クリーンブース

クリーンブースとは

クリーンブースとは、簡易的な空間内を陽圧に保ち、外部からのゴミの侵入を防ぐ空間清浄化システムです。

厳格な管理が求められるクリーンルームとは異なり、クリーンブースは局所的、簡易的な空間清浄化環境が求められる場面で用いられます。

クリーンブースの使用用途

クリーンルームは空気中に存在する埃などをミクロ単位のレベルで除去すると同時に、温度や湿度なども一定の範囲でコントロールします。これらの性能はISOやJISで規格されており、極めて高度な空間清浄化システムです。

一方、クリーンブースは、広域な作業空間の空間清浄化度を管理する必要がなく、局所的に一定程度のクリーン環境が必要な場合に用いられます。例えば、半導体製造工場や液晶パネル製造工場、医薬品製造施設、化粧品製造施設、及び食品製造工場などで使用されます。

また、クリーンルーム内で更なる空間清浄化環境の改善が必要な場合に、クリーンブースが併用される場合があります。

クリーンブースの原理

クリーンブースの原理

図1. クリーンブースの原理

一般的なクリーンルームは、湿度や温度を制御可能にするための断熱パネルと空調、室圧設定を可能にする陽圧機器や差圧ダンパーなどのクリーン化機器を用いて空間清浄化環境を厳密に管理しています。

一方、一般的なクリーンブースでは、フレームなどで構成された小規模空間を塩ビ製のシートなどで覆うことにより外の空間と遮断し、クリーンブース内の天井に設置するファンフィルターユニット (英: FFU) によって清浄化されたクリーンエアーが送気されることで、クリーン環境を保ちます。クリーンブース内の圧力はFFUによって陽圧に保たれ、外部からのゴミ侵入を防ぎます。クリーンブースは設置するサイズに応じて、室内空間を陽圧にするためのFFU選定が最も重要になります。

クリーンブースの使い方

クリーンブースの使用方法として気を付けるべき点は以下の通りです。

クリーンブース内にゴミや埃、微生物を持ち込まない、発生させないような工夫が必須です。クリーンブースの性能だけに頼るのは危険であり、利用する際のルールや手順を予め決めておき、利用者自身の意識も向上させる必要があります。

FFUの掃除も重要です。特に吸込み口の掃除を怠ると、ブース内のクリーン度が低下するため、定期的に掃除をする手順を決めておく必要があります。

クリーンブースは簡易的なシステムであり、下部には隙間があります。クリーンブース内は陽圧に制御されていますが、虫などは侵入可能であり、普段からクリーンブース周辺の床は清潔に保っておく必要があります。

掃除の頻度や方法、フィルターの交換頻度などは、求めるクリーン度によっても変わってきます。使用環境の条件に応じて、どのような管理が必要かをあらかじめ考えておく必要があります。

クリーンブースの種類

1. フロア型と卓上型

フロア型と卓上型クリーンブース

図2. フロア型と卓上型クリーンブース

フロア型は床上に設置し、人が出入りする大型のクリーンブースです。大規模な作業を行う場合に使用されます。一般には入室する作業員はクリーンウェアを着用し、クリーンブース内に異物が侵入することを防ぐ必要があります。フロア型クリーンブースは工場などの製造現場で主に使用されています。

卓上型クリーンブースはテーブルの上に設置する小型のクリーンブースです。一般にはクリーンブース内には手のみを入れて作業を行うため、作業員はクリーンウェアを着用する必要がなく、気軽に利用できるのが特徴です。卓上型クリーンブースは、他のタイプのクリーンブースよりも小型でコンパクトなため、研究室や工場の限られたスペースでの使用に適しています。また、一般的に設置やメンテナンスが容易で、比較的低コストであるため、多くの企業や研究機関で使用されています。

2. 閉鎖型と開放型

開放型クリーンブース

図3. 開放型クリーンブース

密閉空間を作り出す閉鎖型のクリーンブースが主流ですが、開放型のタイプもあります。開放型クリーンブースは、対をなした送気装置間で常に清浄空気の気流を発生させ、この空間内で作業を行うタイプの装置です。閉鎖型クリーンブースと比べると持ち運びがしやすく、局所的な作業空間をクラス1レベルの高度なクリーン環境に保ちたい場合に使用されます。

3. 標準タイプとカスタムタイプ

クリーンブースメーカーは各社、標準的なサイズと仕様のクリーンブースを販売している一方で、ユーザーからのカスタマイズも受付けています。標準タイプはサイズが規定されているため、カスタムタイプと比べると安価に入手することができます。カスタムタイプは希望に応じたサイズで作製可能であったり、FFUの風速計を付けるなど、様々なオプションを付加可能です。

クリーンブースのその他情報

1. クリーンブース用のカーテン

クリーンブース用のカーテンには様々な特性を持ったものがあり、使用環境の条件に応じて選定します。

カーテンの機能としては、防炎、防虫、帯電防止、遮熱、遮光などが挙げられます。静電気が発生すると、ゴミや埃が付着しやすい環境となってしまうため、帯電防止機能をもったカーテンが有効です。

2. アルミフレーム製のクリーンブース

クリーンブースの中には、アルミフレームを使用したものもみられます。アルミフレームを使用するメリットしては、以下が挙げられます。

  • 軽量
    アルミはとても軽い金属であり、アルミの比重は約2.7、鉄の比重は約7.8です。アルミは鉄の約1/3の重さとなります。
  • 製造コストや時間の短縮ができる
    アルミフレームは多くの場合、表面はアルマイト処理がなされています。メッキや塗装などの工程を減らすことができ、コストや時間の削減に繋がります。
  • 設計の変更がしやすい
    アルミは軟らかい金属なので、他の金属と比較すると加工しやすい特徴があります。後から穴あけや切断を行うことも比較的容易です。

参考文献
http://www.acti-ve.co.jp/clean_booth/clean_booth_management.html
https://www.vinyten.co.jp/service/partition/clean-booth/

シリンダ

シリンダとは

シリンダ

シリンダとは、供給された圧力を推進力に増幅変換させる機器です。シリンダの圧力源に使用されているのは、空気や油です。シリンダは、パスカルの原理を利用した内部構造によって推進力を生みだしています。

