自由蝶番

自由蝶番とは

自由蝶番

自由蝶番とは、板材と板材を合わせ開閉する場合に要の役割を果たす鋳造部品の一つです。これらを総称して蝶番(ちょうつがい)又は「ヒンジ」と呼称されていますが、そのなかでも前後にどちらにも(又は片側一方に)開け閉めがどちらでもでき、元の位置に戻るよう設計されたものが自由蝶番と呼ばれています。

よくみられる例では、店舗のドアや通行仕切りなど頻繁に出入りがある場合重宝されています。加工はステンレス等の鉄鋼材質が多く、表面のカラーバリエーションも数種あります。

自由蝶番の使用用途

使用用途は各種ドアの蝶番で通常2つほど使用します。ウェスタン扉などが顕著な例です。他、蓋付き収納ボックスなどは片側開きが使用されています。自動的な開閉用途があるところならばどこでも使用可能です。よくゲームで出てくる海賊やモンスターが持っている自然に蓋が閉まる宝箱もそれに当たります。

扉リフォーム時に利便性を考慮して調達されることも多い部品です。ただ開閉の稼働域は、蝶番の幅、板材幅により決まるので、リフォームで後付けする場合は材質寸法に注意が必要です。

自由蝶番の原理

例えば西部劇のガンマンが決闘前に酒場に入っていくシーンで使われている仕切り扉は、奥にも手前にも両方に押せる「両開き自由蝶番」を使用しています。対して往年の名作ゲーム「ドラゴンクエスト2」のダンジョンでモンスターが入っている宝箱も自由蝶番です。

各々のモンスターの持ち物の宝箱を無理矢理開けると、瞬発で閉まってしまうか、開けた後ゆっくり自然に閉まる。なぜか箱なのにしばらくパタパタと開閉していたりします。

これらは自由蝶番の機能をモンスターが自分の宝箱で教えているという素敵な設定があり建材ファンを喜ばせています。(片側開きタイプが多いようです)閉まりかたの個性が別れる秘密はバネ圧の調整に鍵があります。自由蝶番の真骨頂は、PINをきつく設定するか緩く設定するかで扉の跳ね返る力が変化するところにあります。

反跳力を無段階的に調整可能なものもあれば、数段階にあらかじめ設定されているものもあります。規格的には大きさや形状、表面加工も用途に応じ多岐にわたります。

DIY用品として、安価なもので80円~2000円台のものが多く市販されています。取り付ける板材の幅は部品の芯棒間の幅内の寸法ならば大丈夫です。

基板用スイッチ

基板用スイッチとは

基板用スイッチ

基板用スイッチとはプリント基板に実装可能な押しボタンスイッチもしくはディップスイッチのことです。
基板用スイッチとは、人の操作によりスイッチの接点をONしたりOFFするタイプのスイッチと言うことができます。

基板用スイッチには自動復帰型と保持型があります。前者は、ボタンを押し込むと、押し込んでいる間のみスイッチがON(またはOFF)し、指を離した瞬間に同時にスイッチがOFF(またはON)するタイプのスイッチです。

後者は、ボタンを操作したりスライドさせたりすることによりスイッチを一度、操作するとON(またはOFF)となり、以降スイッチから指を外してもスイッチはON(またはOFF)し続けるタイプのスイッチです。

基板用スイッチの使用用途

自動復帰型のスイッチを使うか、保持型のスイッチを使うかはその用途に応じて使い分けます。

自動復帰型を使う場合は、スイッチの状態を瞬間的に検出して、機器の制御につなげることできるような受け側の対応が必要です。スイッチからの指示に基づきその内容を瞬時に把握し、機器内部の制御を行うことが可能なシステムコントローラでスイッチの状態を監視できるような場合には自動復帰型が使われます。

保持型を使う場合は、前述のような受け側の対応は不要です。常にスイッチは同じ状態を保持していますので、受け側ではスイッチの状態に従いながら、常に機器の制御を行えばよいからです。

基板用スイッチの原理

a接点、b接点、更にc接点といわれるタイプが基板用スイッチにはあります。

a接点とは、ボタンから指を離している状態でスイッチがOFFとなり、ボタンを押し込むことによりスイッチがONとなる接点のことです。つまり、ボタンから指を離している状態では、スイッチは解放状態となり、回路上にスイッチが配置された場合には、電流が流れない状態です。ひとたびボタンを押し込んでスイッチをONにするとスイッチの接点間が閉じて電流が流れ出します。
a接点は、「通常時は解放」という意味でNO(Normal Open)接点とも言います。

b接点はその逆で、ボタンから指を離している状態でスイッチがONとなり、ボタンを押し込むことによりスイッチがOFFとなる接点のことです。
b接点は、「通常時は導通」という意味でNC(Normal Close)接点とも言います。

