ロジウム

ロジウムとは

ロジウムとは、原子番号が45、元素記号がRhの元素です。

ロジウム塩水溶液がバラ色になるため、ギリシャ語でバラ色を意味する「rhodeos」が語源となりました。ロジウムはレアメタル (英: Minor metals) と呼ばれる、天然産出量が少ない金属の1種でもあります。

地殻中における存在量は200pptであり、50pptのレニウムやオスミウムに次いで、安定同位体を持つ元素の中で3番目に希少です。ロジウムは、硬度の高さや電気抵抗、耐食性に優れており、装飾・化学触媒・工業用部品などの分野で利用されています。

ロジウムの使用用途

ロジウムは、装飾品の着色や強化のため、メッキとして使用されています。また、硬度や耐食性の高さ・電気抵抗の低さから、コンピューターのリードスイッチにも利用されています。その他にもロジウムは、反射鏡や熱電対、干渉フィルタ、ガラス繊維製造用ノズルなど、さまざまな分野で幅広く使用可能です。

ロジウムは、自動車の排気ガス中に含まれる有害物質である窒素酸化物を窒素に変える働きがあることから、自動車排気ガスの有害性を弱めるための三元触媒 (英: three-way catalyst) としても使われています。また、オキソアルコールや酢酸を生産する反応過程でも、ロジウムを触媒として用いることが可能です。

ロジウムの性質

ロジウムの比重は12.5、融点は1,966°C、沸点は3,960°Cです。ロジウムは銀白色の遷移金属で、白金族元素の1つです。柔らかく延性があります。室温付近での密度は12.41g/cm3で、融点における液体密度は10.7g/cm3です。

ロジウムは、常温では空気中で酸化されませんが、強く熱すると徐々に酸化され、酸化ロジウム (III) が生成します。さらに高温になると、再び単体に分離します。

塊状のロジウムは、王水などの強酸にも侵されないなど、酸に対して非常に抵抗力が大きいことが特徴です。その一方で、酸化力の強い熱濃硫酸や塩素酸ナトリウムを含む熱濃塩酸には溶けるなど、酸素に対しては比較的弱いです。高温ではハロゲン元素とも反応します。

ロジウムの構造

ロジウムは高温で酸化され、酸化数は-1価から+6価まで取ります。常温常圧でロジウムの安定な結晶構造は、面心立方構造です。ただし、1,000℃以上に熱すると、単純立方格子に変化します。

ロジウムのその他情報

1. ロジウムの産出

ロジウムは白金鉱石から、ウィリアム・ウォラストン (英: William Hyde Wollaston) により発見されました。現在でもロジウムは、不純物として白金鉱石から産出されています。

2. ロジウムの同位体

ロジウムの原子量は、102.90550です。ロジウムの同位体の中で、103Rhが最も安定しています。放射性同位体のうち最も安定なものは101Rhであり、半減期は3.3年です。それ以外の比較的安定な同位体には、半減期が207日の102Rh、半減期が2.9年の102mRh、半減期が16.1日の99Rhなどがあります。

その他20種類の放射性同位体が存在し、原子量は92.926から116.925までを取っています。そして半減期が20.8時間の100Rhや半減期が35.36時間の105Rhを除くと、ほとんどの半減期は1時間以下です。

ロジウムには核異性体も多数存在し、安定な例として102mRhや101mRhが挙げられます。102mRhの励起エネルギーは0.141MeV、半減期は207日であり、101mRhの励起エネルギーは0.157MeV、半減期は4.34日です。

3. ロジウムの同位体の崩壊

最も安定である103Rhより軽い同位体は、電子捕獲 (英: electron capture) によってルテニウムに崩壊します。それに対して103Rhより重い同位体は、ベータ崩壊 (英: beta decay) によってパラジウムに崩壊します。

リチウム

リチウムとは

リチウムとは、原子番号3で原子量が6.941と最も小さいアルカリ金属元素です。

金属の中でも特に軟らかく、低融点であり、反応性が高く、空気中の酸素、水、窒素と反応して簡単に酸化します。

リチウムの使用用途

リチウムはガラスや陶器など窯業における用途が多く、リチウム化合物である炭酸リチウムが釉薬の改質剤として用いられています。また、耐熱ガラスや光学ガラスの添加剤としても用いらています。

