastomer)とは、弾性を有する高分子化合物の総称です。熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーの2種類があり、用途によって使い分けされています。

熱可塑性エラストマーは加熱により流動性をもつ性質があるため、射出成形機などで加工しやすいのが特徴です。文房具、衛生用品、自動車部品などの幅広い分野で使用されています。

熱硬化性エラストマーは加熱されても大きく変形しないので、耐熱性が求められる場面で活用されています。パッキンやシール材などが代表的な使用例です。

エラストマーの使用用途

熱可塑性エラストマーは、加熱すると流動性が生じるため、簡単に加工、成型することが可能です。プラスチック用の射出成型機を使用すると、様々な形の部品を作製することができます。具体的にはダクト、ホース、グリップなどに活用されています。

熱硬化性エラストマーは、加熱しても可塑性が生じないので、耐熱性が求められる箇所で使用可能です。具体的には、パッキン、ガスケット、オイルシールなどで使用されています。

エラストマーの原理

エラストマーとは弾性のある高分子の総称で、弾力のあるという意味のelasticと高分子という意味のpolymerを組み合わせた言葉です。エラストマーには、加熱により軟化する熱可塑性エラストマー(英語:Thermo Plastic Elastomers、略語:TPE)と、加熱により硬化する熱硬化性エラストマー(英語:Thermo Setting Elastomers、略語:TSE)があります。

TPEは基本的にソフトセグメントとハードセグメントから構成されています。前者は弾性の役割、後者は架橋の役割を担っています。加熱によって分子にエネルギーが加わると、架橋部分の働きが弱くなり、分子全体が流動的になります。TPEの種類としては、オレフィン(アルケン)系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、アミド系などがあり、それぞれ分子構造や合成方法が異なります。

TSEにはシリコーンゴムやフッ素ゴムウレタンゴムなどがあります。一般にゴムと言われている高分子はこちらです。TSEはTPEに比べて、耐熱性や耐薬品性に優れた性質を持っていますが、加工のしやすさではTPEに劣ります。

エラストマーのその他情報

誘電エラストマーと磁性体エラストマー

昨今注目されているエラストマーの一つに、誘電エラストマがあります。誘電エラストマーは電界を印加すると数百%を超える大きなひずみを生じるエラストマーです。つまり、マクスウェルの法則により、電気エネルギーを運動エネルギーに変換するアクチュエータの機能としての活用が期待されるデバイスです。

誘電エラストマーの素材には、アクリル系ないしはシリコーン系が使われています。その理由は、誘電率が高く、歪応力により破断しないよう柔らかい材料でなければならないためです。これは、誘電エラストマーは2枚の電極に挟まれた高誘電率の高分子材料でできたコンデンサーデバイスととらえることもできます。この特徴を利用して、人工筋肉などの医療系分野への応用や、高効率なアクチュエーターとしての各種ロボットへの採用検討が進められています。

また、もう一つの新規デバイスとして粘弾性を有する磁性体エラストマーの研究開発も活発です。エラストマーの粘弾性と磁性体の機能を併せ持つ新規デバイスは、ネオジム粉や鉄粉を高分子材料と配合生成することで実現可能です。このデバイスは振動耐性に優れるため、機械系のアクチュエーターへの応用や、自動車の着座感知センサーなどへの適用が期待されています。

また、ファラデーの電磁誘導の法則に基づき、振動などの運動エネルギーを電気的なエネルギーへ変換するデバイスとしての研究開発も行われており、先にのべた誘電エラストマー含めて、振動発電デバイスとしての取り組みが盛んです。昨今のSDGsなどに代表される環境保全への取り組みの一環としてこれらは着目されており、例えば運動靴底や衣類へのエラストマー装着により発電を行い、センサー通信用の電力として賄うといった近将来のアプリケーションへの応用が考えられています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/83/9/83_9_269/_pdf
https://www.djklab.com/parts/service/pdf/elastomer-2.pdf
https://www.silicone.jp/contact/qa/qa003.shtml
http://www.r-shinkai.co.jp/list/3.html
https://www.union-gosei.co.jp/tpe/results/index.html

エアサンプラ

エアサンプラとはエアサンプラ

エアサンプラとは、有害大気汚染物質等測定や空中浮遊菌を捕集するために使用される機器です。

空中浮遊菌をモニタリングするために、培地に菌を採集します。 細菌や真菌用の培地をセットし、毎分何Lかを設定し吸引することで空中浮遊菌を培地に衝突させサンプリングします。 この空中浮遊菌の測定は、室内の環境管理において幅広い分野で使用されています。エアーサンプラーと言われることもあります。

エアサンプラの使用用途

エアサンプラの使用用途は、有害大気汚染物質等捕集用と空中浮遊菌捕集用の2つに大きく分けられます。

1. 有害大気汚染物質等捕集用

工場など、有害物質を排出するリスクがある施設で、その有害物質の除去とモニタリングに使用されます。

2. 空中浮遊菌捕集用

注射剤や目薬など無菌性が保証されるべき医薬品の製造をおこなうクリーンルームをはじめとして、液剤の調製充填工程や手術室、食品の製造工場の衛生管理に使用されます。

エアサンプラの原理

エアサンプラは、設定された流量の速度で空気を一定量吸引できます。装置には吸引ポンプが組み込まれています。

空気を吸引して装置に大量に流すので、空気中の物質や菌を濃縮した形でサンプリングすることができ、比較的低濃度の物質でも測定できます。

エアサンプラの種類

エアサンプラは、有害大気汚染物質捕集用に使用される製品と空中浮遊菌の捕集に使用される製品があります。それぞれ、全く別の製品です。

1. 有害大気汚染物質等捕集用

環境省の有害大気汚染物質等測定方法マニュアルに準ずる方法で、フィルタなどに有害大気汚染物質等を捕集する装置です。5~40L/分のローボリュームタイプと、100~1,200L/分のハイボリュームタイプがあり、環境省のマニュアルでは、どちらも使える項目が多く、それぞれ基準値も違います。

