多管式熱交換器

多管式熱交換器とは

多管式熱交換器

多管式熱交換器とは、熱交換器の形状の一つです。

シェルアンドチューブ式熱交換器ともいわれており、太い円筒状の胴体 (シェル) に、設置面積を多くするために細い多数の管 (チューブ) を配置し、胴体側を流れる流体と管側の流体とで熱交換を行います。

温かい流体と冷たい流体は、直接混ざり合うことがなく熱だけが伝わるようにする必要があるため、金属等で隔てられた固定壁を介して両流体を流し、効率よく熱伝達させることが重要です。

実際に使われる場合、使用する温度や圧力、流体の性質、設置場所など様々な要素あり、用途も多種多様です。構造で分類した場合、代表的なものに多管式熱交換器とプレート式熱交換器があります。

多管式熱交換器の使用用途

多管式熱交換器は、低圧から高圧まで、低温、高温に関わらず過熱、冷却、蒸発等の全ての用途に適用できるため、空調設備・衛生設備に用いられるだけではなく、工業用としても古くから化学工場や石油精製施設など、様々な分野で利用されています。

多管式熱交換器の原理

多管式熱交換器は、その構造から圧力損失を小さくできるため、低圧から高圧まで幅広く使用でき、高粘度の流体にも対応できます。構造がシンプルであることから分解可能な機種も多く、メンテナンスが比較的容易です。冷熱媒側でも廃熱を利用することができ、省エネルギーにつながります。

片側が液相または気相の熱交換器を単相熱交換器と呼びます。二相式熱交換器には、液体を加熱して沸騰させて気体 (蒸気) にするもの (ボイラー) と、蒸気を冷却して液体に凝縮するもの (コンデンサー) があり、相変化は通常シェル側で行わせます。

蒸気機関のボイラーは、通常、円筒形の大型のシェルアンドチューブ式熱交換器です。蒸気タービンを持つ大型発電所では、タービンから出る排気蒸気を凝縮して復水とし、再び蒸気発生器で蒸気に戻すためにシェル&チューブ式表面凝縮器が使用されます。

多管式熱交換器の種類

多管式熱交換器の中でも、構造により3種類に大別できます。

1. 固定管板式

固定管板式は、胴体両端の管板に管を固定したシンプルな構造です。熱応力を逃がすため、胴体部に伸縮継手がもうけられることもあります。

2. U字管式

U字管は、管をU字状に曲げ、その端面を胴体片側の管板に固定した構造です。管は自由に伸縮できます。

3. 浮遊頭式

浮遊頭は、固定管板で片側を固定し、他方の管板を浮動管板にし自由に動くようにした構造です。分解の可能なので使用環境が苛酷な場合でも使用できますが、他に比べて構造が複雑になり、部品点数が多くなる欠点があります。

4. プレート式熱交換器

プレート式熱交換器は、複雑なプレス成形された薄板を重ねた伝熱プレート間を高温の流体と低温の流体が交互に流れながら熱交換する構造です。多管式と比較して熱交換効率が良く、同等の性能で比較すると軽量でコンパクトですが、分解できずメンテナンスが難しいです。

また、伝熱プレートの形状により、流体の乱流効果が起こりプレート表面に汚れを付着しにくくする構造ですが、流路につまりが発生することもあります。

多管式熱交換器のその他情報

チューブ材料の選び方

多管式熱交換器のチューブの材料は、一般的にはアルミニウム銅合金ステンレス鋼炭素鋼、非鉄銅合金、などの金属が使用されています。チューブ材料の選択を誤るとシェルとチューブ側面からの漏れが生じ、液体の相互汚染や圧力損失の可能性があるため、チューブを選ぶ際は下記のポイントに留意して慎重に選択することが大切です。

  • 強度
    熱はチューブを通して高温側から低温側へ伝えられるため、チューブの幅には温度差があります。また、チューブ材料は温度によって熱膨張率が異なるため、動作中に熱応力が発生し、流体自体の高圧や熱によるストレスがかかります。
  • 熱伝導性
    熱交換器において熱をうまく伝えるためには、チューブの素材が熱伝導性に優れていることが大切です。
  • 耐食性
    劣化を最小限に抑えるため、使用条件 (温度、圧力、pHなど) において、シェル側チューブ側双方の流体に長期間適合するチューブ材料が必要です。

参考文献
https://www.nihonshinkan.co.jp/blog/2016/10/31/66
https//www.apiste.co.jp/column/detail/id=4588
https//www.hisaka.co.jp/phe/workbook/

圧着コネクタ

圧着コネクタとは

圧着コネクタ

圧着コネクタとは、電線などの導体同士やプリント基板などを接続するために使用される部品です。

端子とコネクタハウジングから構成され、導体を挟み込むように圧着で導体との接続を実現します。圧着接続は、はんだ付けに比べて作業時間が短く、接続の信頼性も高いです。また、導体同士を機械的に接続するため、振動・衝撃に強く、高温環境でも使用できるなどの特徴があります。

代表的な圧着コネクタとして、端子台型の圧着端子、複数の電線をまとめて接続できるスプライス圧着端子、プリント基板との接続に使用するコネクタなどがあります。適用する電線の太さや用途に合わせて、様々な種類の圧着コネクタが存在しています。

圧着コネクタの使用用途

圧着コネクタは、その堅牢さと圧着の高速性により、多様な産業分野でのアプリケーションに採用されています。以下、主要な使用事例を紹介します。

1. 自動車産業

最新の自動車は、センサーや制御ユニットなど、電子デバイスが豊富に搭載されています。これらのデバイス間での確実な電気的接続が要求される中、圧着コネクタはその信頼性と耐久性から選ばれています。

