スチールパレット

スチールパレットとは

スチールパレット

スチールパレットとは、荷物を載せて輸送や保管に用いるスチール製の荷役台です。

パレットには木製、合成樹脂製、金属製、紙製などの種類があり、スチールパレットは金属製パレットの1つです。鋼鉄製で、様々な形状をしており、耐荷重が大きいです。一般的なパレットは通常耐荷重が約1tですが、それを超えるものも多くあります。

パレットのサイズは、国際標準化機構 (ISO) の規格に基づいて生産され、流通しています。日本での一般的なサイズは、JIS Z 0601では1,100×1,100×144mmと定められており、別名での呼称は「T11型パレット」、「イチイチパレット」などです。この他、1,200×800×145mm、1,000×1,000×140mmなどが多く流通しています。

スチールパレットの使用用途

パレットは荷物を積載し、輸送、保管、構内作業などに利用されます。荷役作業の負担を軽減し、生産性を向上させる役割があります。フォークリフト作業の前提となるものであり、ユニットロードシステム (物流機器を利用して荷扱いし、輸送・保管などを効率化する仕組みのこと) に欠かせない物流資材です。

業界別に見ると、酒類業界では、1,100×900mmのサイズが多く用いられます。ビールケースを6箱載せられ、別名の呼称はビールパレットです。医薬品業界では、サイズが1,100×1,100mmのパレットが使われ、多くはGMP (医薬品の製造管理及び品質管理の基準)を考慮して樹脂化が進んでいます。化学業界では、1,220×1,220mmのサイズが多く、ドラム缶4本が積載可能です。

スチールパレットの原理

スチールパレットは、他の素材のものよりも強度に優れ、耐荷重も大きいことが特徴です。

木製パレットは、長期にわたって使うと、割れやささくれが発生し強度や衛生面での問題が増えていきますが、スチールパレットは破損がないため長期間の使用が可能です。洗浄・滅菌しやすく衛生的で、食品や医療関係の物流で多く用いられます。樹脂製パレットは、既製サイズにない金型を作る際に高価な金型費がかかりますが、スチールパレットは、それに比べてコストが低く済み、自由自在のサイズを作成することが出来ます。

一方でスチールパレットは、コストが高いこと、パレット自体にかなりの重量があるため運用が難しいことなどから、一般的には多く使われていません。しかし近年では技術開発が進み、安価で軽量のスチールパレットが開発されています。

スチールパレットの種類

パレットの形状により分類すると、次のように分けられます。

1. 平パレット

平パレットは物流業界などで使用される一般的なパレットです。多くは表裏の両面が使えます。

2. メッシュパレット

金属製の網状の板を組み合わせて箱型にしたパレットです。使わないときは折りたたんで、狭いスペースに保管ができます。荷物の輸送や保管に使う場合が多く、段積みが可能です。

3. ロールボックスパレット

ロールボックスパレットは、カゴ台車とも呼ばれ、開口部以外の3面をスチールの格子や網状の枠で囲ったパレットです。周りが囲われているので、荷こぼれが防止でき、一度に多くの荷物を運べます。また、そのまま陳列棚としても使うことができます。

4. その他のパレット

ポストパレット、シートパレット、サイロパレット、タンクパレットなどの種類があります。

スチールパレットの特徴

1. 高強度

スチールパレットは、木製、樹脂製、紙製などと比べ、高強度です。したがって、破損などが少なく、長寿命です。重量物のパレットも容易に製造が可能です。

2. 不燃性

スチールパレットは不燃材であり、消防署の検査対策に適し、危険物倉庫で使う場合に最適です。難燃性樹脂のパレットに比べ、低価格です。

3. 含水量ゼロ

スチールパレットは、水分を含みません。木製パレットは、コンテナの中で水分が蒸発し、結露や錆の発生が懸念されます。

4. 異物混入なし

スチール製のため木くず、樹脂片、虫の付着、松やになどがなく、コンタミフリーパレットと言えます。木製パレットは、燻蒸・熱処理などが必要です。スチールパレットは、洗浄や滅菌が容易なので、食品業界にも適しています。

参考文献
http://eurorack.vn/jp/steel-pallet.html

業務用蓄電池

業務用蓄電池とは業務用蓄電池

業務用蓄電池 (産業用蓄電池) とは、その名の通り、一般家庭や住宅用以外の用途で用いられる蓄電池のことです。

コンビニエンスストアや事務所などの小型の店舗やビジネスの建物から、オフィスビルや商業施設などの大型の建物などに設置されています。業務用蓄電池は非常時のバックアップ用電源として利用されます。また、平常時の電力量平準化のために活用されることも多いです。

小規模の店舗などでは10kWhに満たない容量でも十分ですが、大型の施設や産業用では500kWh以上の容量を必要とする場合もあるため、業務用蓄電池は一般住宅用の蓄電池と比べて蓄電の容量が大きくなります。さらに、蓄電池を複数統合して用いることで、使用する電力の規模に合わせて蓄電の容量を追加することもできます。

業務用蓄電池の使用用途

業務用蓄電池は、自然災害などが原因で停電が発生した場合に、電源を確保するためのバックアップとしての役割を主な用途としています。この用途で用いられる蓄電池をUPS (Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置) と呼びます。