更にc接点はa接点とb接点の組み合わせから構成されています。仮に接点としてa、b、COMという3つの接点を考えます。この接点は、ボタンを押していない場合には、a接点とCOM接点が電気的につながっています。指でスイッチを操作して押し込むことによりa接点とCOM接点は非導通となり、今度はCOM接点とb接点が導通します。COM端子に流れこんできた電流をa接点側に流し込むか、b接点側に流し込むかを切り替える役割を担います。これがc接点です。

参考文献
https://e-sysnet.com/bs//

エアブローガン

エアブローガンとは

エアブローガン

エアブローガンとは、圧縮空気を使用して物体の表面から塵や汚れを吹き飛ばすためのツールです。

一般的に、工業や自動車メンテナンス、家庭用清掃などのさまざまな用途で使用されます。具体的には、圧縮空気を発生するエアコンプレッサやレシーバータンクなどです。エアブローガンは圧縮空気を使用するため、細かい隙間や複雑な形状の部分にも効果的に清掃することが可能です。

これにより、手での清掃では難しい箇所でも効率的に汚れや埃を取り除くことができます。また、手作業に比べて清掃作業を迅速に行うことが可能です。

ただし、高圧の空気を使用するため、安全性に十分注意が必要です。高圧の空気が目や皮膚に直接当たることで怪我をする可能性があるため、保護メガネなどの適切な保護具の着用する必要があります。

エアブローガンの使用用途

エアブローガンは、その効率的な清掃能力と多目的な使い道から、さまざまな用途で使用されます。以下はエアブローガンの使用用途です。

1. 自動車整備

エアブローガンはエンジンの隙間や部品、ホイール周り、ブレーキディスクなどの清掃に役立ちます。パーツの埃や汚れを取り除くことで、冷却効率を向上させつつメンテナンス作業を効率的に行ったりすることが可能です。また、ホイール周りやブレーキディスクの清掃は、安全な運転とブレーキ性能の確保にも重要です。

2. 工場

工場や製造現場では、機械や設備の清掃が生産品質や安全に関わります。エアブローガンは機械の部品や隙間の埃を取り除くのに効果的です。これにより、正確な動作を保ち、故障や不良のリスクを軽減できます。

3. 金属加工

金属製品の加工工程では、切削や溶接によって金属くずやチップが発生することがあります。これらを取り除くためにエアブローガンを使用することも多いです。金属くずが積もることで切削精度が低下するのを防ぐほか、安全な作業環境を維持する役割も果たします。

4. 情報通信

パーソナルコンピューターやキーボードなどの清掃に広く使用されます。キー間の隙間やファン内部の埃などを取り除くことで、機器の正常な動作と長寿命を保つことが可能です。ただし、小規模な清掃であればエアダスターを使用することも多いです。

エアブローガンの原理

エアブローガンは圧縮空気を使用して物体の表面から塵や汚れを吹き飛ばす道具です。本体やノズル、エア接続口などで構成されます。

1. 本体

エアブローガンの本体はハンドルやグリップ部分と、エアガンの内部機構を収めるケーシングから構成されます。ハンドル部分には操作用のトリガーやボタンがあり、ユーザーがエアブローガンを操作するインターフェイスです。

2. ノズル

エアブローガンのノズルは圧縮空気を制御して高速の風を吹き出す役割を果たす部品です。ノズルの形状やサイズは対象物や用途に応じて設計され、交換可能なことがあります。一部のエアブローガンには、供給される圧縮空気の品質を向上させるためのエアフィルターが取り付けられています。

3. 接続口

エアブローガンは圧縮空気供給源に接続して使用する仕組みです。接続口はエアブローガンの本体に備えられ、エアホースなどを介して供給源と接続されます。

エアブローガンの種類

エアブローガンは、さまざまな種類が存在し、その用途や形状によって異なります。以下は一般的なエアブローガンの種類です。

1. 噴射タイプ

風を強力に噴射することに特化したモデルです。ノズルの形状は風をに吹き飛ばすことに適しています。塵や埃を瞬時に吹き飛ばすことが可能であり、高圧のエアコンプレッサなどと組み合わせて使用します。

2. ロングタイプ

細長いノズルを持つモデルです。このノズルは狭い隙間や管路、深い部分など、手の届きにくい場所での清掃に適しています。ノズル部分が伸縮可能な製品も多く販売されています。

