メスコネクタ

メスコネクタとはメスコネクタ

メスコネクタとは、電気信号や電流を伝えるために機器やケーブルについている接続器具のことです。

メスコネクタは、オスコネクタと対になって使用されます。オスコネクタはケーブルの先端に導電性のある金属のピンが付いているのに対して、メスコネクタ側にはピンを挿入するための導電性金属の筒状の穴 (ソケット) が設けられています。

一般的に、ケーブルは複数の導線がまとめられており、メスコネクタには導線の数の穴がまとめて一つのケースに収納されています。メスコネクタはこの複数の接続口の開いたケースを一つとして取り扱います。

メスコネクタの使用用途

メスコネクタは、電気機器類の、信号や電流を通すケーブルの接続と切り離しを行うあらゆる部分で使用されています。

メスコネクタは常にオスコネクタと対になって使用されます。コネクタは電源ケーブルや信号ケーブル、電気機器類の外部から電流や信号を取り入れる部分、電気機器内部の基板上や、基板間のケーブル接続部分などで広く利用されています。

メスコネクタは、通常は電流や信号を流す側のコネクタとして使用されます。

デスクトップパソコンを例にあげると、電源を供給する側のコンセントがメスコネクタであり、コンセントに差し込む電源ケーブル側がオスコネクタです。パソコンの電源ケーブル挿入のパソコン接続部にはメスコネクタが使用され、パソコン本体側にはオスコネクタが付いています。

一方で、ディスプレイに信号を送るパソコン側のコネクタにはメスコネクタが使われ、信号を受け取るディスプレイのコネクタはオスコネクタとなっています。

メスコネクタの原理

コネクタとは電力や電気信号の流れをつなぐための電子部品で機器や回路の接続や乖離を容易にするためのインターフェースです。

メスコネクタは必ずオスコネクタと対で使用されます。オスコネクタは凸型でピンコンタクト (導電部材) が外部に露出しています。この露出部分をメスコネクタの凹部分に差し込んで接続します。

メスコネクタ (レセプタル) はピンコンタクトを受け止めるためバネ特性を持たせたソケットコンタクトが内部に配置されており、オス側のピンコンタクトと接触することで電気や信号を流します。コンタクトは導電性の高い銅合金等でできています。

メスコネクタはケーブル側の導線と固く結合されている一方で、オスコネクタ側のピンとはある程度の力で抜き差しが可能な機械性能を持つことで、ケーブルと機器間の接続と切り離しを容易にしています。

メスコネクタの構造

1. メスコネクタの形状

メスコネクタのケーブル側は、細い導線を挟み込んで潰すことでしっかりと固定できる形状になっています。この部分に導線をあてて圧着ペンチでカシメることで銅線が抜け落ちることを防ぎます。

メスコネクタのピンが挿入される側はソケットと言い、細い円筒形になっています。この部分はオスコネクタ側のピンの外径と長さに合わせた大きさを持っており、ピンとの間で電気信号や電流の導通がしっかりと保たれるようになっています。

一般的に、ケーブルは複数の導線がまとまって一本のケーブルになっています。従って、メスコネクタでは導線の数だけソケットを用意し、オスコネクタでは導線の数だけのピンがあります。そして、それぞれが接続用ケースに収納されています。

2. メスコネクタの規格

信号ケーブルでは用途に合わせて様々なケーブル形状とコネクタ形状が規格化されています。

例えば、デジタルのビデオ信号と音声信号を送るケーブルとしてHDMIケーブルが広く使われています。そして、通常は「HDMIケーブル」と言う場合には、ケーブルと同時にケーブルに使われているコネクタの形状も指しています。

他に良く知られた例としては、RS232-C、HDMI、BNC、USB (USB-A,B,C)、RJ-45などがあります。

また、電子機器内部の基板上には、他の基板との信号の双方向通信のためにBUSケーブルを接続するためのソケットが取り付けられているものがあります。ここでも、メスコネクタとオスコネクタを使って接続を行います。

この他にもコネクタは様々な形状や大きさがあり、使用する導線の本数や、ケーブルを流れる信号の特性、周囲の空間等を考慮して、条件に適合したコネクタが使われています。

参考文献
https://www.jae.com/about-connectors/
https://www.jae.com/column/02-connector-structure/

メカニカルブースターポンプ

メカニカルブースターポンプとは

メカニカルブースターポンプとは、既設のポンプの能力を増大させたい時に、切り替えて用いられるポンプのことです。

メカニカルブースターポンプを用いることによって、必要な真空状態にまで気圧まで下げたり、またその到達時間を短くすることができます。

メカニカルブースターポンプは一般的に、単独で用いられることはありません。他の油回転真空ポンプ、ドライポンプ、などの粗引きポンプと組み合わせて用いるポンプです。他の既設ポンプで粗引きとして一定レベルの気圧にまで低下させ、既設ポンプが苦手になる気圧になったところで、メカニカルブースターポンプを作動させます。結果的にシステムとして、排気速度を大幅にアップさせることができます。 

メカニカルブースターポンプの使用用途

メカニカルブースターポンプは、中真空と呼ばれるレベルの真空状態が必要な場合に用いられます。

真空とは一般的には空気が無い状態がイメージされるかもしれません。しかし実際には気圧が通常よりも低い状態のことであり、真空度という尺度によって段階分けされるものです。

真空ポンプにさまざまな種類がありますが、油回転式真空ポンプやドライポンプなどは、大気圧状態から空気を排気し、気圧を下げることが得意なポンプです。このように大気圧から気圧を下げることを「粗引き」といいます。粗引きによって徐々に気圧が下がってくると、油回転式真空ポンプやドライポンプでは排気効率の低下が避けられません。そこでメカニカルブースターポンプに排気の役割をバトンタッチします。構造が違い得意な領域が異なるポンプを組み合わせて用いることによって、求める真空状態に早く到達することが可能です。

