ヘミン

ヘミンとは

ヘミンの基本情報

図1. ヘミンの基本情報

ヘミンとは、青紫色もしくは黒紫色の結晶あるいは粉末の有機化合物です。

現在では多くの場合、プロトヘミン (英: protohemin) を指します。プロトヘミンとは、フェリプロトポルフィリンⅨクロリド (英: ferriprotoporphyrin Ⅸ chloride) またはフェリヘムクロリド (英: ferrihem chloride)のことです。

ヘミンのCAS登録番号は16009-13-5で、国内法令上の規制は特にありません。

ヘミンの使用用途

ヘミンはヘモグロビンといった血液への活性に関わる分野で、医薬の中間体として使われています。ヘミンは医療において、赤血球系の細胞の「分化誘導」活性を有することがわかっていました。

ヘミン自体が化学式の示す通り、塩素イオンを1つ有するポルフィリンの3価鉄錯体です。血液中のヘモグロビンを作るのに重要な鉄分と相関があります。そのため、人体に対して早くから貢献していた物質と言えます。

ヘミンの性質

ヘミンはジメチルスルホキシドにやや溶けますが、エタノールには極めて溶けにくく、水にはほとんど溶けません。ヘミンは光によって変質する恐れがあるため、ガラスが安全な容器包装材料とされています。

保管する際は、遮光して2~10℃の冷蔵庫に密封する必要があります。

ヘミンの構造

ポルフィンの基本情報

図2. ポルフィンの基本情報

ヘミンは塩素イオン (Cl) 1個がイオン結合しているポルフィリン (英: porphyrin) の三価鉄錯体の慣用名です。ヘミンは錯化合物であり、基本構造はポルフィリンの正方形の平面に対し、垂直に1つの配位子を有するピラミッド型を取っています。

塩化物などのハロゲン化物の陰イオンは、鉄と配位結合をしています。ヘミンの化学式はC34H32ClFeN4O4、分子量は651.94です。

詳細に解説すると、ヘミンはポルフィリンの三価鉄錯体です。ポルフィリンとは4つのピロール環が4つの炭素によって結合しており、閉環したポルフィン (英: porphine) に側鎖が付いた化合物の総称です。

ポルフィンの化学式はC20H14N4、分子量は310.35で、ポルフィリン系物質の前駆体でもあります。ポルフィリンやその他類似化合物の金属錯体は、生体内で重要な役割を担っています。色素や触媒として、人工的にも広く使用可能です。

ヘミンのその他情報

1. ヘミンの合成法

ヘミンは血液に氷酢酸と食塩を加えて加熱後、放冷することで容易に結晶として生成します。1個の陽荷電を有し、通常は塩化物として得られ、クロロヘミン (英: chlorohemin) とも呼ばれています。

遊離のヘムは不安定です。そのため、すぐに酸化されてヘミンになります。

2. 色素としてのヘミン

酵素の一種であるカタラーゼ (英: catalase) やペルオキシダーゼ (英: peroxidase) の色素部分はヘミンです。チトクロム (英: cytochrome) やチトクロムオキシダーゼ (英: cytochrome oxidase) の色素部分も類似のものだと考えられています。

ヘモグロビンの検出に使用するベンジジン染色 (英: benzidine staining) に対して、ヘミンは陽性です。マウス赤白血病細胞 (MEL細胞) とヒト慢性骨髄性白血病K562細胞に対して、赤血球への細胞分化誘導活性を有することも知られています。

3. ヘミンの関連化合物

プロトポルフィリンⅨの基本情報

図3. プロトポルフィリンⅨの基本情報

ヘミンはフェリプロトポルフィリンⅨクロリドとも呼ばれ、プロトポルフィリンⅨの化学式はC34H34N4O4、モル質量は562.658です。プロトポルフィリンⅨはポルフィン環にメチル基が4つ、ビニル基が2つ、プロピオン酸基が2つ結合しています。ポルフィリン類の分類に使用されているローマ数字は、置換基の種類や位置によって決められています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-1032JGHEJP.pdf

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