シリンダによって増幅させた推力は、生産設備の駆動部で必要な直線の往復運動や回転の揺動運動に利用されています。自動車、半導体、食品工業などで利用されるのが、空圧を駆動源とした空圧シリンダ(エアシリンダ)です。

油圧を駆動源とした油圧シリンダは、建設機械、重機、プレス機器など、さまざまな分野で利用されています。

シリンダの使用用途

空圧シリンダは、自動車、半導体、食品工業などの生産工場で利用されることが多いです。空圧シリンダを使うことで、省力化や自動化を目的としたワークの移動など、容易でコンパクトに実現することが可能になります。このため、空圧シリンダはさまざまな自動化装置に採用され、組立や搬送などの動作で活用されています。

空圧シリンダで使用される圧力が0.5MPa程度である場合、直線の往復運動や回転の揺動運動など、人間の力に近い作業を容易に実現できます。一方で油圧シリンダは、空圧シリンダと比較すると、遥かに高い推力が得られるため、建設機器や重機などパワーが必要な場面で利用されています。

シリンダの原理

シリンダは、パスカルの原理を利用して推力を生み出しています。シリンダの側面に配置しているのが、空気や油が出入りする給排気口です。給排気口から供給された圧力は、パスカルの原理によってシリンダ内部のピストンとロッドを前後に動かし、推力を発生させます。

シリンダの給排気口に供給される圧力が空圧の場合、推力は小~中レベルです。油圧の場合は、中~大レベルの推力が得られます。シリンダの構造として主になるのが、シリンダチューブ、ピストンロッド、前後カバーです。

注射器で例えると、外側の筒部分がシリンダチューブ、内部を往復する部分がピストンロッドです。そして筒の蓋となる部分が前後カバーとなります。またエアシリンダの場合には、カバー部にクッションが使用されており、駆動時の衝撃を吸収しています。

また、シリンダのピストン外周に使用されているのがパッキンです。パッキンは、シリンダ側とロッド側の密閉性を維持しながら、正確な動きを確保する役割をしています。シリンダの摺動性が悪くなる原因となるのが、パッキンの損傷です。そのためパッキンは、メンテナンス部品として扱われていることが多いです。

シリンダの種類

シリンダ内部空間の名称は、シリンダ側(あるいはチューブ側)、ロッド側と呼びます。ロッド側は、ピストンを駆動させるロッドが空間内部にある方です。そして空間内に何も無いもう一方がシリンダ側となります。

1. 複動シリンダ

複動シリンダは、シリンダ側とロッド側のどちらにも流体(エアまたは油圧が一般的)を満たし圧力をかけることで、伸長および縮小動作を自在に行う方式です。圧力をかける給排気口が2つあり、それぞれの給排気口で給気と排気を入れ替えることによって、ピストンのロッドが往復運動します。

2. 単動シリンダ

単動シリンダは、片側のみ流体による圧力変動で駆動させる方式です。圧力をかける給排気口が1つあり、この給排気口に圧力をかけるとピストンのロッドが動き、給排気口から圧力を排気するとロッドが戻ります。

シリンダの選び方

シリンダを選ぶときには、ストロークを考慮する必要があります。シリンダのストロークとは、シリンダが伸長および伸縮する距離のことです。

シリンダが全伸長および全縮小した位置のことを、シリンダのストロークエンドと言います。すなわちストロークエンドとは、それ以上ピストンを動かすことができなくなる位置のことです。

ストロークの最大距離は、シリンダチューブおよびロッドの長さによって決まります。しかし、再現なく長くできる訳ではありません。長さに対して直径が小さい場合、加工が難しくなるからです。さらに長尺である場合には、シリンダ内径とピストン外径の真円度を維持するのが難しくなります。真円度が悪いと気密性が低下し、シリンダとして正確に動かせなくなってしまいます。

さらに、ストロークに対して直径が小さい場合には、伸長時に高負荷がかかるとシリンダが座屈する恐れがあるのが問題です。このため、目的に合わせたストロークおよび直径を選定する必要があります。

参考文献
http://www.blackhawk.co.jp/pdfs/HAYDRAULIC_TEXT-25P.pdf
https://www.konan-em.com/sanki_data/products/2224.pdf
http://kousyoudesignco.dip.jp/air5.html
http://ca01.smcworld.com/catalog/BEST-technical-data/pdf/2-m27-49.pdf

形状解析レーザー顕微鏡

形状解析レーザー顕微鏡とは

形状解析レーザー顕微鏡 (英: 3D laser scanning confocal microscope) とは、レーザー光を用いて、物体の表面形状を測定できる顕微鏡です。

同様の機能を持ったものに、カンチレバーのような接触式のプローブを搭載した顕微鏡もありますが、表面に触れるため試料を傷つけたり、破損したりする恐れがあります。一方、形状解析レーザー顕微鏡は光の反射を利用するので、非接触での検査が可能です。

光学系は一般的な共焦点レーザー顕微鏡と全く同じですが、3次元の情報を得るために、高速のMEMSスキャナーやレゾナントスキャナーを採用することで、スキャン時間を短縮する製品が多く販売されています。

形状解析レーザー顕微鏡の使用用途

形状解析レーザー顕微鏡は、様々な製品の検査や問題点の探索などに用いられます。特に半導体部品やプリント基板は、部品自体が非常に小さく、精緻な表面構造をもっているため、非接触・非破壊での検査が可能な形状解析レーザー顕微鏡を使用する場合が多いです。

問題のない製品をリファレンスとして用いて、検査品の画像と重ね合わせることで、問題箇所の迅速な発見ができます。また、非接触であるため柔らかい試料にも対応可能で、特殊な前処理なども不要なことから食品などの検査にも使用されます。

形状解析レーザー顕微鏡の原理

形状解析レーザー顕微鏡は、レーザーを照射してその反射光を検出することによって、表面の形状情報を取得します。

1. 2次元形状

光の強度は距離の二乗で減衰するので、反射光の強度をモニターすれば、表面までの距離がわかります。このとき、非焦点からの光が挿入すると、反射光の増減が平均化されて感度が落ちてしまいます。