また、ハイボリュームタイプは遠隔操作も可能です。どちらにも質量分析や粒度分布を測定できる装置があります。

2. 空中浮遊菌捕集用

寒天培地に空気を強制的に吹き付け、室内の空中浮遊菌を捕集する装置です。寒天培地はその後培養し、クリーンルームの衛生管理指標として使用されます。

エアサンプラの選び方

1. 有害大気汚染物質等捕集用

測定したい物質によって、石英繊維製フィルタ、ガラス繊維製フィルタ、フッ素樹脂製フィルタなど、フィルタの素材を選択します。また、捕集が長期間及ぶ場合には、遠隔操作ができるハイボリュームタイプが便利です。

2. 空中浮遊菌捕集用

空中浮遊菌捕集用のエアサンプラには、サンプリング方式が複数あります。

  • スリット方式
    回転している培地に一定サイズのスリットから空気を吹き付け採集する方法です。
  • ピンホール方式
    スリット方式の改良法で、機器の上部に培地をセットし、吸引のための数百の穴が開いた蓋をし空中浮遊菌を採集します。
  • RCS方式
    ロイター遠心サンプラーを用いて、培地に吸引した空気を吹き付け衝突させる方法です。

空中浮遊菌の測定は、メーカーによっては他の目的に使用できない専用の培地が必要です。培地には使用期限があるため、試験量が少ないとコスト高になってしまいます。逆に、培地を調製滅菌して市販のシャーレに充填し、使用できるタイプのエアサンプラは、サンプル数が多い場合煩雑で急な測定に対応できません。用途によって使い分けましょう。

また、JIS K 3836「空調浮遊菌測定器の捕集性能試験方法」を用いた捕集効率も参考にできます。

エアサンプラのその他情報

1. 法令について

有害大気汚染物質等捕集用
環境省が設定した有害大気汚染物質測定方法マニュアル に従った対応が必要となります。

空中浮遊菌捕集用
空中浮遊菌についての法規は、さまざまです。クリーンルームの用途や準拠する法律によって、基準が違います。

食品については、「HACCPに基づく衛生管理のための手引書」に規定されています。医薬品製造に関しては「無菌医薬品製造区域の環境モニタリング法」、それ以外のクリーンルームでは、「ISO 14644-1:2015(en), Cleanrooms and associated controlled environments — Part 1: Classification of air cleanliness by particle concentration」を参照することが多いです。

2. 校正

エアサンプラは大量の空気を定量的に流すため、定期的に校正を行いデータを保証する必要があります。校正には、標準機を購入する方法と、メーカーに依頼する方法があります。標準機を使用する場合には、定期的な標準機の校正が必要です。

参考文献
https://www.nirs.qst.go.jp/rd/quality_assurance/gmp/document/textbook_gmptraining/day1_05_merck.pdf
https://www.kankyo-eng.jp/cleen_room_bio.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00002.html
https://www.env.go.jp/air/osen/manual2/index.html
https://www.pmda.go.jp/files/000163289.pdf
https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:14644:-1:ed-2:v1:en

ウレタン防水材

ウレタン防水材とはウレタン防水材

ウレタン防水材とは、バルコニーやマンションの共用施設など防水が必要な場所に塗布される防水材です。

ウレタン防水材は、比較的安価で現場での作業が容易なうえ、施工可能箇所も多いことからよく使用されています。

ウレタン防水材の使用用途

ウレタン防水材は多くの建築物に使用されており、屋上やベランダ (床) 防水、マンションの共用部分である開放廊下、階段などで使用されています。これら建築物の防水に使用されるウレタン防水材は大きく分けて、1液タイプと硬化剤と混合したのち使用する2液タイプです。

1. 1液タイプのウレタン防水材

1液タイプのウレタン防水材は、作業が非常に容易であることから、ベランダの防水などに使用されています。

2. 2液タイプのウレタン防水材

2液タイプには、手塗りタイプと吹き付けタイプがあります。手塗りタイプは、主剤と硬化剤の2成分の材料を混合して塗布した後、常温下で硬化反応させて塗膜を形成するタイプです。この塗膜はゴム弾性を持ち、屋上やベランダの防水などに使用されています。

吹き付け2液タイプは、超硬化ウレタンが開発された事により、製造されるようになったウレタン防水材です。超硬化ウレタンと硬化剤を、専用の機械を用いて混合しながら吹き付けることで塗布します。塗布後、数十秒で硬化し始めるため、勾配がついた部位や、人通りの多い廊下や階段などで広く使用されるようになりました。

超硬化ウレタン防水材は、橋梁や蓄熱層、地下防水などの土木分野でも使用されています。ウレタン防水材を使用することで、構造物の水からの保護、コンクリートの塩害や炭酸ガスによる中性化からの保護、コンクリート剥落の防止などが可能です。土木の中でも道路においては、車両通過による膨張と収縮による劣化や、融雪剤使用での劣化を防ぐために、防水加工工事がされています。

また、混合させて吹き付ける方式のため、凹凸や地下など十分な乾燥が見込めない場所にもスプレー吹き付けによって防水が可能です。さらに超硬化ウレタン防水材は、耐薬品性、耐熱性、ひび割れ追従、耐摩耗性に優れており、下水関連施設や、海洋構造物、鋼製のタンクや構造物などのコーティングにも使用されています。

