回転軸とは
回転軸とはその名の通り回転する軸のことです。
文脈によって次の2通りの意味で使われますが、本記事では1の回転軸を解説します。
- モーターの回転する力を取り出したり、プーリーやギヤなどの部品を使って動力伝達する機械要素としての軸
- ロボットや装置内の回転する箇所の回転中心軸
回転軸の使用用途
回転軸は「駆動軸」と「従動軸」の2種類で、それぞれ使用用途が異なります。
1. 駆動軸
モーターの回転力を伝えようとする場合、必ずと言ってよいほど駆動軸を使用します。
回転軸自体は回転運動ですが、ボールネジのような機械要素を使うと、直進運動に動力を変換することができます。
2. 従動軸
従動軸はギヤやプーリーを支持する軸として、例えば次のような用途で使用されます。
- 垂直多関節ロボットの手首軸
ロボットの手首部分はスペースが限られており、モーターが入らない場合はプーリーなどで動力を伝達させて手首軸を駆動させます。 - ギヤードモーターの歯車支持軸
モーターの動力をギヤで伝達する際の支持軸に使用されます。
動力が伝わる順番としては、下記の通りです。
- モーターが回転して動力を発生させる
- 駆動軸で回転が伝わる
- プーリーやギヤが付いた従動軸で別の所を駆動させる
回転軸の原理
回転軸はエンジンやモーターの動力を回転を通して伝えるためにあります。回転軸から別の軸に動力を伝える原理として、次のようなものがあります。
- ギヤ
いわゆる歯車です。かみ合うギヤの歯数を異なるものにすることで、回転速度を変えることができます。ベベルギヤ、ウォームギヤを使えば、回転方向を変えることが可能で、ラックギヤを使えば、回転運動を直線運動に変えることができます。 - プーリー
ベルトとの摩擦によって、回転の動力を伝えることができます。 - ファン
回転軸に固定された羽 (プロペラ) が回ることにより、気流を回転軸に沿って流します。この空気の流れを、排気や冷却に使います。
回転軸はほとんどの場合、その両端を軸受けという部品で支持されています。この軸受けによって、回転軸はケースなど筐体にしっかりと固定され、かつ自由に回転することが可能です。
回転軸の種類
回転軸はその役割から駆動軸、従動軸の2つに分類されます。
1. 駆動軸
駆動源そのものに直結され、駆動源で発生される動力を回転として伝える軸です。駆動源がモーターであればモーターシャフト、エンジンであればクランクシャフトが駆動軸に該当します。
モーターシャフトに軸継手を介してボールネジを連結させ、回転運動を直線運動に変換させる直動機構の仕組みがありますが、このボールネジもまた駆動軸に該当します。
2. 従動軸
駆動軸で発生した動力を離れた場所の回転軸に移動させたい場合、ギヤ、プーリー、スプロケットなど動力伝達要素で伝達していきます。そのギヤやプーリーなどを固定するのが従動軸です。
従動軸はそれ単体では回転しませんが、駆動軸からの動力を離れた場所でも伝えることができる、という付加価値を持っています。
回転軸のその他情報
1. 回転軸の性能・コストを決めるポイント
回転軸は次のようなポイントで、性能・コストが変わってきます。これらの要素を考慮して、仕様を満たしつつ、コストを最小限にする回転軸を選定・設計するのが、設計者の腕の見せ所となります。
- 材質:回転軸に使われる材料。
- 公差:軸径のはめあい公差、軸の長さの寸法公差や、真直度・同軸度などの幾何公差。
- 追加工:キー溝加工やネジ加工など、回転体を固定するための加工。
- 表面処理:主に強度や耐食性の向上の目的で施される加工。
2. 回転軸でよく使われる材質
回転軸でよく使われる材質は「S45C」と「SUS304」の2つです。S45Cは鉄系の材質で、比較的安く、焼き入れで強度を上げることができるため、回転軸ではよく使われています。
SUS304はステンレス鋼の材料で、S45Cと比べて材料費は高いですが、錆びにくいという特徴があります。そのため、クリーンルームや食品工場といった環境でよく使われています。
3. 回転軸でよく使われる表面処理
回転軸では次の表面処理がよく使われています。
- 四三酸化鉄皮膜 (黒染め): コストを抑えつつ防錆効果を付与できる。
- 無電解ニッケルメッキ: 高い耐食性があり、メッキ後に熱処理を加えることで軸表面の硬度を上げることができる。
- 高周波焼き入れ: S45Cなど鉄鋼系材料の強度を大幅に上げることができる。
- 研磨:軸の表面粗さを小さくし、シールなどの摺動部品の取り付けを可能にする。