クロスローラーリング

クロスローラーリングとは

クロスローラーリングとは、ラジアル荷重やアキシアル荷重、モーメント荷重など、さまざまな方向の荷重を同時に支持できる軸受部品です。

外観はリング状をしています。リングの中に複数の円筒ころが、90°のV溝形状の転動面にスペーサリテーナを通して、交互に直列配列されているため、さまざまな方向からの荷重を支持することができます。

クロスローラーリングの使用用途

クロスローラーリングは、多くの産業用機械に用いられています。使用用途の幅は広く、例を挙げると工業用ロボットの関節部や旋回部、マシニングセンタの旋回テーブル、マニピュレータ回転部、精密ロータリーテーブル、医療機器、計測器、IC製造装置などです。使用用途が幅広い理由として、以下の利点があることが挙げられます。

  • 回転制度が優れている
    ローラーのスキュー防止や、ローラー同士の相互摩擦による回転トルクの増加を防止します。
  • 回転トルクが安定している
    与圧を与えた状態でも、安定した回転トルクを得ることができるので、高い支持剛性が得られるとともに、高精度な回転運動を実現できます。
  • 取り扱いが容易

クロスローラーリングの原理

クロスローラーリングがさまざまな方向の荷重を支持できるのは、ローラーが90°の角度を成して交互に並べられているからです。転動体にローラーを用いているので、大きな荷重を支持することができます。

また、ローラーがお互いに直行する方向に交互に並べられていることから、さまざまな角度からの荷重に対しても受け持つことができます。

クロスローラーリングの種類

クロスローラーリングには主に以下の6種類があります。

1. RU形

RU形は座付で内外輪が一体となっている構造であるため、組み付けによる性能への影響がほぼなく、回転精度・トルクが安定しています。また、フランジ・ハウジングが不要な点が特徴です。

2. RB形

RB形はクロスローラーリングの基本形であり、外輪は2分割され、内輪は一体構造となっています。内輪で回転精度が必要な部分に使われるという特徴があります。

3. RE形

RE形は寸法はRB形と同じですが、こちらは外輪の回転精度が求められる部分に使用されます。

4. RB形/RE形-USP級シリーズ

RB形/RE形-USP級シリーズは世界最高級の精度規格を超えており、精密さはトップクラスです。

5. RA形

RA形はRB形の内外輪の厚さを、できるだけ薄くしたものです。

6. RA-C形

RA-C形はRA形と寸法は同じですが、外輪回転用としても使用可能です。構造が外輪1箇所割りとなっており、剛性が外輪でも高いことが特徴です。

クロスローラーリングのその他情報

1. クロスローラーリングの取付

クロスローラーリングを取り付けるハウジングは、部品の剛性を考慮して肉厚を決める必要があります。強度が不足するとベアリングが変形したり、内部のローラー接触が不均一になり早期破損の原因にや回転精度の悪化につながります。

ハウジンングの肉厚は、クロスローラーリング断面高さの60%以上になるように設計します。また、取外し用に抜きタップというねじ穴を加工しておくと、クロスローラーリングに負荷をかけずに取り外すことができ、取外し時の破損を防ぐことが可能です。

クロスローラーリングを固定するための押えフランジを取り付ける際には、ボルトの締め付け順序も重要になります。ベアリングを均等に締め付けるため、対角にあるねじを少しずつ締めていき、締め付けが均一になるように組み立てていくのがポイントです。

このように高精度な回転機構を用いる際にはクロスローラーリングだけでなく、取付部品の加工精度や、組付け方法にも注意する必要があります。

2. クロスローラーリングの与圧

クロスローラーリングは通常のボールベアリングと同様に、与圧をかけることが可能です。与圧をかけることで支持剛性が高くなり、回転精度も高くなります。一方で回転摩擦が大きくなるので、回転動力の計算で注意が必要です。

与圧は通常、ラジアル隙間をマイナスにすることで与えます。与圧を与えたクロスローラーリングを取り付けるハウジングとシャフトの寸法公差はg5/H7が推奨されており、はめあいがしまりバメにならないように設定しなければなりません。仮に、しまりバメになった場合には与圧過剰で内部応力が高くなり、破損の原因になるため注意が必要です。

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