また真空状態を利用することで、さまざまなものが製造できます。例えば真空包装、真空乾燥、真空蒸留薄膜、真空冶金、宇宙開発、真空含浸、脱ガス、半導体プロセス、低密度風洞実験など幅広い分野で使用されています。

メカニカルブースターポンプの原理

メカニカルブースターポンプは、二つのひょうたんのようなローターによって、空気を掻き出すようにしながら排気するポンプです。二つのローターはお互いに逆方向 (内側) に回転するようになっており、それぞれのローターが同期してタイミングよく、ケーシングの内部に真空を作り出す構造になっています。吸気側から吸引された空気などの気体はローターとケーシングの隙間の空間に閉じ込められ、2つのローターが回転することによって排気側に気体が押し出されます。

メカニカルブースターポンプのその他情報

メカニカルブースターポンプが用いられる真空レベル

真空とは空気が無い状態ではなく、空気圧が低い状態であることはすでに述べましたが、具体的にJISでは通常の大気圧レベルである10^5Paより低い状態を「真空状態」としています。さらに真空状態は5つの段階によって区分けされています。

  1. 低真空 (low vacuum) : 10^5 ~ 10^2 Pa
  2. 中真空 (medium vacuum) : 10^2 ~ 10^-1 Pa
  3. 高真空 (high vacuum) : 10^-1 ~ 10^-5 Pa
  4. 超高真空 (ultra high vacuum) : 10^-5 ~ 10^-8 Pa
  5. 極高真空 (extremely high vacuum) : 10^-5~ 10^-8 Pa

5段階の真空レベルの中で、メカニカルブースターポンプが実現できるのは中真空段階です。大気圧からの粗引きは油回転真空ポンプやドライ真空ポンプで行い、中真空レベルの1Pa ~ 0.1Pa でメカニカルブースターポンプに切り替えるのが一般的です。ドライ真空ポンプでも中真空レベルに到達させることは可能ですが、排気速度が大きく低下し時間がかかるため、メカニカルブースターポンプに切り替えて使うメリットが得られます。

中真空よりも高い真空状態 (低い気圧状態) を作り出すためには、ターボ分子ポンプ、油拡散ポンプなどさらに他のポンプに切り替える必要があります。

参考文献
https://kurashi-no.jp/I0017669
https://ulvac-kiko.com/support/pump07_mechanical.html

マグネットクランプ

マグネットクランプとは

マグネットクランプのイメージ

マグネットクランプとは、磁石の力で金型を吸着して固定する装置です。

マグネットクランプは、主に成型機などにおける金型の装着に使用されます。従来の金型取付板を用いて手締めで金型の脱着を行う場合、手作業でボルトを1本ずつ締め付けたり緩めたりする事が必要です。場合によっては数時間単位で時間がかかる上に重労働となります。一方、マグネットクランプを用いる場合、着磁・脱磁の切替時間は、わずか数秒かつボタンを押すだけで簡便に完了します。様々な産業分野における、生産性・安全性の向上が期待される製品です。

マグネットクランプの使用用途

1. 産業分野

マグネットクランプは、主に成型機などにおいて、金型を固定し、脱着することに使用されています。成型機が使われる用途は多岐に渡り、

  • 自動車・搬送機器
  • 電機機器
  • 非鉄金属
  • 鉄鋼
  • 電子部品・半導体、メディカルなど

のような、幅広い産業で使用されている装置です。

2. マグネットクランプ導入による効果

マグネットクランプの導入により、下記のような効果が期待されます。

  • 金型交換時間の削減による生産性向上
  • 作業安全性の向上
  • 様々な形状の金型を瞬時に吸着・クランプすることが可能
  • 取付板の統一が不要になり、金型設計の自由度が向上する
  • 金型へのダメージ軽減と機器の長寿命化
  • 省エネルギー化

マグネットクランプを使用せずに金型を固定する場合は、ボルトを手締めするなどして固定しないといけません。何本ものボルトを締める必要があり、時間がかかる上に危険を伴う重労働となります。また、金型補修などの事由による脱着の場合、なるべく速い脱着が必要です。マグネットクランプによる脱着はボタンを押すだけで済み、わずか数秒でのクランプが完了します。このため、作業安全性の向上と生産性の向上に大きく寄与します。

また、マグネットクランプは、油圧・エアなどを使用せず電気のみで動作するため、クリーンな環境での使用が可能な装置です。

マグネットクランプの原理

1. 動作概要

マグネットクランプの模式図

図2. マグネットクランプの模式図

一般的なマグネットクランプは、マグネットプレートの内側に電磁コイル、アルニコ磁石、ネオジム磁石を用いた仕組みで動作します。アルニコ磁石とネオジム磁石は共に永久磁石です。脱磁状態では、アルニコ磁石、ネオジム磁石の磁力線はマグネットプレートの内部のみで形成され、マグネットプレート表面に磁束は発生しません。

マグネットクランプの動作機構

図3. マグネットクランプの動作機構

電磁コイルに0.5〜2秒間通電することにより、アルニコ磁石の磁力が反転して磁力域がプレート外部まで到達するようになります (着磁) 。この磁力によって金型を吸着、すなわちクランプすることが可能です。磁力域は電磁コイルに通電する方法以外では切り替わらないため、再び脱磁する場合も電磁コイルに通電することでアルニコ磁石の磁力を反転させます。通常、120℃程度の高温環境まで使用が可能です。

2. 安全対策

上記の仕組みのように、マグネットクランプは通常の電磁石とは異なる機構で動作します。そのため、万が一停電が発生しても金型が落下する心配はありません。また、マグネットクランプはマシンと接続させて、マシンの停止と連動させて同時に停止することが可能です。

また、着磁力を確認する仕組みとして磁束密度を測定するセンサーが搭載される他、金型密着や剥がれを検知する機能として近接スイッチが搭載されることがあります。これらの装置は、金型の錆や異物などによる着磁力不足や、金型の密着不足を検出し、安全性を確保するものです。これらの装置で異常が検出された場合、場合によっては自動で非常停止するようになっています。また、磁極反転時の電流値を監視する電流センサーや、金型落下防止フック・落下防止ブロックなどが搭載される場合もあります。

