ベルト張力計

ベルト張力計とは

ベルト張力計とは、ベルトの張りの強さを測定するための機器のことです。

一般的な張力計でのベルト張力の測定方法は、プーリに張られたベルトを張力計で押し、その時のたわみ量や反発力から張りの強さを測定します。張力計でベルトを押すだけなので、誰でも簡単に測定ができますが、測定者の勘に依存する部分が多く、測定結果に個人差が出てしまうというデメリットもあります。

最近では、より定量的に張力を測定する方法として、音波を用いたベルト張力計も使用されています。

ベルト張力計の使用用途

回転機構を持つ機械の中で、ベルトとプーリによる回転動力の伝達が行われているものは非常に多くあります。こういった機械の性能を維持するためには、ベルト張力の調整が必要不可欠です。そのため、ベルト張力計は、家庭の車から工業用の機械装置まで、ありとあらゆる機械のメンテナンスに用いられる測定器具といえます。

ベルト張力は、低すぎると動力伝達の効率が落ち、高すぎるとベルトやプーリの不具合・破損の原因になるため、適正に調整することが重要です。

ベルト張力計の原理

ベルト張力計には、測定に音波を用いるものと、たわみ量から計測するものの、2種類に大別されます。

  • 音波で測る
    静止した状態のベルトを指などで弾くことで生じた音波を、マイクロホンで読み取る方法です。検知した音波からベルト張力が自動で算出されるので、アナログタイプの張力計のような測定結果の個人差をかなり抑えることができます。
    また、測定したデータをUSB経由でパソコンに伝送できるものもあり、データ管理もしやすくなります。
    一方で、周りの騒音が大きい場所ではマイクロホンにノイズが入ってしまうため、測定できないというデメリットもあります。
  • ベルトのたわみ量で測る
    プーリに張られたベルトを張力計で直接押すことにより、ベルト張力を測定する方法です。
    プーリとプーリの間の距離をスパン長さといい、ベルト張力計を使う際はスパン長さの中心位置を押します。この位置でベルトに一定の負荷をかけ、その時のたわみ量からベルト張力を算出します。
    電源が必要なく、騒音環境下でも測定可能ですが、測定者によって測定結果にばらつきがでやすいのがデメリットです。

参考文献
https://www.kougu-damashii.jp/product/7082

プラズマ溶接機

プラズマ溶接機とはプラズマ溶接機

プラズマ溶接機とは、電極と母材の間に生じさせるプラズマアークを利用して溶接を行う機器のことです。

アーク放電のエネルギーを利用して溶接を行うアーク溶接の1種であり、ティグ溶接と同じ非消耗電極式に分類されます。他の溶接機と比べて、トーチから噴射されるアークの幅が狭いため、より細かな場所での溶接が可能です。また、プラズマアークの熱が高く、溶接作業が迅速に行えるというメリットもあります。

しかし、機器自体を持っている業者が少なく、一般的には存在があまり認知されていないので、使用頻度は低い機器です。プラズマ溶接機は、特に精密な作業や微細な溶接において、高い性能を発揮するため、専門的な分野で使用されています。

プラズマ溶接機の使用用途

プラズマ溶接機は、他のアーク溶接とは異なる特性を持ち、厳密な加工精度が求められる場合に使用されます。消耗電極式のアーク溶接を行った場合、構造上母材にひずみができてしまいますが、プラズマ溶接機なら、アークの熱をより狭い範囲に集中させることができるため、ひずみを最小限に抑えることが可能です。精密な加工精度が求められる素材の溶接や、製造業界での使用に適しています。

さらに、プラズマ溶接機は、スパッタと呼ばれる粒も残らないため、仕上がりをきれいに仕上げたい場合にも便利です。例えば、食品産業で使用される機器の溶接や、美術品、宝飾品、医療機器の製造でも、プラズマ溶接機が活用されています。

また、鉄以外の金属材料でも使用することが可能です。例えば、アルミニウムやステンレス鋼など、高温に弱い素材でも使用可能で、航空宇宙産業や自動車産業などでも多く使用されています。

プラズマ溶接機の原理

プラズマ溶接機は、アーク放電を起こすためにガスをプラズマ化させることができます。プラズマとは、物質の第4の状態です。気体にエネルギーを与え続けることで発生します。この状態の気体は、荷電粒子を含んでいるために電気性を帯びており、このプラズマ化したガスを噴射することで、導電体となりアークが生成されます。

プラズマ溶接機は、ティグ溶接に比べ、アークの範囲が狭く絞られているため、より細かいスペースでの溶接が可能です。また、アークの指向性が高く、隅肉溶接にも適しています。さらに、電極棒が溶けない非消耗電極を使用するため、長時間にわたって運転可能で、工場の製造ラインなどで自動溶接としても活用されています。