3. フラットタイプ

フラットで広いノズルを持つモデルです。ノズルが広く、広範囲の表面を一度に清掃することが可能です。平らな表面や広範囲の領域の清掃に適しています。

また、一部の製品では複数のノズルアタッチメントを使用して、異なる用途に適した清掃が可能です。エアカーテンなどと同様に、広範囲のほこりやゴミをエアブローしたい場合にも使用します。

参考文献
https://www.chibasangyo-web.co.jp/pdf/cat_12.pdf

回転軸

回転軸とは

回転軸

回転軸とはその名の通り回転する軸のことです。

文脈によって次の2通りの意味で使われますが、本記事では1の回転軸を解説します。

  1. モーターの回転する力を取り出したり、プーリーやギヤなどの部品を使って動力伝達する機械要素としての軸
  2. ロボットや装置内の回転する箇所の回転中心軸

回転軸の使用用途

回転軸は「駆動軸」と「従動軸」の2種類で、それぞれ使用用途が異なります。

1. 駆動軸

モーターの回転力を伝えようとする場合、必ずと言ってよいほど駆動軸を使用します。

  • 攪拌機: モーターの動力を撹拌翼へ伝える
  • ポンプ: モーターの動力をインペラへ伝える
  • ボールネジ: モーターの動力をカップリングを介してボールネジに伝え、軸の回転をナットの直進運動に伝達する

回転軸自体は回転運動ですが、ボールネジのような機械要素を使うと、直進運動に動力を変換することができます。

2. 従動軸

従動軸はギヤやプーリーを支持する軸として、例えば次のような用途で使用されます。

  • 垂直多関節ロボットの手首軸
    ロボットの手首部分はスペースが限られており、モーターが入らない場合はプーリーなどで動力を伝達させて手首軸を駆動させます。
  • ギヤードモーターの歯車支持軸
    モーターの動力をギヤで伝達する際の支持軸に使用されます。

動力が伝わる順番としては、下記の通りです。

  1. モーターが回転して動力を発生させる
  2. 駆動軸で回転が伝わる
  3. プーリーやギヤが付いた従動軸で別の所を駆動させる

回転軸の原理

回転軸はエンジンやモーターの動力を回転を通して伝えるためにあります。回転軸から別の軸に動力を伝える原理として、次のようなものがあります。

  • ギヤ
    いわゆる歯車です。かみ合うギヤの歯数を異なるものにすることで、回転速度を変えることができます。ベベルギヤウォームギヤを使えば、回転方向を変えることが可能で、ラックギヤを使えば、回転運動を直線運動に変えることができます。
  • プーリー
    ベルトとの摩擦によって、回転の動力を伝えることができます。
  • ファン
    回転軸に固定された羽 (プロペラ) が回ることにより、気流を回転軸に沿って流します。この空気の流れを、排気や冷却に使います。

回転軸はほとんどの場合、その両端を軸受けという部品で支持されています。この軸受けによって、回転軸はケースなど筐体にしっかりと固定され、かつ自由に回転することが可能です。

回転軸の種類

回転軸はその役割から駆動軸、従動軸の2つに分類されます。

1. 駆動軸

駆動源そのものに直結され、駆動源で発生される動力を回転として伝える軸です。駆動源がモーターであればモーターシャフト、エンジンであればクランクシャフトが駆動軸に該当します。

モーターシャフトに軸継手を介してボールネジを連結させ、回転運動を直線運動に変換させる直動機構の仕組みがありますが、このボールネジもまた駆動軸に該当します。

2. 従動軸

駆動軸で発生した動力を離れた場所の回転軸に移動させたい場合、ギヤ、プーリースプロケットなど動力伝達要素で伝達していきます。そのギヤやプーリーなどを固定するのが従動軸です。

従動軸はそれ単体では回転しませんが、駆動軸からの動力を離れた場所でも伝えることができる、という付加価値を持っています。

回転軸のその他情報

1. 回転軸の性能・コストを決めるポイント

回転軸は次のようなポイントで、性能・コストが変わってきます。これらの要素を考慮して、仕様を満たしつつ、コストを最小限にする回転軸を選定・設計するのが、設計者の腕の見せ所となります。

  • 材質:回転軸に使われる材料。
  • 公差:軸径のはめあい公差、軸の長さの寸法公差や、真直度・同軸度などの幾何公差。
  • 追加工:キー溝加工やネジ加工など、回転体を固定するための加工。
  • 表面処理:主に強度や耐食性の向上の目的で施される加工。