使用できる時間は使用用途や電池容量によって変わりますが、概ね1~10時間程度です。非常事態に備えた用途以外にも、蓄電池を使用することで電気の制限と管理が可能となるため、平常時での電気使用をコントロールできます。

太陽光発電などの自然エネルギーの活用と併用して連携することで、より省エネ効果を高まり、さらに高い効果を得ることも期待できます。

業務用蓄電池の原理

業務用蓄電池は平常時において、日中に使用量が発電量を上回る場合は、蓄電池と太陽光発電の両方から放電をすることでピークカットを行い、蓄電池残量が設定値を切ると蓄電池からの放電を停止します。使用量が発電量を下回る場合は、使用量を差し引いた余剰の発電量を蓄電池が満充電になるまで充電し、充電が完了すると発電を抑制して逆潮流が起こるのを防ぎます。

夜間は太陽光による発電ができないため、蓄電池から電力を供給します。停電時は平常時とは異なり、系統電源からの電力供給がないため、発電量と使用量の大小関係から発電システムと蓄電システムを稼働させて、蓄電と放電を行います。業務用蓄電池は太陽光発電などのシステムと併用することで、電力使用のコントロールをより効果的に発揮することが可能です。

業務用蓄電池の種類

業務用蓄電池として用いられる電池の種類は主に以下の4種類があります。

1. リチウムイオン電池

スマホやパソコンにも用いられており、現在最も普及している電池です。材料としてはCo, Mn, Niなどを含むリチウム含有金属酸化物とグラファイトなどの炭素材、有機溶剤及びリチウム塩から構成されます。

エネルギー密度が高く小型化ができること、寿命が10年程度と比較的長期間の耐用年数を有することが特長です。一方、金属酸化物やリチウム塩など使用する材料が高価であるため、価格が高くなることが欠点です。

2. 鉛蓄電池

充電して繰り返し使える二次電池として最も古い歴史がある電池です。材料としては鉛、酸化鉛、希硫酸から構成されます。

使用実績が多く信頼性が高いこと、安価であることが大きな特長です。欠点としては、エネルギー密度が小さく高重量化してしまうということが挙げられます。また、寿命は17年程度と非常に長いものの、使用回数 (充放電回数) が増えるほど性能が劣化してしまい、容量が低下するという課題もあります。

3. ニッケル水素電池

人工衛星などの宇宙開発用途で開発された電池です。現在はハイブリッドカー用などの車載用途で利用されています。代表的な材料としては水酸化ニッケル、水素を含んだ水素吸蔵合金、濃アルカリ水溶液から構成されます。

使用可能な温度範囲が広いことが特長ですが、寿命は5~7年と他の電池と比較すると短いことが欠点として挙げられます。また、水素吸蔵合金にレアアースが用いられており、原料調達面においても課題があります。

4. NAS電池

ナトリウム硫黄電池のことであり、日本ガイシが製造する電池です。材料としてナトリウム、硫黄、ファインセラミックを用います。寿命が15年程と長く、価格も低いことが特長で、大規模設備向けの大容量化にも対応できます。

また、リチウムイオン電池ほどではありませんがエネルギー密度が高いことも特長として挙げられます。欠点としては、運転時に高温(300℃)が必要となることです。

参考文献
https://www.eco-hatsu.com/battery/industryuse/
https://www2.panasonic.biz/ls/souchikuene/chikuden/
https://www.girasol-solar.jp/magazine/tikudenti/
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy04/pdf/20120705/sanko_shiryo1.pdf

 

真空断熱材

真空断熱材とは真空断熱材

真空断熱材とは、断熱材の内部を減圧して真空にした断熱材のことです。

具体的には、グラスウールなどの断熱性を持つ材料をラミネートフィルムで被覆し、さらに内部を減圧することで真空状態にしたものを指します。

真空断熱材の使用用途

真空断熱材は、熱を逃がさず内部温度を保持できるため、家庭用冷蔵庫や電気ポット、自動販売機、輸送用保冷ボックスなどに使用されています。2018年に省エネ法が改正されたことに伴い、各種機器の熱的な効率向上を目的として、各社において真空断熱材の導入が積極的に検討されています。

また、真空断熱材は断熱材部分を真空にしており、その厚さは極めて薄いもので狭い箇所にも配置できる点もメリットです。このため、サイズが小さい製品から大きな製品まで様々な製品に対応できます。

真空断熱材の原理

物体から物体に熱が伝わる熱伝導においては、熱を伝える媒質 (気体や液体、固体) が必要です。これらの物質が熱を持った時、媒質内部の分子が振動することによって、それを隣の分子へと伝播していきます。

熱の伝播しやすさを表すのが熱伝導率です。この熱伝導率が小さければ、熱は伝わりにくいということになります。つまり、媒質の熱伝導率が小さいと熱が伝わりにくく、断熱性が高いということです。一般的な断熱では、断熱効果を持つ材質として、グラスウールやポリスチレンなどが使用されています。これら材質自体の熱伝導率は比較的小さい値ですが、内部に空気を含有することから、空気による熱伝導も生じています。