ただし、ティグ溶接よりもコストが高くなるのがデメリットです。プラズマ溶接機は、他の溶接方法とは異なる原理で作動するため、特性を理解することが重要です。特に、精密な加工が求められる場合や、長時間の連続運転が必要な場合には、プラズマ溶接機が最適な選択肢になることがあります。

プラズマ溶接機の種類

プラズマ溶接機の種類には非パイロットアーク方式とパイロットアーク方式があり、さらにプラズマ関連でプラズマ切断機があります。

1. 非パイロットアーク方式

非パイロットアーク方式は、電極を使用せず、代わりにガス導管から直接アークを発生させる方式です。この方式は、高周波の放電装置を使用してアークを起こし、プラズマ化したガスを噴射することで溶接を行います。長時間の連続運転が可能で、高い溶接品質が得られるため、工場の自動化に適しています。

2. パイロットアーク方式

パイロットアーク方式は、電極を使用してアークを起こし、そのアークを利用してプラズマ化したガスを噴射する方式です。この方式は、溶接に必要なエネルギーを調整でき、高い安定性が得られるため、精密な溶接に向いています。

3. プラズマ切断機

プラズマ切断機は、プラズマアークを利用して素材を切断するための機器です。高温のプラズマアークを素材に当てることで、熱によって素材を溶かし、高速で噴出したプラズマによって切断します。この方式は、高速で切断でき、厚い素材でも切断が可能なため、船舶や建築物の解体作業に使用されます。

参考文献
https://www.weld.nipponsteel.com/techinfo/weldqa/detail.php?id=27V4RZ5

クリーンペーパー

クリーンペーパーとは

クリーンペーパーとはクリーンルーム内で使用可能な用紙のことで、防じん紙、無じん紙とも呼ばれています。

クリーンルーム用品としての必須条件である低発じん性を有しながら、コピー・印刷のしやすさや断裁しやすさといった、紙としても優れた機能を兼ね備えている製品です。コピー用紙だけでなく、ノートや付箋状のものもあります。

通常のコピー用紙やノート用紙は発じん性があるため、クリーンルームで使用できません。クリーンペーパーの多くは、これらの用紙と容易に区別できるように、青色をはじめとした色味が付いています。 

クリーンペーパーの使用用途

クリーンペーパーは発じん性が低いため、発じんが許されないクリーンルーム内において、通常のコピー用紙やノート用紙の代わりに使用できます。例えば半導体の製造工場などでは、作業の条件や製品の種類などが記載された表(流動表)に、クリーンペーパーが採用されています。

クリーンペーパーの中には、導電性繊維を使用することによって、導電性を付与したものもあります。シリコンウエハー、基板などの電子工業製品は、作業の際に静電気を嫌うものの1つです。導電性クリーンペーパーは静電気が生じにくいため、これらの製品の間紙に用いることができます。導電性クリーンペーパーは、コピー機の機種によっては印字が定着しない場合があるため、コピー用紙として使用する場合はテストが必要です。

クリーンペーパーの原理

クリーンペーパーは、通常の用紙と異なる製法や素材で製造されます。これらの違いは用紙の発じん性に大きく影響しています。

通常のコピー用紙やノート用紙の原料には、多くの場合、木材パルプの短繊維が用いられます。短繊維は用紙から繊維が脱落しやすいので、短繊維から作られた製品は発じん性が高いのが普通です。クリーンペーパーには長繊維が選択的に使用されており、繊維同士の結合が強いため、発じん性が低くなっています。

通常の用紙とのもう1つの違いとして挙げられるのは、クリーンペーパーの着色には顔料が使われていないことです。炭酸カルシウムチタンに代表される顔料は、用紙を白くしたり、不透明性を持たせたりする目的で添加されます。通常の用紙からは、これらの顔料由来の粉じんが発生します。クリーンペーパーでは、液体の染料を着色料として使用するため、顔料による発じんは生じません。

他の発じん対策としては、樹脂で繊維を固め、繊維の脱落を防止する方法などがあります。 

参考文献
https://www.tanimura.biz/catalog/conductive_cleanpaper.html
https://www.monodukuri.com/gihou/article/273
https://www.sakurai.co.jp/products/clean/cleanpaper/data/clean_paper_how.pdf 

ガス発電機

ガス発電機とはガス発電機

ガス発電機とは、ガスを電気エネルギーへと変換させる発電機のことです。

内燃機関の1種であり、燃料を燃焼させて発生した高温のガスを利用して発電します。ガス発電機の利点としては、燃料コストが比較的安いことや燃料の供給が安定していること、高い効率で電力を生成できることなどです。そのほか、重油やガソリンよりも排出CO2が少ない点も利点として挙げられます。

