アモルファス変圧器

アモルファス変圧器とは

アモルファス変圧器

アモルファス変圧器とは、電力の電圧変換を主に行う変圧器の内部構造にアモルファス合金を採用している変圧器のことです。

変圧器は一般に発電所で作られた高電圧の電力を、家庭用や工場、ビルなどの事業者向けに使いやすいように電力の電圧値を変換する機器ですが、その内部にはトランスと呼ばれる合金のコイルが使われています。通常、変圧器に用いられる珪素鋼板では、原子の構造は規則正しく並んでいます。

しかし、アモルファス合金の場合は、その内部の原子構造がランダムな状態で構成されているのが特徴です。この構造から、アモルファス合金は高強度と軟磁性に優れており、腐食にも強いという優位性があります。

アモルファス変圧器の使用用途

アモルファス変圧器は、通常の変圧器同様に発電所や変電所で作られた高電圧の電力を、家庭やマンション、ビルや工場などの事業所で使えるように電圧値を変換する際に使用されています。

通常の変圧器には、一般に珪素鋼板が用いられているため、電力が送られてきた際に待機電力というものが発生し、電力損失が起こります。この待機電力は非常に負荷のかかるもので、環境に優しいものではありません。

それに対して、アモルファス合金を採用した変圧器の場合、合金の特性を活かすことによりエネルギー消費のロスを最小限に抑え、待機電力も大幅に減らすことが可能です。しかし、これまでの変圧器と比べると変圧器のサイズが大きく重くなってしまうことが欠点として挙げられます。また、機械音に関しても従来と比較すると大きいです。

アモルファス変圧器の原理

アモルファス変圧器の原理は、通常の変圧器のコアと呼ばれるインダクタの鉄芯に相当する箇所に、アモルファス合金を用いることで、電子の流れに相当する移動度を改善し、待機電力に相当する電力損失を低減する点にあります。変圧器は、流れてきた電流を変圧器内部のコイルの巻き数比で電圧を調整しており、電圧値の上げ下げは、変圧器内部の1次側と2次側のコイル巻き数比によって変動します。

コイルの巻き数が多ければ多いほど電圧は高くなり、逆に低いほど電圧を下げることが可能です。発電所や変電所からは電線ケーブルでの送電ロスを極力削減する必要があるため、高電圧の交流電力で電力供給します。

最終的に一般家庭やオフィスで100V/200Vの交流電圧値に変換する変圧器は、電気事業者にとって欠かせない機器です。この変圧器の存在があることで、私たちは日常生活で電気を安全に使用できています。

アモルファス変圧器のその他情報

1.アモルファス変圧器の使用上の注意点

負荷が無い場合の待機電力低減に効果の高いアモルファス変圧器ですが、その負荷損失の低減率、すなわち負荷が大きい場合の損失にも留意が必要です。一般にアモルファス変圧器は、負荷損失は負荷の状態 (=電力が使用されている割合) に応じて、変化が少ない特徴を有します。

つまり、待機時間が長い低負荷な設備では非常に大きな省電力効果を得られますが、いつも稼働している高負荷な設備では省電力効果が低減してしまうということです。よって、変圧器の設備導入の電力負荷状態は把握しておく必要があります。

例えば、非常用発電設備や太陽光発電の変電用途では、平均的な電力負荷状態は小さいために、非常に高い省電力効果が期待できます。

2.アモルファス変圧器の容積や重量

通常の珪素鋼板での変圧器と比較して、アモルファス変圧器の場合は、合金の物性上の制限から1.5倍から2倍程度の容積が必要になります。これは変圧器の重量にも関係してくるために、設置場所の構造上の床面の荷重限界を超えていないかどうかよく注意することが重要です。例えば、油入変圧器の場合、モノによっては3,000kg程度の質量になる場合もあります。

参考文献
https://www.wavee.co.jp/
https://www.hitachi.co.jp/environment/products/trans/index.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/23/9/23_9_739/_pdf

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