これを防ぐために、形状解析レーザー顕微鏡では、共役する焦点面にピンホールを配置した共焦点光学系を採用し、非焦点面からの余分な光をカットします。こうして正確に得られる表面までの距離情報を、レーザーのXY方向スキャンにより、2次元情報として得ることが可能です。

2. 3次元形状

さらに対物レンズをZ方向にスキャンすれば、立体的な3次元形状解析を行うことができます。平面方向の空間分解能は、一般的な光学顕微鏡と同様に、アッベの法則によりレーザーの波長に依存します。

そのため、試料に問題が無ければ、より波長の短い405nmなどの近紫外レーザーを用いると、高分解能の測定が可能です。

形状解析レーザー顕微鏡のその他情報

1. レーザー顕微鏡による測定の手順

顕微鏡には、主に光学顕微鏡、電子顕微鏡走査型プローブ顕微鏡の3種類があります。レーザー顕微鏡は、光学顕微鏡の中の1つです。

レーザー顕微鏡のレーザー照射から画像表示までの手順は、次の6ステップになります。

  1. 光源はレーザーを利用
  2. 対物レンズを通過したレーザーが測定対象を走査
  3. 測定対象からの反射光を、もう一度、対物レンズに入射
  4. ハーフミラーで反射光の経路を検出器に向けて変更
  5. 結像位置に設けられたピンホールで散乱光を排除
  6. 検出器に入射したレーザーをアンプ等を使用した画像処理により、3次元画像として表示

2. レーザー顕微鏡による表面粗さ

レーザー顕微鏡における表面の粗さは、部品加工面の凸凹状態を表す指標です。表面粗さは、ハイト (高さ) やディープ (深さ) 、ディスタンス (間隔) が違う山および谷が連続する周期的な形状を指します。

表面粗さによって、手触りや質感が変化しますが、表面粗さの大きい表面ほど触るとざらざらし、光の反射も減少します。逆に、表面粗さが小さいものは表面がなめらかで、ミラーの様に激しく光を反射します。

現代では製品の質感や手触り等が重要視されており、外観の品質管理上における粗さは重要な指標です。表面粗さを示す指標として、平均値を使った算術的な平均の粗さ (Ra) 、山と谷の合計を使った最大高さ (Rz) 等が挙げられます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/57/8/57_8_559/_pdf/-char/ja
https://www.olympus-ims.com/ja/metrology/ols4500/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/laser/site/
https://www.keyence.co.jp/products/microscope/laser-microscope/vk-x100_x200/
https://optipedia.info/app/lsm/microscopy-maker/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/laser/difference/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/roughness/surface/

赤外顕微鏡

赤外顕微鏡とは

赤外顕微鏡とは、赤外線を用いて微少部を分析する顕微赤外分光法を用いた光学顕微鏡の一種です。

光源に波長の長い赤外線を使用するため、回折限界によって空間分解能は制限されますが、分光解析を行うことができます。現在販売されている赤外顕微鏡は、フーリエ変換赤外分光法 (FTIR) や全反射法など一般的な赤外分光器の機能を兼ね備えたものも多いです。

赤外顕微鏡の使用用途

赤外顕微鏡は、顕微的な微少試料を測定できるため、故障解析や材料科学の研究分野で使用されています。また、赤外線の吸収率の違いなどを利用して固体中の異物混入を検査したり、欠陥品の検査でも有効です。

その他、半導体の厚さを測定する方法としても用いられます。半導体は透過域が赤外領域にあることに加え、屈折率が高いのが特徴です。可視光ではなく赤外光を用いた光学測定が必要となり、赤外光は屈折率の高さに影響を受けるため、精度が下がるというデメリットがあります。

しかし、測定物の表面の凹凸の影響を受けにくいというメリットもあります。半導体の厚さを赤外顕微鏡で測定する方法として、被測定物の表裏面で反射した光の光路差から厚みを求める干渉法があります。

赤外顕微鏡の原理

赤外顕微鏡の原理は、一般の光学顕微鏡と同じです。赤外顕微鏡は、画像を撮影するための顕微鏡機能とスペクトル解析を行うための分光器としての機能を合わせもっています。

具体的には、可視光で試料を拡大観察して測定部分を決め、次に赤外光に切り替えて測定します。

赤外顕微鏡の種類

赤外顕微鏡の種類として、赤外分光器と赤外分光器の機能を兼ね備えたフーリエ変換型が挙げられます。

1. 赤外分光器

赤外分光器は、試料に赤外線を照射し、透過 (あるいは反射) 光を分光することでスペクトルを得て、試料の特性を知る赤外顕微鏡です。光学顕微鏡と同様に、光源、ミラー、レンズ、検出器によって構成されています。

赤外顕微鏡では、一般的な屈折を利用したレンズは用いられません。反射望遠鏡などで使用されるカセグレン光学系という光の反射を利用した対物レンズが用いられます。

光学系を用いた場合、空間分解能は光源の波長とほぼ同じで、数マイクロメートルから数十マイクロメートルに制限されます。赤外顕微鏡で用いてFTIRイメージングを行う際の赤外光は、通常2.5~25マイクロメートルです。

この波長帯は、分子の振動や回転によって変調するため、波長をスキャンした際に物質固有のスペクトルを得ることができます。これをFTIRと同様にフーリエ解析することで、顕微鏡で取得した2次元画像に重ね合わせたマッピングが可能です。

2. フーリエ変換型 (FT-IR) 

フーリエ変換型 (FT-IR) は、赤外線を照射するのではなく、連続光を試料に照射して、試料の特性を知る赤外顕微鏡です。干渉計を用いて全波長を同時に検出後、干渉パターンをフーリエ変換し、分子構造に応じた吸収スペクトルを取得します。

フーリエ変換型のメリットは主に次の4つです。

  • 多波長同時検出が可能。
  • スリットを用いないため、S/Nが高い。
  • 移動鏡の移動距離を延ばすことで波長分解能を高められる。
  • 光源、窓板などを交換することで遠赤外から可視まで測定波長域を広げられる。