また、環境にやさしい燃料であるバイオガスを利用することで、さらに二酸化炭素の排出量を削減することも可能です。一方、ガス発電機の欠点としては、初期投資費用が比較的高いことや燃料供給インフラが必要な場合があることです。燃焼による排気ガスや騒音が発生するため、適切な排気や騒音対策が必要です。

電力需要が安定していない場所や、燃料供給が容易な場所で有用な電源として利用されています。

ガス発電機の使用用途

ガス発電機はさまざまな使用用途・分野で使用されます。常用発電機として使用する場合と、非常用として使用する場合があります。

1. 常用用途

常用用途として使用する主な施設は、工場・発電所です。大規模工場は電力系統の停電によって、多大な損害や環境破壊に直結する場合があります。電力会社送電線網で瞬時停電が発生することは珍しくないため、常時ガス発電機で電力を生成し、いつでも送電線網と切り離せる状態とする工場も多いです。

また、工場では熱エネルギーの供給源として蒸気を使用することも多いです。ガス発電機は排熱などから蒸気を取り出すことが可能なため、電気と熱の供給源として使用する場合もあります。

2. 非常用用途

非常用用途として使用する主な施設は、オフィスビルやショッピングモールなどです。大規模なショッピングモールやオフィスビルでは、多くのテナントや施設が電力を必要とします。ガス発電機は、停電時にも営業を継続させるためのバックアップ電源として使用されます。

ガス発電機の原理

ガス発電機は吸気、燃焼、排気のサイクルによって電気を生み出す内燃機器です。ガス発電機には燃料供給装置があり、プロパンガスなどの可燃性ガスが供給されます。

これらの燃料は燃料噴射装置などを通じて内燃機器内に供給され、空気と混合されます。混合されたガスと空気の組み合わせは、燃焼に適切な混合比を持つように設計される場合が一般的です。

燃料と空気の混合物は、点火プラグや点火装置によって点火されます。点火によって燃焼した混合物は高圧高温のガスを生み出し、このガスによって回転機器を動作させます。回転機器は発電機と直結しており、発電機が回転することで回転エネルギーを電力へ変換するというのが一般的なガス発電機の原理です。

燃焼と同時に、排気ガスが形成されます。ガス発電機の排気には、酸化触媒や還元触媒などの排気ガス処理装置が装備されることがあります。これによって、排気中の有害物質や環境への影響を低減します。

ガス発電機の種類

ガスを利用した発電方法にはガスエンジン方式とガスタービン方式の2種類が用いられることが多いです。

1. ガスエンジン式発電機

ガスの膨張を利用してエンジンを回して発電する方法です。発電機内にガスや空気を注入した後、エンジンと繋がったピストンで気体を圧縮させます。

圧縮させたガスや空気に着火することで急激な膨張を引き起こし、ピストンを動かします。最終的にピストンの運動は、エンジンの回転に変換されて発電する仕組みです。

小型でも効率の良い発電を行うことが可能です。大型機では、排気ラインにボイラを設置することで蒸気による排熱利用も可能です。ただし、ピストン周辺部品の摩耗が発生するため、高頻度でメンテナンスする必要があります。

2. ガスタービン式発電機

タービンにガスを吹き付けることで発電する方法です。継続的にガスを燃焼させて高温高圧のガスを発生させ、この燃焼ガスがタービンを回すことにより発電する仕組みです。メンテナンスが容易であるため、ランニングコストが低い点が特徴です。

また、熱回収率が高いため、コジェネレーションシステムなどと併用すれば高効率な設備運用が可能です。熱利用が多い工場などで重宝されます。一方で、発電効率はさほど高くないため、エネルギー消費のうち電気の比率が高い場合はエンジン方式を採用します。

参考文献
https://generac.jp/features/
http://reneria.co.jp/howabout/construction/power_generation/
https://www.ace.or.jp/web/chp/chp_0020.html

FRP樹脂

FRP樹脂とはFRP樹脂

FRP樹脂とは、繊維強化プラスチック (英: Fiber Reinforced Plastics) のことです。

エポキシ樹脂などのマトリックス樹脂にガラス繊維などの強化材を混ぜて作られており、軽くて強い素材として幅広く用いられています。FRP樹脂は航空機などの輸送機の部品や建材、スポーツ用品、更にはロケットや人工衛星の部品などの宇宙産業でも用いられます。

