防錆紙

防錆紙とは

防錆紙のイメージ

防錆紙は、錆を防止する機能を付与した包装紙です。

クラフト紙などに金属のさび (腐食) を防ぐ効力のある気化性の化学物質 (防錆剤) を塗布、または含浸して製造されます。錆を防ぎたい金属などの製品を、防錆紙で包むだけで対象物を容易に錆から守ることができます。

対象物の大きさや形状に合わせて自在に変形させ、簡易包装から密閉梱包まで簡単に行うことが可能です。

防錆紙の使用用途

防錆紙は錆びやすい材質のものや、錆が発生しやすい環境下などで、対象物を長期間錆から守って保存したい時に使用されています。鉄鋼や自動車など、錆によって品質上に問題が発生するような金属を扱う業界での使用が一般的です。

バリア層を持ち防湿性も兼ね備えている防錆紙も市販されており、こうした防錆紙を利用した場合は、防湿用の包装が不要です直接包むだけではなく、密封された空間の中に入れるといった使い方もあります。ポリエチレンの袋や防湿性の段ボールなどの密封された空間内に金属製品と共に入れておくことで、錆を防止することができます。

防錆紙の原理

防錆紙の原理

図2. 防錆紙の原理

防錆紙は化学的な作用によって錆を防止しています。防錆紙から気化した防錆剤が金属表面に吸着すると、防錆効果が発揮されます。防錆紙が金属の錆を防ぐ原理は以下の通りです。

  1. 紙に含有される防錆剤は、常温で徐々に気化 (昇華) し、蒸気は紙と金属の間の密閉された空間をすみやかに充満します。
  2. 気化した防錆剤が、金属表面の水分中に溶解します。溶解した防錆剤が物理的、化学的に分子またはイオンとして吸着することにより形成されるのが、「防錆被膜」です。
  3. 防錆被膜が、鉄を錆の原因となる外気から遮断し錆への変化を防ぎます。

この気化性防錆剤による防錆被膜は、膜厚がナノメートルオーダーと極めて薄く、吸着力も弱いため、金属表面に外観上の変化を与えることはありません。防錆包装後、表面を洗浄することなく直ちにの金属製品を使用することが可能です。また、気化性を利用した防錆であるため、即効性も期待できます。

防錆紙は化学反応を利用しているため、物理的な作用で錆を防ぐ防錆油と違い、全ての金属に対して同じ作用が期待できない点はデメリットともいえます。包装したい製品に最適な防錆紙を選定することが重要です。

また、防錆紙で包む前に包装対象の製品を洗浄しておくことも必要です。防錆紙には汚れを落とす作用はないため、汚れが残っていると防錆剤が到達しにくくなる可能性があります。 

防錆紙の種類

防錆紙は防錆対象金属、すなわち防錆剤成分による分類と、包装形態、すなわちベースとなる包装紙部分による分類の2通りの分類があります。

1. 防錆対象金属/防錆剤成分による分類

防錆紙の種類と金属の使用可否

図3. 防錆紙の種類と金属の使用可否

全ての金属に効力のある防錆剤は存在しないため、対象とする金属に応じて適切な防錆剤を含む防錆紙を使用することが必要です。一例を挙げると、鉄鋼専用の防錆紙はには効力がありません。

鉄鋼と銅が共存しているときにも使用可能な、鉄/非鉄金属共用の防錆紙が開発されていますが、それぞれの金属に対して専用のものを使った場合よりも効果は少なくなります。

2. 包装紙素材による分類

防錆紙をラッピングに使用する場合は、包装作業と包装後の取り扱いに耐える強度が必要です。基本的には用途に合わせた厚みのクラフト紙 (40〜100 m2) を用いますが、密封空間内に挿入して使用する場合には特に強度を必要とすることはないため、厚さの薄い紙を用いたものを使用しても支障はありません。

また、スリットコイルなどを包装する場合は、クレープ紙 (しわをつけた紙) をベースにした防錆紙を用いると、フィット性に優れています。

参考文献
https://www.juntsu.co.jp/rust/rust_kaisetsu04.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/43/9/43_9_511/_pdf/-char/en 

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