マグネットクランプの種類

マグネットクランプには、様々な種類の製品があります。製品によって対象とする成型機の型締力が異なり、300kN程度に対応する製品から、6500kN程度まで様々です。また、プレートの厚みも35mm〜52mm程度まで製品によって異なります。製品によっては、専用の操作盤でリモートでの操作が可能です。

前述した着磁力確認などの安全機能は、製品によって異なり、標準搭載される場合やオプションで追加が可能な場合などがあります。多くの製品は、新規・既設の成型機共に設置が可能です。目的や用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。

ホースポンプ

ホースポンプとは

チューブポンプ

ホースポンプとは、ホース状のチューブを使って液体を移送するポンプです。

内部に有するローターの回転によってホースが圧縮され、液体を押し出します。ホースの体積変化によって流体を輸送する容積式のポンプの1種です。

一般的には柔軟性の高いチューブを使用するため、複雑な形状の液体や粘性の高い液体を移送することが可能です。汚染の心配がある液体を移送する場合にも適しているため、医療や食品産業、環境分野などで広く利用されています。

高い耐久性と信頼性を持ち、長時間にわたる連続運転にも耐えることができます。ホース内を流れる流体の撹拌や脈動も少なく、メンテナンス時もホースの交換や洗浄のみと非常にメンテナンス性も高いです。

ホースポンプの使用用途

ホースポンプは、幅広い分野で使用されるポンプです。以下はホースポンプの使用用途一例です。

1. 医療分野

薬液や経管栄養、人工透析のための血液の輸送などの移送に使用されます。ホースポンプは、正確な流量と流量の制御ができるため、医療分野で安全な液体移送が必要な場合に適しています。また、ホースの交換によって衛生的な輸送が可能な特性から、医療分野では重宝されます。

2. 食品産業

飲料水や液体原料の輸送などを目的に使用されます。また、化粧品や洗剤を移送する場合もあります。食品の品質を維持し、汚染やクロスコンタミネーションを防止するために重要な役割を果たします。

3. 環境分野

汚染された海水の排出や汚泥除去などに使用されます。浄化槽では汚水や汚泥をポンプアップするためにホースポンプが使用されます。ホースポンプは汚染物質の移送に適しており、さまざまな産業で環境保護に貢献しています。

また、その特性から工場や製造プラントなどで発生する廃水や有害物質の除去にホースポンプが使用されます。ホースポンプは、粘性が高い廃水や、薬品や化学物質などの有害物質を効果的に移送することが可能です。

4. 研究分野

分析用の試料や試薬の移送に使用されます。精度の高い移送ができるため、科学研究や分析に必要な正確な移送が必要な場合に適しています。

ホースポンプの原理

ホースポンプは、柔軟なホースを用いたポンプです。ローターが回転することでホースを圧縮し、液体を吸引・送り出す仕組みです。ホースポンプにはローターと呼ばれる円筒形の部品があります。

ローターの外周には複数のローラーが並び、ホースを挟むように回転します。ローターが回転するとローラーによってホースがつぶされ、その圧縮によって液体がホース内で前進します。

このとき、ホースが拡張されたところには真空状態が生じ、液体が吸引されます。次にローターが回転してホースが圧縮されると、その部分の液体が強制的に吐出されます。このように、ホースを通じて液体を吸引し、その後圧縮して移送する仕組みを利用しています。

非常に高い耐久性を持ち、さまざまな種類の液体や粘性の高い液体を移送することが可能です。また、ホースが柔軟であるため正確性が高く、クロスコンタミネーションのリスクを減らすことができます。

ホースポンプの選び方

ホースポンプを選ぶ際は、その他のポンプと同様に、液体の種類や流量、揚程などを考慮して選定します。

1. 液体の種類

液体の種類によっては、ホースポンプの素材に対する耐性が必要となる場合があります。酸やアルカリなどの腐食性が高い液体を移送する場合には、素材に対する耐性を確認する必要があります。

2. 必要流量

液体の種類を確認したら、次に必要流量を確認します。移送する流量によって、必要なサイズやポンプの種類が異なります。必要な移送量を事前に把握し、それに合わせて適切なホースポンプを選ぶ必要があります。

3. 必要揚程

送り先との高低差や距離から必要揚程を選定します。揚程が足りないと送液ができないため注意が必要です。また、液体の粘度によっても必要揚程が変化するので、あらかじめ液体の比重や粘度を確認して計算に用います。

参考文献
http://www.kansetu.co.jp/product/detail.php?pid=p052

ネジ継手

ネジ継手とは

ネジ継手_図0

ネジ継手 (英: Threaded Joint, Screw Joint, Screwed Fitting) とは、ねじ込み継手とも呼ばれることも多く、管継手の一種です。

管継手は、JIS B0151 鉄鋼製管継手用語で「配管において、次の目的で管の接続などに用いる継手」に定義されています。

  • 流体の方向転換
  • 流体の分岐又は集合
  • 管の接続
  • 管径の異なるものとの接続
  • 管の末端の閉鎖
  • 計器、バルブなどの取付け
  • 膨張、収縮などの吸収
  • 管の回転又は屈曲

配管継手の接合方法は、ネジ (ねじ込み) 接続、溶接接続、フランジ接続、ヘルール接続の4種類がありま、ネジ継手は4種類の中でも容易に施工が可能です。

ネジ継手の使用用途

ネジ継手_図1

図1. ネジ継手の使用例

ネジ (ねじ込み) 接続は、特殊な機材や工具を使用せずに施工できる接合方法で、ネジ継手は比較的コストの安い管継手として、発電・化学プラントや工場・ビル設備、一般家庭など幅広い分野で使用されています。ネジ継手の使用目的は、配管施工時の管 (パイプ) 同士の接続・分岐・閉止のためです。