2. 回転軸でよく使われる材質

回転軸でよく使われる材質は「S45C」と「SUS304」の2つです。S45Cは鉄系の材質で、比較的安く、焼き入れで強度を上げることができるため、回転軸ではよく使われています。

SUS304はステンレス鋼の材料で、S45Cと比べて材料費は高いですが、錆びにくいという特徴があります。そのため、クリーンルームや食品工場といった環境でよく使われています。

3. 回転軸でよく使われる表面処理

回転軸では次の表面処理がよく使われています。

  • 四三酸化鉄皮膜 (黒染め): コストを抑えつつ防錆効果を付与できる。
  • 無電解ニッケルメッキ: 高い耐食性があり、メッキ後に熱処理を加えることで軸表面の硬度を上げることができる。
  • 高周波焼き入れ: S45Cなど鉄鋼系材料の強度を大幅に上げることができる。
  • 研磨:軸の表面粗さを小さくし、シールなどの摺動部品の取り付けを可能にする。

参考文献
https://d-engineer.com/kikaiyouso/jikutojikuuke.html

雨水マス

雨水マスとは

雨水マス

雨水マスとは、雨水を集め、スムーズに排水させるための設備です。住宅や道路などに設置されます。雨水マス住宅の屋根を伝って集まった雨水を流すものと、道路に溜まった水を流すものとして大きく分けられます。また、雨水マスで使われている方式には浸透式と非浸透式の2種類が存在します。自治体によっては、補助金を出して浸透式の雨水マスの設置を推進していますが、土地によっては、浸透式の雨水マスを設置できない所もあります。

雨水マスの使用用途

雨水マスは一般家庭から、ビル・商業施設・公園など多くの場所に存在しています。都市部の浸水被害防止の対策として、雨水の流出をコントロールする雨水貯蔵施設の設置が進められています。場所や用途に応じて、様々な機能をもった雨水マスが設置されています。一般家庭でも雨水マスは広く普及していますが、機能を維持して快適に使用するためには、定期的なメンテナンスが必要です。水が溜まった場合、夏場は蚊が発生することもあります。また、泥が溜まると水が流れにくくなる場合があります。

雨水マスの原理

雨水マスの種類・素材について説明します。

雨水マスには、浸透式と非浸透式2種類が存在します。浸透式は、雨水マスの側面に穴が空いており、水を地面に染み込ませて水を処理します。また、非浸透式は下水へ水が流れるように配管を繋げています。浸透式の雨水マスは、マスと浸透管の接続方法によって地面に浸透する水の量をコントロールすることができます。そのため、レイアウトが容易で扱いやすい塩ビ管の雨水マスが多く利用されています。浸透式の雨水マスの利点は、大雨の浸水被害を軽減させることができることです。また、水資源の保護にも繋がります。地下水位が高い所や、急傾斜地では、安全面の観点から浸透式の雨水マスを使用することはできません。

雨水マスに使われる素材は塩ビ・コンクリートなどがありますが、塩ビ製が使われることが多いです。軽いので取り扱いやすく施工がしやすいです。排水管との接続がしやすくコンパクトなので、埋設するスペースが限られている一般家庭などでも設置しやすいといわれています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmez/63/0/63_38_2/_pdf/-char/ja
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/other000042900/250612usuisinntou-panhu.pdf

集じん機

集じん機とは

集じん機

集じん機とは、粉塵などを回収するための装置です。

排ガスや粉塵の処理装置として使用されます。家庭用掃除機も、床面の粉塵を処理する装置と考えると、集じん機に分類できます。

集じん機の使用用途

集じん機は産業用、家庭用どちらにも使用されます。ただし、規模や構造にはそれぞれ違いがあります。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 発電用ボイラーの排ガス装置
  • 製鉄プラントや製錬プラントの排ガス装置
  • 空気清浄機や集塵機能付きエアコン
  • クリーンルーム用空気清浄機
  • 木工工房や宮大工のおがくず回収
  • 汚れた室内の掃除用

集じん機の原理

一般的に出回っている集じん機の大半は遠心式集じん機です。遠心式集じん機は、円筒構造物内部でガスを高速で回転させ、その遠心力によって粉塵を側面へ収集します。メンテナンスが容易で、比較的大きなダストの捕集に適しています。