一般的なフーリエ変換型には、DTGS (重水素化硫酸トリグリシン) とMCT (水銀カドミウムテルル化合物) の2種があります。

DTGSは、応答速度が遅くシグナルノイズ比が低く、常温で使用できる焦電検出器です。検出器へのIR入射光が少ない場合には、感度の良い半導体型のMCT検出器が適しています。ただし、MCT検出器は液体窒素で冷却する必要があります。

赤外顕微鏡のその他情報

2次元アレイ検出器による測定

2次元アレイ検出器による測定が可能な高性能な赤外顕微鏡は、発熱量が大きいため注意が必要です。使用する際には液体窒素での冷却が必要になります。

冷却を怠ると、熱により素子がダメージを受け部分的に測定不能にる可能性が高く、液体窒素量を常に管理する必要があります。また、一般的であるMCT検出器でも液体窒素冷却が必要です。

液体窒素を使用せずに測定ができる赤外顕微鏡もあります。測定可能な厚みや精度は、液体窒素使用時と不使用時では異なります。

参考文献
http://astro-dic.jp/cassegrain-focus/
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2013/201302minifile.pdf
http://www.jsir.org/wp/wp-content/uploads/2014/10/1995.12VOL.5NO.2_7.pdf
https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/ftir/ftir2.html
https://www.an.shimadzu.co.jp/ftir/semicustom/ftir-05.htm
https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/MSD/brochures/BR-nicolet%20in10-in10-mx-jp.pdf
https://web-material3.yokogawa.com/rd-tr-r04402-003.jp.pdf
https://www.hongo-m.co.jp/2014/01/25/

紫外LED

紫外LEDとは

紫外LED

紫外LEDとは、紫外線を発光するLEDです。

LEDは「light-emitting diode」の略で、発光するダイオードを指します。紫外線は紫色よりも波長が短い光です。英語ではUltravioletと呼ばれ、一部を取ってUVと略称されます。

長時間紫外線を浴び続けると日焼けや皮膚がんの原因となり人体に有害ですが、除菌効果などの有用な特徴もあります。紫外線は波長領域によってUV-A (320~380nm)、UV-B (280~320nm)、 UV-C (200~280nm)の3つに分類されます。

紫外LEDの使用用途

紫外LEDは基本的に工業用途で使用されますが、紫外線LEDペンライトなども販売されています。工業分野ではさまざまな用途に使用されます。

具体的な使用例は、以下の通りです。

  • アトピー治療
  • 光増感剤を用いたがんの光線力学治療(PDT)
  • 冷蔵庫やエアコンのカビ防止
  • 浄水器などの滅菌
  • 接着剤や塗料の乾燥設備
  • 補修用樹脂の硬化用

医療分野では、紫外光による免疫抑制作用などを利用されています。産業用としては、紫外線硬化樹脂の硬化に使用されます。紫外線硬化樹脂は紫外線によって硬化する樹脂であり、補修や印刷に使用されます。この樹脂は紫外LEDによって硬化させることが可能です。

紫外LEDの原理

LEDはn型・p型半導体の接合部における電子とホールの相互作用を利用して発光します。PN接合した半導体に順方向に電場を印加すると、伝導帯の電子が価電子帯に遷移し、ホールと対消滅する際にバンドギャップに応じた波長の光を放出します。

バンドギャップは半導体を構成する物質によって異なるため、組成を変えれば波長のチューニングが可能です。紫外LEDの多くは窒化アルミニウムガリウムを材料とした半導体で製作されます。

紫外LEDのその他情報

1. 深紫外線LED

近年、水銀ランプに代わる光源として深紫外線LEDが注目されています。深紫外線は、100~280nmの短波長を有する紫外線です。紫外線の中でも最もエネルギーが高く、生体に対する強い破壊力を持ちます。

深紫外線LEDはその破壊力を活かして、水や空気の浄化などの環境領域で使用されます。また、医療分野ではウイルスの院内感染防止に寄与します。産業用途では印刷やコーティングなどの領域で活用されています。

深紫外LEDは環境負荷が少なく省エネルギーかつ10,000時間以上の長寿命である点が特徴です。ただし、人体に悪影響を及ぼす危険性があるため、防護メガネなどによって深紫外線光を直接目に入れない工夫が必要です。

2. 紫外LEDの市場

2020年以降、消費者の殺菌に対する意識が大幅に高まったことから紫外線LEDの需要が急激に伸びています。

紫外LEDの市場は2019年から2024年において、複合年間成長率が60%に達すると予測されます。紫外線殺菌機能と組み合わせた衛生製品などが紫外線LED市場の需要を牽引しているのが特徴です。

今後ますます人々は衛生面を意識するようになることから、市場は拡大していくものと思われます。また、紫外線LEDの価格はその性能により数十円から数千円程度まで幅広くあります。波長が短く、出力が大きいほど高価です。ただし、今後市場が拡大して量産化技術が進めば、価格は更に安価になっていくと見込みです。

参考:Chong Wei Gong Zuo Shi

3. 紫外LEDの開発状況

紫外線の発生源は水銀やメタルハライドなどのランプが一般的でした。ただし、ランプは寿命が短い上に光源が安定するまで時間がかかるというデメリットがあり、LEDのへの置き換えニーズが高い領域でした。

近年は、窒化アルミニウムガリウムを使用したLEDが普及しつつあります。紫外LEDは高輝度にすることが難しく、出力が低いという課題がありました。しかしながら、昨今の技術的進歩によって特に高出力化が難しかったUV-Cでも出力を確保することが可能となっています。また、変換効率の改善だけでなく光の取り出し効率の向上も進められています。

以前までは放射される光が基盤に吸収され、損失するという構造上の問題がありました。昨今では、基板表面にナノテクノロジーを用いた表面加工などを行うことによって、こうした問題も改善しています。

参考文献
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.4978855
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/201203/100435.html
https://www.nikkiso.co.jp/products/duv-led/about.html
https://www.chong-wei.com/premium-report-blog/uvc-led2019-2024cagr60
https://jp.rs-online.com/web/c/displays-optoelectronics/leds-led-accessories/uv-leds/
https://leveliqq.co.jp/