リチウムの代表的な用途は電池用材料です。1次電池であるリチウム電池と、充電して繰返し利用が可能な2次電池であるリチウムイオン電池がありますが、近年はリチウムイオン電池での使用が圧倒的に多くなっています。

リチウムイオン電池は、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン、電気自動車など、現代の多くの電子機器に使用されています。リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度、長寿命、軽量性、高い充電効率、低自己放電率などの特性を持っています。これらの特性から、リチウムイオン電池は、現代社会において必要不可欠な電力源です。

一方でリチウムは、原子炉材料や有機合成の重合触媒などに用いられる他、マグネシウムやアルミニウムの合金成分としても利用されています。鮮やかな赤色の炎色反応を示すため、花火の材料や水分との反応性を利用した除湿剤なども使用用途の1つです。

リチウムの性質

リチウムは銀白色をした軟らかい金属で、全ての金属元素中で最も軽いことが特徴です。天然では、リチア雲母・ペダル石・リチア石等の鉱石や岩石中に広く分布しています。

乾燥した空気中では安定しており、ほとんど酸化しません。しかし、水分があると室温でも窒素と反応し、窒化物を生成します。また、加熱すると燃焼して酸化物を生成します。

リチウムは、同じアルカリ金属元素のカリウムナトリウムほど激しくはありませんが、室温環境下でも水と激しく反応して、水素を発生させ発火します。融点は180°C、沸点は1,330°Cであり、アルカリ金属元素の中では最も高いです。

リチウムのその他情報

1. リチウムの分布

リチウムは地球上に広く分布していますが、反応性が非常に高いため、リチウムとしては存在しておらず、別の化合物の形で存在しています。地殻構成元素の0.004%を占めており、塩湖のかん水から抽出されるものと、以下の鉱石から精製されるものがあります。

  • アンブリゴナイト (2LiF・Al2O3・P2O5)
  • スポジュメン (Li2O・Al2O3・4SiO2)
  • ペタライト (Li2O・Al2O3・8SiO2)
  • レピドライト (K(Li,Al)3(Al,Si,Rb)4O10(F,OH)2)

2. リチウムの製造方法

リチウムは鉱石やかん水から採取されますが、採取時は単体の状態ではないため、以下のように、鉱石やかん水に含まれるリチウム化合物を、一旦炭酸リチウムにした後、電解処理等を行うことで単体のリチウムが得られます。

鉱石からの炭酸リチウムの抽出
鉱石を焙焼、粉砕した後、硫酸を加えて加熱することで硫酸リチウム溶液にします。硫酸リチウム溶液に炭酸ナトリウム水酸化カルシウムを加えて、不純物として含まれる鉄、アルミニウムなどを除きます。

硫酸リチウム溶液を炭酸ナトリウムと反応させ、リチウムを炭酸リチウムとして沈殿させ、これを洗浄、乾燥します。

かん水からの炭酸リチウムの抽出
塩化リチウムを含むかん水を、天日乾燥して塩化リチウムを濃縮します。これに炭酸ナトリウムを加え、炭酸リチウムを沈殿させて洗浄、乾燥します。

炭酸リチウムから単体リチウム (金属リチウム) の製造
鉱石、かん水から得られた炭酸リチウムを塩酸と反応させて塩化リチウムにします。この塩化リチウムに、塩化カリウムを加えて高温で融解させて電気分解することにより、陰極に液体のリチウムが析出し、陽極に塩素が発生します。

液体リチウムのみを回収することで、単体のリチウムを得ることが可能です。塩化カリウムは塩化リチウムよりも分解電位が高いため、電気分解の際の溶媒用途として使用されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1382.html

