分光測色計

分光測色計とは

分光測色計

 分光測色計とは、色を数値化する装置です。人間の目でも色を判断することはできますが、定性的な評価になったり、人によって色の見え方は違うため、正確な判断はできません。

一方で、製品の色味が品質評価の項目の一つになることは多々あります。そこで、明るさや赤、青、緑などの各色の強さなどを数値化することで色を数値的に評価したのが分光測色計です。

また、光の当たり方によって色の見え方は変わるため、分光測色計を用いた測定では光源からの距離、強さも合わせて記録します。

分光測色計の使用用途

デザイン、色味、塗料など色に関わる業界で分光測色計は利用される

分光光度計は色に関わる測定装置であるため、様々なジャンルで使われます。例えば自動車業界では、車のデザインや色味は重要視されるため、塗工後の車体の品質検査で分光測色計が用いられることがあります。

また塗料などの業界でも、求める色を示す塗料を作り上げるために分光測色計を用いた色味の評価が行われます。

品質管理の一つとしても分光測色計は利用される

そのほかにも食品業界やデザイン業界など、製品の見た目が重視される業界では品質管理の方法の一つとして分光測色計を用いた色の評価が行われています。

分光測色計の特徴

分光測色計はサンプルの見た目を調べる装置

分光測色計は、「分光」という言葉が入っている通り、光の波長ごとの強度などがわかります。太陽光や照明などの外部の光源からサンプル表面にあたった光を装置が受光して、波長ごとの強度と色がどのように見えるか、という結果を出力します。分光測色計には0°/45°分光測色計と積分球分光測色計、マルチアングル測色計という種類があります。

市販されている分光測色計は3種類

0°/45°分光測色計は、ある一つの角度から見たときの色を評価する方法であり、最も一般的な手法です。この手法は、表面がなめらかなサンプルに用いられます。積分球分光測色計は、サンプル表面で拡散した光を収集して測定する方法であり、表面に凹凸が見られるサンプルや光沢を含むサンプルに対して有効な手段です。マルチアングル測色計は、様々な角度からの色彩を評価する方法で、見る角度によって色味が変わる製品の評価に用いられる手法です。

また分光測色計では、光源の条件が異なったときでも同じような色が見える条件等の計算が可能であり、様々な条件下での色の見え方を評価に適しています。

分光測色計と色彩計の違い

 色を測定する機器すなわち測色計には、用途に応じて様々なものがありますが、ここでは代表的な測色計として、色彩計(色差計)と分光測色計について説明します。

  • 色彩計(色差計)
    色彩計は、刺激値直読法による測色計です。人間の目で色を判断する場合、目の網膜のセンサー(錐体)が刺激を受け、赤(X)、緑(Y)、青(Z)の3刺激値を読み取り、脳が反応し色を認識します。 色彩計は、人間の視角特性と同等な応答特性が得られる物理フィルターを用いて直接3刺激値を測定することができます。 生産、製造現場で、現物(色見本)との色差を確認するために、広く活用されています。
  • 分光測色計
    分光測色計は、分光測色法による測色計であり、光度計(光の強さを測る測定装置)の一種です。したがって、分光測色計も分光光度計と呼ばれる場合があります。 測定物からの反射光を分光センサーによって各波長毎のスペクトルに分解して測定し、この分光特性から3刺激値を算出します。 分光特性(分光値)を色の基準値として定義することにより、現物見本がなくても、デジタル値で高精度な色管理ができます。 ばらつきや経年劣化等、現物(色見本)の管理の難しさから、分光測色計を使った基準色(デジタル値)での色管理が主流になってきています。

測色計と色空間

測色計を使って色を数値化する方法として、国際照明委員会(Commission Internationale de l’éclairage:略称CIE)が制定したL*a*b*色空間(正式名称:CIE 1976 L*a*b*)が一般的に用いられます。

人間の視覚感覚に基づいて、人間が識別できる色差ができる限り均等になるように考案された色空間で、元となったハンターLab色空間(正式名称:Hunter 1948 Lab)と区別する意味で、L*a*b*(エルスター・エースター・ビースター)色空間と呼ばれています。

L*a*b*色空間では、明度を表す軸L*と、色度(色相と彩度)を表す軸a*およびb*の3つの軸で、色表現します。 それぞれの軸は、図1のように配置されます。L*値は0から100 までの範囲で明度(明るさ)を表し、L*=0は黒(光を完全に吸収する状態)の明度に、L*=100は完全拡散反射の白(反射率100%の状態)の明度にそれぞれ対応します。a*の軸は赤(+a*)〜緑(-a*)方向、b*の軸は黄(+b*)〜青(-b*)方向を表します。この場合、a*b*の平面において、原点から任意の座標への向きが色相(色味)に対応し、原点から任意の座標までの距離が彩度(鮮やかさ)に対応します。つまり、外側にいくほど色鮮やかになり、内側にいくほどくすんだ色になります。

前述したようにL* 座標の範囲は0から100までと定義されますが、a* と b* 座標の範囲は一義的ではありません。これは、L*a*b*色空間がマスターの色空間(CIE 1931 XYZなど)を変換したものであり、変換元の色空間によって値が異なるためです。

Lab色空間の図

なお近年、CIE 色空間上で人間の目視結果との差異を無くすよう改良されたCIE DE2000も登場しています。

分光測色計による高精度な分光特性の測定と、L*a*b*色空間を用いた色の数値化表現と、合わせたい基準色に対象となる生産物の色を合わせていくマッチング技術によって、色をデジタル化して管理するカラーマネージメント手法が、今後ますます重要になってきています。

参考文献
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/sokushiri/news/006/
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/02.html
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/06.html

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