ウレタン防水材の原理

ウレタン防水材に使用されているウレタンは、ウレタン樹脂又は高分子化合物 (ポリマー) の総称です。ウレタンは、耐圧性、防水性、弾力性に優れた特性を持っています。

1. 1液タイプのウレタン防水材

1液タイプのウレタン防水材は、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールを重合反応させることを利用して防水膜を形成します。主剤と硬化剤を混合した状態で市販されています。1液タイプのウレタン防水材を塗布すると、イソシアネート基を持った化合物が、空気中の水分を利用して常温で硬化反応するため、硬化まで24時間程度と時間はかかりますが、施工は比較的簡易なのがメリットです。

2. 2液タイプのウレタン防水材

2液タイプはさらに、手塗りタイプと吹き付けタイプの2種類に分類できます。

手塗りタイプ
手塗りタイプはポリイソアネートを主成分とする主剤と、ポリオールを主成分とする硬化剤を混合してから塗布して防水加工します。主剤は、ウレタンプレポリマーの分子末端にイソシアネート基を持たせた粘稠な液体です。硬化剤は、主剤のイソシアネート基と反応するアミン、ポリオールなどと充填剤、可塑剤、安定剤など練り混ぜたペースト状の液体です。

この手塗りタイプの2液タイプウレタン防水材を使用するにあたっては、圧送機を使用して供給するシステムがあります。このため、屋上やベランダに2液の撹拌装置などを持ち込む必要がありません。このシステムを使用すれば、作業効率の向上や荷揚げ作業の短縮、廃材の大幅削減が図れるメリットがあります。また、撹拌はミキサーにより自動でおこなわれ、撹拌不良の心配がなく、均一な品質のウレタン防水材が供給されます。

吹き付けタイプ
超硬化ウレタンを用いた吹き付け2液タイプのウレタン防水材においても、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールを反応させて防水膜を形成します。吹き付けタイプの特徴は、主剤と硬化剤を各々高圧圧送し、スプレーガン部で混合させて吹付け施工することです。

短時間で硬化するため、一般部と立上がり部を共通の材料で施工できるのがメリットです。ただし、吹付け機は防水材メーカーにより異なるため、施工に際しては防水材メーカーの指導を受ける必要があります。

ウレタン防水材のその他情報

1. 液状ウレタン防水材の施工方法

1液タイプおよび手塗り2液タイプのウレタン防水材においては、いずれも液状の防水材を固めて防水膜を作るため、比較的簡易な工程で防水膜を形成できるのがメリットです。実際には、下地となる素材の上にプライマと呼ばれる接着を高める層を設け、その上に防水材を塗布しています。

しかしながら、この方法で、コンクリートなどに塗布する際には、コンクリートの割れが防水膜にそのまま反映されるため、防水膜が破断するというデメリットがあります。また、下地に付着していた水分により水蒸気が生じ、膨れが発生するなどのデメリットもありました。

このため、通気緩衝シートとウレタンを組み合わせた工法が開発されました。この工法では、下地の上にプライマーを設け、通気緩衝シートで覆い、その上に液体のウレタン防止剤を塗布して硬化させています。防水材と下地の間にシートが介在するため、下地を反映しての破断や下地の水分による膨れを防ぐことが可能です。この工法が採用されて以降、小規模の改修が主流であったウレタン防水は、新築や大規模な防水改修工事にも採用されるようになりました。

2. ウレタン防水材に使用するトップコート

トップコートとは、塗装において仕上げに塗布する材料です。ウレタン防水材を使用した塗装では、ウレタンで防水層を施行した後の仕上げ作業としてトップコートを塗ります。

ウレタン防水材の弱点は、紫外線にさらされることで変色する性質があることです。また、硬化する性質もあるため、防水層のひび割れや劣化のおそれもあります。そこで、トップコートを塗ることで紫外線から保護して、上記のような劣化を防いでいます。

また、ウレタン防水材は粘着性をもつため、表面をそのままにしていると、ゴミやほこりが付着しやすく、除去も困難です。そこで、トップコートを塗布して、粘着性をおさえています。

トップコートを施工することで、ウレタン防水材だけでは防げない劣化やウレタン防水材そのものの弱点も補えます。このため、トップコートの施工は、仕上げにおいて大切な工程です。

3. ウレタン防水材の塗布計算方法

塗布量とは、塗料の性能を発揮するために、どの程度の量を塗ればいいかを示した値です。1m2あたりの塗布量をかけることで必要な量を計算できます。

仮に、ウレタン防水材の規定塗布量が0.7kgの場合、10m2の施工面積で7kgが必要という結果です。しかし、実際には下地の表面に凹凸などがあり、その形状も含めて面積を計算しなければ、算出した必要塗布量が大幅にずれます。表面形状を反映した面積から塗布量を算出することが重要です。

参考文献
https://www.dyflex.co.jp/business/
http://www.resitect.net/ressys/pages/case01
http://watanabekogyo.co.jp/urethane/
https://gaiheki-tosou-reform.com/urethane-top-coat/
https://yuukisougyou.com/tosou/toryo/tohuryou/

ウォールスキャナ

ウォールスキャナとはウォールスキャナ

ウォールスキャナ (英: wall scanner) とは、壁の内部の埋設物を探知する測定器です。

ウォールスキャナによる測定の目的は、壁の適切な穴あけ位置を割り出したり、物体を壁に取付けたりすることです。鉄筋探査機やコンクリート探知機、コンクリートセンサーとも呼ばれます。

壁内部の埋設物には、鉄筋・鉄骨、鉄パイプ、樹脂管、木材、電線、空洞なさまざまです。検出目的に適したウォールスキャナを使う必要があります。

ウォールスキャナの使用用途

ウォールスキャナの用途は、建築土木関係で壁の内部の物体を探知するためです。壁や床・天井に穴を開け、給水管、排水管、電線管、ガス管などを通したい場合、壁の内部を探査にウォールスキャナが使用されています。