家庭用掃除機もほとんどが遠心式集じん機と同様の原理です。遠心式集じん機は構造が簡単で部品も少ないため、小型軽量な製品を製造できるというメリットがあります。

集じん機の種類

原理の項で説明した遠心式集じん機以外にも、産業用としては様々な種類の集じん機が使用されています。代表的な集じん機は以下の4種類です。

1. 遠心式集じん機 (サイクロン)

原理は先述の通り、遠心力で集塵します。ただし、捕集限界が10μm程度であり、それ以下の微粒子捕集には適していません。装置を回転させる必要があり、機械的強度の問題や偏心などが発生するため、大型化には不向きです。

2. 洗浄式集じん機 (湿式スクラバー)

洗浄式集じん機の代表例は、スクラバーです。排気ガスに循環液をスプレーで散布し、その水分によって排ガス中の粉塵を捕集する装置です。循環液のPHを管理することによって、排ガスの化学的性状も安定させることが可能です。ただし、PHを一定に保つ添加装置や添加剤を定常的に使用する必要があります。

集塵性能も高く、0.1μm程度の粉塵を回収することができます。ただし、ランニングコストが他の集塵装置と比べて高価です。

3. ろ過式集じん機 (バグフィルタ)

ろ過式は、ろ布に排ガスを流すことで粉塵を付着させて集塵する方式です。0.1μm程度の微粒子を効果的に捕集することが可能で、集塵効率が高いことが特徴です。一方で、ろ布の目詰まりにより集塵能力が低下しやすいため、定期的な清掃や交換が必要であり、ランニングコストは高価です。

4. 電気集じん機

電気集じん機は、集塵板と放電極によって構成され、荷電粒子に働くクーロン力を利用して粒子を捕集する装置です。高電圧によるコロナ放電により微粒子を荷電させます。集塵性能は0.05μm程度のサブミクロンレベルの粉塵を99%以上収集することが可能です。

また、メンテナンスが容易でランニングコストが低いことから、近年の発電プラント用集じん機は電気集じん機が主流です。電気集じん機は開発者の名前から、コットレル (Cottrell) と呼ばれることもあります。

集じん機のその他情報

1. 集じん機と大気汚染防止法

大型集じん機は、産業用として排気ガス処理に使用されます。使用場所は発電所や製鉄所など、ボイラや炉を持つプラントです。ボイラなどの装置は重油や石炭を燃料として炊く場合がありますが、その排ガスには炭素による塵が多く含まれます。この塵はばいじんと呼ばれ、過去にはばいじんによる健康被害などが発生していました。

ばいじんをそのまま排気すると公害に繋がるため、排ガス中のばいじんを回収することが大気汚染防止法で定められています。大気汚染防止法だけでなく各都道府県で工場の排気ガス内粉塵量が定められており、この排出基準を満たすために集じん機が用いられています。

2. 集じん機の粉塵処理

集じん機で収集した粉塵は、産業用の場合は産業廃棄物です。そのため、そのまま野外に廃棄することはできません。ボイラなどから発生するばいじんは、国に登録された最終処分場での埋め立て処理が行われます。木工や林業で発生したチップについては、有価物としてバイオマス発電の原料とされることもあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/34/4/34_4_247/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/2/11/2_11_831/_pdf/-char/ja
https://www.apiste.co.jp/gde/technical/detail/id=4280

クロスローラーリング

クロスローラーリングとは

クロスローラーリングとは、ラジアル荷重やアキシアル荷重、モーメント荷重など、さまざまな方向の荷重を同時に支持できる軸受部品です。

外観はリング状をしています。リングの中に複数の円筒ころが、90°のV溝形状の転動面にスペーサリテーナを通して、交互に直列配列されているため、さまざまな方向からの荷重を支持することができます。

クロスローラーリングの使用用途

クロスローラーリングは、多くの産業用機械に用いられています。使用用途の幅は広く、例を挙げると工業用ロボットの関節部や旋回部、マシニングセンタの旋回テーブル、マニピュレータ回転部、精密ロータリーテーブル、医療機器、計測器、IC製造装置などです。使用用途が幅広い理由として、以下の利点があることが挙げられます。

  • 回転制度が優れている
    ローラーのスキュー防止や、ローラー同士の相互摩擦による回転トルクの増加を防止します。
  • 回転トルクが安定している
    与圧を与えた状態でも、安定した回転トルクを得ることができるので、高い支持剛性が得られるとともに、高精度な回転運動を実現できます。
  • 取り扱いが容易

クロスローラーリングの原理

クロスローラーリングがさまざまな方向の荷重を支持できるのは、ローラーが90°の角度を成して交互に並べられているからです。転動体にローラーを用いているので、大きな荷重を支持することができます。