ヒドロキノン

ヒドロキノンとは

ヒドロキノンの基本情報

図1. ヒドロキノンの基本情報

ヒドロキノンとは、二価フェノールの1つです。

ヒドロキノンは別名、p‐ジヒドロキシベンゼン、ハイドロキノン、キノールとも呼ばれます。CAS登録番号は123-31-9です。ヒドロキノンは、ベンゾキノンを亜硫酸で還元することによって生成できます。

また現在、ヒドロキノンの多くはベンゼンプロピレンを用いたジイソプロピルベンゼン法によって製造されています。ヒドロキノンは副作用として、アレルギー性の接触性皮膚炎を起こす場合もあります。

ヒドロキノンの使用用途

ヒドロキノンは、写真現像薬や染料・医薬などの中間原料、ゴムなどの酸化防止剤、電子材料の原料等として、幅広く用いられています。また、ヒドロキノンは、各種分析試薬として、リン・ヒ素・ケイ酸などの定量にも用いられています。

ヒドロキノンは、重合防止剤としても使用可能です。極微量のヒドロキノンを、アクリロニトリル・アクリル酸エステル・スチレン等のモノマーに添加すると、重合抑制に極めて優れた効果が見られます。

それ以外にもヒドロキノンは、化粧品分野でも使用されています。例えば、毛髪着色剤や皮膚ブリーチ剤、酸化防止剤、香料等の用途です。また、ヒドロキノンは、クリームや軟膏として使用される場合もありますが、発癌性の疑いがあるため、2%以上の高濃度の配合は制限されています。

ヒドロキノンの性質

常圧におけるヒドロキノンの融点は172℃、沸点は287℃、密度は1.3g/cm3です。水、エタノール、エーテルによく溶けます。ただし、冷温のベンゼンには溶けにくいです。

ヒドロキノンは還元性が強く、アルカリ性銀塩溶液やフェーリング溶液を還元できます。さらに、空気中で徐々に酸化されると着色します。

ヒドロキノンは無色または白色の結晶です。化学式はC6H6O2、モル質量は110.11g/mol、示性式はC6H4(OH)2で表されます。

ヒドロキノンのその他情報

1. ヒドロキノンの合成法

フェノールの酸化によって、ヒドロキノンは製造されています。過酸化水素を酸化剤として、触媒のベータゼオライト (H-BEA) と助触媒のジエチルケトンを使用することで、フェノールを酸化可能です。この反応ではヒドロキノンだけでなく、カテコール (英: catechol) も生じますが、アルカリ土類金属によりH-BEAをイオン交換することで選択性が改善します。

過硫酸カリウムを使ったエルブス過硫酸酸化 (英: Elbs persulfate oxidation) も、フェノールからヒドロキノンを作るための手法です。 

2. ヒドロキノンの酸化

ヒドロキノンの酸化

図2. ヒドロキノンの酸化

ヒドロキノンは還元力が強いため、容易に酸化してp-ベンゾキノンが生じます。そもそもヒドロキノンという名称は、p-ベンゾキノンの還元で得られたため付けられました。

p-ベンゾキノンは1,4-ベンゾキノンとも呼ばれ、炭素のみで構成された6員環1つから構成されるキノンです。分子式はC6H4O2で表されます。

3. ヒドロキノンの位置異性体

ヒドロキノンの位置異性体

図3. ヒドロキノンの位置異性体

ヒドロキノンには、ヒドロキシ基の位置異性体として、カテコールやレゾルシノール (英: resorcinol) が存在します。カテコールはベンゼン環上のオルト位に、ヒドロキシ基を2つ持つ有機化合物です。ピロカテコール (英: pyrocatechol) とも呼ばれ、ポリフェノールに含まれる構造としても知られています。

レゾルシノールは1,3-ジヒドロキシベンゼンとも呼ばれ、ベンゼン環のメタ位にヒドロキシ基を2つ持っています。タイヤの強化材として知られるタイヤコードの接着剤の原料です。そのほか、木材用接着剤原料、樹脂用紫外線吸収剤原料、樹脂用難燃剤原料などにも使用されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-31-9.html