X線顕微鏡

X線顕微鏡とはX線顕微鏡

X線顕微鏡とは、X線を光源として対象物の構造を観察できる顕微鏡です。

物質にX線を照射すると様々な信号が得られますが、X線顕微鏡では主に透過 (吸収) X線と、蛍光X線を用いて観察します。X線は透過性が高く、物質を透過する際に、内部の構造や厚み、組成に固有の減衰をしていく反応を利用することによって、コントラストのついた画像を取得できます。

また、試料を回転させながら連続的に取得した画像を3D構成すると、断層像 (いわゆるCT) を取得可能です。一般に電磁波を用いる顕微鏡において、空間分解能はその波長に依存します。X線は可視光よりも100倍から10,000倍波長が短いので、精細な画像を取得することができます。

X線顕微鏡の使用用途

X線顕微鏡は、主に工業分野の研究開発や、製造現場の検査において使われます。X線を用いれば非接触・非破壊の検査ができるため、部品の欠陥検査や、特性検査に使用される場合が多いです。また、岩石などの構造評価を行い、新規の原材料としての特性評価を行うためのパラメータを取得することもできます。

半導体製造分野では、超微細加工を施した製品の特性評価を行うために使用される機会も増えてきました。水分を多く含む生体試料を観察する際は、水の吸収が低いX線の波長領域を使用することで、コントラストの高い画像を取得できます。

X線顕微鏡の原理

X線顕微鏡は試料にX線の照射し、物質から得られる透過 (吸収) X線や、蛍光X線などの信号を利用して像を得たり、成分分析など行ったりします。使用されるX線の波長は、1~10 nmの軟X線と呼ばれるものである場合が多いです。特に2.3~4.3nmの領域は、水の吸収が極端に低く「水の窓」と呼ばれ、生体試料の観察などに用いられます。

X線顕微鏡には、X線の透過率をコントラストとして画像取得を行うものと、X線照射によって発生する蛍光X線を検出するものがあります。蛍光X線は、X線照射によって物質中の内殻電子が励起されることで生じたホールに、外殻の電子が緩和する際に内殻と外殻のエネルギー差に対応したX線が放射される現象で得られる信号です。

蛍光X線は、原子により固有の波長を持っているため、元素分析などにも応用できます。また、X線顕微鏡は、光学系も光学素子の有無によって2種類に大別されます。光学素子を用いないX線顕微鏡では、投影拡大法と密着法という方法によって観察します。

X線像波レンズを使って拡大することができないため、試料と撮像面を物理的に離すことによって拡大投影されます。光学素子を用いた結像法は、光の解説を用いたゾーンプレートを用いる方法や、全反射や多層膜反射を利用したミラーを用いて実現されます。

X線顕微鏡

1. X線顕微鏡と電子顕微鏡の違い

X線顕微鏡がX線を光源とするのに対し、電子顕微鏡は電子線を試料に当てて像を拡大します。電子線は、電子の速い流れのことです。原子は陽子と中性子でできた原子核と、その周りを回る電子からできています。陽子や中性子、電子に加速器という装置で非常に速いスピードに加速すると、陽子線や中性子線、電子線といった放射線になります。

電子線はX線と異なり粒子線であるため、浸透力に限界があります。電子線の浸透力は加速電圧によって決まり、加速電圧が大きいほどより深くまで電子が到達し、被照射物の密度が小さいほど深くまで浸透します。

透過型電子顕微鏡 (TEM)
薄膜状にした試料に電子線を当て、試料を透過した電子線を電子レンズを通し、電子線によって光る蛍光板に拡大した像を結ばせます。電子レンズは、電界や磁界によって電子線を曲げて、像を結ばせる働きをします。

走査型電子顕微鏡 (SEM)
真空中で電子線を細く絞り、試料の表面を走査するように照射し、試料から放出される二次電子や反射電子を検出します。二次電子とは、照射した電子線が試料内の別の電子をたたき出したものですあり、反射電子とは、照射した電子が試料の表面で反射されたものです。

走査電子顕微鏡にX線検出器を取り付けると、試料中に含まれる元素の種類や量を調べるX線分析装置としても活用することができます。 

2. 走査型X線顕微鏡

X線顕微鏡の一種で、硬X線をプローブとする顕微鏡です。硬X線は0.1nm前後と波長が短く、原理的に高い分解能が可能です。また、物質との相互作用は、透過 (吸収) ・屈折・反射のほか、光電子、蛍光X線、弾性散乱、非弾性散乱、磁気吸収・散乱など多岐にわたります。

さらに、高い透過性を持つため、非破壊的な観察も可能であり、大気中での測定にも使用されています。走査型X線顕微鏡は、集光X線、試料を走査するためのステージ、検出器からなり、試料を走査しながら、X線分析 (透過X線、蛍光X線、散乱X線など) を行い、様々な情報を可視化します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/38/1/38_1_3/_pdf
https://www.toray-research.co.jp/technical-info/analysis/form/for_008.html
https://www.iwasaki.co.jp/optics/chishiki/eb/07.html
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/em/principle/

http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/matsuyama/research.html
https://www.jeol.co.jp/science/em.html 

赤外LED

赤外LEDとは

赤外LED

赤外LEDとは、赤外線を発光することができるLEDです。

IR-LEDやIr-LEDとも呼ばれています。IRとは「Infra-Red」の略で、赤色よりも波長が長い光線を指しています。LEDは「light-emitting diode」の略で、電圧を印可すると発光するダイオードです。したがって赤外LEDは、波長が700~1,500nm程度の近赤外光を発することが可能なLEDです。

赤外線は非常に透過性が高く、障害物などの影響を受けにくいという性質があります。人間の目にも見えないため、信号の送受信や各種センサー光源などに使われることが多い光です。赤外光の発生源にはレーザーなどもありますが、LEDは大量生産が可能な点が特徴です。長寿命かつ衝撃にも強く、価格も安いというメリットがあります。

