ペンテンとは
図1. 1-ペンテンの基本情報
ペンテンとは、無色もしくはわずかにうすい黄色の澄明な液体で、強い不快臭のある有機化合物です。
消防法では「危険物第四類 特殊引火物 危険等級Ⅰ」、労働安全衛生法では「危険物」「引火性の物」、危険物船舶運送及び貯蔵規則では「引火性液体類」、航空法でも「引火性液体」の指定がされています。
ペンテンの使用用途
ペンテンは単独で使用されるよりも、各種異性体での利用が多いです。しかし、単独でも試験研究用の試薬や抗体といった方面でも使用できます。
ペンテンは、アルケン (CnH2n) の1つであり、炭素原子 (C) が5つある鎖式不飽和炭化水素です。不飽和炭化水素の特質である構造的な無理から起因した、非常に不安定な物質として知られています。
ペンテンのようなアルケンには、工業上重要な物質と言われるエチレン (C2H4) をはじめとする、プロピレン (C3H6) 、ブテン (C4H8) 、ヘキセン (C6H12) といったものがあります。
ペンテンの性質
ペンテンの融点/凝固点は-135℃で、沸点は30℃です。エタノールやアセトンには極めて溶けやすいですが、水にはほとんど溶けません。
なお、ペンテンの化学式はC5H10、分子量は70.13、CAS登録番号は25377-72-4です。ペンテンには、引火性があります。
ペンテンの構造
図2. ペンテンの直鎖異性体の構造
ペンテンはアルケンの一種で、鎖式有機化合物であり、二重結合を一つ持っています。二重結合の位置によって、1-ペンテンと2-ペンテンという構造異性体が存在します。
さらに、2-ペンテンはシス型とトランス型を有し、これらは幾何異性体 (シス–トランス異性体) です。
ペンテンのその他情報
1. 1-ペンテンの構造
1-ペンテンはα-オレフィンの一つです。1-ペンテンは、石油の流動接触分解 (英: Fluid catalytic cracking) や熱分解のほか、炭化水素フラクションの熱分解によって、エチレンやプロピレンを生産する際に、副生成物として主に製造されます。ただし、化合物として1-ペンテンが、分離・単離されるのは稀です。
その一方で、1-ペンテンはガソリンにブレンドされます。ガソリンを作るために、炭化水素の混合物として、イソブタンでアルキル化されて使用されています。また、フィッシャー・トロプシュ法 (英: Fischer-Tropsch process) によって合成される原料から1-ペンテンが分離されて、Sasol社により販売されています。
なお、n-ペンテン、アミレン、n-アミレンなどは、1-ペンテンの別称です。
2. 2-ペンテンの構造
2-ペンテンには、cis-2-ペンテンとtrans-2-ペンテンという、2つの幾何異性体が存在します。とくにcis-2-ペンテンは、オレフィンメタセシス (英: Olefin metathesis) に用いられています。
ちなみに、β-n-アミレンやsym-メチルエチルエチレンは、2-ペンテンの別称です。
3. ペンテンの分岐鎖異性体
図3. ペンテンの分岐異性体の構造
ペンテンの分岐鎖異性体には、2-メチル1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテンが存在します。2-メチル-2-ブテンはβ-イソアミレン、3-メチル-1-ブテンはイソペンテンやα-イソアミレンとも呼ばれています。
イソアミレンは、深度接触分解 (DCC) における、主な3つの副生成物です。深度接触分解 (DCC) とは、流体接触分解 (FCC) と非常に似ている比較的新しい概念です。深度接触分解 (DCC) ではプロピレン、イソブチレン、イソアミレンを得る原料として、真空軽油 (VGO) を用います。
イソブチレンやイソアミレンは、ガソリンにブレンドするための代替成分として議論されている、メチルtert-ブチルエーテル (MTBE) やtert-アミルメチルエーテル (TAME) の生産にも必要な原料です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-0382JGHEJP.pdf