ナトリウム

ナトリウムとは

ナトリウムとは、原子番号11のアルカリ金属元素です。

元素記号はNaで、原子量は22.99です。ソジウム (英: sodium) やソーダ (英: soda) とも呼ばれます。他のアルカリ金属元素と同様に、反応性が非常に高いです。

1価の陽イオンとして化合物を形成し、塩化ナトリウム、炭酸塩、硝酸塩などの形で地球上に広く分布しています。工業的には、塩化ナトリウムなどの融解塩の電気分解によって製造されます。

ナトリウムの使用用途

ナトリウムは、反応性が高いため、金属を精錬する際の還元剤や触媒として用いることが可能です。

さらに、融点が低く熱伝導率が良いことを利用して、高速増殖炉の冷却剤など、冷却を目的として利用されることもあります。そのほか、ナトリウムランプが高速道路やトンネルの中で使われていたり、石鹸にナトリウムが含まれていたり、身近なところで広く利用されています。

また、ナトリウムは人体にも欠かすことのできないミネラルで、筋肉や神経を正常に保つ働きを担っている元素です。 

ナトリウムの性質

ナトリウムの融点は98°C、沸点は883°Cです。比重は0.97であり、わずかに水より軽いです。

ナトリウムは反応性が高く、酸や塩基だけでなく、水とも激しく反応します。ナトリウムが人体に触れると、体の表面の水分と化合して水酸化ナトリウムになり、皮膚を侵します。空気中でも容易に酸化するので、自然界に金属ナトリウム単体は存在しません。アルコールのようなプロトン溶媒と反応しますが、灯油やエーテルとは反応しないため、ナトリウムを保存するためには、灯油に浸ける必要があります。

ナトリウムはイオン化して、1価の陽イオンになりやすいです。炎色反応は黄色を呈します。

ナトリウムの構造

ナトリウムは銀白色の柔らかい金属で、電子配置は[Ne] 3s1です。常温常圧では体心立方構造を取っていますが、200GPaの高圧下では結晶構造が変わり、金属光沢を失って透明になります。

ナトリウムには、20種の同位体が知られています。ただし、安定同位体は23Naだけです。それ以外は放射性同位体で、半減期が長いのは22Naと24Naであり、22Naの半減期は2.6年で、24Naの半減期は15時間です。22Naと24Naは、痕跡量が雨水などに含まれています。そのほかの放射性同位体は、すべて半減期が1分未満です。

ナトリウムには、2種類の核異性体が見つかっています。長寿命の核異性体には24mNaがあり、半減期は20.2ミリ秒です。

ナトリウムのその他情報

1. ナトリウムの製法

工業的にナトリウムは、融解塩の電気分解により製造されます。カストナー法 (英: Castner process) とダウンズ法 (英: Downs’ process) があります。

カストナー法は、水酸化ナトリウムを原料に使用する方法です。陽極に黒鉛を、陰極に鉄やニッケルを用いて、水酸化ナトリウムの融点に近い320℃付近で電気分解します。陽極では酸素が生じ、陰極では金属ナトリウムが遊離します。

塩化ナトリウムを使用するダウンズ法では、塩化カルシウムや塩化カリウムを加えることで、塩化ナトリウムの融点が下がるため、600℃近くで電気分解が可能です。陽極では副産物の塩素が生成します。

2. ナトリウムの反応

ナトリウムは水と反応すると、水素が生じて水酸化ナトリウムになります。水素とともに加熱して、水素化ナトリウムを得ることも可能です。アルコール、フェノール、カルボン酸のヒドロキシ基と反応し、水素が発生して、アルコキシドなどを生成します。ナトリウムは単体のハロゲンとも反応し、塩を生成可能です。

ナトリウムは乾いた空気でもすぐに酸化して、酸化ナトリウムに変わり、金属光沢を失います。酸化ナトリウムを空気中に放置すると、二酸化炭素とも反応し、炭酸ナトリウムになります。

ナトリウムは還元剤として働くため、チタン、トリウム、タンタル、ジルコニウムのようなさまざまな金属を、容易に採取が可能です。例えば、金属ナトリウムを用いて塩化チタンを還元すると、チタンが得られます。