鉄筋・鉄骨・配管類、下地材、補強材、間柱、ケーブルなどを検知して、影響のないところを選定します。また、壁や床に手すり、金具、補強物、制御器、操作盤、時計、情報機器、棚などを取り付ける場合に、ウォールスキャナで内部状況を調査します。

配管・配線類の修理の際は、ウォールスキャナを使って通っている場所を特定し、効率の良い作業を実現するのが役割です。道路の埋設物や空洞の状況調査にも、ウォールスキャナでの調査は応用できます。

ウォールスキャナの原理

ウォールスキャナには、主に電磁波レーダー法と電磁誘導法が使われます。

1. 電磁波レーダー法

電磁波レーダーの特質として、マイクロ波帯の電磁波は媒体中を一定速度で直進します。そして、異なる媒体が接する所で反射します。この特質を利用し、そこまでの距離と位置の検知が可能です。電磁波レーダーを用いる測定は、非破壊検査です。放射線を使用しないので、広く使用されています。

電磁波レーダー法によるウォールスキャナは、まず電磁波をアンテナから壁や床に放射します。そして、内部の鉄筋、非金属管、空洞などから反射して、返ってきた電磁波を受信アンテナで受信し、放射から戻るまでの時間から距離を算出します。位置情報は、距離計を内蔵した装置を移動させることにより取得可能です。

物質の誘電率と真空の誘電率の比である比誘電率は、電磁波の速度に影響を与え、一般的なコンクリートは6~8です。水分率でも、この比誘電率が変化し、打設後間もないコンクリートは比誘電率が高くなります。電磁波レーダは、周波数を高くすれば分解能が高くなり、高精度な検査ができますが、測定可能な深さが浅くなります。

通常200~300mmぐらいまで測定可能です。埋設物のうち、金属と非金属とは反射した電磁波の波形で判別可能です。金属の比誘電率は、コンクリートの比誘電率より高いので、波形の上部が白の山形になり、下部が黒の山形になります。

2. 電磁誘導法

試験コイルに交流電流を流すと磁場ができ、導電性材質の表面には渦電流が発生します。その渦電流により磁場が逆方向に誘導され、電圧に変化が起こり、その変化を利用するのが、電磁誘導法を使用したウォールスキャナです。

空洞や塩ビ管などは、電磁誘導法では測定できません。電磁誘導法は、鉄筋などの磁性金属の検出に使われ、鉄筋の位置や深さの測定に利用されます。

鉄筋の径が推定できる製品もあります。最大100mm程度の深さが測定可能です。

ウォールスキャナの選び方

ウォールスキャナは、目的とする用途から構造物の種類、検知対象物の種類、検知する深さなどを確認したうえで選びます。構造物の種類は、コンクリート、木造、ブロック、レンガ、石造、湿ったコンクリートなどです。ウォールスキャナの機種により、検知可能な構造物が決められています。

また、検知対象の種類は、金属管、非金属管、木材、空洞などです。検知深さは、壁や床の表面から検知する深さを設定します。それぞれ検知可能な機種を選ぶことが大切です。

ウォールスキャナのその他情報

ウォールスキャナの使い方

壁の埋設物は、ウォールスキャナーを動かす方向と直角に埋設されている場合は、よく探知できます。したがって、対象物が棒状・線状で、垂直方向に埋設されていると想定される場合は、ウォールスキャナを水平方向にスキャンします。

また、埋蔵物が水平方向にあると予想される場合は、ウォールスキャナを垂直方向に動かして探知します。対象物がねじなどの点状であると予想される場合は、水平と垂直の両方向にスキャンして、埋設場所を特定します。

参考文献
https://www.bildy.jp/mag/concrete_detector/
https://electrictoolboy.com/media/17007/

ウォームギヤ

ウォームギヤとは

ウォームギヤ

ウォームギヤ (英: Worm Gear) とは、ねじ歯車の1種です。

ねじ状の歯付きシャフト「ウォーム (ウォームシャフト) 」と、ウォームの軸方向と90度方向が回転軸となる斜歯歯車 (はすば歯車) の「ウォームホイール」とで構成された、歯車の組み合わせを示します。ウォームが回転することで、これに噛み合うウォームホイールの歯を送って回転させる機構になっています。

ウォームギヤの構成は、図1を参照してください。

ウォームギヤ_図1

図1. ウォームギヤの構成

ウォームギヤの使用用途

ウォームギヤ_図2

図2. ウォームギヤの使用例

ウォームギヤは、軸方向を90度変えて動力を伝達することができる直交軸で、ギヤが小形でも大きな減速比を作り出すことができます。そのため、工場設備のベルトコンベア、スクリュージャッキ、自動車のハンドルのステアリングシステム、ワイパーの駆動装置、扇風機の首振り機構、食品や薬品製造装置の材料投入部分 (フィーダー) 、オルゴール、弦楽器のペグなど、さまざまな分野や装置で使用されています。

1. 弦楽器のペグ (糸巻き) 

身近な例として、ギターやベースなどの弦楽器の弦を巻きつけるペグがあります。ペグは、手でねじる部分がウォームシャフト、弦を巻きつける部分がウォームホイールで構成されています。セルフロック機能のより、巻き付けた弦が緩まずに保持することが可能です。

2. ウォーム減速機

ウォーム減速機は、小さい力で大きい物体を動かすことが可能で、動力伝達のために工場設備や機械装置に組み込んで使用されます。例えば、プレス・圧延機の駆動装置、中低速エレベーター、エスカレーターの昇降駆動装置、コンベアの駆動装置などに使用されています。

 