赤外LEDの使用用途

赤外LEDは日常生活を含むあらゆる場面で使用されます。以下は赤外LEDの使用用途です。

  • テレビやエアコンの操作用リモコン
  • 防犯カメラの光源
  • LiDARやTOFカメラの光源
  • 試料中の水分測定
  • 暗視カメラの光源
  • ゴルフの測距計
  • スマートフォンや携帯電話の通信用

日常生活で最も身近な製品は、テレビやエアコンなどのリモコンです。人に知覚されず投射可能であり、人体への悪影響がないことから日用品へも応用されています。

また、赤外線は透過率が高く、障害物の影響を受けにくいことから測定光として用いられることも多くあります。LiDARは「Lighit Detection And Ranging」の略であり、赤外LEDを用いた測距センシング方式を指します。自動車の自動運転などに応用するために開発されています。

赤外LEDの原理

LEDの発光原理は波長によらず共通しており、半導体のp-n接合によるものです。p型半導体には電場をかけると正孔 (ホール) が移動し、一方n型は電子の移動が起こります。エネルギー的にはn型半導体に存在している電子のほうが高く、p型半導体のホールが存在するエネルギーバンドとギャップが生じています。

ここに電場を加えて電子やホールに摂動を与えると、n型のエネルギーバンドからp型のエネルギーバンドへ電子の遷移が起こります。結果として電子とホールが衝突し、エネルギーギャップに対応した光と熱を生じて消滅します。エネルギーバンドのギャップは半導体の組成によって異なるため、素材を組み合わせれば発光波長を調整可能です。

近赤外帯の波長を出力するには、ヒ化アルミニウムガリウム (AlGaAs) がよく用いられます。一般に、赤外LEDは可視光領域のLEDに比べて発光効率が悪いという課題もあります。

赤外LEDのその他情報

1. 赤外LEDライト

赤外LEDを使用したライトが市販されています。さまざまな種類が販売されますが、いずれもナイトスコープ用として使用されるものです。

投光器タイプは、夜間でも使用する屋外施設の照明に用いられます。赤外LEDを複数個使用するタイプが多く、高出力タイプを20個以上搭載する製品も販売されています。

赤外LEDによる懐中電灯も販売されています。赤外LEDの特徴である暗所での透過性を最大限に活かすことが可能です。40個以上の赤外LEDを使用した製品がありますが、重量は軽量です。点灯個数を切り替える機能がある製品も販売されています。

小型暗視ライトも販売されています。撮影に使用することが想定されるため、光ムラが無いように一灯だけ高出力のものを搭載している場合が多いです。単三乾電池1本で動作し、最大15mの距離を照射できる性能です。本体重量は60gにも満たない携帯性に優れたタイプです。

2. 赤外LEDテープ

暗視カメラの補助照明用として赤外LEDテープが販売されています。テープに一定間隔で赤外LEDを付けて点灯させる製品で、反対側が粘着面となっており簡単に貼り付けることが可能です。狭い場所でも使えるよう3mm以下の細さになっているものなど多種多様なタイプが販売されています。

参考文献
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_sa/infrared_LED.html
http://www.optocode.co.jp/level4/SW/HTML/SW2_2.html
https://www.akiba-garage.com/shopdetail/000000004045/
https://www.indoorcorgielec.com/resources/raspberry-pi/python-pigpio-infrared/

CMOSセンサー

CMOSセンサーとはcmosセンサー

CMOSセンサーは、デジタルカメラなどの撮影機器に用いられるイメージセンサーです。センサー面上には多数の受光素子が配置されていて、個々の受光素子で受けた光は電荷に変換されますが、その電荷はCMOSで構成した増幅回路を経て光の強さに応じた電圧もしくは電流として取り出されます。

かつてはCCDセンサーがイメージセンサーの主流として採用されてきました。CCDセンサーは電荷をCCDで転送して、フローティング・ディヒュージョン・アンプ(FDA)を介して電圧に変換する構造が特徴です。

CCDセンサーは感度、S/N比、暗電流の少なさの面でCMOSセンサーより有利ですが、電源構成が複雑になること、スミアの発生が避けられないこと、製造プロセスが特殊で一般的なCMOS LSIの生産設備が使えないことなどの面で不利です。最近では、CMOSセンサーにおける暗電流の影響を軽減する手法やS/N比の改善方法が進化した為、CMOSセンサーがイメージセンサーの主力となりました。

CMOSセンサーの使用用途

以前は安価に製造できることから、スマートフォンやタブレットに搭載されるカメラにはCMOSセンサーが採用されてきました。一方、高画質が要求される一眼レフカメラやビデオカメラではノイズが少ないCCDセンサーが主に使われていました。

しかしながら、CCDセンサーのノイズ除去の手段が進化すると、CCDセンサーで問題となっていたスミアやブルーミングが発生しないことから、徐々にCCDセンサーからCMOSセンサーへの置き換わりが進み、今ではあらゆる撮影装置の撮像素子としてCMOSセンサーが採用されています。

CMOSセンサーの原理

イメージセンサーは表面に多数配置された受光素子が光を受けたときに発生する電荷を、蓄積・転送し、電圧もしくは電流に変換して出力することが基本な機能です。この点においてCCDセンサーもCMOSセンサーも共通しています。

両者の大きな相違点は電荷転送の仕組みにあります。CCDセンサーは受光素子としてのフォトダイオードが格子状に形成されていますが、このフォトダイオードのN型領域に電荷を一時的に蓄積しておくことができます。

このフォトダイオードに隣接して垂直CCDが設置され、各フォトダイオードが一定時間に蓄積した電荷は全て同時に垂直CCDに移動されます。その電荷は順次転送され、水平CCDに届けられます。

水平CCDは垂直CCDから転送されてくる電荷を順次FDAまで転送します。FDAは電荷量に応じた電圧を出力しますので、フォトダイオードに照射された光の強さに応じた電圧出力が得られます。以上の様にCCDセンサーでは、すべてのフォトダイオードの電荷量が順次出力されます。