また、ローラーがお互いに直行する方向に交互に並べられていることから、さまざまな角度からの荷重に対しても受け持つことができます。

クロスローラーリングの種類

クロスローラーリングには主に以下の6種類があります。

1. RU形

RU形は座付で内外輪が一体となっている構造であるため、組み付けによる性能への影響がほぼなく、回転精度・トルクが安定しています。また、フランジ・ハウジングが不要な点が特徴です。

2. RB形

RB形はクロスローラーリングの基本形であり、外輪は2分割され、内輪は一体構造となっています。内輪で回転精度が必要な部分に使われるという特徴があります。

3. RE形

RE形は寸法はRB形と同じですが、こちらは外輪の回転精度が求められる部分に使用されます。

4. RB形/RE形-USP級シリーズ

RB形/RE形-USP級シリーズは世界最高級の精度規格を超えており、精密さはトップクラスです。

5. RA形

RA形はRB形の内外輪の厚さを、できるだけ薄くしたものです。

6. RA-C形

RA-C形はRA形と寸法は同じですが、外輪回転用としても使用可能です。構造が外輪1箇所割りとなっており、剛性が外輪でも高いことが特徴です。

クロスローラーリングのその他情報

1. クロスローラーリングの取付

クロスローラーリングを取り付けるハウジングは、部品の剛性を考慮して肉厚を決める必要があります。強度が不足するとベアリングが変形したり、内部のローラー接触が不均一になり早期破損の原因にや回転精度の悪化につながります。

ハウジンングの肉厚は、クロスローラーリング断面高さの60%以上になるように設計します。また、取外し用に抜きタップというねじ穴を加工しておくと、クロスローラーリングに負荷をかけずに取り外すことができ、取外し時の破損を防ぐことが可能です。

クロスローラーリングを固定するための押えフランジを取り付ける際には、ボルトの締め付け順序も重要になります。ベアリングを均等に締め付けるため、対角にあるねじを少しずつ締めていき、締め付けが均一になるように組み立てていくのがポイントです。

このように高精度な回転機構を用いる際にはクロスローラーリングだけでなく、取付部品の加工精度や、組付け方法にも注意する必要があります。

2. クロスローラーリングの与圧

クロスローラーリングは通常のボールベアリングと同様に、与圧をかけることが可能です。与圧をかけることで支持剛性が高くなり、回転精度も高くなります。一方で回転摩擦が大きくなるので、回転動力の計算で注意が必要です。

与圧は通常、ラジアル隙間をマイナスにすることで与えます。与圧を与えたクロスローラーリングを取り付けるハウジングとシャフトの寸法公差はg5/H7が推奨されており、はめあいがしまりバメにならないように設定しなければなりません。仮に、しまりバメになった場合には与圧過剰で内部応力が高くなり、破損の原因になるため注意が必要です。

コイルスプリング

コイルスプリングとは

コイルスプリング

コイルスプリングとは、主に金属の線材で作られたコイル状のばねです。外部から力を加えて圧縮する、引っ張る、あるいはねじることにより内部に力を蓄えることができ、内部のエネルギーは復元力(反発力)として作用します。

圧縮する用途で使用されるコイルスプリングは圧縮スプリング圧縮ばね、引っ張る用途で使用する場合には引張スプリングや引張ばね、ねじりを加える場合にはねじりコイルばねやトーションばねと呼ばれます。

コイルスプリングは、押しボタンなどの復帰動作を必要とする機械や日常品、おもちゃの他、自動車や工作機械などで発生する衝撃や振動を吸収する用途として様々な場面で使用されています。

コイルスプリングの使用用途

コイルスプリングは、主に反発力により元の長さに戻ろうとする機能と、変形してエネルギーを蓄えることにより衝撃や振動を吸収する機能の2つの機能が利用されます。

反発力を利用した製品には、2回クリックすると芯が収納されるボールペンや解錠すると自動でロックが解除される自転車のロック機械、自動で巻き取ることができる巻尺(メジャー)などに使用されています。

衝撃吸収の使用例としては、路面から車内に伝わる揺れや振動を軽減する自動車のサスペンションやターザンロープの終点に設置されているショックアブソーバなどがあります。

コイルスプリングの原理

コイルスプリングは、コイル状に巻かれた線材が塑性変形することによってその弾性エネルギーが復元力として作用します。したがって復元力の大きさは圧縮変位に比例し、復元力を変位(変形量)で割った値をばね定数といいます。線材の径を大きくするとばね定数も大きくなり、幅広いばね定数のコイルスプリングが生産されています。