真空断熱材においては、芯材として従来から使用されているグラスウールなどを使用し、これをラミネートフィルムで被覆したうえで内部の空気を抜いており、空気による熱伝導がほとんど生じません。したがって、真空断熱材は一般的なグラスウールを使用した断熱材よりも熱伝導が起こりにくく、断熱性が極めて高くなります。

ただし、真空断熱材のラミネートフィルムに穴が開くと、空気が内部に侵入するため、断熱材としての性能は急激に失われます。また、経年劣化により真空の破れが生じる可能性もあるため、長期使用する際には注意が必要です。

真空断熱材のその他情報

1. 真空断熱材における耐熱性および耐久性の向上

近年、地球温暖化に対する対策やエネルギー問題への対応に注目が集まる中、真空断熱材においても耐熱性や耐久性に優れた製品が生み出されています。例えば、内部をグラスウールからなる芯材とし、外包材としてステンレス箔を採用した構造の真空断熱材です。

ステンレス箔の耐熱性は300℃以上であることから、外包材として樹脂ラミネートフィルムを使用した従来の真空断熱材と比較すると、耐熱性能は大幅に向上しています。また、従来の真空断熱材においては、樹脂ラミネートフィルムがガスを僅かに透過するため、断熱部分となるグラスウール内部に侵入したガスの熱伝導により、断熱性能が低下するという課題がありました。

しかし、外包材をステンレス箔にすることで、ガス透過性も改善され真空断熱材の耐久性も大幅に向上しています。

2. 住宅用途での真空断熱材

住宅でも真空断熱材使用されています。例えば、内部をグラスウールからなる芯材とし、ラミネートフィルムで外包するとともに、その内部が真空の多孔質構造を有するものです。この真空断熱材は、厚さ数ミリ程度で数十倍の厚みのグラスウールと同等の断熱効果を実現できます。

このような優れた断熱性能は、多孔質の各孔部を大きな空間とすることで得られます。各孔部を大きくすればグラスウールよりなる部分の真空部分が増し、その分空気による熱伝導を抑えることが可能なためです。

そして、多孔質の各孔部を大きな空間とするために、芯材を加圧圧縮する手法がとられています。加圧圧縮すると、芯材を構成する繊維が層状に固定化され、その過程で繊維同士が点で接触する構造が形成され、芯材に大きな空間 (隙間) が形成されます。これにより、グラスウールよりなる部分の真空部分が増えるため、高い断熱性能が実現可能です。

なお、真空断熱材は、芯材をラミネートフィルム袋に入れて真空状態にして、開口端を熱圧着することで作製されています。この構造を応用し、1枚の真空断熱材をラミネートフィルムの熱圧着により複数のブロックに分け、それぞれのブロックごとに真空にした真空断熱材も開発されています。

参考文献
http://www.wa-con.co.jp/
https://www.afgc.co.jp/case/applied/vip-a.html
http://www.jpubb.com/press/13020/
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201003panasonic/index.html

真空フランジ

真空フランジとは

真空フランジ

真空フランジとは、真空装置に使用されるフランジです。

フランジは円形または正方形の板状部品であり、圧力容器に使用されます。容器の気密を保持しつつ、他の機器と接続したり、のぞき窓を取り付けたりするための部品です。その中でも真空フランジは、装置内部に真空環境を構築する際に使用されます。

外周にネジ穴や溝が設けられており、ボルトやナットを使用してフランジ同士を締結します。密封のために、ガスケットやパッキンによってシールを施されることが多いです。NWやKF、 JISなどの様々な規格が存在します。

真空フランジの使用用途

真空フランジは真空装置を必要とする様々な産業で広く使用されます。以下はその使用用途です。

1. 半導体産業

半導体産業では、真空環境がウエハー製造プロセスにおいて不可欠です。蒸着やエッチングなどのプロセスを真空下で実施することで、高品質の半導体デバイスを製造することが可能です。真空フランジによって真空チャンバーを確実に気密し、不純物の侵入を防止しつつ、ガスや反応物質の導入を確実に実施するために使用されます。

2. 光学装置産業

光学装置産業では、レンズや鏡などの光学部品コーティングプロセスに真空環境が用いられます。真空環境下でコーティングを実施することで、高精度かつ均一な膜厚の薄膜を塗布することができ、光学性能を向上させます。真空フランジはコーティング材料の蒸着過程で真空チャンバー内の気密を確保し、不純物の混入を防ぐために重要です。

3. 発電事業

発電のために使用される蒸気タービンは、蒸気を純水へ変換するために復水器と呼ばれる装置を使用します。復水器内部では蒸気を冷却して純水に戻すため、内部が真空状態となります。真空フランジは復水器の接続点において、真空状態を維持するために重要な部品です。

4. 材料研究・開発

研究開発分野では、新しい材料の合成や物性研究に真空装置が使用されます。特に物理・化学の実験では、真空下での反応や試料の分析を求められることが多く、外部の空気や不純物の侵入を防ぎながら実験を行うことが不可欠です。これにより、より高純度の試料を用いた実験が可能になり、科学的発見や技術革新を加速します。

真空フランジの原理

真空フランジは、真空システムにおける気密性を確保するために使用されます。2つ以上の配管やチューブなどを繋ぐために使用される機械的な接続部品です。内部の真空状態を維持しながら、外部からの不純物や空気の侵入を防ぐために重要な役割を果たします。