チオシアン酸カリウム

チオシアン酸カリウムとは

チオシアン酸カリウム (英: Potassium thiocyanate) とは、無臭の無色結晶です。

カリウム、硫黄、炭素と窒素からなる無機化合物で、化学式はKSCN、分子量は97.18、CAS登録番号は333-20-0になります。擬ハロゲン化物であるチオシアン酸アニオンの重要な塩の一つで、ロダン化カリウム (英: Potassium rhodanide)、ロダンカリなどの別名を持ちます。

チオシアン酸カリウムは、カリウムカチオンとチオシアン酸アニオンで構成されており、チオシアン酸アニオンは三重結合を介して炭素に結合した窒素と、単結合を介して炭素に結合した硫黄という構造をしています。

チオシアン酸カリウムの性質

1. 物理的特性

融点/凝固点が173℃、沸点が500℃、相対密度が1.886で、特に融点が他の無機塩に比べて低く、常温で潮解性を示します。水に極めて溶けやすく、溶解時には吸熱して水溶液が冷たくなります。有機溶媒に対しては、アルコールやアセトン等にも溶けます。

2. その他の特徴

チオシアン酸カリウムは弱酸性の水溶液中で鉄 (Ⅲ) イオンに作用し、赤色を呈する特徴をもつことから、鉄 (Ⅲ) イオンやチオシアン酸イオンの検出試薬として使用されています。

加熱分解すると、シアン化カリウムと硫黄が生成されます。また、燃焼させたり酸化剤を加えると、非常に有毒なシアン化物ガスが発生するため注意が必要です。

チオシアン酸カリウムの使用用途

チオシアン酸カリウムは、「チオ尿素」「医薬」「合成樹脂の製造原料」「めっき原料」等として利用されています。他にも、「写真」「織物の染色および捺染」等の補助剤としても用いられています。

水に溶解する際に大きく吸熱する性質をもつため、寒剤としても使用されています。医薬品分野では血圧降下剤、農業分野では殺虫剤、殺菌剤等として利用されています。また、分析試薬としてハロゲン化物の定量や銀イオンの分析などの化学実験でも利用されています。

チオシアン酸カリウムのその他情報

1. チオシアン酸カリウムの製法

チオシアン酸カリウムは、チオシアン酸アンモニウムと水酸化カリウムを反応させると得ることができます。化学反応式は、NH4SCN+KOH→KSCN+NH4OHです。チオシアン酸アンモニウムは、アンモニアと二硫化炭素を加圧下で熱すると得られます (2NH3+CS2→NH4SCN+H2S)。シアン化カリウムと単体硫黄を溶融する方法 (KCN+1/8S8→KSCN) もあります。

2. チオシアン酸カリウムの反応

3価の鉄イオン (Fe3+) と反応して [Fe(SCN)(H2O)5]2+の血赤色溶液を生じるので、その検出に用いられます。チオシアン酸カリウムの水溶液は、硝酸鉛と定量的に反応してチオシアン酸鉛を生成し、塩化アシルをイソチオシアネートに変換するのに使用できます。他にも、エチレンカーボネートをエチレンスルフィドに変換したり、硫化カルボニルの合成原料にも使用されます。

3. 法規情報

チオシアン酸カリウムは毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 強酸化剤との接触は避ける。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/333-20-0.html

ジクロロメタン

ジクロロメタンとは

ジクロロメタンとは、強く甘い芳香を有する無色の液体です。

別名ジクロロメタンは、「二塩化メチレン」「塩化メチレン」「メチレンクロリド」とも呼ばれ、DCMやMDCと略される場合もあります。ジクロロメタンが皮膚に触れると、弱い刺激を受けたり、薬傷を負ったりする可能性が高いです。

蒸気には麻酔作用があるため、短時間に多量の蒸気を吸引すると、急性中毒を起こす恐れもあり、使用する際には注意が必要です。ジクロロメタンは、塩化メチルを塩素化する方法のほか、クロロホルム亜鉛酢酸で還元する方法などで生成されます。