配管の経路はほとんどの場合一直線にはならず、上下、左右に曲がり勾配を設けたり、経路を2~4本に分岐させ、またその逆に集合させたりします。一般的に、ネジ継手は低圧流体用の配管で使用し、高温・高圧蒸気などの流体の場合は、漏洩による事故や損傷を回避するため、差し込み継手や溶接継手などを使用します。

参考として、JIS B2301ねじ込み式可鍛鋳鉄管継手では、下記のように最高使用圧力が規定されています。

流体の状態 最高使用圧力
120℃以下の静流水 2.5 MPa
300℃以下の蒸気、空気、ガス及び油 1.0 MPa

ネジ継手の原理

1. ねじの種類

ネジ継手は、片端または両端に管用 (くだよう) ねじの加工がされていて、下記のように各規格によってねじ形状が規定されています。

規格 規格番号 規格名称
JIS B0202 管用平行ねじ (G)
B0203 管用テーパねじ (R、Rc)
ISO 228-1 Pipe threads where pressure-tight joints are not made on the threads – Part 1: Dimensions, tolerances and designation
7.1 Pipe threads where pressure-tight joints are made on the threads – Part 1: Dimensions, tolerances and designation
ANSI/ASME B1.20.1 Pipe Threads, General Purpose, Inch
NPS: American National Standard Straight Pipe Threads
NPT: American National Standard Taper Pipe Threads

2. 管用平行ねじとテーパねじ

ネジ継手_図2

図2. テーパねじの原理

管用平行ねじは、オス・メスともにねじ全長でねじ外径は同じです。管用テーパねじはオスねじは先端に向かって、メスねじは穴の奥行に向かって、ねじ外径が小さくなっています。

管用テーパねじは、ねじ部にはシールテープを巻いたり、シール材を塗布して、密閉性を高めて使用します。また、管用平行ねじは平行ねじ同士ではねじ部の密閉性が低いため、管と継手の接合にはあまり使用せず、座面のある機械と継手の接合で、間にガスケットを挟み込み接合します。

3. 管用ねじの組み合わせ

管用平行ねじと管用テーパねじは、用途や必要な密閉性に応じて、下記のような組み合わせで選定します。

ねじの組み合わせ おねじ
管用テーパねじ (R) 管用平行ねじ (G)
めねじ 管用テーパねじ (Rc) ×2
管用平行ねじ (Rp) ×2
管用平行ねじ (G) ×1 〇1

◎: 配管など耐密接合の目的でシールテープを巻き組み合わせが可能
〇1: 機械的接合の目的でパッキン、ガスケットを合わせて使用することで組み合わせが可能
×1: 平行ねじの破損、パッキンの損傷による漏洩の可能性があり組み合わせは不可
×2: ねじ製作公差によってはねじ込めないこともあり密閉性が得られなく組み合わせは不可

ネジ継手の種類

ネジ継手_図3

図3. ねじ込み継手の種類 (1)

ネジ継手_図4

図4. ねじ込み継手の種類 (2)

ネジ継手はその形状や目的により多くの種類があり、参考としてJIS B2301 ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手の種類を下表に示します。

種類 使用用途
エルボ 90°エルボ 90度または45°に配管経路を変える
45°エルボ
径違いエルボ
オスメスエルボ (ストリートエルボ)
45°めすおすエルボ (45°ストリートエルボ) 
径違いめすおすエルボ (径違いストリートエルボ)
ティー(チーズ) 同径ティー 3方向に配管経路を分岐(または集合)
径違いティー
三方径違いティー
クロス 同径クロス 4方向に配管経路を分岐(または集合)
径違いクロス
ソケット 同径ソケット オスねじのパイプ同士を接合
径違いソケット
メスオスソケット
ブッシング メスねじのねじ込み継手と異径のパイプを接合
ニップル 同径ニップル メスねじのねじ込み継手同士を接合
径違いニップル
キャップ オスねじのパイプを閉止する
プラグ メスねじのねじ込み継手を閉止
ユニオン 同径ユニオン メスねじのねじ込み継手同士を接合・分離
メスオスユニオン
ユニオンエルボ
めすおすユニオンエルボ

ネジ継手のその他情報

1. 規格

ネジ継手は、各規格で寸法・形状・材質・適用範囲などが規定されていて、代表的な規格は下記のとおりです。

  • JIS B2301 ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手 Screwed type malleable cast iron pipe fittings
  • JIS B2302 ねじ込み式鋼管製管継手 Screwed type steel pipe fittings
  • JIS B2303 ねじ込み式排水管継手 Screwed drainage fittings
  • JIS B2308 ステンレス鋼製ねじ込み式管継手 Stainless steel threaded fittings
  • ISO 4144 Pipework – Stainless Steel Fittings Threaded in Accordance With ISO 7-1
  • ASME/ANSI B16.1 Cast Iron Pipe Flanges and Flanged Fittings
  • ASME/ANSI B16.3 Malleable Iron Threaded Fittings
  • ASME/ANSI B16.4 Cast Iron Threaded Fittings

2. 材質と表面処理

ネジ継手のJIS規格における代表的な材質は、以下の通りです。

  • JIS G3214 圧力容器用ステンレス鋼鍛鋼品Stainless steel forgings for pressure vessels
  • JIS G3452 配管用炭素鋼管 Carbon steel pipes for ordinary piping
  • JIS G3454 圧力配管用炭素鋼管 Carbon steel pipes for pressure service
  • JIS G3459 配管用ステンレス鋼鋼管Stainless steel pipes 
  • JIS G4303 ステンレス鋼棒Stainless steel bars
  • JIS G5121 ステンレス鋼鋳鋼品 Corrosion-resistant cast steels for general applications
  • JIS G5501 ねずみ鋳鉄品 Grey iron castings
  • JIS G5705 可鍛鋳鉄品 Malleable iron castings

炭素鋼や鋳鉄製の場合は、溶融亜鉛めっきの表面処理が施工されているものがあります。また、エポキシ樹脂を焼き付け塗装したエポキシコーティングがあり、管内外の防錆に効果を発揮し、水用配管や埋設配管などに使用されます。