真空フランジは、フランジ間の接合部にガスケットやパッキンなどのシーリング材料を使用することで気密性を確保します。シーリング材料をフランジの接触面間に挟み込み、ボルトやナットによる締め付けることで圧縮する仕組みです。これにより、微細な隙間も塞がれ、外部からガス漏れが防止します。

真空フランジにはSUS316LやSUS304などのステンレス材料を使用することが多いです。インコネルなどのニッケル合金を使用することで、耐食性を向上させる場合もあります。気密のためのシーリング材には、テフロンパッキンや銅ガスケットが使用されます。

真空フランジの種類

真空フランジは規格に応じて、様々な種類が存在します。以下はその種類一例です。

1. KF・NWフランジ

KF (Klein Flansche) フランジまたはNW (Normschliff) フランジとも呼ばれ、中真空から高真空の範囲で広く使用されています。モジュラー設計であり、シーリング材料とクランプを使用して気密接続を実現します。取り付けと取り外しが容易で、頻繁に構成を変更する装置に最適です。

2. CFフランジ

CF (Conflat Flang) フランジは、超高真空用途向けに設計されており、銅またはステンレス鋼による金属ガスケットを使用して接続します。非常に高い気密性と真空レベルを達成することが可能で、熱サイクルや化学的腐食にも強いです。

3. ANSIフランジ

ANSI (American National Standards Institute) フランジはアメリカの規格であり、主に低真空用途で使用されます。一般的な配管系統にも使用され、ボルト・ナットでの接続が一般的です。

4. JISフランジ

JISは日本の産業標準を定める規格で、多くの工業製品や技術に対して規格を設定しています。真空フランジに関してもJIS規格があり、主に日本国内で製造される真空機器に適用されます。ボルト・ナットによる締結が一般的です。

参考文献
http://www.cosmo-science.co.jp/tec/02.html

球面軸受

球面軸受とは

球面軸受とは、内輪と外輪を球面で接触させた軸受です。

主として揺動運動、傾斜運動及び低速回転運動用に使用されます。滑り部の形状を球面にして、大きいラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に支えることができる自動調心形の軸受です。

大きく分けて、接触する滑り部の球面に給油が必要な給油式と不要な無給油式があります。耐摩耗性に優れ、産業機械や建設機械などの関節部分など、荷重が大きく運動する箇所に使用されています。

無給油式は、メンテナンスフリーで、食品機械などの油を嫌う分野や機械類の給油不可能な部分に最適です。

球面軸受の使用用途

給油式の球面軸受は摩耗に対する耐性に優れており、負荷できる荷重が大きいベアリングであるため、衝撃など大きな荷重が働く場合などに用いられます。具体的には、産業機械や建機などの用途です。

無給油式の球面軸受は、圧縮された荷重を支える際のクリープ変形が小さく、摩耗に対する耐性に優れています。また、給油が不要でメンテナンスの必要がないことが特徴です。

無給油式は、一方向のアキシャル荷重を支えるときに向いており、食品などをはじめ油を用いることが懸念される分野や、給油のメンテナンスが難しい箇所での使用に用いられます。

球面軸受の原理

1. 給油式軸受

給油式の球面軸受は、内外輪とも高炭素クロム軸受鋼を使用し、滑り面はりん酸塩皮膜処理をするのが一般的です。さらに、多くは二硫化モリブデンの乾燥皮膜で覆います。低トルクで作動し、耐摩耗性に優れた負荷容量の大きな軸受です。

内輪と外輪との滑り部は、球面で接触することと、内輪を組み込むのに必要な溝をもたないことが特徴であり、負荷できる荷重が大きく、衝撃や交番荷重が働く箇所に用いることができます。内輪と外輪が接触する滑り面に潤滑不良が起きると、発熱などの不具合が生じるため、給油式では、正しい間隔ごとに潤滑油を充填して、潤滑不良を起こさないようにする必要があります。

2. 無給油式軸受

無給油式の球面軸受の一例は、外輪のすべり面に銅合金で補強された特殊PTFEライナーを固着し、内輪のすべり面に硬質クロームメッキで加工した組み合わせです。滑り面自体に高い潤滑性を付加しています。

無給油でも、摩耗に対する耐性に優れた物質を固着する加工などを施すことで、大荷重の支持が可能です。

球面軸受のその他情報

1. 球面軸受の固定方法

球面軸受を使用する際、球面軸受を取り付けるハウジングと、球面軸受に差し込む軸には、使用用途に合わせた寸法公差が適用されます。また、ハウジングには十分な肉厚を持たせ、荷重による変形が無いように注意が必要です。

ハウジングへの取付時には、外輪のみを押し込むようにして、内輪に力がかからないようにします。軸も同様に内輪のみを押し込み、外輪に力がかからないようにすることも重要です。取付方法が悪い場合、軸受けの変形などにより、負荷が不均一になり、寿命が短くなったり、ガタツキが発生したりすることがあります。

球面軸受のハウジングと軸の寸法公差を決める際の使用条件は、内輪回転荷重と外輪回転荷重、普通荷重と重荷重の組み合わせで4通りあります。

無給油式の寸法公差
内輪回転荷重の場合、普通荷重での軸の公差はk6、重荷重ではm6が推奨されています。ハウジングはどちらも同じで、鋼製ではH7、軽合金ではJ7が推奨されます。