ウォームギヤのセルフロック機能を活用して、エレベーターやエスカレーターの減速装置に使用して、逆転防止の安全装置としての機能を持たせることもあります。一般的に工業用途では、ウォーム減速機を使用して装置を構成することが多いです。特に大きな減速比を得られるので、小さな入力トルクで減速することができます。そのため、減速機は比較的コンパクトに製作することが可能です。

ウォームギヤが使用されるのは、省スペースで大きな減速比で入出力軸が直交軸で動力伝達を行ったり、セルフロック機能を用いて動力伝達を行ったりするような場合です。

ウォームギヤの原理

ウォームギヤは、ウォーム (入力軸側) が1回転すると、ウォームホイール (出力軸側) が1歯分回転します。この場合のウォームの歯数を条数と呼び、「1条」と言います。ウォーム2条の場合は、ウォーム1回転でウォームホイールが2歯分回転します。

なお、ウォームギヤの減速比は下記によって求めることができます。

ウォームギヤ_式1

図3. ウォームギアの減速比

また、ウォームギヤの回転方向は、双方向 (例えば入力軸側から見て時計方法、反時計方向)  回転が可能です。これはウォームのねじれ方向を左ねじれ、右ねじれで選択することで実現できます。ウォームギヤのねじれ方向と軸の回転方向は、図4を参照してください。

ウォームギヤ_図3

図4. ウォームギヤのねじれ方向と軸の回転方向

ウォームギヤのねじれ方向と各部品の形状は、図5を参照してください。

ウォームギヤ_図4

図5. ウォームギヤのねじれ方向と各部品の形状

ウォームギヤの特徴

ウォームギヤの特徴は下記になります。

  • 入力側と出力側で軸方向を直交させることができます (逆に同軸方向にはできません) 。
  • 大きな減速比が可能になります (例: 1/10~1/100など) 。
  • バックラッシュ (歯車間の隙間、あそび) が少なくなります。そのため、歯の噛み合いがよく、嚙み合い音も小さくなります
  • 小さな入力トルクから大きな出力トルクを得ることができます。
  • セルフロック現象が発生します。

ウォームギヤはウォームからウォームホイールへ回転を伝達しますが、逆にウォームホイールからウォームへ回転を伝達することはできません。この出力軸側からは回転できないことを、「セルフロック (自動しまり) 」と言います。したがって、必ずウォーム側が入力軸側で、駆動装置や動力源となる回転軸が取り付けられます。

ウォームホイール側は出力軸側で、動力を伝達するための装置を取り付けます。ただし、完全な逆転防止には別に制動機構を備える必要があります。ギヤの精度によってピッチ誤差などが変わってくるので、必要精度を確認し、用途に合った精度を選択します。

ウォームギヤはバックラッシがあるので、高精度位置決めには不向きです。高精度位置決めの場合は、ギヤの種類から選定し直す方が良い場合があります。

参考文献
http://www.robojoy-club.com/challenge/challenge_c10_2_02.php?p=4&loc=cc10_2_02
https://toolremake.com/worm-gear/
https://www.khkgears.co.jp/khkweb/search/tobiraLink.do?method=series&gearType=10&lang=ja

イオンカウンタ

イオンカウンタとは

イオンカウンタとは、空気イオンという、大気中に浮遊する帯電微粒子の中で、特に負に帯電した小イオンと呼ばれるものを計測するとされる装置です。

2000年代に「マイナスイオンが健康によい」といったマイナスイオンブームなどもあり、環境中のマイナスイオンの量を測るための装置としても、さまざまなタイプのイオンカウンタが販売されています。

精度の高い測定を行う場合には、マイナス及びプラスイオンの両方を同時に測ることが望ましいですが、マイナスイオンのみ表示するタイプもあります。このタイプは、家電などの販促などでマイナスイオンの数値のみ表示したい場合に用いられることが多いです。

イオンカウンタの使用用途

イオンカウンタは、大学・企業などで研究・産業用として使用されています。また、家電から発生するマイナスイオンの量を示すための販促機材という一面も持っています。

「マイナスイオン」が健康に良いという話が世間で話題になってから「マイナスイオン」を検出する機械として、一般の方でも目に触れるようになりました。

イオンカウンタの原理

空気イオンの測定方法としてエーベルト測定装置という基本原理がありますが、その応用であるゲルディエン法が現在の主流です。ゲルディエン法では、二重円筒型の装置の外側の筒に電圧を加えた状態において、ファンで一定流量の空気を円筒内に流入させたときに、電圧が正の場合はプラスイオンを、負の時にはマイナスイオンを測定するものです。

空気中のイオンは1つ1つ移動度が異なるため、イオンカウンタが補足可能なイオンの移動度を、臨界移動度と呼ぶことにします。この臨界移動度より大きな移動度を持つイオンはイオンカウンタに捕捉され、小さい移動度のイオンは捕捉されません。

また、電圧を大きくすれば流れる電流が一定になるポイントが現れ、仮に小イオンしかなかった場合はすべての小イオンがイオンカウンタに捕捉されていることになります。この時の小イオンの濃度を表すのが以下の方程式です。

   小イオンの濃度 = 飽和電流/eΦ (e = 電荷素量、Φ = 単位時間当たりに円筒内を流れる空気の流量)

ここで重要になるのはイオンの移動度です。なぜなら、小イオンのほうが体に良いという学説が一部で唱えられているからです。イオンを測定する際には、イオンカウンタがどの移動度のイオンを測定しているのかきちんと把握することが重要になります。ただし、どのイオンが健康に効果があるかはまだ議論のさなかであり、全ての小イオンが効果を示すわけではないことに注意が必要です。

イオンカウンタの種類

現在のイオンカウンタの主流は、原理として説明した二重円筒型ですが、他にもいくつかの種類があります。

1. 並行平板式

並行平板式は安価で簡易的な測定に適した方式です。高い精度は期待できませんが、おおよそのイオン量を知りたい場合や、イオン発生装置の出荷前検査などに使用されています。

