エマルジョン塗料とは
エマルジョン塗料とは、従来の油性塗料と水性塗料が持つ欠点をエマルジョン技法により改善した塗料です。
引火せず、粘度調整や添加剤の混和が容易な塗料です。エマルジョンは日本語で「乳化」を意味します。乳化とは、互いに混ざり合わない液体、油性成分と水性成分の一方を微粒子にして他方に分散させ混ざり合わせた状態にすることをいいます。
エマルジョン技術を最初に利用したのは米国で1927年にブタジエンの乳化剤分散液から合成ゴムの製造に成功しました。日本では1949年に酢酸ビニル系エマルジョン塗料が市販されています。
エマルジョン塗料の使用用途
エマルジョン塗料は、6割が建築用に使われています。油性塗料と比較して、揮発性有機化合物を抑えてシックハウス症候群対策ができるためです。特に水性のエマルジョン塗料は水で自由に薄めることができ、増粘剤により粘度調整が容易にでき、スプレー適性に優れています。モルタルのような吸湿性の高い面にも塗布しやすく、顔料や添加剤の混和も容易に行うことができます。
金属塗装には熱硬化性のアクリルエマルジョンが使用されます。塗装後に焼付けを行い、架橋反応を起こして硬度や密着性、耐水・耐溶剤性を向上させます。
過酷な条件下では耐候性・耐水性・耐アルカリ性に優れたアクリルなどで、金属塗装には熱硬化性のアクリルエマルジョンが使用されることがあります。塗装後に焼付けを行い、架橋反応を起こさせて硬度や密着性、耐水・耐溶剤性を向上させます。
エマルジョン塗料の原理
まず、水の中に分散しているエマルジョン粒子同士が塗装によって相互に近付き、密な状態に充填されます。水が蒸発していくと粒子表面にある保護層が破壊され、露出したポリマー表面で架橋が進み次第に癒着していきます。癒着した粒子は均一な皮膜になり、顔料が充填された塗膜となります。
乾燥時の温度が最低造膜温度を下回ってしまうと粒子の変形と癒着が起こらないために粉末となってしまい、充分な強度が得られません。そのため助剤を添加して反応を起こしやすくします。
多くのエマルジョンは一度凍結してしまうと元に戻らないため、凍結安定剤としてエチレングリコール等を添加したり親水モノマーの共重合によって安定を図ります。塗料の保存にあたり品質を安定させるために分散剤、増粘剤、安定剤、防カビ剤も適宜添加されます。
また、皮膜形成直後よりも一定時間が経過したもののほうが機械的強度が向上することが多く、これはポリマーの拡散が皮膜形成後も進行することによります。
エマルジョン塗料の種類
塗料は溶剤により大きく油性塗料と水性塗料とに分類できます。有機溶剤を使う油性塗料と水が溶剤の水性塗料とがあります。
エマルジョン塗料にも、溶剤系塗料と水性塗料があります。油性の溶剤の中に水の微粒子が浮いている状態の塗料が溶剤系塗料、水の溶液の中に油性の微粒子成分が混ざっている状態が水性塗料と呼ばれています。
油性塗料に使われている有機溶剤は環境や人体に有害なこともあり、メーカーは乳化した状態で安定させる物質である界面活性剤の開発などに力を入れ、水性塗料の改良をしてきました。その結果開発されたのが、油性顔料を分散させたエマルジョン塗料で、現在は水性エマルジョン塗料が主流になりました。
エマルジョン塗料の選び方
エマルジョン塗料の最も大きな特徴は「硬化」です。硬化は塗られた塗料が時間がたつにつれて水分が蒸発して硬い塗膜となることをいいます。硬化の仕方と塗膜の強度によって融着融合硬化と水性反応硬化に分類されます。
融着融合硬化は、分散している粒子が水や油が蒸発することにより、接近し融着し硬化する現象です。粒子自体が純粋に融着している状態なので塗膜の密着度は比較的弱いです。
一方、水性反応硬化は、あらかじめ粒子と一緒に混ぜ合わせておいた反応剤が水や油の蒸発に伴って粒子同士をくっつけて行きます。これを架橋反応とよんでいます。架橋反応がもたらす硬化は粒子間の三次元構造の融合なのでより強固な塗膜となります。塗料の耐久性を求める場合は反応剤が入った水性反応硬化型エマルジョン塗料が推奨されます。