外輪回転荷重の場合、軸の寸法公差は普通荷重、重荷重ともにh6、ハウジングは普通荷重の場合、鋼製でK7、軽合金でM7となっており、重荷重では鋼製でM7、軽合金は規定されていません。

給油式の寸法公差
給油タイプでは寸法公差に若干違いがあるので、メーカーの技術資料を確認してから寸法公差を決める必要があります。

2. 球面軸受の使用例

球面軸受は幅広い範囲に使用されており、多く用いられているのは、大型機器です。軸カップリングの使い方では、2つの球面軸受を持ったカップリングで軸を連結します。これにより、2つの軸の偏心と偏角を吸収することができます。

パワーショベルなどの工事用重機での使用例は、各関節に使用される油圧シリンダロッドエンドです。その他、クレーンの連結部や、トラックのサスペンション部分などにも使用されており、振動や衝撃を伴う重荷重での用途が多くなっています。

参考文献
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl09.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5301.pdf
https://www.thk.com/?q=jp/node/6730
http://www.hephaist.co.jp/products/bearing_srj.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5301.pdf

球面座金

球面座金とは

球面座金とは、片側に平面と球面を持つ凹型と、片側に平面と凸状の球面を持つ凹凸の座金を2つを合わせて1組で用いる座金です。

球面座金は、斜めに締めこんでしまって外すことができなくなったタップやボルトの軸の角度を補正する際に用いられています。

ボルトが斜めにはまって角度が付いている場合、ボルトにかけた軸力の一部しか母材に伝わらないので、母材にかかる軸力が低下し、残りの力は隙間の摩擦力として消耗されてしまいます。

球面座金で補正できる角度は3度程度で、角度が大きすぎる場合には使用しても効果が期待できないので、できる限りボルトを締めておくことで力が消耗されてしまうことを改善できます。

球面座金の使用用途

球面座金は、斜めに角度が付いた状態で締めこんでしまったボルトやタップの軸に対して、角度を吸収して補正する目的で使用されています。

母材に球面座金の凹型の平面が接し、ボルトの上部に凸型の平面が接するように配置して使用します。この状態でボルトを締めることで、斜めに固定されたボルトの角度を軽減して、座面が浮かないようにボルトを締めることが出来ます。

ボルトから力が十分に伝わらないことで軸力が低下してしまうことに注意が必要です。

球面座金の原理

球面座金は、凹凸状の球面をそれぞれ片側に2つ1組で使用することで、ボルトと母材の間にできてしまった傾斜を軽減していき、斜めに締めてしまったボルトの締め込みを修正します。

ボルトは、傾きが大きくなると、母材と接する面積が小さくなり、陥没する原因になったり、母材に軸力が伝わらなくなってしまうことで滑ってしまう原因になったりします。

球面座金は、斜めに締めこんでしまって角度が付いたボルトと母材の間に接するように配置して、その状態でボルトを締めこむことで、ボルトを締めるにつれて、凸型の球面が凹型の球面の上で滑り込み、凸型の球面座金が、自然とボルト軸の角度と同じに補正されていき、座面が浮いてしまうことを防ぎます。

参考文献
https://rivi-manufacturing.com/how-to-spherical-surface-washer/
https://www.nabeya.co.jp/search.php?action=Detail&Key=9426

熱可塑性エラストマー

熱可塑性エラストマーとは

熱可塑性エラストマ

熱可塑性エラストマーとは、常温ではゴム特有の弾性を示す一方、高温では流動性を示す高分子材料です。

熱可塑性樹脂と同様に、加熱によって容易に成形できます。このため、熱可塑性エラストマーは、合成ゴムと熱可塑性樹脂の中間的な素材として扱われます。

エラストマーの弾性は高分子の主鎖同士が架橋し、元の形状に戻ろうとする力によって説明可能です。熱可塑性エラストマーは、成形性に優れるだけでなく、再利用可能な特性も持っており、さまざまな領域で利用されています。

熱可塑性エラストマーの使用用途

熱可塑性エラストマーは、弾性を持ち成形性にも優れるため、様々な用途で利用されています。スマホケースやキッチン用品などの生活用品だけでなく、自動車部品や電動工具など耐摩耗性や弾性が求められる製品に有用です。

その他、軽量でありながら簡便に着色可能な点も各種用途に多用される一因となっています。また、熱可塑性エラストマーには、天然ゴムや合成ゴム中に存在するアレルギー物質を含まないため、ゴム手袋にも使用されています。

熱可塑性エラストマーの原理

熱可塑性エラストマーの原理

図1. 熱可塑性エラストマーの原理

1. 弾性の原理

熱可塑性エラストマーは、高分子で構成されるため、長い主鎖を持っています。この長い分子は、ハードセグメントとソフトセグメントと呼ばれる部分に分かれ、それぞれ異なる特性を示します。

ハードセグメント部分は、分子間の架橋を形成し、網目構造を作るための水素結合を通じて相互作用します。この水素結合による分子間の架橋が、疑似架橋です。一方、ソフトセグメントは自由に動くことができるため、弾性を発揮します。

