フォトICとは
フォトICとは、光を受ける受光素子とその信号を処理するICを1つのパッケージに組み込んだデバイスで、用途に応じた機能を備えた部品です。
フォトICは構造により、モノシリックタイプとハイブリッドタイプに分けられます。モノシリックタイプは、受光部と信号処理回路が同一チップ上に形成されているタイプで、受光部と信号処理間のワイヤー配線が不要でノイズに強いという特徴を有しています。
ハイブリッドタイプは、受光素子と信号処理回路が独立したチップで構成されたもので、それらを1つのパッケージ内に収めたものです。それぞれのチップ間はワイヤーで接続されているため、受光素子の形状や分光感度特性を用途に応じて最適化できることが利点です。
フォトICの使用用途
フォトICは光を検知するために使用されますが、様々な目的に向けた多種のデバイスが存在します。フォトICの主な使用用途は、以下のとおりです。
- 照明の明るさを測定する照度計やカメラの露出計
- 光ファイバを用いた通信の受信機
- 移動量や回転角を検知するためのエンコーダモジュール
- 色を検知するため、RGBに分解するカラーセンサー
- 光によって物体検出を行うためのフォトインタラプタの受光器
- 対象物までの距離を三角測距方式により測定する測距装置
フォトICの原理
フォトICは、光を受けて電流を発生するフォトダイオードやフォトトランジスタ、PSD (Position Sensitive Detector) などを受光素子として、その出力電流を増幅する回路、及び増幅された出力を使って信号を処理する信号処理回路から構成されるものです。使用目的に応じて、様々な受光素子や処理回路を組み合わせた製品が多品種供給されています。
また、特殊なデバイスになりますが、出力が周波数で得られるフォトICもあります。フォトICと電流-周波数変換回路から構成され、広いダイナミックレンジを特徴とするものです。
受光素子はデバイスにより分光感度特性が異なりますが、どれも人間の視感度特性とは一致していません。一般的に用いられるシリコンフォトダイオードでは900nmから1,000nm付近に感度のピークがありますが、人間の視感度特性は400nmから700nmの範囲であり、かつ感度のピークは550nm付近なので、フォトダイオードが検出する明るさの信号と人間が感じる明るさは異なります。
そこで、照度計など人間の感度に合わせる必要がある用途向けには、視感度補正フィルターを介してフォトダイオードの分光感度特性の補正が必要です。
フォトICの種類
フォトICは様々な機能や特徴を備えたものが販売されています。主な種類は、以下のとおりです。
1. 測距用フォトIC
物体までの距離を計測する用途で使われるフォトICで、受光素子としてはPSDやフォトセンサーアレイが用いられます。近赤外LED等の発光素子と組み合わせ、発光素子から投射したスポット光が物体に反射して受光素子に到達した光の位置を基に、三角測距の原理で物体までの距離を算出するものです。
2. RGBカラーセンサー
3つのフォトダイオードの表面に各々赤色 (R) だけを通過する光学フィルタ、青色 (B) だけを通過する光学フィルタ、緑色 (G) だけを通過する光学フィルタを張り付け、各フォトセンサーの出力を比較して、入射光の色を分析する為のフォトICです。各センサーの出力は入射光をRGB各色の成分に分解したもので、主な用途として色彩照度計などの測定器が挙げられます。
3. 照度センサー
照明光等の明るさを測定するためのセンサーで、視感度補正フィルターなどを用いて人間の分光感度特性に近付けた受光素子を備えたフォトICです。主に照度計や撮影機器の露出計に採用されています。
4. 光通信用フォトセンサー
光ファイバーを用いた光通信の受信用デバイスです。光ファイバーの端面に設置して送信されてくる光信号を受信して電気信号に変換します。受光センサー前面に凸レンズを設けて、集光特性を改善したデバイスがあります。
5. 光電スイッチ
LED等の発光素子と組み合わせて、光電スイッチを構成するためのフォトICです。フォトインタラプタやフォトリフレクタの受光器もこの分類に含まれます。
6. エンコーダー用フォトIC
一般的には、4チャンネルのフォトダイオードアレイを有したフォトICです。回転方向と回転量を検出できる構成で、フォトダイオードアレイへの光の入力状態に応じた2相のデジタル出力が得られます。発光素子と組み合わせて、エンコーダ機能付のフォトインタラプタを容易に構成できます。
7. リモコン受光IC
赤外線を使ったリモコン用の受信ICで、テレビや録画機、エアコンなどに広く採用されているリモコンシステムに使われています。可視光カット特性を持った樹脂で覆われていることと送信機の点滅周波数 (30kHzから40kHz) に応じた急峻なバンドパスフィルターを備えていることが特徴です。送信機のコマンド信号を受信して機器本体の処理回路に出力します。
参考文献
https://www.kodenshi.co.jp/top/seminar/vol_02/
https://techweb.rohm.co.jp/iot/tech-info/keypoint/3854