2. 鉱石専用型

鉱石専用型のイオンカウンタは、放射線を出す天然鉱石のイオンを測定する装置です。ラジウムやモナザイトという天然鉱石のイオンを測定するために用いられています。

3. イオン検知型

イオン検知型は、平行平板式よりも簡易的な装置です。イオンチェッカーとも呼ばれ、イオンの発生有無を判別するための装置です。

イオンカウンタのその他情報

マイナスイオンの定義

現時点でマイナスイオンは健康によいという考え方は、科学的には見解がまとまっていないと捉えるべきです。まずマイナスイオンという物質は世間では広く使われているものの、専門用語ではありません。英語ではnegative (air) ion と訳され、日本語の専門用語では大気負イオンに該当します。

マイナスイオンに関する捉え方の1つとして参考にできるのが、2019年に大阪大学が発表した「擬似科学を科学する」調査報告集です。結論として「マイナスイオンが明確に定義できない以上、一概にその効果を論じることはできない。容易にテレビ等の情報に飛びつかないようにすべきである。」としています。

また、「テレビや雑誌、インターネットの情報を鵜呑みにするのではなく、疑ってかかる力、つまり、メディアリテラシーを身につけることが求められる。特に、現代は身の回りに情報が溢れているので、より一層の注意が必要である。」とまとめています。

参考文献
https://jsdkk.com/home/product/product-ioncounter/
https://orist.jp/content/files/technicalsheet/2010.PDF
https://www.n-ion.com/product/counter/select-counter.html

アルミ鋼板

アルミ鋼板とは

アルミ鋼板

アルミ鋼板とは、アルミニウムと鉄を主成分とする鋼板のことです。

軽量でありながら強度が高く、耐食性にも優れています。そのため、自動車や航空機、建築材料などの分野で広く使用されています。アルミニウムの軽量性と鉄の強度を合わせ持っており、さまざまな用途に適した材料として注目されています。

ただし、一般的な鉄板に比べて高価で、加工にも注意を要します。また、アルミ鋼板の切削時に発生するアルミニウムの粉塵は人体に有害であり、適切な保護措置が必要です。

アルミ鋼板の使用用途

アルミ鋼板は産業に広く使用される材料です。自動車部品や建材などとして活用されます。

  • A1050・A1100
    電気機器や熱交換器の部品などに使用されます。
  • A2017
    航空機や電車などの部品に使用されます。
  • A5052
    自動車のホイールやアルミ缶に使用されます。
  • A6061
    建築材料や各種部品の中でも強度が必要な場合に使用されます。

A5052は、各特性において全てのアルミ合金の中間値を取ったようなバランスの良い特性を持っています。A5052を使用することが多く、最も流通量の多いアルミ合金です。

アルミ鋼板の性質

アルミ鋼板に使用されるアルミ合金は、「A」+「番手」の形で付番されます。アルミ鋼板は一般的に「圧延」と呼ばれる製造方法で量産されています。これは、大きなアルミの塊をローラーで挟みながら引き伸ばすことで、徐々に厚みを薄くしていく製造方法です。

各番手によって選択できるアルミ鋼板の厚みに幅があるため、用途や加工方法に合わせて最適な番手のアルミ鋼板を選択することが重要です。以下は代表的なアルミ鋼板の性質です。

1. A1050

アルミニウム純度が99.5%以上であり、他の元素の添加は行っていません。耐食性、表面処理性に優れており、溶接加工にも向いています。また、他の元素を添加していないため、強度は低いです。一方で強度が低いが故に、加工性が高いという特徴もあります。

粘り気があるため、切削加工では切り粉の接触による傷やへこみが発生しやすいことが欠点です。エアブローなどでこまめに切り粉を取り除くなどの工夫が必要になります。板厚は一般的に「0.1mm~2mm」の厚さを選択可能で、用途によって使い分けます。

2. A1100

アルミニウム純度が99%以上であり、耐食性や成型加工性に優れています。A1050同様に溶接加工にも向いています。また、アルマイト処理後の光沢を良好にするためにが少しだけ添加されています。板厚は「0.8mm~5mm」の厚さの素材を用途によって使い分けます。

3. A2017

一般的にジュラルミンの名称で知られる合金です。銅や少量のマグネシウムを添加した合金であり、鉄鋼材料にも引けを取らない強度を持っています。一方で加工性が低くなる傾向があります。また、溶接加工には向いていないという短所もあります。板厚は「1mm~100mm以上」と幅広い厚さを選択可能です。

4. A5052

マグネシウムなどを添加した合金です。様々な種類が存在するアルミ合金の中間程度の強度を持っており、耐食性、成形性、加工性に優れています。最も使用頻度が高い素材で、溶接加工も問題なく可能です。

板厚も「0.5mm~300mm以上」と幅広い厚さが存在し、A2017同様に用途に合わせた適切な板厚の素材が入手しやすいという利点があります。

5. A6061

シリコンやマグネシウムを添加したアルミニウム合金です。強度と耐食性に優れています。焼き入れと焼き戻しを施すことで、鉄鋼材料と同等の強度を得られるのが特徴です。

一方で、2,000番手系と同じく溶接加工には不向きという短所があります。板厚は「1mm~150mm」まで幅広く選択可能なため、用途に合った素材を見つけることができます。

 

上記以外にも、様々な番手のものが存在するとともに、その種類は研究開発によって日々増えています。最適な材料選定には、材料メーカーとの協力が不可欠になります。

アルミ鋼板の選び方

素材の流通量によってアルミ鋼板の値段にも差が出るため、コスト的な考慮が必要な場合には流通量の多い番手と流通量の多い板厚を選択することが重要です。特に、同じ番手でも流通量の少ない板厚を選択する際、メーカーに在庫が存在しません。