3. 仕様・サイズの表示

JIS規格では、ネジ継手製品の仕様・サイズの表示は下記の通りです。

  規格番号又は規格名称 形式 形状 表面状態 継手呼び
例1 JIS B 2301 I形 径違いめすおすエルボ 2×3/4
例2 ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手 I形 45°エルボ めっき 1-1/2

 

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/joint/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/504/

ウレタンチューブ

ウレタンチューブとは

ウレタンチューブ

ウレタンチューブとは、耐圧性や柔軟性が高く扱いやすいウレタン製のチューブです。

産業界でも広く利用されていて、使用する流体は空気や水が主流となっています。色は半透明、白、黒が一般的ですが、緑や青、赤といったカラフルなチューブもあり、チューブ径もさまざまです。

その他、静電気防止対策が施された導電性ウレタンチューブや耐油性、耐候性の高いチューブもあります。また、ソフトウレタンチューブは、通常よりもさらに柔軟性が高いです。

ウレタンチューブの使用用途

ウレタンチューブは一般空気圧配管や冷却水の配管に広く使用されています。空気圧配管は、制御盤内の空気配管や空圧機械、真空機械いった用途があります。

その他、組立装置用や半導体プロセス機器用、理化学分野の機器用、ドローンによる農薬散布用等のチューブとしても有用です。価格が比較的安く、加工しやすいので、コイル加工や溶着加工などもされています。専用の継ぎ手があれば、ワンタッチで接続することができます。

ウレタンチューブの原理

ウレタンチューブは柔軟性があるので、一般的な配管によく使用されます。ウレタンチューブは、多湿でもカビや劣化が少なく済み、使い勝手の良いチューブです。ウレタンチューブの材質には、軟質ウレタン、硬質ウレタン、半硬質ウレタンの種類があります。

エーテル系のポリウレタン樹脂を使用する場合が多いです。軟質ウレタンが最も柔軟性があり、硬質ウレタンがやや硬めです。いずれもナイロンチューブよりも柔らかくなっています。ただし、使用可能な温度は60℃程度と基本的に高くありません。

また、凍結に弱く、耐熱性のウレタンチューブでも最大温度は80℃程度です。使用可能圧力は20℃で約0.8MPa程度とあまり高くありません。圧力が高い場所で使用する場合は、ナイロンチューブを選択します。

耐薬品性が要求される場合はウレタンチューブは耐性が低いので、テフロンチューブが適しています。なお、ウレタンチューブは押し出し成型によって製造されています。

ウレタンチューブの種類

1. 通気性ウレタンチューブ

通気性ウレタンチューブは、ウレタン樹脂に特殊な加工を施すことで、空気やガスの通過が可能なタイプのチューブです。この特性により、気体や湿気を含んだ状態で使用することができます。

エアブレーキシステムやエアフィルター、排気システムなど、空気の通過が必要な産業分野や用途に幅広く適しています。特に自動車産業においては、エンジンの排気システムやブレーキの動作制御において重要な役割を果たす製品です。

2. 耐圧性ウレタンチューブ

耐圧性ウレタンチューブは、ウレタン樹脂を強化することで耐圧性を向上させたタイプのチューブです。高い耐圧性が求められる液体の導管やホースとして使用されます。

油圧システム、空調システム、液体供給システムなどの産業機械や設備において、高圧の液体を安全かつ効率的に輸送するために利用されます。また、航空機や自動車などの輸送機器にも使用され、信頼性の高い動作を実現可能です。

3. 耐摩耗性ウレタンチューブ

耐摩耗性ウレタンチューブは、ウレタン樹脂に耐摩耗性を持たせたタイプのチューブです。この特性により、ウレタンチューブは摩擦や擦過に強く、長期間の使用でも劣化しにくいです。

耐摩耗性が求められる用途として、コンベアベルト、スラリーパイプ、研削装置などに広く利用されています。特に鉱山や建設業界などでの使用に適しており、堅牢さと耐久性が重視される環境で優れた性能を発揮します。

4. 耐熱性ウレタンチューブ

耐熱性ウレタンチューブは、ウレタン樹脂に耐熱性を持たせたタイプのチューブです。高温環境での使用に適しており、エンジン部品やヒーターシステム、熱風送風機などの部品に利用されます。耐熱性ウレタンチューブは、高温にさらされる状況でもその特性を維持するため、信頼性の高いソリューションとして重宝されています。

電気絶縁性が高く、高温環境での電気・電子部品にも使用され、耐薬品性も優れており、化学産業や医療機器産業などでの用途にも適した製品です。

参考文献
https://www.fujigomu.co.jp/whats_urethane/
https://kikaikumitate.com/post-5886/

はく離剤

はく離剤とは

はく離剤とは、金属やガラス、プラスチック面など素材に付着している古くなった塗装や塗膜、樹脂、接着剤の除去に用いる薬剤です。

従来、塩化メチレンタイプ (ジクロロメタン) を主成分とするはく離剤が多く用いられてきましたが、最近は環境に配慮したノンクロルタイプが多数開発されています。

はく離剤の使用用途

再塗装時の塗装ムラや塗装剥がれ、塗装後のひび割れなどを防ぐ目的で使用します。

水系、溶剤系、塩化メチレン系の溶剤は素材への影響やはく離箇所、作業工程などを考慮し て選択されます。特に塩化メチレン系は人体や環境への影響が大きいので、使用の際は適切な準備が必要です。

はく離剤の原理

はく離対象である塗膜上に塗布されたはく離剤は、塗膜自体の性状を変え、素材との密着力を損なわせます。大別して2種に分かれ、使用する溶剤により異なる作用で塗膜をはく離可能です。