ジクロロメタンの使用用途

ジクロロメタンは、冷媒や金属機器・プリント基板等の洗浄剤、ウレタンの発泡助剤、塗料の剥離剤、エアロゾルの噴射剤など、工業的に広く利用されています。また、有機物をよく溶解する重要な溶剤でもあるため、高純度を必要とする低沸点溶剤としても広く使用可能です。

具体的には、ポリカーボネートの反応溶剤や医農薬の溶剤としての用途が挙げられます。ジクロロメタンは、液体クロマトグラフィー (英: Liquid Chromatography) などの精密分析を含め、各種試薬としても使用されています。

不燃性で引火の危険がなく、他のハロゲン化炭化水素と比較して毒性も低いことなどから、トリクロロエチレンの代替物質としても用いることが可能です。

ジクロロメタンの性質

ジクロロメタンは、メタン (CH4) の持つ2つの水素原子が塩素原子で置換された化合物です。密度は1.3266g/cm³、融点は−96.7°C、沸点は40°C、化学式はCH2Cl2、モル質量は84.93です。

湿気によって加水分解し、大気中では容易に光化学分解します。ジクロロメタンは揮発性のある水より重たい無色透明の液体です。芳香臭を有し、非引火性かつ不燃性です。

ジクロロメタンは、エタノールジエチルエーテルに極めて溶けやすく、水にやや溶けにくいです。さらに、ジクロロメタンは、非常に数多くの種類の有機化合物を溶解します。

ジクロロメタンのその他情報

1. ジクロロメタンの合成法

工業的にジクロロメタンは、メタンやクロロメタン (塩化メチル) を400〜500℃で塩素と気相でラジカル反応させることで生成します。メタンよりクロロメタンは早く塩素化され、メタンの水素原子 (H) が塩素原子 (Cl) で多置換された混合物を得ることが可能です。

例えば、メタンと塩素を当量で反応させた場合には、クロロメタンが37%、ジクロロメタンが41%、トリクロロメタンが19%、テトラクロロメタンが3%という比率で生じます。ちなみに、トリクロロメタンの慣用名はクロロホルムで、テトラクロロメタンの慣用名は四塩化炭素です。これらの混合物から副生成物である塩化水素 (HCl) を除去して、蒸留によってジクロロメタンを精製できます。

2. ジクロロメタンの精製方法

ジクロロメタンを有機合成における溶媒として使用する場合には、モレキュラーシーブ (英: molecular sieve) などを用いて脱水する程度でも、十分な結果が得られます。精密な実験の場合には、乾燥剤として水素化カルシウム (CaH2) などを使って、蒸留によって精製します。ただし、ナトリウムはジクロロメタンと反応して爆発する危険性があるため、乾燥剤に使用してはいけません。

3. ジクロロメタンの保存方法

メタンの塩素化物の中で、ジクロロメタンは最も安定です。しかし、高純度品を長期保存した場合に、酸素や光によって酸化分解されて塩化水素やホスゲン (COCl2) などをわずかに生じる可能性があります。

したがって、アルコール、オレフィン、アミンなどの安定剤が、微量添加されている場合が多いです。また、保存する際は、密栓したうえで遮光する必要があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-09-2.html

グリコール酸

グリコール酸とは

グリコール酸の基本情報

図1. グリコール酸の基本情報

グリコール酸とは、α-ヒドロキシ酸の1種で、砂糖作物などに多く含まれている天然由来成分です。

別名、ヒドロキシ酢酸 (英: hydroxyacetic acid) とも呼ばれます。クロロ酢酸を炭酸バリウムで加水分解することによって生成可能です。また、酸化すると、グリオキシル酸しゅう酸が生成されます。

日本の法律では、3.6%以上の濃度のグリコール酸は劇物に指定されています。

グリコール酸の使用用途

グリコール酸は、角質剥離作用を持つことから、美容の分野でピーリング剤として使用される他、パーマネント・ウェーブ用還元剤としても利用されています。また、有機合成の原料や剥離剤、除菌剤、生分解性樹脂原料、皮革産業における染色・なめし剤、pHの調節剤としても広く利用可能です。