2. 家電製品

洗濯機や冷蔵庫、テレビなどの家電製品内部でも、電子部品間の接続に圧着コネクタが使用されています。特に生産効率の追求される家電の組み立てラインでは、高速な接続が可能な圧着技術が重宝されます。

3. 通信機器

ルーターやスイッチ、サーバーなどの通信機器内部での配線接続にも、圧着コネクタが採用されています。高い信号伝送性能と堅牢さが求められるこの分野で、圧着接続のメリットが生かされています。

4. 産業機器

ロボットや生産ラインの制御装置など、産業機器の内部でも圧着コネクタは頻繁に使用されます。特に機器の長時間稼働や過酷な環境下での動作が求められる場面で、その耐久性が評価されています。

5. エネルギー関連

太陽光発電システムや風力発電機などの再生可能エネルギー関連設備でも、圧着コネクタの信頼性や耐久性が活かされています。

6. 医療機器

複雑な電子回路やセンサーが組み込まれる医療機器でも、確実な電気接続が求められる中で、圧着コネクタが採用される事例が増えています。

圧着コネクタの原理

圧着コネクタの原理は、はんだ付けや溶接などとは違い電線と端子間の金属原子同士の特定の結合を持つものではありません。圧着コネクタでは、電線の銅の撚り線と黄銅端子を常温環境下で瞬時に高い圧力をかけます。

この高圧力の結果、より線と端子が塑性変形を起こし、物理的に結合されます。この時点での接合面は金属原子間の特定の結合を持たず、純粋に機械的な接触を持っているだけです。

それにもかかわらず、この圧着部では、弾性変形の原理に基づいた反発力が発生し、この反発力がより線と端子の間で効果を発揮します。この反発力により、接触抵抗が安定して保たれるだけでなく、圧着の強度も増強される特性を持っています。

圧着コネクタの種類

圧着コネクタは、信号や電力を安全かつ確実に伝送するための重要な役割を果たしています。そのため、特定の用途や条件に合わせて、様々な形状や特性を持つ圧着端子が開発されています。

1. 丸形圧着端子

丸形圧着端子は、その名の通り円形の断面を持ち、ボルトやナットへの取り付けに適しています。電線をしっかりと保持し、良好な電気的接触を確保が可能です。多くの場合、ボルトやスクリューとともに使用されることが一般的です。

2. Y型圧着端子

Y型の端子は、特徴的な「Y」の形状をしており、接続部分が分岐しています。この構造は、ネジを外さずに取り外しができる容易さを提供します。

3. 棒型圧着端子

棒型圧着端子は、直線的な形状を持つ端子で、主に挿入や差し込み式の接続に使用されます。

4. 絶縁被覆付き圧着端子

絶縁被覆付き圧着端子は、端子の接続部分に絶縁材料が付加されています。この絶縁被覆は、外部の環境要因からの保護やショートの防止、さらには操作者の安全を確保するためのものです。

絶縁被覆は、多くの場合、色分けされており、電線のサイズや用途に応じて適切な端子を選択するのを助けます。

参考文献
https://fumimaker.net/entry/2019/06/16/220408

加熱コイル

加熱コイルとは加熱コイル

加熱コイルとは、誘導加熱で使われるコイルのことです。

コイル内に加熱する対象物を置くと、加熱することができます。加熱する対象物の特性や形状、加熱したい範囲など、加熱要件によって加熱コイルの形状、巻き数、直径が異なります。要件に合ったコイル設計で、熱分布を最適化することが大切です。

また、対象物をコイルに挿入しやすく、取り出しやすくして、作業効率を最大化するためにも、要件に合ったコイル設計が必要です。さらに、加熱中は加熱コイル自体も対象物から出る熱などで間接的に加熱されるます。そのため、絶えず冷却できる構造を持っているのが一般的です。

加熱コイルの使用用途

加熱コイルは誘導加熱で使われ、対象物と直接接触せずに精密かつ制御可能な熱処理が必要な場面で活躍します。具体的な産業用途の使用例は、以下のとおりです。

  • 溶接の予熱
  • 焼き入れ
  • 焼き戻し
  • 焼きなまし
  • ろう付け
  • 焼き嵌め
  • はんだ付け
  • 金属溶解・鍛造
  • ゲッター加熱
  • 浮遊溶解
  • 材料テスト
  • キャップシーリング
  • 材料の硬化
  • 金属とガラスの接合
  • かしめ
  • サセプタ加熱

加熱コイルは火炎を使わないため、二酸化炭素や環境負荷を低減するだけでなく、無駄なくクリーンな熱処理ができます。この特性を一般家庭に応用した調理器具が、よく知られたIHクッキングヒーターです。

加熱コイルの原理

加熱コイルの原理は、コイルを交流電源に接続して、コイルの周りに磁力線を発生させて対象物を加熱する、というものです。このような電磁誘導によって加熱する方法が「誘導加熱」です。誘導加熱の方式は、以下の2つがあります。

1. 直接加熱方式

誘導加熱では、コイルの中に導電性の対象物を入れて電流を流すと、対象物自体が発熱していきます。これが、「直接加熱方式」です。

この加熱方式では、対象物の中で磁束の変化を妨げる方向に渦電流が流れ、電気抵抗によりジュール熱が発生する仕組みを利用します。渦電流は、表面に近いほど大きく、内部にいくにつれて小さくなります。これを「近接効果」と呼び、直接加熱方式は表面加熱に適した方法です。