1. 塩化メチレンタイプ

塩化メチレンタイプは浸透性が高く、塗膜を軟化させてはく離します。錆の懸念のある鉄を素材とする箇所や水洗のできない箇所へのはく離に優れ、常温で使用可能です。

中性タイプや強力な酸性、アルカリ性タイプもあり、労働安全衛生法やPRTR法に該当します。

2. ノンクロルタイプ

ノンクロルタイプは、塗膜自体を溶解させてはく離します。硬化した接着剤などの、水系では対応できない樹脂系塗膜のはく離に適しており、 塩化メチレンタイプより環境に配慮されていることが特徴です。

ただし、刺激臭があり粘性が高いため細部の洗浄性や乾燥性に劣り、消防法にも該当します。

はく離剤のその他情報

1. はく離剤の使い方

はく離剤への浸漬
はく離剤を槽に準備し、表面の塗膜はく離を行いたい素材を浸漬させます。表面全ての塗膜が除去されるので選択的なはく離には対応できません。

通電によりはく離を促進させる手法もあり、めっき加工業者にて主に使用されています。はく離した塗膜成分が液中に不純物として蓄積する為、定期的にはく離剤の更新が必要です。

スプレーでの塗布
スプレー装置にてはく離剤を対象に吹き付ける方法です。表面へ均一に付着させる事が容易ではありません。

はく離剤のロスも多く、不要部への付着も懸念されます。自動化により、ある程度の安定化は見込めますが、手作業での実施には課題が多い手法です。

直接塗布
刷毛塗にて直接対象にはく離剤を塗布する方法です。選択的なはく離が可能であり、必要最低限の使用にて対応できるため、経済的には最も優れています。

2. 医療分野での活用

はく離剤は、医療分野でも応用されています。人工肛門や人工膀胱の手術を受けた患者は、排泄する際の受け皿となるスマート装具を装着します。これは人体の皮膚との隙間から臭い漏れを防ぐため、しっかりと固定されています。これを取り替える際に、はく離剤を使用します。

工業用の塗装はく離とは異なり、医療分野で使用されるものは臭いや人体への影響を懸念し、成分的にも配慮されています。臭いは無臭のものから、柑橘系やミントなどの香りのついたものまであります。成分は皮膚への負担が少ない非アルコール性、シリコン性がほとんどです。オイルを使わないものもあり、使用感で不快になることはありません。

はく離剤の種類も豊富で、用途によって使い分けが可能です。はく離剤が個包装になっているものもあり、すぐに取り出して使用できるため、外出時に重宝されています。また、介護者などのスマート装具を装着した本人以外が使用するために、どの角度からでも塗布できる工夫がされています。

医療用のはく離剤は、その使用目的から「日用品」です。機能性や携帯性など、さまざまな要素に考慮して開発・製造されています。

なべ小ねじ

なべ小ねじとは

なべ小ねじ

なべ小ねじ (英語: Pan Head Screws, Pan Head Machine Screws, Pan Head Phillips Screws, Cross-Recessed Pan Head Machine Screws) とは、小ねじ頭部の形状が鍋をひっくり返したような形状に見えるねじのことです。

なべ小ねじは一般的に、メスねじが切られている被締結物に使用したり、ナットで締め付けたりして使用します。そのため、ねじ部先端はタッピングねじのように とがり先ではなく、平坦になっています。なべ小ねじ単体で使用する他、金属ワッシャと組み合わせて使用することも多くあります。

十字穴付きなべ小ねじやナベねじも同義語です。なお、なべ小ねじの規格は下記の通りです。

  • JIS B 1111 十字穴付き小ねじ
  • ANSI/ASME B 18.6.3 Machine Screws, Tapping Screws Metallic Drive Screws

なべ小ねじの使用用途

なべ小ねじ_図1

図1. なべ小ねじの使用例 (1)

なべ小ねじの使用用途は、非常に汎用的で工業用機械から家電製品、玩具など幅広い場所で使用されています。小ねじとは、頭部形状が丸形で、ねじ頭部の工具差し込み穴はプラス形 (十字形) になっていて、ねじサイズはM2~M8になります。

それに対してボルトは、頭部形状が六角・四角で、ねじ頭部の外形に合う工具を使用し、ねじサイズはM8以上がほとんどになります。 (M8未満の小さいねじサイズのボルトもあります。)

なべ小ねじ_図2

図2. なべ小ねじの使用例 (2)

なべ小ねじの原理

なべ小ねじ_図3

図3. なべ小ねじ頭部の穴形状

なべ小ねじは、一般の六角ボルトと同じで、ねじ (この場合の「ねじ」は、スクリュー状の形状だけを示します) により被締結物を締め付け固定します。なべ小ねじは、ナットを使用して締結せずに、タップ加工したメスねじに直接ねじ込み締結する方法に多く使用されています。

六角ボルトのようにボルト頭部にレンチをはめ込むのではなく、プラスドライバー (先端が十字形状のねじ回し工具) を十字穴に差し込み締め付けるのが特徴です。なべ小ねじは、皿ねじと比べて頭部十字穴が深く製作できるため、ドライバー先端が十字穴にしっかり噛み合い、安定して強い力で締め付けができます。

なべ小ねじ頭部のドライバー差し込み穴は、十字形の プラス形」と、マイナス形とプラス形の混合形のプラスマイナス形 があります。なべ小ねじの締め付けは、頭部十字穴のサイズに合ったプラスドライバーなどの締め付け工具を使用します。

なべ小ねじ頭部の穴形状は、上記図3を参照してください。なお、なべ小ねじの長さ表示は、六角ボルトなど一般のボルト長さと同様に、ボルト頭部の高さを除きねじ部を含む軸部の長さで表されます。

なべ小ねじのその他情報

1. なべ小ねじの主な材質と表面処理

なべ小ねじ_図4

図4. なべ小ねじの材質別の例

なべ小ねじの材質は、鋼製の場合 鉄、炭素鋼ステンレス鋼、真鍮などが一般的に使用されています。また、他の金属として、アルミニウムチタンが使用されています。

樹脂製には、ポリカーボネートナイロン製もあります。なべ小ねじの材質別の例は、図4を参照してください。なべ小ねじ材質選定において、電蝕を防止すること重要です。ボルトの材質と被締結物の材質が異なる場合、それぞれの金属間に電位差が生じて腐食することがあります。