したがって、アルミ鋼板を改めて圧延加工するところから始まり、納品までのリードタイムが長くなります。さらに、コストも跳ね上がることがあるため、注意が必要です。

アルミコンテナ

アルミコンテナとは

アルミコンテナ

アルミコンテナとは、アルミでできているコンテナです。

家庭で使用されるような収納用の小型なものから、トラックの荷台サイズのもの、人が居住できるくらいの大きさまで、幅広いサイズで展開されています。

アルミコンテナの使用用途

アルミコンテナはほとんどの部分がアルミ製であるため、鉄に比べて30%程度の比重で軽く、丈夫でさびにも強く、比較的長持ちします。錆に強いことから、屋外に置く物置や倉庫として多く使用されており、通常の市販の物置よりも安価です。

物置としては大型の6帖程度のサイズのものもあります。近年、倉庫のほか、プレハブやトランクルームなどとしての利用も増えています。

なお、アルミコンテナの基本形には固定型と呼ばれる図1に示すような箱状のものです。この例では箱状のアルミコンテナの前面に両開きの扉を設けています。アルミは加工しやすいため図1に示したような両開きの扉のほか、サイズによっては、引き戸や窓を付けたり、自由なアレンジが可能です。

固定型アルミコンテナ模式図

図1. 固定型アルミコンテナ模式図

また、アルミコンテナは軽いため、物を運ぶ用途にも適しており、トラックの荷台に積む運搬用にも利用されています。6m以下のアルミコンテナの法定耐用年数は2年で、6m以上では7年です。大型のものとしては、2t、6t、10tがあります。

アルミコンテナには、図2に示すような折り畳みタイプもあります。

折りたたみタイプ模式図

図2a. 折りたたみタイプ模式図

折り畳みタイプを折り畳んだ状態の模式図

図2b. 折り畳みタイプを折り畳んだ状態の模式図

この例では、図2aに示すように前面を上下方向の開き戸としており、図2bに示すようにこの扉と背面の扉、側面の壁を折り込むことで折り畳み可能です。

小型のアルミコンテナは重ねた時に安定して運べるような形状になっているものが多く流通しています。最近ではキャンプ用品を収納する用途としても、小型のアルミコンテナの人気が出てきています。熱に強いため熱い網などを置くこともでき、雨に当たっても中にしみこむこともなく、鍵をつけてロックもできるためキャンプ用品向きです。

アルミコンテナのその他情報

アルミコンテナの使用上の注意

アルミコンテナは加工しやすいため、近年では倉庫や物置だけでなく事務所や住居としての利用が増えています。エアコンを設置したり、防音加工や窓を付けたりと居住性を向上させるように自由にカスタマイズが可能ですが、使用用途と大きさによっては建築確認申請が必要な場合があります。

アルミコンテナの延べ床面積が10㎡以下であれば、建築物として利用する場合でも建築確認が必要ないとされていますが、他の諸条件においても例外があります。購入や使用の際には申請義務などの要否を必ず確認してください。

参考文献

https://shima-corp.com/labo/container/container-shed-merit-demerit

アモルファス変圧器

アモルファス変圧器とは

アモルファス変圧器

アモルファス変圧器とは、電力の電圧変換を主に行う変圧器の内部構造にアモルファス合金を採用している変圧器のことです。

変圧器は一般に発電所で作られた高電圧の電力を、家庭用や工場、ビルなどの事業者向けに使いやすいように電力の電圧値を変換する機器ですが、その内部にはトランスと呼ばれる合金のコイルが使われています。通常、変圧器に用いられる珪素鋼板では、原子の構造は規則正しく並んでいます。

しかし、アモルファス合金の場合は、その内部の原子構造がランダムな状態で構成されているのが特徴です。この構造から、アモルファス合金は高強度と軟磁性に優れており、腐食にも強いという優位性があります。

アモルファス変圧器の使用用途

アモルファス変圧器は、通常の変圧器同様に発電所や変電所で作られた高電圧の電力を、家庭やマンション、ビルや工場などの事業所で使えるように電圧値を変換する際に使用されています。

通常の変圧器には、一般に珪素鋼板が用いられているため、電力が送られてきた際に待機電力というものが発生し、電力損失が起こります。この待機電力は非常に負荷のかかるもので、環境に優しいものではありません。

それに対して、アモルファス合金を採用した変圧器の場合、合金の特性を活かすことによりエネルギー消費のロスを最小限に抑え、待機電力も大幅に減らすことが可能です。しかし、これまでの変圧器と比べると変圧器のサイズが大きく重くなってしまうことが欠点として挙げられます。また、機械音に関しても従来と比較すると大きいです。

アモルファス変圧器の原理

アモルファス変圧器の原理は、通常の変圧器のコアと呼ばれるインダクタの鉄芯に相当する箇所に、アモルファス合金を用いることで、電子の流れに相当する移動度を改善し、待機電力に相当する電力損失を低減する点にあります。変圧器は、流れてきた電流を変圧器内部のコイルの巻き数比で電圧を調整しており、電圧値の上げ下げは、変圧器内部の1次側と2次側のコイル巻き数比によって変動します。

コイルの巻き数が多ければ多いほど電圧は高くなり、逆に低いほど電圧を下げることが可能です。発電所や変電所からは電線ケーブルでの送電ロスを極力削減する必要があるため、高電圧の交流電力で電力供給します。

最終的に一般家庭やオフィスで100V/200Vの交流電圧値に変換する変圧器は、電気事業者にとって欠かせない機器です。この変圧器の存在があることで、私たちは日常生活で電気を安全に使用できています。