一方、CMOSセンサーでは各受光素子であるフォトダイオードと、その出力を増幅するアンプ、アンプ出力を信号線に接続するスイッチ素子を備えており、受光・変換・増幅・出力がフォトダイオード毎に実行されます。

この構成から、CMOSセンサーでは水平走査信号と垂直走査信号を組み合わせて個々のフォトダイオード指定し、その電荷量に応じた電圧、もしくは電流の取り出しが可能です。従って、任意のフォトダイオードを選択して信号を読み出すことができます。

このような構造上の違いにより、CMOSセンサーは必要な領域の信号に限定すること等により高速読み出しが可能になる事やCCDの転送ノイズが発生しないメリットがあります。さらに、CCDセンサーではCCDに流れ込むノイズ成分によるスミアが避けられませんが、CMOSセンサーにはそれが起こりません。

CMOSセンサーの構造

CMOSセンサーは受光素子であるフォトダイオードにアンプやスイッチ素子を組み合わせ、更にそれらを多数集積したものです。フォトダイオードの製造プロセスはトランジスタとは異なる特殊なものですが、その他の構成要素はCMOS LSIと全く同じなので、CMOSの製造設備が流用できる点がCCDより有利です。

フォトダイオードの配置についても新たな動きが出ています。アンプやスイッチ素子などの回路が形成される表面に対し、フォトダイオードを裏面に配置する裏面照射型と云われる構造です。フォトダイオードと回路とは内部配線を介して接続されます。製造プロセスが複雑になりますが、フォトダイオードを隙間なく配置できるので、特に集光効率が改善されます。

また、CMOSセンサー内の回路は片電源で動作しますので、基本的に3.3V程度の一つの電源を用意するだけで済みますが、CCDセンサーは転送路であるCCD に複数の電圧を供給する必要があり、その分電源構成が複雑になります。消費電力の面でもCMOSセンサーの方が有利です。

CMOSセンサーのその他情報

1. CMOSセンサーのシェア

CCDセンサーが全盛の頃Sonyは独占的なシェアを誇っていましたが、CMOSセンサーが主役となり、その最大の用途がスマートホンに移行した現在、徐々にSonyのシェアは低下する傾向が見られます。2021年におけるイメージセンサーの市場シェアは、金額ベースで首位のSonyが45%、2位のSamsungが26%、3位のOmniVisionが11%との調査結果が発表されています。

2. CMOSセンサーのサイズ

CMOSイメージセンサーには大きいサイズから小さいサイズのものまで様々な大きさのセンサーが発売されています。
CanonのCMOSイメージセンサーを例に取ると、次の6種類の異なるサイズのイメージセンサーがあります。

  • 35mmフルサイズ(約36mm×24mm)
  • APS-Hサイズ(約29mm×19mm)
  • APS-Cサイズ(約22mm×15mm)
    但し、一般販売されず、自社のカメラ用に限定しているようです。
  • 1インチ
  • 2/3インチ
  • 1/1.8インチ

一般的に同じ画素数であれば、センサーサイズが大きいほど画質が良くなります。また、開口部が広いほど感度が向上します。

参考文献
https://www.tel.co.jp/museum/exhibition/principle/cmos.html
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/05.html
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00134/121700187/

https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/knowhow/knowhow28.html
https://global.canon/ja/technology/interview/cmos/

超純水製造装置

超純水製造装置とは

超純水製造装置

超純水製造装置とは、超純水を製造する装置です。天然水や水道水には、様々な塩や有機物含まれます。研究開発では、これらの不純物によって実験結果に影響を及ぼす可能性が高いです。製造業においては、用水内の不純物が製品品質に影響する場合もあります。そのため、こうした分野では不純物を取り除いた超純水が使用されます。

純水の中でも特に純度の高いものを超純水と呼びます。水の純度は電気抵抗率をもとに測定されます。理論的な純水は18.24 MΩ・cmです。通俗的には18 MΩ・cmを達成しているものを超純水と呼びます。

超純水製造装置の使用用途

超純水は、研究・開発分野や半導体系製造業で用いられます。研究・開発分野では、バイオ系実験や医薬品の臨床試験などで使用されることが多いです。半導体製造業では、半導体部品の洗浄や精密機器の洗浄などに使用されます。

ただし、超純水はガラス容器やポリタンクなどへ保存できません。水道水よりも溶解能力が非常に高く、容器を微量に溶かしてしまうためです。そこで、超純水は超純水製造装置によって必要な時に必要な量だけ作って使用します。

超純水製造装置の原理

超純水製造装置は、水道水を精製して超純水を製造します。本項では逆浸透膜+イオン交換純水装置を例に原理を説明します。この装置は、濾過、逆浸透、イオン交換の3ステップによって超純水を製造します。

1. 濾過

粉末状活性炭フィルターによって、水道水中の残留塩素や大きなゴミなどの不純物を濾過します。

2. 逆浸透

濾過された水道水を逆浸透して純水を精製します。通常、濃度の異なる水溶液を半透膜で隔てると、水分子は濃度の低い水溶液から高い水溶液へ移動します。これを浸透と言います。

水分子の移動に伴って浸透圧という力が発生し、やがて移動した水の体積にかかる重力と平衡状態になります。これに対して浸透圧より高い圧力を加えると、濃度の高い水溶液から低い水溶液へ水分子を移動させることができます。この現象を逆浸透と呼びます。

超純水製造装置では水道水に高い圧力を加えて、不純物を含まない水分子を移動させて純水を製造します。このような逆浸透現象によって水分子を精製できる浸透膜を逆浸透膜と呼びます。ここで精製された水は、すでに純水と呼ばれる純度です。

3. イオン交換

先述した純水中に微量に含まれる無機イオンを、イオン交換によって除去します。イオン交換は、イオン交換樹脂によって純度を向上させる方法です。逆浸透で作り出した純水には、微量のカルシウムイオンや塩素イオンが含まれます。この純水をイオン交換樹脂で濾過することによって、不純物イオンが樹脂に吸着されて超純水となります。

以上が超純水製造装置の主な原理です。また、イオン交換終了後に、紫外線殺菌装置が付属する超純水製造装置も販売されています。イオン交換膜を再利用する製品や水道水を蒸留する製品など、種類も様々です。

