ベンゾフェノン

ベンゾフェノンとは

ベンゾフェノン (英: benzophenone) とは、甘い香気を持つ常温で白色かほとんど白色の結晶あるいは結晶性粉末です。

代表的な芳香族ケトン化合物の1つであり、有機化学で広く使用されるビルディングブロックです。ジフェニルケトン (英: diphenyl ketone) という別名があります。

ベンゾフェノンの性質

ベンゾフェノンの主な物理的及び化学的性質は、融点/凝固点が48~50 ℃、沸点又は初留点及び沸騰範囲が305.4 ℃、引火点が143 ℃です。密度が1.11 g/cm3の固体で、アセトンエタノールに溶け、水にはほとんど溶けません。

二つのベンゼン環がカルボニル基で架橋された構造をもち、化学式はC6H5COC6H5で表され、Ph2COと略されることもあります。分子量は182.22で、CAS登録番号は119-61-9です。

ベンゾフェノンの使用用途

1. 光重合開始材

ベンゾフェノンは、紫外線を吸収して光増感作用を示す性質をもっているため、光重合の開始剤に用いられます。

2. 紫外線吸収剤

ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤は、プラスチックとの相性が良く、塗料などに効果が高いことで知られています。紫外線吸収剤は、紫外線を跳ね返す紫外線散乱剤と異なり、紫外線を吸収して他のエネルギー (熱エネルギーなど) に変えることで、結果的にベースとなる物質を保護する物質となります。黒色、不透明なパッケージでは不都合な場合に特に有用です。

3. 脱水溶媒の調製

ベンゾフェノンは、有機合成の実験室で溶媒の脱水と脱酸素を行う際に、金属ナトリウムと併せて用いられることが多いです。ベンゾフェノンから生じたベンゾフェノンケチルは青色ですが、水分や酸素と速やかに反応し消色するので、溶液が青く保たれた状態を目視することで、脱水の完了が分かります。テトラヒドロフランジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒に対して用いられる方法です。

4. 光アフィニティプローブ

ベンゾフェノンは、ケミカルバイオロジーの分野では、光アフィニティープローブに用いられます。ベンゾフェノンを結合させた低分子化合物に、タンパク質などの生体分子内で紫外線を照射すると、低分子と相互作用するタンパク質に対してベンゾフェノン部位が共有結合を形成し標識化されます。これを検出することで、低分子と相互作用しているタンパク質を決定することができます。

5. その他の使用用途

ベンゾフェノンは、樹脂モノマーとの混和性や反応速度を向上させることを目的として種々のベンゾフェノン誘導体が開発され、市販されています。ベンゾフェノン誘導体の中には、日焼け止め成分として有用なものもあります。その他にも、有機合成の原料や医薬関連製品の中間体 (原料と最終の医薬品との中間に位置する製品) としても知られています。

ベンゾフェノンのその他情報

1. ベンゾフェノンの製造法

ベンゾフェノンは、空気中ジフェニルメタンを銅触媒で酸化することで製造されます。実験室的には、2分子のベンゼンと四塩化炭素からルイス酸触媒下で合成されるジクロロジフェニルメタンを加水分解することで合成できます。同じくルイス酸存在下で、塩化ベンゾイルとベンゼンとのフリーデル・クラフツ反応によっても合成可能です。

2. 法規情報

ベンゾフェノンは国内法規上、危険物船舶運送及び貯蔵規則で「有害性物質」、航空法で「その他の有害物質」に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) でも「第1種指定化学物質」に指定があります。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、冷暗所に保管する。
  • 酸化剤などの混触危険物質から離して保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 粉塵が飛散しないように注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と多量の水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/119-61-9.html

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