FRP樹脂は用いるマトリックス樹脂、強化材によって物性が異なります。そのため、使用用途によって最適なFRP樹脂を選択することが大切です。

FRP樹脂の使用用途

FRP樹脂は、航空機などの輸送器の部品や薬品を貯蔵するタンク、建材やスポーツ用具、更にはロケットや人工衛星の部品に使用されています。

FRP樹脂は、加えられた強化材によって異なる名称で呼ばれ、それぞれ特徴も異なります。ガラス繊維が入ったFRP樹脂はGFRPです。

GFRPは金属材料よりも大きな比強度を有し、軽い材料で、ガラスが入っているため非伝導性材料です。一方で、炭素繊維が入ったCFRPはGFRPよりも強度、硬度が優れていますが電気を通します。ただし、どのFRP樹脂でも軽くて強いという性質は共通しています。

FRP樹脂の構造

FRP樹脂の構造

図1. FRP樹脂の構造

FRP樹脂はマトリックス樹脂と強化材から構成されます。マトリックス樹脂には不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂などが用いられます。

それぞれ化学構造が異なるため特徴も異なり、不飽和ポリエステル樹脂は成形が容易であること、耐水性に優れていることなどが利点です。また、ハロゲンを含ませると、耐燃性も付与することができます。

エポキシ樹脂は耐酸、アルカリ性に優れるほか、耐薬品性にも優れますが成形性に難があります。ビニルエステル樹脂は成形が容易で機械的強度に優れ、ビスA型系は耐溶剤性に劣るものの耐酸、アルカリ性に優れ、ノボラック系は耐酸化性に劣るものの耐溶剤、耐熱性に優れます。

FRP樹脂の種類

表1. FRP樹脂の種類

表1. FRP樹脂の種類

FRP樹脂の強化剤としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが用いられます。ガラス繊維が用いられたGFRPは金属よりも優れた比強度を示し、非伝導性、比較的安価、といった特徴があります。

一方、炭素繊維が用いられたCFRPはGFRPよりも高強度で軽く、硬度も優れていますが導電性を有します。また、アラミド繊維が用いられたAFRPは軽くて高強度ですが加工性があまり優れていません。

それぞれの強化材は化学構造が異なるため、耐食性も大きく異なります。用いられるガラス繊維のグレードが変わることでGFRPの性質も変化し、FRP樹脂に最もよく用いられるEガラスはアルカリ金属の含有量が非常に少なく耐水性に優れますが、強酸と接触するとAl, Caなどの成分が溶出してクラックを生じやすくなります。

一方で、炭素繊維は強い酸化性薬品には侵されますが、殆どの環境では問題なく使用可能です。また、アラミド繊維はアミド結合を有するためアルカリ性薬品と接触すると加水分解を起こしやすく、紫外線によっても劣化しやすいという特徴があります。

FRP樹脂のその他情報

FRP樹脂の加工性

FRP樹脂の加工性

表2. FRP樹脂の加工性

炭素繊維のFRP樹脂 (CFRP) では、炭素繊維に液状の熱硬化エポキシ樹脂を浸透させ、半硬化したシートを切り出し、オートクレーブで加圧・熱硬化することで成形します。しかし、上記の手法は繊維にマトリックス樹脂を浸透させる必要があるため、粘性が高い熱可塑性樹脂に適用することは困難です。

一方で、熱可塑性樹脂を用いたCFRPの成形法は今も研究されており、例えばプレス成形が検討されています。熱可塑性樹脂を含んだ炭素繊維を加熱、搬送して金型でプレスを行った後に冷却、切断して加工する方法です。

しかし、本手法では強度が大きいCFRPをきれいに、刃の摩耗なく切断する方法が必要であるなどの課題が残っています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscm1975/33/4/33_4_131/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plastos/1/1/1_44/_pdf/-char/ja

音響測深機

音響測深機とは

音響測深機

音響測深機とは、超音波を用いて深さを計測する装置のことです。

船舶に取り付けられているものが多く、海や川などの底までの深さを測定するために使われます。超音波を送信し、海底で反射して帰ってくるまでの時間から深さを測定します。海水中において、音は約秒速1500mで進むため、送信から受信までが2秒だったとすると、海底までの深さは1500mであることが分かります。

また、近年では複数の超音波ビームを用いるマルチビーム測深機が主流となっており、一度に広範囲の測深が可能となっています。

音響測深機の使用用途

音響測深機は主に海底までの深さを計測するために使用されます。

海底面までの深さを知ることができると、正確な海図を作成することが可能となり、船の運航や湾岸工事において非常に重要な役割を果たします。また、海底には確認の難しい火山や断層などが数多く存在しています。海底の情報を知ることはこれらの海洋資源の活用にも繋がるのです。さらに、地震大国である日本にとって海底の情報はとても大切で、防災面においても必要不可欠な情報です。