2. 間接加熱方式

加熱コイルでセラミックなどの絶縁体を加熱する場合、導電性の容器に対象物を入れ、容器を直接加熱することで熱伝達を起こし対象物を加熱します。これが「間接加熱方式」です。

この加熱方式では、発熱体と対象物を接触させて加熱する方法と、発熱体と対象物を離して加熱する方法があります。後者は、赤外線が対象物を加熱するため、遠赤外線加熱と呼ばれます。

加熱コイルの構造

加熱コイルの形状は、対象物の寸法・形状に合わせて最適なものを選ぶため、単純ではありません。軸の外径表面を加熱する場合は、コイル内に製品を挿入する外面コイル、鋼管などの内部を加熱する場合は、コイルを挿入する内面コイルなど、多種多様に存在します。

例えば、誘導加熱を利用した高周波焼入れ法には、対象物を移動しないで加熱する「定置一発焼入れ法」と、対象物を移動しながら順次焼入れしていく「移動焼入れ法」があります。使用する加熱コイルはそれぞれ異なります。

1. 高周波焼入れ法の加熱コイル構造

「定置一発焼入れ法」は、対象物の形状にあわせる形で加熱コイルを製作するので、製品の種別に応じて用意する必要があります。加熱コイルの形状が重要であり、設計や製作に経験やノウハウが求められます。

しかし、複雑な形状であっても、均一に加熱することが可能で、加熱に要する時間を移動焼入れ法と比較すると短くできる点がメリットです。一方「移動焼入れ法」は、単巻きもしくは多巻きのコイルが使用されます。形状は、定置一発焼入れ法に比べて単純な形状で、対象物の軸径や長さを考慮して選定します。

2. 冷却水を噴射する加熱コイル構造

焼入れに使用する場合には、焼入れ水の噴射口が用意された構造になっています。加熱された対象物を急速冷却する必要があるためです。

噴射するタイプには次の2つがあります。

  • 加熱コイル内部から対象物に向かって焼入れ水を噴射するタイプ
  • 加熱コイル付近に冷却ジャケットを別に設置するタイプ

加熱コイル内部から冷却水を噴射するタイプは、加熱コイルの冷却と対象物の冷却を焼入れ水で兼用できる構造になっています。加熱箇所から直接冷却できるので効率よく対象物を冷却できますが、多くの場合形状は複雑です。

参考文献
https://toyokoshuha.co.jp/technology/hardening
https//www.nkgk.com/index.html

分光測色計

分光測色計とは

分光測色計

 分光測色計とは、色を数値化する装置です。人間の目でも色を判断することはできますが、定性的な評価になったり、人によって色の見え方は違うため、正確な判断はできません。

一方で、製品の色味が品質評価の項目の一つになることは多々あります。そこで、明るさや赤、青、緑などの各色の強さなどを数値化することで色を数値的に評価したのが分光測色計です。

また、光の当たり方によって色の見え方は変わるため、分光測色計を用いた測定では光源からの距離、強さも合わせて記録します。

分光測色計の使用用途

デザイン、色味、塗料など色に関わる業界で分光測色計は利用される

分光光度計は色に関わる測定装置であるため、様々なジャンルで使われます。例えば自動車業界では、車のデザインや色味は重要視されるため、塗工後の車体の品質検査で分光測色計が用いられることがあります。

また塗料などの業界でも、求める色を示す塗料を作り上げるために分光測色計を用いた色味の評価が行われます。

品質管理の一つとしても分光測色計は利用される

そのほかにも食品業界やデザイン業界など、製品の見た目が重視される業界では品質管理の方法の一つとして分光測色計を用いた色の評価が行われています。

分光測色計の特徴

分光測色計はサンプルの見た目を調べる装置

分光測色計は、「分光」という言葉が入っている通り、光の波長ごとの強度などがわかります。太陽光や照明などの外部の光源からサンプル表面にあたった光を装置が受光して、波長ごとの強度と色がどのように見えるか、という結果を出力します。分光測色計には0°/45°分光測色計と積分球分光測色計、マルチアングル測色計という種類があります。

市販されている分光測色計は3種類

0°/45°分光測色計は、ある一つの角度から見たときの色を評価する方法であり、最も一般的な手法です。この手法は、表面がなめらかなサンプルに用いられます。積分球分光測色計は、サンプル表面で拡散した光を収集して測定する方法であり、表面に凹凸が見られるサンプルや光沢を含むサンプルに対して有効な手段です。マルチアングル測色計は、様々な角度からの色彩を評価する方法で、見る角度によって色味が変わる製品の評価に用いられる手法です。

また分光測色計では、光源の条件が異なったときでも同じような色が見える条件等の計算が可能であり、様々な条件下での色の見え方を評価に適しています。

分光測色計と色彩計の違い

 色を測定する機器すなわち測色計には、用途に応じて様々なものがありますが、ここでは代表的な測色計として、色彩計(色差計)と分光測色計について説明します。

  • 色彩計(色差計)
    色彩計は、刺激値直読法による測色計です。人間の目で色を判断する場合、目の網膜のセンサー(錐体)が刺激を受け、赤(X)、緑(Y)、青(Z)の3刺激値を読み取り、脳が反応し色を認識します。 色彩計は、人間の視角特性と同等な応答特性が得られる物理フィルターを用いて直接3刺激値を測定することができます。 生産、製造現場で、現物(色見本)との色差を確認するために、広く活用されています。
  • 分光測色計
    分光測色計は、分光測色法による測色計であり、光度計(光の強さを測る測定装置)の一種です。したがって、分光測色計も分光光度計と呼ばれる場合があります。 測定物からの反射光を分光センサーによって各波長毎のスペクトルに分解して測定し、この分光特性から3刺激値を算出します。 分光特性(分光値)を色の基準値として定義することにより、現物見本がなくても、デジタル値で高精度な色管理ができます。 ばらつきや経年劣化等、現物(色見本)の管理の難しさから、分光測色計を使った基準色(デジタル値)での色管理が主流になってきています。

