ヘプタンとは
図1. n-へプタンの基本情報
ヘプタンとは、無色・澄明の液体で特異臭がある物質です。
消防法で「危険物第㈣類第一石油類 危険等級Ⅱ」、労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」の指定があり、危険物船舶運送及び貯蔵規則や航空法、海洋汚染防止法施行令にも指定されています。
ヘプタンの使用用途
ヘプタン (n-ヘプタン:ノルマルヘプタン) は、ポリオレフィン重合を行うときの溶剤のほか、接着剤や塗料・インキの溶剤、油脂抽出の溶剤に使用されています。
また、シンナーや測定試薬としてプラズマを使った分光分析を代表とし、気体分析手法の一つであるGC分析 (ガスクロマト分析) 、自動車利用者にはおなじみのガソリンのオクタン価分析などにも使われています。研究実験用の洗浄剤としても利用可能です。
ヘプタンの性質
n-へプタンの融点は-91℃、沸点は98℃、引火点は-1°C、自然発火点は204℃です。揮発性と石油臭を示します。
通常ヘプタンは、n-へプタンのことを指します。n-へプタンのCAS登録番号は142-82-5で、エタノールやジエチルエーテルに極めて溶けやすく、水には溶けにくいです。
ヘプタンの構造
ヘプタンの異性体は、光学異性体を含めると11種類あります。n-へプタンの化学式はCH3(CH2)5CH3、分子量は100.20です。直鎖アルカンで、オクタン価0の指標になる物質でもあります。
ヘプタンのその他情報
1. ヘプタンの構造異性体 (主鎖:C7)
図2. ヘプタンの構造異性体
ヘプタンの構造異性体は9種類あります。主鎖の炭素原子の数が7のヘプタンは、n-ヘプタン (英: n-heptane) のみです。
2. ヘプタンの構造異性体 (主鎖:C6)
主鎖の炭素原子の数が6のヘプタンには、2-メチルヘキサン (英: 2-methylhexane) と3-メチルヘキサン (英: 3-methylhexane) の2種類があります。2-メチルヘキサンは、イソペンタン (英: isoheptane) とも呼ばれています。
3. ヘプタンの構造異性体 (主鎖:C5)
主鎖の炭素原子の数が5、側鎖の数が1つのヘプタンは、3-エチルペンタン (英: 3-ethylpentane) だけです。主鎖の炭素原子の数が5、側鎖の数が2つのヘプタンには、以下の4種類が存在します。
- 2,2-ジメチルペンタン (英: 2,2-dimethylpentane)
- 2,3-ジメチルペンタン (英: 2,3-dimethylpentane)
- 2,4-ジメチルペンタン (英: 2,4-dimethylpentane)
- 3,3-ジメチルペンタン (英: 3,3-dimethylpentane)
2,2-ジメチルペンタンは、ネオヘプタン (英: neoheptane) とも呼ばれます。
4. ヘプタンの構造異性体 (主鎖:C4)
主鎖の炭素原子の数が4、側鎖の数が3つのヘプタンは、2,2,3-トリメチルブタン (英: 2,2,3-trimethylbutane) のみです。
5. ヘプタンの立体異性体
図3. ヘプタンの立体異性体
ヘプタンは立体異性体を区別すれば、11種類存在します。3-メチルヘキサンと2,3-ジメチルペンタンに立体異性体が存在するためです。
3-メチルヘキサンには、以下の2種類が存在します。
- (3R)-3-メチルヘキサン (英: (3R)-3-methylhexane)
- (3S)-3-メチルヘキサン (英: (3S)-3-methylhexane)
一方2,3-ジメチルペンタンは、以下の2種類が存在します。
- (3R)-2,3-ジメチルペンタン (英: (3R)-2,3-dimethylpentane)
- (3S)-2,3-ジメチルペンタン (英: (3S)-2,3-dimethylpentane)
また、3-メチルヘキサンと2,3-ジメチルペンタンは、キラル炭素を持つ最小のアルカンです。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0015JGHEJP.pdf