音響測深機の原理

音響測深機はと超音波の跳ね返りを利用して深さを計測しています。船舶に取り付けられた送信機から海底に向けて超音波を放ち、反射してきた音波を受け取ります。送信から受信までの時間を計測することで、計算によって深さを調べることができるのです。具体的な深さの計算方法は「音速×受信までの時間÷2」です。海水中を進む音の速さは約1500m/sと言われていますが、海水温や塩分濃度によって変わります。正確な深さの計測には調べる条件下での正確な音速設定が不可欠です。

また、近年では複数の超音波ビームを用いるマルチビーム音響測深機が主流となっています。マルチビーム音響測深機では、クロスファンビームと呼ばれる扇状の音響ビームを用います。放射状に複数の超音波ビームを放つことで、一度に複数点の計測が可能となるのです。垂直に送信した音波と斜めに送信した音波で細かな補正が必要になりますが、この技術により広範囲の測深が可能となり、面として海底の地形を正確に知ることができるようになりました。

参考文献
http://mogist.kkc.co.jp/word/b3b53f70-070d-4be1-a8da-6e99ecde47a3.html
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/KENKYU/report/tbh15/tbh15-14.pdf

電磁膜厚計

電磁膜厚計とは

電磁膜厚計

電磁膜厚計とは、電磁誘導の原理を用いて薄膜の厚みを測る装置のことです。

測定部分にコイルを近づけ、微小な誘導起電力を計測することで厚みの測定が可能となります。ノギスなどでは測れない薄膜や塗装の厚みなどを計測し、膜厚計には他にも渦電流式、超音波式、反射分光式などがあり、測定対象によって使い分けることが大切です。

電磁膜厚計は瞬時に正確な厚みを測定できる一方で、薄膜が磁気を帯びているとうまく測定できない欠点があります。

電磁膜厚計の使用用途

1. 金属工業

電磁膜厚計は、金属製品の製造業界で広く使用されています。金属の膜厚測定により、製品の品質管理や製造プロセスの最適化が可能となります。例えば、自動車産業では、塗装の均一性や耐久性を確保するためなどです。

2. 建築業

建築業界では、コンクリートや鋼材の表面に施されるコーティングや塗装の厚さを測定するために電磁膜厚計が活用されます。これにより、建物の耐久性や外観の品質が確保されます。

3. 腐食監視

金属製品や構造物の腐食状態を監視することを目的に使用されています。腐食が進行すると膜厚が減少するため、定期的な測定により腐食の進行状況を把握し、必要な保護措置を講じることが可能です。

4. 電子工業

電子部品やプリント基板など、微細な部品の表面の膜厚を測定するために電磁膜厚計が利用されます。部品の性能や信頼性を確保する上では必須となります。

5. 化学工業

化学プロセスにおいて、化学物質やコーティング材料の膜厚を制御および監視するために電磁膜厚計が使用されます。製品の品質向上やプロセスの最適化に貢献します。

6. 航空宇宙産業

航空機や宇宙機器の部品において、膜厚の均一性や正確な寸法が重要です。電磁膜厚計は、これらの部品の製造および保守において不可欠なツールです。

電磁膜厚計の原理

電磁石が入ったプローブが備わっている構造となっており、これを測定面に接触させます。電磁石に電流を流すと電磁誘導が発生して、薄膜の裏にある磁性体が引き付けられます。電磁石と磁性体との間の距離に応じてコイルの電圧が変化するので、これを利用して膜厚を測る仕組みです。

ノギスのように両側から挟む必要がなく、目測で計測できない微小な厚みも測ることができます。また、電磁膜厚計は瞬時に正確な厚みを測れるうえ、操作が簡単で誰でも扱うことが可能です。

下地が金属などの磁性体で、計測する対象が非磁性体の時のみ、厚みを測ることができます。例えば、非磁性の金属メッキや塗料、樹脂の皮膜などが挙げられます。一方で、膜厚の下が非磁性体の場合や、表面に凹凸がある物体の場合は電磁石を表面に密着させる必要があるため正確に計測することはできません。

電磁膜厚計の選び方

1. 使用用途

まず最初に、どのような用途に電磁膜厚計を使用するのかを明確にする必要があります。金属の膜厚測定、塗装の厚さ測定、腐食のモニタリングなど、さまざまな用途に合ったタイプがあります。

2. 精度と分解能

測定の精度が重要な場合、高精度の電磁膜厚計を選ぶことが必須です。また、分解能も考慮に入れることが大切です。必要な精度と分解能は使用目的や用途によって異なるため、まずは用途を決める必要があります。