一般的な合成ゴムでは、架橋構造は分子間の共有結合によって形成されます。熱可塑性エラストマーと合成ゴムの違いは、架橋が水素結合ではなく共有結合である点です。

2. 熱可塑性の原理

熱可塑性エラストマーの架橋を形成する水素結合は非常に弱く、高温に加熱すると簡単に切れてしまいます。そのため、加熱すると架橋構造が解消され、弾性が失われて流動性を示すようになります。再度冷却すると、水素結合が再形成され、架橋が復活し弾性が回復します。

一方、合成ゴムでは共有結合による架橋部分は切ないので、加熱しても流動性は生じません。加熱が進むと共有結合が解離し始め、結合が切れることで熱分解が起こりますが、解離した共有結合は元に戻ることはなく、弾性は回復しません。

熱可塑性エラストマーの種類

熱可塑性エラストマーには、いくつか種類があります。スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、アミド系などが一般的に使用されています。

1. スチレン系

ハードセグメントがポリスチレン、ソフトセグメントがポリブタジエンからなります。天然ゴムに似た触感でありながら軽量な特徴から、身近な製品に広く使用されています。

2. オレフィン系 (TPO)

エチレン、プロピレン、二重結合部位を2つもつジエンを共重合させたポリマーです耐候性や耐熱性に優れるため自動車部品に使われます。

3. ウレタン系 (TPU)

ポリオールとイソシアネートとの反応によって形成されるポリマーです。ポリオール部分がソフトセグメント、ウレタン結合部分がハードセグメントとして機能します。高い伸張性と強度を持ち、繊維や自動車部品の一部に使用されます。

4. エステル系 (TPC)

ポリエステル系の高分子であり、結晶性のハードセグメントと非晶性のソフトセグメントを持つ直鎖状の構造を有しています。ハードセグメントの剛性によって、高い耐衝撃性を有しており、耐熱性、耐薬品性、耐老化性も優れています。

5. アミド系 (TPA)

ソフトセグメントとしてポリエステルやポリエーテルを、ハードセグメントとしてポリアミドを含んだ高分子材料です。耐摩耗性と耐衝撃性に優れており、低温でも柔軟性を保持します。さらに、耐候性や耐薬品性にも優れています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/83/9/83_9_269/_pdf
http://www.wakoseisakusyo.co.jp/landing_c/index.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl09/c0680.html

溶着機

溶着機とは溶着機

溶着機とは、樹脂や非鉄金属を接合する目的で使用される装置のことです。

2つの部材を融点を超えるまで加熱し、その後接合部を加圧・冷却することでつなげます。ウェルダーやシーラとも呼ばれることがあります。溶着機は、金属同士を接合する溶接とは異なり、比較的小規模な設備で運用できる点が特徴です。

溶接は高電圧を利用して局所的に金属を溶かし接合するため、防火対策を行いながら技術を持った職人が作業する必要があります。しかし、溶着機は無人でも使用できるため、工場などの製品生産ラインで幅広く活用されています。

樹脂や非鉄金属の接合において、効率的で安全な方法として重宝される装置です。

溶着機の使用用途

溶着機は加熱性能を活用し、溶着機は熱可塑性樹脂のフィルムやシートなどの薄物製品の接合や、各種樹脂部材の継ぎ目のカシメ (リベッティング) に使用されています。接合する材料や使用条件に応じて、電気ヒーター、超音波、振動による加熱などの加熱方式が存在します。しかし、どの加熱方式にも共通して、瞬時に加熱し、数秒以内に溶着が完了するという優れた加熱性能がある点が特徴です。

そのほか、薄物製品をロールによって展開して扱う生産ラインでは、溶着機が重要な役割を果たしています。原反 (原料ロール) を取り替えた際、前原反と次原反の端部を溶着機で接合することで、生産ラインを停止させることなく連続稼働が可能です。

溶着機の原理

溶着機は、2つの部材を融点を超えるまで加熱し、接合部を加圧・冷却することで結合させています。強固で精密な接合が実現可能です。

接合する材料や使用条件に応じて、電気ヒーター、超音波、振動などのさまざまな加熱方式が採用されます。しかし、どの加熱方式も共通して瞬時に加熱し、数秒以内に溶着が完了するという高い加熱性能を持っている点が特徴です。

電気ヒーター方式では、電気抵抗を利用して発熱させることで、接合部を加熱します。それに対して、超音波方式は高周波の振動を利用して接合部に熱を発生させ、部材を融着させます。振動方式では、機械的な振動を用いて摩擦熱を発生させ、接合部を加熱します。

溶着機の特徴

溶着機は加熱方式によって構造や溶着できる面積が異なり、用途に応じて機種を選択することが必要です。

1. 電気ヒーターを用いた熱溶着機

電気ヒーターとシールバー、シールバーの押しつけ機構により構成されています。接合したい部材をシールバーにより挟み込み、電気ヒーターに高電圧の負荷を加えることで瞬間的にシールバーを加熱します。

シールバーの断面積に応じて大きな面積の溶着が可能です。しかし、シールバーによる押さえ面と接合面が近くにある必要があるため、シートやフィルムなどの薄物製品の溶着に多く使用されます。