ばね定数はコイルスプリングの特性を示す値であるため、コイルスプリングを選定する際にはこのばね定数とばねの長さが重要視されます。

反発力として使用する場合には、設計した変位あるいは予想される変位と発生させたい反発力からばね定数を見積もります。

衝撃吸収に使用する場合には、設計上受け止められる変位の長さと想定される瞬間荷重からばね定数を決定します。また、システム全体の固有振動数が外部から加えられる周期的な力の振動数と一致しないようにする(共振しにくくする)ことも重量です。衝撃吸収の用途としては、変位の変化する速度に比例して抵抗力を発揮するダンパと組み合わされる場合が多くあります。

歯科用途のコイルスプリング

コイルスプリングは、歯科矯正において使用される歯科矯正装置として活用されています。すなわち、コイルスプリングの復元力により歯に付加力を与えることにより矯正治療が行われます。

コイルスプリングは、例えば、コバルトクロム合金製のものが使用されています。

スプリングの外観形状はオープンタイプのものとクローズタイプのものがあり、歯の移動方向や掛ける力に応じてスプリングの種類を選択します。

オープンタイプのコイルスプリングは歯間距離を広げるときに使用されており、歯間離開させる位置でスプリングを縮めた状態にし、両端を他の矯正用装置に留めることにより使用されます。

またクローズタイプは歯間距離を縮めるときに使用されており、空隙閉鎖させる歯間でスプリングを伸ばした状態にし、両端を他の矯正用装置に留めることにより使用されます。

金属製のコイルスプリングを使用する場合には、患者にアレルギー反応がないかなど身体との親和性を確認しながら使用する必要があります。

自動車用途のコイルスプリング

自動車用途のコイルスプリングとしてはサスペンションがあります。

サスペンションの具体的な構成としては、コイルスプリングとショックアブソーバを組み合わせたものがあります。

この構成においては、コイルスプリングのバネの線径や長さ、巻き数によってバネ定数などの特性が決まります。なお、コイルスプリングの自由長が長いほどサスペンションストロークが増加します。

コイルスプリングとしては、コイルの間隔が同じ等ピッチコイル、間隔を変えた不等ピッチコイル、コイル径を変えた非線形ピッチコイルがあります。

等ピッチのコイルスプリングは全体で衝撃を吸収しますが、不等ピッチのものはピッチの狭いところで衝撃をやわらげて吸収し、一方ピットの広いところで強い衝撃を吸収します。非線形においては、コイル径が大きいほど衝撃に対して柔らかく反応します。

コイルスプリングは衝撃を吸収しますが、振動を抑えるまでにある程度の時間を要します。コイルスプリングを一緒に組み合わせられるショックアブソーバは、その減衰機能により振動を早期に収束させることができます。

参考文献
https://www.punch.co.jp/product/press/02-014-01/
https://www.jmortho.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/spring.pdf
https://clicccar.com/2019/07/29/889930/

支柱クランプ

支柱クランプとは

支柱クランプ

支柱どうしを組み合わせて固定するための部品です。用途が似ている道具にムッフがありますが、ムッフはネジを手で締めて固定するので頻繁に組み立て・解体する装置に向いています。一方、支柱クランプはボルトとナットでより強力に固定するため、長期間設置しておく場合や重量のある実験器具を支える場合に適しています。

支柱クランプの使用用途

支柱どうしを接続して固定する際、接続部分が緩いと衝撃が加わった場合に装置全体が倒壊し、器具の破損や怪我の原因になります。ムッフを使えば支柱どうしを接続できますが、ネジで締めつけているだけなので、長期間設置し続けたり重量物を支えたりするには強度が不安です。

そこで強度が求められる場合は、ボルトとナットを使って強く固定できる支柱クランプを使用します。支柱どうしを垂直に接続するだけでなく、水平に並べて立てられる製品や、接続部分が回転するようにできる製品もあります。

支柱クランプの原理

支柱クランプ本体はアルミ合金、ステンレス、合成樹脂などでできています。支柱を通すための穴が空いており、支柱を通してからボルトとナットで固定します。ムッフがネジの先端で締めつけているだけなのに対し、支柱クランプは穴に支柱を通して挟み込んでしまう構造であり、より強度があります。