3. 材料の種類

測定対象の材料に合った電磁膜厚計を選ぶことが重要です。金属、非金属、コーティングされた材料など、対象物の材質によって適した電磁膜厚計が異なります。

4. 測定範囲

測定したい膜厚の範囲を考慮し、その範囲をカバーできるかどうか考慮します。範囲が広いものから狭いものまでさまざまな選択肢があります。予め範囲が想定できない場合は、可能な限り広い範囲を測定できる電磁膜厚計の検討も必要です。

5. 操作性

電磁膜厚計の使いやすさも考慮すべき要因です。直感的なインターフェースや使いやすいソフトウェアがあると、効率的に測定作業ができます。細かい作業が要求される場合もあるため、作業時間も想定したうえで操作性を考慮することが重要です。

6. 耐久性と保守

長期間にわたり安定した性能を維持するために、耐久性のある製品選びが必要です。定期的な保守や校正も重要なので、容易に作業できるか確認する必要があります。

参考文献
https://www.helmutfischer.jp/technology/thicknessmeasurement/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/film/principle/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/142/

防錆紙

防錆紙とは

防錆紙のイメージ

防錆紙は、錆を防止する機能を付与した包装紙です。

クラフト紙などに金属のさび (腐食) を防ぐ効力のある気化性の化学物質 (防錆剤) を塗布、または含浸して製造されます。錆を防ぎたい金属などの製品を、防錆紙で包むだけで対象物を容易に錆から守ることができます。

対象物の大きさや形状に合わせて自在に変形させ、簡易包装から密閉梱包まで簡単に行うことが可能です。

防錆紙の使用用途

防錆紙は錆びやすい材質のものや、錆が発生しやすい環境下などで、対象物を長期間錆から守って保存したい時に使用されています。鉄鋼や自動車など、錆によって品質上に問題が発生するような金属を扱う業界での使用が一般的です。

バリア層を持ち防湿性も兼ね備えている防錆紙も市販されており、こうした防錆紙を利用した場合は、防湿用の包装が不要です直接包むだけではなく、密封された空間の中に入れるといった使い方もあります。ポリエチレンの袋や防湿性の段ボールなどの密封された空間内に金属製品と共に入れておくことで、錆を防止することができます。

防錆紙の原理

防錆紙の原理

図2. 防錆紙の原理

防錆紙は化学的な作用によって錆を防止しています。防錆紙から気化した防錆剤が金属表面に吸着すると、防錆効果が発揮されます。防錆紙が金属の錆を防ぐ原理は以下の通りです。

  1. 紙に含有される防錆剤は、常温で徐々に気化 (昇華) し、蒸気は紙と金属の間の密閉された空間をすみやかに充満します。
  2. 気化した防錆剤が、金属表面の水分中に溶解します。溶解した防錆剤が物理的、化学的に分子またはイオンとして吸着することにより形成されるのが、「防錆被膜」です。
  3. 防錆被膜が、鉄を錆の原因となる外気から遮断し錆への変化を防ぎます。

この気化性防錆剤による防錆被膜は、膜厚がナノメートルオーダーと極めて薄く、吸着力も弱いため、金属表面に外観上の変化を与えることはありません。防錆包装後、表面を洗浄することなく直ちにの金属製品を使用することが可能です。また、気化性を利用した防錆であるため、即効性も期待できます。

防錆紙は化学反応を利用しているため、物理的な作用で錆を防ぐ防錆油と違い、全ての金属に対して同じ作用が期待できない点はデメリットともいえます。包装したい製品に最適な防錆紙を選定することが重要です。

また、防錆紙で包む前に包装対象の製品を洗浄しておくことも必要です。防錆紙には汚れを落とす作用はないため、汚れが残っていると防錆剤が到達しにくくなる可能性があります。 

防錆紙の種類

防錆紙は防錆対象金属、すなわち防錆剤成分による分類と、包装形態、すなわちベースとなる包装紙部分による分類の2通りの分類があります。

1. 防錆対象金属/防錆剤成分による分類

防錆紙の種類と金属の使用可否

図3. 防錆紙の種類と金属の使用可否

全ての金属に効力のある防錆剤は存在しないため、対象とする金属に応じて適切な防錆剤を含む防錆紙を使用することが必要です。一例を挙げると、鉄鋼専用の防錆紙はには効力がありません。

鉄鋼と銅が共存しているときにも使用可能な、鉄/非鉄金属共用の防錆紙が開発されていますが、それぞれの金属に対して専用のものを使った場合よりも効果は少なくなります。

2. 包装紙素材による分類

防錆紙をラッピングに使用する場合は、包装作業と包装後の取り扱いに耐える強度が必要です。基本的には用途に合わせた厚みのクラフト紙 (40〜100 m2) を用いますが、密封空間内に挿入して使用する場合には特に強度を必要とすることはないため、厚さの薄い紙を用いたものを使用しても支障はありません。