また、シールバーの押しつけ機構を自動化することにより、機械化された生産ラインにも導入可能です。

2. 超音波溶着機

ラグランジュ振動子などの高周波振動発生機とホーンと呼ばれる先端部材によって構成されており、発生した振動がホーンを介して増幅・伝導することにより対象物を高周波振動させます。高周波振動した対象物の接合面は分子レベルでの電位的な運動により加熱され、溶着されます。

熱溶着機とは異なり接合部のみが加熱されるため、対象物に与える熱的影響が小さくなるのが利点です。しかし、振動を増幅させて伝達するためホーン先端の断面積は大きくできません。大面積の溶着付は不向きです。

溶着機のその他情報

溶着機と併用される機械

溶着機は、カッティングマシン、プレス機、コンベヤーシステムの3種類の機械と併用されます。

1. カッティングマシン
溶着機と併用されることが多いのが、カッティングマシンです。溶着によって接合された部材を、所定の形状やサイズに切り抜くために使用されます。

溶着機とカッティングマシンを組み合わせることで、効率的に製品の加工が可能です。主に、フィルムやシート、テキスタイルなどの加工に用いられます。

2. プレス機
プレス機は、溶着機と併用して、部材を所定の形状に成形するために使用されます。溶着機で接合された部材を、プレス機で圧力をかけて成形することで、高い接合強度が得ることが可能です。自動車や家電製品の部品接合など、強度が求められる製品に適しています。

3. コンベヤーシステム
製品生産ラインにおいて、溶着機と併用されることが多いのが、コンベヤーシステムです。コンベヤーシステムは、部材を連続的に搬送する役割を果たし、溶着機による接合作業を効率的に行えます。また、コンベヤーシステムには自動化機能が搭載されていることが多く、無人での運用が可能です。

参考文献
https://caddi.jp/
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_1.html 

溶存酸素計

溶存酸素計とは

溶存酸素計とは、水中に溶け込んでいる酸素の量を測定する機器です。

ポータブルで簡単に持ち運びできるものから、溶存酸素を測定したい個所に設置して固定する設置型、またその信号をDCSなどの集中管理装置などに送信してリアルタイムで表示できるものまであります。

水中の酸素量を正確に測定するために必要な機器で、水質管理や水産業、環境調査などで使用されます。

溶存酸素計の使用用途

溶存酸素計は、排水処理施設などでの水の汚染の指標の表示に多く使われています。日本国内では多くの工場で採用されているのが、好気性処理と呼ばれる水の中の汚れを分解するときに酸素を消費する好気性生物を利用した排水処理です。

この方法はその名の通り酸素が必要なので、水の中から酸素がなくなると効果的な排水処理ができなくなります。そのため、溶存酸素計で常に水の中の溶存酸素濃度を測定しています。そのほか、食品業界では発酵食品などの発酵具合を測定する際に使用されています。

溶存酸素計の原理

溶存酸素計は、隔膜電極法や蛍光法などの方法で測定することができます。

1. 隔膜式溶存酸素計

隔膜式は、メンブレンと呼ばれる隔膜に電解液を入れてそこにセンサーを取り付けることにより、測定が可能になります。ただし、電解液の交換などが必要になるため、定期的なメンテナンスが必要です。

2. 蛍光式溶存酸素計

蛍光式は、下水処理場や排水処理場などでの計測に適しており、隔膜や電解液を使用しません。測定時に酸素を使用しないのも特徴で、流速のない環境であっても測定することができます。

また、蛍光式は屋外で使用する場合の防水性能などを備えたものも多く、実際の河川や排水処理場で投げ込んで使用する場合でも安心です。その他にもpH等も同時に測れるものがあり、多くの指標を同時に測定できます。

溶存酸素計の種類

溶存酸素計は定置型、携帯型、卓上型の3つに分類されます。

1. 設置型

設置型は、水中に設置して使用するよう設計されていて、おもに河川や工場排水等の水質監視などで使用されます。一般的に、水中に設置されてた検出器により溶存酸素濃度を測定し、そのデータを変換器へ伝送する仕組みです。

また、長期間測定を続けると、検出器の隔膜面に汚れが付着することで、検出感度が低下するため、設置型の機種の多くは、自動洗浄機構を有するタイプが多いです。

2. 携帯型

携帯型は軽く、コンパクトにできているため携帯性に優れていています。主に、水族館や養殖場、屋外での水質調査などに使用されています。比較的簡単な操作で、かつ測定時間が短いため、リアルタイムで計測可能です。

携帯型の多くは、防塵や防水等の機能が付いており、現場での計測に便利です。

3. 卓上型

卓上型は高精度のセンサーを使用していて、非常に正確な酸素濃度の測定が可能なため、研究機関や試験室等で使用されます。携帯型同様、コンパクトなタイプが多く、持ち運ぶことができます。

溶存酸素計のその他情報

溶存酸素計の校正

溶存酸素計は、定期的に校正を行う必要があり、以下のような方法があります。

低濃度の溶存酸素を正確に測定したい場合や、低濃度の数値が異常と感じる場合に、溶存酸素計のゼロ点を理論値に合わせるための校正方法として、ゼロ標準液 (JIS K 8061に規定された亜硫酸ナトリウム (無水) 約25gを水に溶かし、水を加え500mLに調整したもの) を使用したゼロ点校正を実施します。