アモルファス変圧器のその他情報

1.アモルファス変圧器の使用上の注意点

負荷が無い場合の待機電力低減に効果の高いアモルファス変圧器ですが、その負荷損失の低減率、すなわち負荷が大きい場合の損失にも留意が必要です。一般にアモルファス変圧器は、負荷損失は負荷の状態 (=電力が使用されている割合) に応じて、変化が少ない特徴を有します。

つまり、待機時間が長い低負荷な設備では非常に大きな省電力効果を得られますが、いつも稼働している高負荷な設備では省電力効果が低減してしまうということです。よって、変圧器の設備導入の電力負荷状態は把握しておく必要があります。

例えば、非常用発電設備や太陽光発電の変電用途では、平均的な電力負荷状態は小さいために、非常に高い省電力効果が期待できます。

2.アモルファス変圧器の容積や重量

通常の珪素鋼板での変圧器と比較して、アモルファス変圧器の場合は、合金の物性上の制限から1.5倍から2倍程度の容積が必要になります。これは変圧器の重量にも関係してくるために、設置場所の構造上の床面の荷重限界を超えていないかどうかよく注意することが重要です。例えば、油入変圧器の場合、モノによっては3,000kg程度の質量になる場合もあります。

参考文献
https://www.wavee.co.jp/
https://www.hitachi.co.jp/environment/products/trans/index.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/23/9/23_9_739/_pdf

アッベ屈折計

アッベ屈折計とはアッベ屈折計

アッベ屈折計とは、臨界角法により材料の屈折率を測定することができる装置です。

外観は顕微鏡に似ており、接眼レンズを覗いて目視で測定します。液体や固体などの試料を少量プリズム上に乗せ、プリズムからの出射光により生じた明領域と暗領域を観察することで、試料の屈折率を求めることができます。

光学フィルムや光学ガラスなどの光学材料の評価をすることができるので、光学機器のメーカーには必要不可欠な装置です。

アッベ屈折計の使用用途

アッベ屈折計は試料の屈折率を求めることができます。液体、固体、膜など様々な状態の試料を精度よく測定することができます。試料の屈折率を求めることで、フィルムやガラス、レンズなどの光学性能を評価することができるため製造メーカーや分析会社などで使用されています。

また、手持ち型の糖度計にも屈折計の原理が使用されています。糖度計では試料中のショ糖濃度を測定することができるので、野菜や果実の甘さを評価できます。

アッベ屈折計の原理

アッベ屈折計は顕微鏡のような外観をしており、プリズムの上に試料を置いて使用します。接眼レンズから覗くとプリズムからの出射光とその明暗を観察することができます。屈折率は温度によって変化するので、プリズムの周囲で恒温水を循環させるものもあります。

屈折率が大きい物質から小さい物質に向かって光が入射するときに、入射角がある一定の角度以上になると全反射します。このときの最小の入射角のことを臨界角といいます。試料よりも屈折率が高いプリズム上に試料を設置し、プリズムと試料の境界部分に光を照射すると境界面に平行に入射した光が臨界角で屈折します。

このときプリズムからの出射光を見ると、臨界角以上の領域とそれ以下の領域で光の強度に差が生じるため、明暗を観察することができます。この境界線を観察することで、試料の屈折率を求めることができます。具体的には、臨界角、プリズムからの出射光の角度、プリズムの頂角、プリズムの屈折率などから計算により求めることができます。

その他のアッベ屈折計の情報

1. 固体の測定方法

機種によっては液体だけでなく固体の屈折率も測定できます。ただし固体を測定する場合、プリズム面との接触面に凹凸があると正確な測定ができません。そこで、液体の場合と異なり、試料の研磨や中間液の使用が必要となります。

固体試料の分析手順は以下の通りです。

  1. 測定する固体試料をヤスリで研磨し、アッベ屈折計のプリズム面と接触する面を平らにします。固体試料が粉末の場合は、均一に粉砕します。
  2. 固体試料の研磨面に中間液を塗布します。中間液とは、プリズム面と試料の隙間を埋めるための液体です。モノブロモナフタレン、アニス油、サリチル酸メチルなどが使われます。固体試料が粉末の場合、中間液は不要です。
  3. 研磨面がプリズム面と密着するように固体試料を置きます。光源の種類を確認し、温度が安定してから分析を実施します。固体の測定は液体に比べ誤差が発生しやすいため、複数回測定し、概ね同等の値が得られることを確認します。

2. アッベ屈折計の波長

通常、試料の屈折率はナトリウムスペクトルのD線 (波長中央値589.3 nm) で測定します。しかし、機種によっては光源の波長を可視光や赤外線の範囲で変更し、波長ごとの屈折率を測定することができます。ナトリウムスペクトルのみで分析する場合よりも多くの情報が得られることが利点です。

光源の波長を変える仕組みは、光学フィルタで特定波長のみ透過させる方法、ナトリウム以外の励起元素 (水銀、カドミウムなど) を用いる方法などがあります。

一般的に波長の短い光ほど大きく屈折し、波長の長い光ほど小さく屈折します。そのためグラフの横軸に光源波長、縦軸に屈折率をとった場合、右下がりの曲線が描かれます。この曲線の形状は物質により異なるため、物質の種類の同定、不純物の有無の確認に利用できます。

また、屈折率が重要な管理項目となる素材の開発や検査において、複数の波長での屈折率を効率よく測定することができます。

参考文献
https://www.atago.net/japanese/new/products-abbe-top.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/37/10/37_10_768/_pdf
https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/bulletin/Vol6/1/V6N1P13.pdf
https://www.shimadzu.co.jp/products/opt/guide2/06.html
https://kikakurui.com/k0/K0062-1992-01.html