また、スリットコイルなどを包装する場合は、クレープ紙 (しわをつけた紙) をベースにした防錆紙を用いると、フィット性に優れています。

参考文献
https://www.juntsu.co.jp/rust/rust_kaisetsu04.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/43/9/43_9_511/_pdf/-char/en 

防錆フィルム

防錆フィルムとは

防錆フィルムとは、防錆剤を混合または塗布したフィルム、もしくは酸素、水蒸気を防ぐことによって、保護対象の製品に錆が発生することを抑制するためのフィルムです。

防錆フィルムに含まれる防錆剤には、気化性のものが使用されています。錆の防止は、金属製品の品質管理にとって重要な課題です。従来は防錆のために、グリースや油などによって表面をコーティングしていました。

これらのコーティング剤は加工や組み立ての前には取り除く必要があり、その作業に人件費や設備費などのコストや、環境負荷もかかります。防錆フィルムは防錆油を使わずに錆を防止できるので、これらの問題が発生しません。

酸素、水蒸気を防ぐフィルムについてはフィルムに防錆剤が使用されていないため、環境への負荷がさらに小さくなります。

防錆フィルムの使用用途

防錆フィルムは、金属製品の錆防止対策として用いられます。鉄鋼用のものがよく利用されますが、非鉄鋼用のものもあります。具体的な使用例としては、自動車用部品の保管用途です。

自動車用部品は、長期間保存されることが多くあります。海外へと輸出される場合には船便が多く利用されますが、コンテナ内は高温、多湿の環境が長期間続くことが避けられません。特に防錆が必要なのは金属製品です。

従来は防錆用の防錆紙と、密閉用のポリ袋の二重包装で保管していました。防錆フィルムはヒートシールによる密閉が可能なので、これらの機能を一枚で担うことができ、コストを下げられます。シートタイプの防錆フィルムはサイズが大きいものも市販されており、大型の機械の包装にも利用可能です。

防錆フィルムの原理

防錆フィルムは、ポリエチレンなどのプラスチックに気化性防錆剤を含ませたものです。この気化性防錆剤が、防錆に効果を発揮します。気化性防錆剤が防錆フィルムから気化すると、フィルムにより密閉された空間内に充満していきます。

気化性防錆剤は気化する過程で、空間内にある金属の表面や空気中の湿気などに溶け込み錆の原因となる電気化学反応を抑制するため、錆が発生しにくくなります。錆フィルムは気化性の防錆剤を用いているので、塗布などのコーティング法では届かなかった微細な隙間にも入り込み、隅々まで防錆を行うことが可能です。

また、防錆の反応機構は、防錆剤の種類によってさまざまです。例えば、鉄鋼用の防錆フィルムに用いられる亜硝酸塩類は、結露水に溶け込むことで、酸素や水と金属の反応を抑制します。同じく鉄鋼用に使用されるアミンのカルボン酸塩類による防錆メカニズムは、アミンとカルボン酸に解離したのち、金属表面で再び結合することによるものです。

気化性防錆剤を含まないバリアタイプの防錆フィルムは、酸素、水蒸気が袋の中に侵入することを防ぐことによって防錆効果を発揮します。一般的に、湿度が60-70%を超えるあたりから急激に錆が発生するので、そのような高い湿度にならないように水分の侵入を防ぐことが重要です。

防錆フィルムの特徴

金属工業製品の防錆の役割を果たす防錆フィルムには、大きく4つの特徴があります。

1. 防錆と梱包の2つの役割を担うことができる

防錆油の塗布による防錆では、梱包のための資材が別に必要となります。防錆フィルムは防錆と梱包を、1つの資材で同時に果たすことが可能です。

2. 防錆油の除去や洗浄作業を省ける

防錆油の塗布による防錆を行った場合、組み立て前などに防錆油を除去する作業が必要です。防錆フィルムによる防錆であれば、防錆油の除去や洗浄工程を省くことができます。

3. 製品によって様々な形態で防錆することができる

防錆フィルムは保護する製品の大きさや梱包状態によって、様々な資材に応用されています。シート状、ボード状、密閉チャック付の袋、緩衝材などにも応用されています。

4. 環境負荷を低減できる

防錆フィルムは、オイルやグリースといった液体やペーストではありません。滴下によって工場の床面や土壌を汚染する心配がなく、環境負荷を低減させることが可能です。

参考文献
https://www.juntsu.co.jp/rust/rust_kaisetsu03.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/43/9/43_9_511/_pdf/-char/en 