特に、アルミやステンレスの場合は、注意が必要です。なべ小ねじの表面処理は、鋼製の場合、耐食性を目的として電気メッキ、無電解メッキ、アルマイト処理黒染めなどの施工が一般的です。

2. なべ小ねじの適正な使い方

なべ小ねじの適正な使用方法は、主に下記のようになります。

  • なべ小ねじと被締結物のねじ穴部が壊れないよう、締め付ける力が許容範囲内であること
  • なべ小ねじと被締結物のねじ穴部に加わる、繰り返しの力 (振動などによる) が、許容範囲内であること

3. なべ小ねじのゆるみ止め

なべ小ねじのゆるみ防止として、ゆるみ止め用接着剤の使用、ゆるみ止め施工されたボルトの採用などがあります。

参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element1.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/machine_screw/machine_screw_pan_head.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP

丸皿小ねじ

丸皿小ねじとは

丸皿小ねじ_図0

丸皿小ねじ (英: Raised Countersunk Head Screws, Oval Head Screws) とは、小ねじ頭部の形状がねじ側にテーパ状の円すい形で、横から見ると皿のような形状をしているねじです。

皿小ねじ頭部の上端面は平坦であるのに対して、丸小ねじは上端面が丸みを帯びています。小ねじとはJIS B0101 ねじ用語で、「比較的呼び径の小さい頭付きのねじ。駆動部の形状として一般的には、すりわり付き、十字穴付きなどがある」と規定されています。

「丸サラ小ねじ」「丸さら小ねじ」なども、同義語として使用されています。

丸皿小ねじの使用用途

丸皿小ねじ_図1

図1. 丸皿小ねじの使用例

丸皿小ねじは一般的に、メスねじが加工されている被締結物 (取り付ける相手側) に使用します。被締結物には、ボルト頭部の円すい形より少し大きい、テーパ状のザグリ穴を加工します。

小ねじ頭部の丸みを帯びた部分は、被締結物表面から若干はみ出します。基本的な用途は、頭部上端面が平坦な皿小ねじと同様ですが、頭の部分に丸みがあるためより優しい印象です。

人目に触れる箇所に対して、美観的な理由で使用されています。また、皿小ねじは小ねじ頭部の十字穴に引っかかる場合があり、それを防ぎたい場合にも有用です。

身近な使用例として図1のように、ドアクローザー、ドアロックのカバーやドアガードの取り付けなどに使用されていています。

丸皿小ねじの原理

丸皿小ねじは、一般な小ねじと同様に、ねじ  (この場合の「ねじ」は、スクリュー状の形状だけを示します) により締結します。丸皿小ねじは、ナットを使用して締結せずに、タップ加工しためすねじに直接ねじ込むのが特徴です。

六角ボルトのように、ボルト頭部をレンチで挟み込むのではなく、十字もしくはすりわり (マイナス穴) にプラスもしくはマイナスドライバーを差し込み締め付けます。

なお、丸皿小ねじの長さ表示は、ボルト頭部を含む全長で表されています。六角ボルトなど一般のボルトの長さは、ボルト頭部の高さを除くねじ部を含む軸部の長さで表されています。それぞれの長さ表示の違いに注意が必要です。

丸皿小ねじ種類

丸皿小ねじ_図2

図2. 丸皿小ねじの種類、材質と形状

丸皿小ねじの種類は、下記の2つに分類されます。

1. 小ねじ頭部の穴形状による分類

丸皿小ねじ頭部の穴形状は、工具を差し込む部分の形状で、下記の2種類があります。

十字穴 (プラス穴) H形、Z形
H形 (Philips) とZ形 (Pozidriv) の十字穴形状は異なるため、基本的にはそれぞれ専用のドライバーソケットビットを使用します。H形とZ形の違いは、H形は圧力面 (締め付け時にドライバー面と接触する面) の角度が若干開いていて、Z形はほぼ垂直です。

Z形の方がカムアウト (締め付け時にドライバーが浮き上がる現象) しにくいという利点があります。しかし、日本国内ではH形が多いようです。

丸皿小ねじ_図3

図3. 丸皿小ねじ頭部の穴と工具の形状

すりわり形 (マイナス穴)
すりわりは、1本の真っ直ぐな溝でマイナス穴とも呼ばれています。工具はマイナスドライバーやマイナス形状のソケットビットを使用します。

2. 材質 (強度区分) による分類

一般的な丸皿小ねじの材質 (強度区分) は、下記の3種類があります。

材料区分

強度区分

適用規格

4.8

JIS B1051

ステンレス鋼

A2-50, A2-70

JIS B1054

非鉄金属

右記の材質区分の中で受渡当事者間にて決定

JIS B1057

丸皿小ねじのその他情報

1.  丸皿小ねじの規格

  • JIS B1111 十字穴付き小ねじCross recessed head screws
  • JIS B1101 すりわり付き小ねじ Slotted head screw
  • ANSI/ASME B18.6.3 Machine Screws, Tapping Screws, And Metallic Drive Screws (Inch Series)
  • ISO 7047 Raised countersunk head screws (common head style) with type H or type Z cross recess — Product grade A

市販されている丸皿小ねじには、現行のISO規格に準拠する前の旧JISで製作されているものもあり、ねじピッチが異なっています。また、旧JISで製作されているものには、小ねじ頭部外径が小さいものがあります。

したがって、取り替えの際や被締結物のめねじが、現行JIS品と旧JIS品のどちらかを確認して使用することが大切です。それ以外にも、JIS規格外寸法で製作されている丸皿小ねじがあります。

2. 丸皿小ねじのサイズ

  • ねじの呼び: M2~M8
  • ねじ長さ (推奨長さ): 4~60 mm ※ねじの呼びによって長さの範囲は異なりますので、詳細はJIS規格を参照してください。