また、水中の飽和溶存酸素分圧と大気中の酸素分圧はほぼ等しいことを利用する方法もあります。簡易的に大気中の酸素分圧を利用して行うスパン校正と、溶存酸素飽和水 (水500mL程度で10~20分エアレーションしたもの) を使用して行う飽和水校正です。

ただし、飽和水校正でも気圧の影響を受けるため測定水を基準にしている計器で測定し、その値に合わせこむマニュアル校正という方法もあります。なお、溶存酸素計の校正には、国家標準にトレースされている標準液がないため、校正証明書の発行はできません。

測温抵抗体

測温抵抗体とは

測温抵抗体

測温抵抗体とは、化学プラントなどでプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定する際に使用される機器のことです。

温度を測定する機器として熱電対も挙げられますが、測温抵抗体は熱電対よりも測定誤差が少なく、特に低温の方では精度が高いのが特徴です。そのため、低温を重視する場合や高温をそれほど測定しない場合によく使用されます。

また、保護管を使用すれば多種多様な流体に対して使用可能であるため、化学プラントにおける温度測定でも幅広く使用されています。

測温抵抗体の使用用途

測温抵抗体は、配管内やタンク内を流れていたり、保管されたりしているプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定するために使用されています。特に温度を表示し、かつ制御やコントロールする場合などに使用される場合が多いです。

例えば、熱交換器の入口と出口の冷却水の温度を測定し、熱交換量に応じて冷却水量を調整したり、オリフィス流量計の流量を測定する際に気体の温度を測定して、温度補正をかけたりする場合などが挙げられます。

測温抵抗体実験図

図1. 測温抵抗体を熱交換器に設置した実験例

測温抵抗体は温度の誤差が少なく高精度であるため、それほど温度が高くない場所のコントロールや温度が低い不凍液などの制御やコントロールにも使用可能です。

測温抵抗体の原理

測温抵抗体は金属の抵抗値が温度によって変化する特性を利用して、温度変化を測定しています。一般的に、金属は温度が上がると抵抗値が上昇するので、その特性を利用していますが、白金を使用するケースが多いです。

そのため、日本ではPt100と呼ばれる白金で製作された測温抵抗体が幅広く用いられています。また、工業プロセスで温度を制御やコントロールするには4-20mAの電流により制御するのが一般的なので、測温抵抗体の端子箱内に変換機を内蔵して、4-20mA出力を可能にした製品もあります。このような製品を使用すると、制御盤内で変換機が不要となるため、非常に便利です。

測温抵抗体はその等級も規定されており、JIS C1604では主に2種類の規格で定められています。高精度で正確な温度測定が可能な機器ですが、必要な精度は使用するプロセス流体 (液体、気体) によって異なるため検討が必要です。ただし、熱対応が遅いと、使用するプロセス流体 (液体、気体) の物性によってはうまく使えない場合もあるため、精密な制御やコントロールなどをする際は注意が必要です。

測温抵抗体の配線方法

測温抵抗体の配線方法には、2線式、3線式、4線式の3通りがあります。2線式は測温抵抗体の両端に1本ずつ配線したもので、最も簡単な方法ですが、配線の抵抗値がそのまま加算される点がデメリットです。配線の抵抗値をあらかじめ測定し、補正をかけておく必要があるため、実用的ではありません。

3線式は最も一般的な結線方法で、測温抵抗体の片端に2本、もう片端に1本配線します。3本の線の電気抵抗が等しい場合、配線の抵抗値を無視することができます。4線式は測温抵抗体の両端に2本配線します。高価ですが、配線の抵抗値を完全に無視することが可能です。

測温抵抗体のその他情報

測温抵抗体と熱電対の比較

測温抵抗体と熱電対は、両者とも温度を測定する機器ですが、温度測定範囲や測定精度に違いがあります。

1. 主な材質と測定温度範囲

測温抵抗体
「白金」「」「ニッケル」「白金・コバルト」があり、それぞれ温度測定範囲が異なりますが、最大600℃程度です。

熱電対
「白金・ロジウム合金」「ニッケル・クロム合金」「鉄」「銅」などが使用され、温度測定範囲が異なります。使用される材質と素材構成によって「B」「R」「K」などの呼び記号があります。B熱電対の過熱使用温度は1,700℃となっています。高温を測定する場合は熱電対が使用されます。

2. 測定精度

測温抵抗体
測温抵抗体規格

図2. 測温抵抗体JIS C1604規格の許容差

測温抵抗体の測定精度等級はAとBがあり、JIS規格の許容差を下表に示します。クラスA測温抵抗体の最大測定温度である450℃のときの許容差を比較すると、クラスAで±1.05 ℃、クラスBで±2.55 ℃となります。

熱電対
熱電対温度許容差

図3. 熱電対温度許容差

熱電対の測定精度等級はクラス1~3があり、各測定温度範囲で規定されています。熱電対 (K) が450℃の時、クラス1で許容差は±1.8℃、クラス2で±3.375℃、クラス3では450℃は規定されていません。許容差から、測温抵抗体は熱電対よりも測定精度が高いといえ、高精度であることが求められる測定に使用されます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/products/sokuon_sentei.html
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/faq/sokuon/01.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp