ステンレス板曲げ加工とは
ステンレス板曲げ加工とは、ステンレス素材の板材を変形させ、目的の形状に仕上げる加工技術の1つです。
ステンレスは耐食性や強度に優れ、多種多様な分野で利用される金属素材です。種類によって、磁性の有無、加工のしやすさ、耐熱性能などが異なり、住宅設備や自動車部品、厨房機器など、幅広い製品に使われています。
部品としてステンレス板を利用する際には、必要な形に曲げる加工が不可欠です。しかし、ステンレスは硬くて弾性が高いため、曲げ加工には高度な技術と知識が求められます。
ステンレス板曲げ加工の使用用途
ステンレスの耐食性や美観性を活かし、様々な分野で曲げ加工された部品が使用されています。
1. 建築関連
建築分野では、屋根材や外壁、内装の装飾パネルとして使用されることが多いです。ステンレスは錆びにくく、屋外の厳しい環境でも耐久性を発揮します。光沢のある美しい見た目を持つため、高級感を演出する建物にも適しています。
2. 輸送機器
自動車や電車、船舶の部品としても採用されています。特に、排気系部品 (マフラーなど) では、耐熱性と耐食性が求められるため、ステンレスが選ばれることが多いです。優れた美観性から、デザイン性を重視した内装や外装パーツにも活用されます。
3. 家電・厨房機器
ステンレスは、耐久性と衛生面に優れた特性を持つため、キッチン設備や調理機器、冷蔵庫、オーブンなどに利用されています。水や油に強く、清掃が容易なことから、業務用厨房機器にも応用されています。
ステンレス板曲げ加工の原理
ステンレス板曲げ加工は、金属の塑性変形の特性を利用した方法です。塑性変形は、一度力を加えて変形させたあと、元に戻らない特性を指します。ステンレス板曲げ加工の主な原理は、以下のとおりです。
- ステンレス板を金型またはロールにセットする
- 外力を加え、目的の形状に変形させる
- ステンレスの弾性による「スプリングバック (戻り) 」を考慮しながら最終的な形に仕上げある
ステンレス板曲げ加工の種類
ステンレス板曲げ加工は、加工後の形状に応じて種類が分かれています。
1. V字曲げ
V字型の金型を用いて、ステンレス板をV字状に折り曲げる加工方法です。V字型のパンチでステンレス板を金型に押し込むことで、精密な曲げ角度を実現します。曲げ角度の自由度を高めるために、コの字の金型を使用するケースもあります。
2. U字曲げ
V字曲げと似た手法ですが、パンチの形状がU字型であり、より滑らかな曲線を作ることが可能です。パイプなどの円筒形の部品に活用されることが多いです。
3. L字曲げ
ステンレス板をL字に変形させる曲げ加工です。ステンレス板の片側を固定し、もう片側に上から下へ外力を加えることで90°変形させます。L字曲げは、薄いステンレス板に対して使われることが多いです。
4. ロール曲げ
ステンレス板をロールやチューブ状に加工する方法です。3つのロールでステンレス板を変形させながら巻き取り、ロール状に加工します。ステンレス板の下に配置された2つのロールを支点とし、もう1つのロールで上から外力を加えて曲げます。
ステンレス板の種類
ステンレス板には、用途に応じた様々な種類があります。代表的なものを以下に紹介します。
- マルテンサイト系
焼入れによって硬度が高くなるステンレスです。耐摩耗性に優れていますが、やや脆い性質を持つため、用途によっては焼戻し処理を施すことがあります。代表例として、SUS410やSUS440Cが挙げられます。
- フェライト系
耐食性があり、加工しやすいタイプのステンレスです。磁性を持ち、比較的コストが低いことが特徴です。代表例にはSUS430があります。
- オーステナイト系
ほかの種類よりも耐食性や耐熱性に優れています。磁性を持たないことが特徴で、温度環境の厳しい環境下でも使用可能です。SUS304が代表的な例です。