参考文献
https://www.handsman.co.jp/DMC_DIY/myweb/D03-3-2.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/machine_screw/machine_screw_r_c_head.html
https://www.nejishop.com/html/page1.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/221000547326/

皿小ねじ

皿小ねじとは

皿小ねじ

皿小ねじ (英: Countersunk Head Screws, Flat Head Screws) とは、小ねじ頭部の形状がねじ側にテーパ状の円すい形で、横から見ると皿のような形状をしているねじです。

丸皿小ねじ頭部の上端面は丸みを帯びているのに対して、皿小ねじは上端面が平坦になっています。小ねじとはJIS B0101 ねじ用語で、「比較的呼び径の小さい頭付きのねじ。駆動部の形状として一般的には、すりわり付き、十字穴付きなどがある」と規定されています。

「サラ小ねじ」「さら小ねじ」なども、同義語として使用されています。

皿小ねじの使用用途

皿小ねじ_図1

図1. 皿小ねじの使用例

皿小ねじは一般的に、メスねじが加工されている被締結物 (取り付ける相手側) に使用します。皿小ねじの身近な使用例として、図1のように、ドアクローザー、ドアノブ、ドアヒンジ (蝶番) の取り付けなどが挙げられます。

被締結物には、ボルト頭部の円すい形より少し大きい、テーパ状のザグリ穴を加工 (ザグリ加工) します。そのため、小ねじ頭部は、被締結物表面からはみ出しません。

基本的な用途は、頭部上端面に丸みを帯びた丸皿小ねじと同様ですが、頭部分が平坦になるように使用されます。また、皿小ねじは、小ねじ頭部の十字穴に引っかかる場合があり、これを防ぎたい時は丸皿小ねじが有用です。

皿小ねじの原理

皿小ねじは、他の小ねじと同様に、ねじ (この場合の「ねじ」は、スクリュー状の形状だけを示します) により締結します。皿小ねじは、タップ加工しためすねじにねじ込み締結する場合に使用し、一般的にナットを使用して締結する場合には使用しません。

皿小ねじは、十字穴もしくはすりわり (マイナス穴) にプラスもしくはマイナスドライバーを差し込み締め付けます。なお、皿小ねじの長さ表示は、ボルト頭部を含む全長で表されています。六角ボルトなど一般のボルトの長さは、ボルト頭部高さを除くねじ部を含む軸部長さで表されています。

皿小ねじの種類

皿小ねじ_図2

図2. 皿小ねじの種類、材質と形状

皿小ねじの種類は、下記の2つに分類されます。

1. 小ねじ頭部の穴形状による分類

皿小ねじ頭部の穴形状は、工具を差し込む部分の形状で、下記の4種類があります。

十字穴 (プラス穴) JIS H (Phillips) 形、Z (Pozidriv) 形
十字穴にはH形 (Philips) とZ形 (Pozidriv) の2種類があり、それぞれ穴形状が異なります。したがって、それぞれ専用のドライバーソケットビットなどの工具を使用します。

H形とZ形は、H形は圧力面 (締め付け時にドライバー面と接触する面) の角度が若干開いていて、Z形はほぼ垂直であることが違いです。Z形の方が、締め付け時にドライバーが浮き上がるカムアウト現象が起こりにくいという利点があります。しかし、日本国内ではH形が多くなっています。

すりわり形 (マイナス穴)
すりわり形は、真っ直ぐな1本の溝でマイナス穴とも呼ばれています。マイナスドライバーやマイナス形状のソケットビットなどの工具を使用します。

皿小ねじ_図3

図3. 皿小ねじ頭部の穴と工具の形状

六角穴
六角穴は、穴にぴったりフィットした六角レンチを使うため、高い締め付け力を得られます。L形の六角レンチは、締め付け時のボルト周囲のスペースが少なくて済むメリットがあります。

ただし、六角レンチには、ミリサイズとインチサイズがあり、六角レンチの選定には注意が必要です。

トルクス穴 (Torx、Torx Plus、Tamper-Resistant Hex、Tamper-Resistant Drilled)
トルクス穴は、星形の穴形状で「トルクス」はテキストロン社 (Textron Inc.) の登録商標のため、一般的な名称では「ヘックスローブ」などと呼ばれています。

2. 材質 (強度区分) による分類

一般的な皿小ねじの材質 (強度区分) は、下記の3種類があります。

材料区分

強度区分

適用規格

4.8

JIS B1051

ステンレス鋼

A2-50, A2-70

JIS B1054

非鉄金属

右記の材質区分の中で受渡当事者間にて決定

JIS B1057

皿小ねじのその他情報

1. 皿小ねじの規格

  • JIS B1111 十字穴付き小ねじCross recessed head screws
  • JIS B1101 すりわり付き小ねじ Slotted head screws
  • ANSI/ASME B18.6.3 Machine Screws, Tapping Screws, And Metallic Drive Screws (Inch Series)
  • ISO 7046 Countersunk flat head screws (common head style) with type H or type Z cross recess – Product grade A

市販されている皿小ねじには、現行のISO規格に準拠する前の旧JISで製作されているものもあり、ねじピッチが異なります。旧JISで製作されているものには、小ねじ頭部外径が小さいものがあります。

そのため、取り替えの際や被締結物のめねじが、現行JIS品と旧JIS品のどちらかを確認して使用する必要があります。それ以外にも、JIS規格外寸法で製作されている皿小ねじがあり、使用の際は注意が必要です。

2. 皿小ねじのサイズ

  • ねじの呼び: M2~M8
  • ねじ長さ (推奨長さ): 4~60 mm
    ※ねじの呼びによって長さの範囲は異なりますので、詳細はJIS規格を参照してください。

参考文献
https://www.urk.co.jp/contents/elements/element2.html
https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/machine_screw/machine_screw_flat_head.html
https://www.nejishop.com/html/page1.html
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-13-galvanic-corrosion/?SelectedLanguage=ja-JP