形状がバラエティ豊かなので、使い分けて自在に支柱を組み立ててください。一例を以下に紹介します。

  • 支柱を通す穴が2つ垂直に空いており、支柱を直交させられるもの
  • 支柱を通す穴が2つ水平に空いており、支柱を並行に並べられるもの
  • クランプから円柱形のアームが伸びており、アームにさらにクランプやムッフを付けられるもの
  • 支柱を通す穴が四角形になっており、同じく四角柱の支柱に取り付けることでクランプの回転を防げるもの

支柱クランプを選ぶ際は、支柱の太さや形状と一致していることを確認してください。また、様々な支柱クランプを使うことで支柱を複雑に組み合わせることができますが、バランスが悪いと装置が転倒する恐れがあります。重心が安定するように留意して組み立ててください。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/result/?Keyword=支柱クランプ&isReSearch=1&relatedKeyword=1

シムテープ

シムテープとはシムテープ

シムテープとは、機器の隙間に挟むことで、位置の調整や、高さを微調整するために広く用いられている金属製の薄いテープです。

ちなみにシム (Shim) とは、英語で直訳すると「詰め物」を意味します。たとえば、各部品を組み立てた時に、各部品は公差を満たした状態なのですが、部品を組み立てると累積公差の影響で、全体の位置が合わない場合があります。

そのような時に、合わない分の厚みをシムテープで微調整すると、位置合わせが可能です。また、機器にセットした部品の平面が傾いた際、必要な厚み分のシムテープを挟むことで傾いた平面を微調整したりします。

シムテープの使用用途

シムテープは、金型での高さ調整や工作機械のワークの位置合わせなどの用途によく用いられています。金型での高さ調整用の場合は、各プレートを組み合わせた時に、取り付け面に調整量の厚み分のシムテープを挟むことで高さの微調整を実施し、加工精度を向上します。

工作機械の場合には、ワーク (=加工対象物) 加工用の取り付けの面の傾きを補正し、平行出しが可能です。シムテープの使用により均一な平面でのワークの加工が期待できます。

機器の傾きや隙間の補正などにも活用できるので、隙間起因の動作時のガタツキや騒音などの抑制が可能です。

シムテープの原理

シムテープの原理は、物同士を接着するためのテープとして使用するのではなく、金属性の薄いテープを自由な長さに切り取って、調整したい箇所に挟む薄膜金属板個片として使用します。シムテープはテープ状のため、自由な長さにハサミで切り使用できる特徴があり、その切り取った長さのテープを使用箇所に自由に挟むことで、機械調整、金型調整、機械加工前の平面調整などが可能です。

また、隙間にシムテープを入れることで隙間の長さ (高さ) を測定することもできます。ワークをマシニング加工する前にワークのセットの段取りを行いますが、もしテーブルとワークで構成される平面に傾きがあると、穴加工の場合には穴が傾いてしまいます。

そのため、平面を調整するためにワークの平面度が低い側にシムテープをテーブルとワークの間に入れ、再度平面を測定し傾きを確認し、問題がなければ加工を行います。

シムテープのその他情報

1. シムテープの仕様事例

シムテープには、各種の仕様があります。

シムテープの材質

通常はこの2種類ですが、加工業者によっては真鍮が用いられたりもします。

シムテープの規格
一般のシムテープの厚みは0.005mm~2.0mmであり、目的に合わせた厚みを使用できます。また、テープの幅は、標準は12.7mm (特殊な幅も可能)、テープの長さは1m以上が購入可能です。

2. シムとライナーおよびスペーサーの違い

「シム」と「ライナー」は似た用途で用いられており、実際のところ明確な定義はありません。しかし、一般にシムは薄い場合、ライナーは厚い場合によく用いられています。1mm以下をシム、それ以上をライナーと呼んで区別する事例もあります。

ともに隙間を補充すための詰め物としての用途が主です。一方で、スペーサの場合には、少し意味合いが異なる板状の詰め物です。こちらは隙間を確保する為の用途として用いられます。つまり、高さや位置調整目的は、シムやライナーと同じなのですが、傾き調整用途にはスペーサーは用いられないことが多いです。

3. シムテープを用いる場合の注意点

高さや位置調整の目的でよく用いられるシムテープですが、あまり多用すると同じ状態を再現できなくなる可能性があります。もともとの工作機械や金型などの機器が有する精度の目標の高さや傾きの精度以上のものを出すのは、工程能力面で困難ですし、機器をバラした時に多用したシムテープの組み合せを失念し、場合によっては紛失すると元の状態に戻せなくなる危険性があります。

金型や工作機械、組み立て部品での目標とする精度がいくつで、調整代がどこになるのかをよく考慮した上で使用することが大切です。

参考文献
https://kikaikumitate.com/post-4771/