超純水製造装置のその他情報

1. 超純水製造装置の工業利用

超純水製造装置の工業用途としては、先述の通り半導体デバイスの洗浄工程で使用されます。洗浄水に微細な不純物が含まれている場合、回線をショートさせる危険性もあります。したがって、超純水製造装置は半導体製造技術において必要不可欠な存在です。

その他には、蒸気タービン発電機における蒸気発生装置用水や、工場内の加湿用水として使用されることもあります。

2. 超純水製造装置使用時の注意事項

超純水製造装置は繊細な装置であり、高純度の超純水を得るためにはいくつかの注意事項が存在します。大原則として用事採水を心掛け、初流は排水します。採水口付近が外気によって汚染されている危険があるためです。環境からの汚染を防ぐためには、採水口を清浄に保つことや採水時に泡を立てないことも必要です。

また、超純水は別名ハングリーウォーターともよばれます。物質を取り込む性質があることから命名されています。この性質から、時間が経過すると電気抵抗率は低下します。したがって、超純水は採水後速やかに使用する必要があります。

参考文献

https://www.organo.co.jp/purewater/
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/015.html

液面センサー

液面センサーとは

液面センサー

液面センサーは、タンクや容器に入った液体の液面の高さを計測するための測定装置です。これによって、液体を貯蔵しているタンクなどの残量などを調べることができます。単純に液体が有るか無いかだけを検出するものと、連続的に測定を行うことで、残量のパーセンテージなどを算出することができるものがあります。レベルセンサーなどとも呼ばれることがあります。液体センサーの中には、砂などのような粒子状の固体にも流用できるものがあります。

液面センサーの使用用途

産業分野において、材料となる液体や洗浄に使用する溶媒などは、密閉された中の見えない容器に貯蔵されていることがあります。液面センサーを使用すれば、容器を開放して中の液体の状態を調べなくてもよいので、特に石油の精製プラントや水処理場など大規模な施設で、タンク残量のモニターを行ったり、飲料、食品の製造工場、紙・パルプの生産現場でよく使用されたりしています。また、残量だけでなく、液体の劣化や品質などを調べる目的でも使用されます。

液面センサーの原理

液面センサーには、さまざまな種類のものがあり、それぞれ異なる原理で動作しています。代表的なものは以下の4種類です。

1. フロート式

タンクの上下に、ワイヤーを内蔵した管を取り付け、その管に沿って液面と連動して上下する磁石でできたフロート(浮き)を液面に浮かべます。フロートの上下と管内部のワイヤーが連動して変化した距離から液面レベルを測定します。

2. 超音波式

液面に向けて超音波を発信して反射させ、受信までの時間を計測することで、センサーから液面までの距離を計測します。

3. 静電容量式

タンクの壁から少し離れた位置にセンサーを配置し、壁とセンサー間の静電容量をモニターします。センサーと壁の間に液体があれば静電容量は大きく、空であれば静電容量は小さくなります。

静電容量式液面センサーの測定原理を図に示します。

液面センサーの測定原理

図1. 液面センサーの測定原理

ここでは、タンクの壁が金属製であることを前提としています。液体が非導電性である場合、液面の高さが高くなるほど、液体由来の容量成分の寄与が増大します。

一般に、非導電性液体の比誘電率は空気の比誘電率より大きいことから、モニターされる静電容量の値は、液面の高さが高いほど大きく、液面の高さが低いほど小さくなります。この関係を既知の関数としてあらかじめ取得しておけば、センサー出力の実測値から液面の高さを決定することができます。

一方で、液体が導電性の場合は、液体由来の容量成分が存在しないため、センサー電極を絶縁体(一定の比誘電率を有する誘電体)で被覆し、液面高さの変動に基づく空気由来の容量成分の変動を効果的に検出できるような構成とすることで、同様に液面の高さを決定することができます。

4. 光学式

赤外線LEDと受光部によって構成されており、液体が無いときは赤外線が受光部に到達するように光学系が設計されています。センサーが液体に浸されると、屈折などにより受光部に光が届かなくなるので、液面上昇を感知することができます。

非接触式の液面センサー

非接触式の液面センサーには、超音波式、電波式、レーザー式、放射線式、重量式、直視式のものが知られています。

超音波式は、超音波が液面から反射して戻ってくるまでの時間を測定します。液体の種類に依存せず測定することができる一方、結露や障害物に弱いという特徴があります。

電波式は、電磁波が液面から反射して戻ってくるまでの時間を測定します。耐環境性に強いという特徴がある一方、高価であること、装置のサイズが大きく、重いという短所があります。

レーザー式は、半導体レーザーを使い光の液面からの反射を利用して測定します。スポット径が小さいためタンク内の障害物の影響を受けないという特徴があります。一方で高価であること、またレーザの安全管理が必要となります。

放射線式は、ガンマ線の透過と吸収を利用して測定します。有毒、高温、腐食性の高い悪環境でも使用できる一方、人体に対するリスクが生じうるため安全管理が必要となります。

重量式は、タンクごと重量を測定することで液面を測定します。タンク内の影響を受けないというメリットがある一方、泡などの液比重の変化に弱いという特徴があります。

直視式は、目視で確認する方法です。最も安価に実行できますが、汚れたら清掃が必要であり、自動化が困難というデメリットがあります。

電極式の液面センサー

電極式の液面センサー(レベルスイッチ)は、可動部のない電気的なレベルセンサとして、鉄鋼・食品・化学・薬品・半導体などの諸工業や農業水・浄水場・汚水処理などの液面制御に汎用的に幅広く使用されています。

測定に際しては、アース電極と検出電極間に交流電圧を印加します。このとき、電極間が液体に接触してなければ電流は流れませんが、電極間が液体に接触していると電流が流れます。この原理を利用することにより導電性の液体のみを検出することができます。

装置は、電極保持部、プロセス接続、電極棒、リレーユニットで構成されています。リレーユニット以外に電子部品はなく可動部もないためシンプルな構成です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/basics/type.jsp

https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/type/electrode.jsp