測色計と色空間

測色計を使って色を数値化する方法として、国際照明委員会(Commission Internationale de l’éclairage:略称CIE)が制定したL*a*b*色空間(正式名称:CIE 1976 L*a*b*)が一般的に用いられます。

人間の視覚感覚に基づいて、人間が識別できる色差ができる限り均等になるように考案された色空間で、元となったハンターLab色空間(正式名称:Hunter 1948 Lab)と区別する意味で、L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)色空間と呼ばれています。

L*a*b*色空間では、明度を表す軸L*と、色度(色相と彩度)を表す軸a*およびb*の3つの軸で、色表現します。 それぞれの軸は、図1のように配置されます。L*値は0から100 までの範囲で明度(明るさ)を表し、L*=0は黒(光を完全に吸収する状態)の明度に、L*=100は完全拡散反射の白(反射率100%の状態)の明度にそれぞれ対応します。a*の軸は赤(+a*)〜緑(-a*)方向、b*の軸は黄(+b*)〜青(-b*)方向を表します。この場合、a*b*の平面において、原点から任意の座標への向きが色相(色味)に対応し、原点から任意の座標までの距離が彩度(鮮やかさ)に対応します。つまり、外側にいくほど色鮮やかになり、内側にいくほどくすんだ色になります。

前述したようにL* 座標の範囲は0から100までと定義されますが、a* と b* 座標の範囲は一義的ではありません。これは、L*a*b*色空間がマスターの色空間(CIE 1931 XYZなど)を変換したものであり、変換元の色空間によって値が異なるためです。

Lab色空間の図

なお近年、CIE 色空間上で人間の目視結果との差異を無くすよう改良されたCIE DE2000も登場しています。

分光測色計による高精度な分光特性の測定と、L*a*b*色空間を用いた色の数値化表現と、合わせたい基準色に対象となる生産物の色を合わせていくマッチング技術によって、色をデジタル化して管理するカラーマネージメント手法が、今後ますます重要になってきています。

参考文献
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/sokushiri/news/006/
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/02.html
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/06.html

冷却コイル

冷却コイルとは冷却コイル

冷却コイルとは熱交換機に使用される冷却する部分であり、螺旋状などに成形された配管から出来ています。

形状は螺旋形が一般的ですがそれ以外の形状もあり機器や目的に応じて設計されています。

冷却コイルの配管内には対象を冷やすための冷媒が流れていますが、冷媒として主に水が用いられています。冷却コイルを流れる冷媒は熱交換により温められるので、この冷媒の温度を下げる必要があります。この目的によりチラーと併用して用いられることが多いです。

冷却コイルの使用用途

冷却コイルは水槽の水温の調整などに使用されており、夏場など気温の上昇に伴って水温が上昇する際などに水槽の温度を下げるのに役立っています。

他にも工場の各装置に投入する原料となる液体の温度制御にも使用されます。冷却コイルは冷やしたい液体に直接漬けて使用されますので冷却効果が高く、安定した温度管理が可能となります。原料は温度を一定に保っておかないと変質を起こしたり反応性が高くなったりして製品にムラが出てしまう場合がありますので、このようなことを避けるために冷却コイルを使用して温度調整がしっかりと行われます。

冷却コイルの原理

熱い物体の熱を効率よく取り去り冷ますためにはいくつかのポイントがあります。まずは熱容量が高く低温の液体をできるだけ高速で流し、さらに冷媒が流れる配管の面積を増やすことなどです。熱い物体が液体や気体ですと撹拌することも効果的になります。冷却コイルは螺旋形など複雑な形状をしていますが、これは配管の面積を大きくして冷却の効率を上げているためです。

冷却水を流す配管は熱伝導率の高い素材が良く安価で加工しやすいが用いられることが多いです。しかし、銅は腐食しやすく熱にも弱いので冷却の対象が銅を腐食するような液体や気体や高温の場合にはステンレスなど耐久性の高い素材が用いられます。

冷却対象から奪い去った熱量は簡単に計算でき、流した水の量と上昇した温度を測定結果から計算を行います。1分間に1Lの冷却水を流した際に、冷却水の温度が1℃上昇していたら、1分間に1kcalの熱量を奪ったことになります。

また、冷媒には水が使用されること多いですが、気体の冷媒として熱容量が高く冷却効果が高い水素が用いられることがあります。

参考文献
https://www.weblio.jp/content/%E5%86%B7%E5%8D%B4%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%83%AB
https://www.apiste.co.jp/pcu/technical/detail/id=4091

光触媒塗料

光触媒塗料とは

光触媒塗料とは、酸化チタンや二酸化チタンを原料とした塗料です。

一般的に、建築物の外壁の塗装に使用されます。塗布後に光や紫外線を浴びることで、セルフクリーニング効果を発揮します。

光触媒塗料の使用用途

光触媒塗料にはセルフクリーニング効果があるため、特に定期的なメンテナンスが難しい外壁の塗装に使用される場合が多いです。

ハイグレード塗料であるフッ素樹脂塗料フッ素樹脂塗料の耐久年数が15~20年であり、光触媒塗料の耐久性も同等です。そのため、メンテナンス回数をおさえたい高層ビルなどにも使用されることがあります。高品質な塗料なので初期投資は高額になりますが、ランニングコストをおさえられるのがメリットです。