鉄筋探査機

鉄筋探査機とは

鉄筋探査機とは、コンクリート内部の鉄筋や水道管、電気配線などの位置や表面からの深さを測定する装置のことです。

鉄筋コンクリート造の建物の壁面内部は、施工された後で調べるためには、壁の一部を壊すか外部から非破壊で検査しなければなりません。鉄筋探査機は、非破壊検査に用いる検査機の一つであり、建物の構造や施工状態を確認したり、配線の切断などがないか確認したりするために使われます。

鉄筋コンクリート造の建物においては、鉄筋が上手く結合していなかったり配線が適した位置になかったりすると、事故の原因になりかねません。鉄筋探査機による調査は非破壊検査のため建造物を傷つける心配がないのはもちろん、比較的容易に検査をすることができます。

鉄筋探査機の使用用途

鉄筋探査機は、一般的にコンクリート建造物の中にある鉄筋や、それを覆う厚み (かぶり厚) を測定するために使われます。

1. 建物の品質管理

鉄筋コンクリート造の建物の主に強度に関する品質確認として、鉄筋の配置を把握するために使用されます。施工後の品質確認が主な利用目的です。

2. 建物改修時の調査

鉄筋コンクリート造の建物を改修する際に、実際に埋め込まれた鉄筋の位置や太さなどを知るために、鉄筋探査機が用いられます。古い建物の場合は図面が残っていなかったり、図面通りに鉄筋が配置されているとも限りません。建物改修時の現場調査として鉄筋の配置を知ることは、重要な工程になります。

3. 地下施設の調査

地下室には周囲の地面から大きな圧力が作用するため、鉄筋コンクリートで作られることが一般的です。地下施設の壁内には鉄筋以外に塩ビ管などのパイプが配置されていることもあり、鉄筋探査機による調査が行われます。

4. 耐震化工事の調査

地震に備えて耐震補強をする際にも、現状の鉄筋の配置を正しく知ることが重要です。鉄筋探査機によって、鉄筋や空洞についても正確に調べることによって、建物の耐震性能を正しく把握することができます。

鉄筋探査機の原理

鉄筋探査機は、鉄筋コンクリートなどの内部を調べるための非破壊検査機です。非破壊検査は対象物を傷つけることなくその内部の様子や状態を知るために、超音波、渦電流、放射線、電磁波など、私たちの目では見えない波動などを用いています。

現在の鉄筋探査機においては電磁波、または電磁誘導という現象を利用するのが一般的です。

鉄筋探査機の種類

鉄筋探査機は、測定方法により大きく次の2つに種類が分かれています。

1. 電磁波レーダー法

電磁波を用いてコンクリート内部を調べる方法です。電磁波とは、電界 (電場) と磁界 (磁場) が互いに作用しながら、空間を伝わっていく波のことです。空間は真空、気体や物質中を含みます。

電磁波は物質内部を固有の速度で直進するという性質がありますが、異なる物質同士が接する境界面があると、反射する性質があります。電磁波の異種材料の境界面で反射する性質によって、コンクリートと鉄筋との境界に関する情報を得ることが可能です。

電磁波レーダー法による鉄筋探査機には車輪が付いた駆動型のものが多く、コンクリート表面を移動させながら測定することで、より立体的な計測が可能となります。また電磁波はエックス線などの放射線のような危険性がないのも、広く用いられている理由の一つです。

2. 電磁誘導法

電磁誘導の原理を用いてコンクリート内部を調べる方法です。電磁誘導とは、金属線を束ねたコイルに磁石を近づけると、コイルに電気が流れる現象のことです。

電磁誘導法による鉄筋探査機では、電圧の変化を利用しています。電磁誘導の原理によって試験機のコイルに交流電流を流して磁場を生じさせると鉄筋にも電流が流れ、磁束が発生します。この変化を検出する事で内部の様子を確認することができます。

正確な精度で測定できる方法ですが、磁界の中に複数の磁性体が含まれると誤差が発生する可能性があります。

鉄筋探査機のその他情報

測定方法による違い

電磁レーダー法と電磁誘導法は、目的に応じて使い分ける必要があります。

電磁レーダー法は、コンクリート内部にある鉄筋はもちろん、空洞や塩ビ管の有無を調べることが可能です。電磁誘導法では調査対象は鉄筋のみに限られます。

電磁誘導法の特徴は、鉄筋径の推定ができることです。鉄筋コンクリートの強度は鉄筋の量や場所以外に、鉄筋の太さも重要な要素となります。

測定可能範囲にも違いがあります。電磁波レーダー法が表面から200mm~300mm程度であるのに対して、電磁誘導法は比較的浅い範囲の調査に適した方法です。

参考文献
https://www.rgk.jp/electromagnetic/