光触媒塗料の原理

光触媒塗料の主な原料は、酸化チタンや二酸化チタンです。光触媒塗料を塗布した後、光や紫外線に当たると塗料に含まれる酸化チタンや二酸化チタンの内部で電子と正孔の分離  (励起状態) が生じます。光触媒塗料から電子が飛び出すため、光触媒塗料表面はプラスの電荷を帯びた状態です。

このプラスの電荷を帯びた表面は非常に強い酸化力を持ち、光触媒塗料表面に付着した水を分解してヒドロキシラジカルを生成します。このヒドロキシラジカルは、非常に不安定な物質です。そのため、壁面の汚れの元である有機化合物や有機化学物質、排気ガスなどの汚染物質と結合し、これらを分解して汚れの付着を防止するセルフクリーニング効果が得られます。

一方の光触媒塗料から飛び出した電子は、酸素と還元反応を起こしてスーパーオキサイドアニオンを生成します。このスーパーオキサイドアニオンも非常に強い酸化力を有する物質です。有機化合物や有機化学物質、排気ガスなどの汚染物質と結合しこれらを分解して汚れの付着を防止するセルフクリーニング効果が得られます。

また、光触媒塗料はその表面に非常に高い親水性をもっているのが特徴です。そのため、光触媒塗料を塗布した壁面に雨などの水が付着しても水滴とならず、流れ落ちます。上述の分解された有機化合物や有機化学物質、チリおよびホコリなども雨と共に洗い流されてセルフクリーニング効果が得られます。なお、酸化チタンや二酸化チタンは安全性の高い物質であり、光触媒塗料は環境に配慮した塗料です。

光触媒塗料のその他情報

1. 紫外線型光触媒塗料と可視光型光触媒塗料

光触媒塗料には、紫外線によりセルフクリーニング効果が得られる紫外線型光触媒塗料と可視光によりセルフクリーニング効果が得られる可視光型光触媒塗料があります。従来、紫外線型の光触媒塗料が多く利用されていました。しかしながら、紫外線型光触媒塗料では紫外線がないとセルフクリーニング効果が得られないデメリットがあります。

可視光型の光触媒塗料は、紫外線に限らず可視光が当たるだけで効果を得られる上、紫外線型光触媒塗料よりも機能性が優れています。そのため、特殊な用途でない限り可視光型を選択するのが一般的です。

2. 内装用光触媒塗料

近年、内装用の光触媒塗料も販売されています。光触媒塗料を内装に使用した場合も、外壁用光触媒塗料と同様にセルフクリーニング効果が得られます。そのため、防汚効果や抗菌効果、抗ウイルス効果があり、におい物質の分解も可能です。

ペットやごみなどの気になる臭いを抑制し、空気をきれいにできます。また、カビの発生を防ぐ効果もあり、頻繁に水を使用する場所にも好適です。

3. 光触媒塗料の価格

光触媒塗料は塗布工程が細かく分かれており、専門性が求められるため、専門の業者に依頼するのが一般的です。例えば、外壁の塗装であれば、1m2あたり「3,500円~5,500円」程度と言われています。

外壁用塗料として使用されることが多いシリコン塗料であれば1m2あたり「2,300円~3,500円」程度、やや高級品と言われるフッ素塗料であれば「3,500円〜5,000円」程度です。光触媒塗料で塗装すると初期費用が高くなる傾向にあります。

外壁塗装にしても内装にしても耐用年数や効果などを考慮して、総合的に判断することが大切です。

参考文献
https://gaiheki-kakekomi.com/home/hikarisyokubaitoryo/
https://pronuri.com/articles/2298
https://www.piaj.gr.jp/roller/
https://pronuri.com/articles/2298

光変調器

光変調器とは

光変調器とは、電気信号を光信号に変換して出力することで、高速な変調用途に用いる装置です。

E/Oコンバーター (逆の変換を行う場合はO/Eコンバーター) とも呼ばれ、主に光ファイバー通信における光伝達装置の一部として使用されます。従来の方式では、変調信号の情報伝達に用いられる信号は常に電気信号でした。

しかしながら、超高速で低損失、大容量の光ファイバーを用いた光通信を実現するには、一般的に電気信号を何かしらの方法によって光源の変調に使用し、光信号として出力する必要があります。このような役割を果たしている装置が光変調器です。

光変調器の使用用途

光変調器は、主に光ファイバー通信の電気的信号の変調を光ファイバー通信用に変換するための変調器として用いられています。今や情報伝達の基盤となっている光ファイバー通信において、極めて重要な役割を果たしています。

光ファイバー通信は、通信用の回線に損失が大きくノイズに弱い通常の電線ではなく、低損失かつ広帯域という優れた性能を持つ光ファイバーを利用することで、高速化や長距離伝達を可能にした光通信方式です。この方式を導入するには、電気信号と光信号を流動的にやり取りできる装置が必要で、光変調器が使用されています。

光変調器の原理

光を変調させる原理として、光の光源として利用されている半導体レーザーの電気的なバイアスを直接ON/OFFして変調した光を光源として用いる「直接変調方式」と、半導体レーザーからの光を、LN (LiNbO3:ニオブ酸リチウム) 変調器などを用いて変調する「外部変調方式」があります。

1. 直接変調方式

直接変調方式は、光源である半導体レーザーそのものが光信号に変調する方式です。単純構造なので小型化も可能な点はメリットですが、半導体レーザー自体の応答速度には限界があり、チャーピングと呼ばれる波長の揺らぎを引きおこすため、高速性が求められる幹線用の大容量な光ファイバー通信にはあまり適していません。

2. 外部変調方式

外部変調方式では、光源である半導体レーザーからは一定波長の光が出力され続けます。この光をLN変調器などの光変調器に入力し、外部から取り込まれた電気信号によって光の振幅や位相を変化させます。これにより、電気信号が変調された光となって出力されるのが原理です。

一般的に光変調器は、この外部変調方式で用いられる変調器です。電気的なON/OFFの変調を光のON/OFFに変換する手法には、光の振幅や位相を高速で変化させることが重要で、そのために光の干渉や電界吸収などの物理現象を活用しています。

具体的には、電界吸収型 (EA型) の光変調器やマッハツェンダー型のLN変調器があります。大容量幹線の光通信でよく用いられるLN変調器は、Y字型に分配された光の導波路を有し、導波路にバイアスを印加し光の位相シフトを引きおこすことでLN変調器を通過する光の強度を強めたり、弱めたりすることが可能です。

この手法によれば、直接変調方式のチャーピング (波長揺らぎ) が原理的に発生しないため、大容量な高速光ファイバー通信に非常に適した光変調が実現できます。

光変調器のその他情報

1. LN変調器のDCドリフト補正

LN変調器は、マッハツェンダー干渉を原理とするため、低損失かつ低チャーピングという特徴を有します。しかし、温度変化やDCドリフトによる光出力のドリフト変化が発生するという課題があります。

そのため、LN変調器を扱う各メーカーからは、DCのバイアスをPD等からのフィードバック情報をもとに自動補正するLN変調器用の専用のバイアスコントローラが通常サポートされています。

2. 光変調器の材料革新

電界吸収型や直接変調方式などと比べて非常に波長揺らぎを抑制可能なLN変調器ですが、駆動電圧が5V程度と比較的大きく、サイズも50mm以上と比較的大きい変調器のため、小型低消費電力化に向けての開発は継続的に進められています。

昨今ではシリコンフォトニクスと呼ばれるシリコン基板上にリング状に形成された光導波路やInP化合物半導体上にMQW (多重量子井戸) 形成した光導波路など、各メーカーの研究機関により、LN変調器の弱点を補うべく研究開発が活発に進められています。

また、将来のさらなる大容量通信のため、E/Oコンバーターを介さずに光信号を積極的に光のままIC内部で扱うNTTのIWONでの光電融合技術という研究開発も盛んに進められている状況です。

参考文献
https://tmi.yokogawa.com/jp/library/resources/measurement-tips/mechanism_of_optical_fiber_communication_and_optical_spectrum_measurement/
https://eetimes.jp/ee/articles/1806/06/news031.html

光フィルタ

光フィルタとは

光フィルタとは、特定の光を通過または遮断する装置です。

特定の波長の光のみを透過させるバンドパスフィルター、入射した光の強度を弱めるNDフィルター、赤外線をカットする赤外線フィルターなどがあります。使用の際には、入射する光のスペクトル、強度と取り出したい光の波長を考えた上で必要なフィルタを選定することが必要です。

光フィルタの使用用途

光フィルタはその優れた性能と多様な特性から、幅広い用途で活用されており、身近なものではカメラレンズ、ディスプレイなどが代表例です。

1. カメラ

光フィルタは、カメラや映像機器で広く使用されています。特定の波長範囲を遮断することで、偽色や光の乱反射を減少させ、クリアで正確な映像をキャプチャすることが可能です。

また、NDフィルタや偏光フィルタは、明るさや反射を調整し、被写体により適した映像を得るために使用されます。

2. ディスプレイ技術

スマートフォンやテレビなどのディスプレイ技術においても、光フィルタが重要な役割を果たしています。光フィルタを用いることで、画面の輝度や色再現性を向上させることが可能です。

3. レーザー技術

通信や医療の分野では、レーザー技術において活用されています。レーザー技術を備えた光フィルタは、特定の波長や特性のレーザー光を調整するため有用です。

そのため、特定の波長のレーザー光を選択できるというメリットが生まれ、幅広い分野で重宝されます。

光フィルタの原理

光フィルタは、特定の波長の光を通すために、光の干渉、吸収、反射、回折、位相シフトなどの光学的な現象を元に計算し尽くされた結果、特定の波長範囲の光を選択的に透過させています。種類によって材質が大きく異なりますが、材料の特性や膜の厚さ、層の配置などを調整して設計が行われます。

これにより、目的に合わせた光学的特性を実現することが可能です。ダイクロイックフィルタは、多層膜構造を持ち、特定の角度や波長の光を反射・透過させる特性を持っています。吸収フィルタは、特定の波長範囲の光を吸収し、他の光を通しません。

一方、干渉フィルタは光の波長と膜の厚さによる干渉効果を利用して、特定の波長を選択的に通過させる仕組みです。位相シフトフィルタは、光の位相を変化させることで、特定の波長をコントロールします。

光フィルタの種類

光フィルタはその多様な機能や特性によっていくつかの種類に分けられますが、それぞれ異なる原理や設計に基づいています。

1. ダイクロイックフィルタ

ダイクロイックフィルタは、多層膜構造を持ち、特定の角度や波長の光を反射・透過させる能力を持つフィルタです。これにより、光の偏光や色をコントロールすることが可能なため、プロジェクターのカラーホイールや光学的なスプリッタなど、光学デバイスや映像技術で使用されます。

2. 吸収フィルタ

吸収フィルタは特定の波長範囲の光を吸収し、他の光を通さないようにする役割を果たします。この種類のフィルタはカメラのNDフィルタや偏光フィルタなどで使用され、明るさや反射の調整が可能です。

3. 干渉フィルタ

干渉フィルタは光の波長と膜の厚さによる干渉効果を利用し、特定の波長を選択的に通過させる仕組みです。これにより、狭い波長帯域の光を高い精度で選別することができるため、分光技術やレーザー装置などで広く活用されます。

4. 位相シフトフィルタ

位相シフトフィルタは、光の位相を変化させることのできるフィルタです。この性能により、特定の波長をコントロールし、光の位相差を利用して特定の波長の光を増幅または減衰させることが可能です。位相シフトフィルタは主に、分光技術やレーザー応用などで使用されます。

5. 偏光フィルタ

偏光フィルタは、特定の偏光方向の光を透過させ、他の偏光方向の光を遮断する機能を持っています。この種類のフィルタは、液晶ディスプレイや偏光顕微鏡などで使用され、光学的な制御も実現可能です。

6. 熱フィルタ

熱フィルタは、赤外線領域の熱放射を制御するために使用されます。これにより、特定の波長帯域の赤外線を透過させ、他の熱放射を遮断します。熱画像処理や熱センシングなどが代表例です。

乾式変圧器

乾式変圧器とは

乾式変圧器

乾式変圧器とは、絶縁油を使用しない変圧器です。

乾式という用語は変圧器の冷却方法に関連して付いており、冷却液や油を使用しないという意味です。油入変圧器のように油を使って冷却するのでは無く、コイルに樹脂をコーティングして空気冷却を行います。

鉄心や巻線の熱は油を介さず、大気中にさらされたコイルから直接放熱されます。乾式変圧器はさまざまな利点があります。まず、冷却材料を使用しないため、冷却液の交換や漏れのリスクがありません。

また、油漏れや環境への影響を心配する必要ないことも特徴です。特に建物や施設の設置スペースが制限されている場合に適しています。ただし、いくつかの制約もあります。冷却効果が油冷変圧器よりも低い場合があり、大容量の変圧器には冷却ファンや冷却装置が必要になることもあります。また、乾式変圧器は一般的に油冷変圧器よりも高価です。

乾式変圧器の使用用途

乾式変圧器はさまざまな用途で使用されます。以下は使用用途一例です。

1. 工業施設・工場

工場や工業施設で使用されることがあります。これらの施設は高圧や特別高圧で電力会社電線網と連系しているため、低圧を要する機器への送電には変圧器が必要です。変圧器を屋内設置する場合は、乾式変圧器を用いることで安全に機器へ配電することが可能です。

2. 商業施設

大型のショッピングモールなどでは広く使用されます。照明やエアコン、昇降機などの機器への変電に使用されます。通電した際に発火の危険性が低いため、人が多く集まる場所にも適しています。

また、小型・軽量である点も特徴のため、高層部分での使用も可能です。マンション高層階やオフィスビルにおいても乾式変圧器が適しています。

3. 鉄道

鉄道車両や交通システムでも乾式変圧器が使用されています。特に地下鉄などの密閉空間では、安全性の高い乾式変圧器が重宝されます。また、設置スペースの制約が多い鉄道車両では、油入変圧器の代わりに乾式変圧器を用いることで省スペース化を図っています。

乾式変圧器の原理

乾式変圧器も他の変圧器と同様に、鉄心とコイルによって電圧を変化させる装置です。まず、鉄心にコイルを巻いて2つの巻線を用意します。次に片側に電圧を印加して電流を流します。

このとき、電磁誘導の原理によってもう一方にも電圧が生じることになります。変圧器は巻線の巻き数によってこの電圧を調整することが可能です。

電圧を変える際に発生する熱は、外に放出しなければなりません。油入変圧器は油と冷却フィンなどによって放熱しますが、乾式変圧器は空冷です。

乾式変圧器の選び方

乾式変圧器を選ぶ際には、必要容量、電圧、使用環境などを考慮します。

1. 必要容量

変圧器の容量は使用する負荷に応じて選定します。一般的には、6割程度の変圧器容量で平均使用電力を満足できると、効率的な運転が可能です。ただし、最大使用電力や大型負荷の突入電流以上の容量を選定しなければなりません。

2. 電圧

電圧は、高圧側と低圧側でそれぞれ選定する必要があります。高圧変圧器の場合、国内の高圧側電圧は6.6kVまたは3.3kVであることが一般的です。低圧側は負荷に応じて選定し、国内における3相負荷の場合は400V系または200V系から選択します。

3. 使用環境

変圧器の設置場所や運用環境も考慮する必要があります。特殊な環境条件 (湿度、温度、振動など) があるかを確認し、それに適した耐久性と保護機能を持つ変圧器を選ぶことが大切です。

乾式変圧器のその他情報

乾式変圧器とモールド変圧器の違い

油を使わない変圧器に、モールド変圧器があります。乾式変圧器とモールド変圧器は、冷却方法や保護性能が異なります。

まず、乾式変圧器の内部巻線保護はワニスのみです。空気中に露出しているため、外部からの物理的なダメージや湿気に弱い可能性があります。したがって、適切な保護策が必要です。

一方、モールド変圧器は、内部の巻線をエポキシ樹脂などの絶縁材料で固められた構造で冷却されます。絶縁材料が冷却剤の役割も果たし、熱を効果的に放熱します。

乾式変圧器とモールド変圧器は一般的に、どちらも小型から中型の容量範囲で使用されます。ただし、乾式変圧器には冷却ファンや冷却装置が必要な場合があり、製造コストが増加しやすいです。一方、モールド変圧器は乾式変圧器に比べて比較的低コストで製造されます。

参考文献
http://www.toyo-elec.co.jp/products-item
https://electric-facilities.jp/denki8/henatsu.html
https://www.daihen.co.jp/technologygeeks/cat01/cat01_01/29/

中和装置

中和装置とは

中和装置とは、酸性もしくはアルカリ性の液体を中性域に調整して排水する装置です。

工場での生産活動や実験室での実験の際、薬品を含んで酸性やアルカリ性を示す水が出るケースは多くあります。排水のpH濃度が中性域でなく酸性やアルカリ性を示している場合は、そのまま下水や川などに流せません。

環境省のホームページなどには法律に基づいて決められた排水のpHの許容範囲が記されており、これを遵守する必要があるからです。そこで、排水のpH濃度が基準を満たしていない場合には、中和装置を設置して排水を処理する必要があります。

中和装置の使用用途

中和装置は、様々な場所での排水処理に使用されています。例えば、生コンクリートを多く使用する工事現場の洗い水やモルタルを洗浄した後の排水は強アルカリ性を示す場合があります。このような現場では、排水をアルカリ性から中性に中和しなければなりません。

また、食品工場では。製造する製品によってはpHが4.0~12.0程度の酸性あるいはアルカリ性の排水が出る場合があります。前述のようにこれら排水をそのまま下水として排出するのは禁止されており、排出には中和装置による排水の中和が必要です。

他にも化学工場や半導体製造工場、大学の実験室など、中性域以外の排水が生じる様々な場所で中和装置は使用されています。

中和装置の原理

中和装置は、酸性もしくはアルカリ性の原水を装置内に取り込み中和処理をします。そして、中和装置は大きく分けて、原水を流しながら連続で中和する「連続式中和装置」と中和槽内に原水を溜めた後に中和処理をおこなう「バッチ式中和装置」の2種類です。

連続式中和装置もバッチ式中和装置も原理は同じです。原水が酸性ならアルカリ性の薬品を混ぜ、アルカリ性なら酸性の薬品を混ぜ合わせることで中和を行います。中和処理の際にpHはモニタリングされており、規定のpH数になるまで薬品が投入されます。

酸性を中和するための薬品としては、安価に入手可能な苛性ソーダ、すなわち水酸化ナトリウム、アルカリ性を中和するために薬品としては硫酸塩酸が一般的です。中和装置には、実験室で使用できる小型のものから工場の大規模な排水に対応した大容量のものまであります。原水を溜めるタンクは酸にもアルカリにも耐性の高いポリエチレンを使用するのが一般的です。

中和装置の種類

中和装置には、「連続式中和装置」と「バッチ式中和装置」の2種類と、連続して中和する方式ではあるものの炭酸ガスで中和する「炭酸ガス中和装置」があります。

1. 連続式中和装置

連続式中和装置では、原水を流しながら中和する薬品を混入し連続した中和と排水が可能です。しかし、pH値が4~11よりも強酸性あるいは強アルカリ性の場合は、連続しての処理を例えば2段階に分けて行います。2段階の場合は、前段で粗調整、後段で微調整する仕組みです。

2. バッチ式中和装置

バッチ式中和装置では、中和槽に原水を溜め、これに中和する薬品を混入して中和を行います。

3. 炭酸ガス中和装置

中和する薬品として硫酸や塩酸が使用できない場合には、中和に炭酸ガスを使用する炭酸ガス中和装置が使用されます。この炭酸ガス中和装置では、連続式中和装置と同様に原液を流しながら炭酸ガスを導入して中和を行います。

炭酸ガスは塩酸や硫酸のように強酸の液体ではなく、ボンベに封入されているので取り扱いが容易なのがメリットです。なお、この中和装置では、炭酸ガスが水と反応して酸性となるため、処理できるのはpH12程度までのアルカリ性原水となります。

中和装置のその他情報

1. ボイラーの中和装置

ボイラーから排出されるボイラー排水には、清缶剤と呼ばれる薬品が添加されており、pH11〜12程度のアルカリ性です。そのため、ボイラー排水を放流するためには、pH5.8~8.6の排出基準 (海域にあたってはpH5.0~9.0) の範囲内への調整が必要です。

このボイラー用の中和装置としては、炭酸ガス中和装置がよく利用され、アルカリ性のブロー排水に炭酸ガスをミキシングして中和を行なっています。また、ボイラーから排出される排ガス中の炭酸ガスを利用し、アルカリブロー排水の中和をおこなう方式もあります。

この方式では、炭酸ガス濃度の低いボイラーの排ガスにより循環中和処理を行うため、安定した処理が可能です。

2. 人工透析の中和装置

透析医療機関を含む事業場は、下水道法施行令ならびに各自治体下水道条例で定める下水排除基準を順守しなければなりません。透析装置や配管を維持するために、人工透析装置内部の洗浄に酸性またはアルカリ性の薬品が使用されています。このような洗浄を行った後の排水は、下水道への排水基準であるpH5~9の範囲内に適合しない恐れがあります。

特に酸性の洗浄排水が下水道に流されるとコンクリート製の下水道管が損傷し、道路陥没等の原因となる事例も発生しており注意が必要です。排水基準に適合しない場合は、除害施設を設置し、中和処理を行わなくてはなりません。

使用する中和薬品は、酸の場合は硫酸、アルカリの場合には苛性ソーダが一般的です。なお、透析医療機関が中和装置などの除害施設を新規に設置する場合や装置の更新を行う場合は、所定の届出が必要です。

参考文献
https://www.tohkemy.co.jp/technology/ph_tyuuwa/
https://www.rent.co.jp/sanki/08tokushu/ph_auto_control_co2.htm
https://www.miuraz.co.jp/product/boiler/accessories/neutralize.html