コンクリート・モルタル・各種金属など、様々な表面を洗浄するための各種洗浄剤としても使われています。ポリグリコール酸などは生分解性が高いため、医療分野において、縫合糸の材料として利用されています。

グリコール酸の性質

グリコール酸は、吸湿性のある無色の結晶です。水・エタノール・エーテルに溶けやすいです。皮膚や粘膜などにやや刺激性があります。

100℃に熱すると、グリコール酸無水物を得ることが可能です。さらに、200℃以上に熱すると、グリコリドやポリグリコリドが生成されます。

また、摂取すると、毒性があるシュウ酸に代謝されます。そのため、以前は化粧品などに高濃度のグリコール酸が含まれていましたが、現在では配合できなくなりました。

グリコール酸の構造

グリコール酸はヒドロキシ基を有するカルボン酸です。IUPAC名では、2-ヒドロキシエタン酸 (英: 2-Hydroxyethanoic acid) と呼ばれます。

化学式はC2H4O3、モル質量は76.05g/molです。密度は1.27g/cm3、融点は75℃です。

グリコール酸のその他情報

1. 天然におけるグリコール酸

グリコール酸は砂糖作物に含まれています。具体的には、サトウキビ、パイナップル、テンサイ、カンタロープなどに存在しており、未成熟のブドウでも見られます。

2. グリコール酸の応用

ポリグリコール酸の基本情報

図2. ポリグリコール酸の基本情報

有機合成においてグリコール酸は、エステル化や酸化還元反応などの中間体に使用されています。それ以外にも高分子化学において、生体適合性を有する共重合体のモノマーとして利用可能です。

例えば、縮合重合によって、ポリグリコール酸 (英: Polyglycolic acid) が生成します。ポリグリコール酸はポリグリコライド (英: Polyglycolide) とも呼ばれ、生分解性熱可塑プラスチックです。最も単純な構造の鎖状脂肪族ポリエステルでもあります。

ポリグリコール酸のガラス転移点は35〜40℃であり、融点は220〜230℃です。60℃以上で結晶化するため、透明さを失います。平均分子量が大きいと多くの有機溶媒に溶けなくなります。その一方で低分子であるオリゴマーは、DMSOのような有機溶媒に可溶です。

3. グリコール酸の関連化合物

ヒドロキシ酸の具体例

図3. ヒドロキシ酸の具体例

グリコール酸は、α-ヒドロキシ酸の1種です。ヒドロキシ酸とは、ヒドロキシ基を有するカルボン酸の総称で、ヒドロキシカルボン酸、アルコール酸、オキシ酸とも呼ばれます。

α-ヒドロキシ酸以外にも、β-ヒドロキシ酸、γ-ヒドロキシ酸、δ-ヒドロキシ酸などがあります。とくにα-ヒドロキシ酸は、脱水反応によって二量化環化することで、ラクチドを生成しやすいです。

ヒドロキシ酸はカルボン酸の近くにヒドロキシ基があるため、誘起効果によって一般的なカルボン酸よりも酸性が強いです。ヒドロキシ酸類は、クエン酸回路を代表として、広く生体内に分布しています。そして各種デヒドロゲナーゼの働きで、対応するケト酸から合成されています。

クロロエタン

クロロエタンとは

クロロエタンの基本情報

図1. クロロエタンの基本情報

クロロエタンとは、エタンの水素原子1個が塩素に置き換わった構造を有するハロゲン化アルキルです。

有機塩素化合物の一種で、化学式はC2H5Clです。モノクロロエタンや塩化エチルとも呼ばれます。

殺虫剤、冷凍機の冷媒、低温での溶媒、テトラエチル鉛の原料、種々の有機化合物にエチル基 (-C2H5) を導入するエチル化剤、局所麻酔剤として使用可能です。可燃性であり、密封して、熱、光を避ける必要があります。毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。

クロロエタンの使用用途

20世紀終わりまで、クロロエタンの主な用途はテトラエチル鉛 (Pb(C2H5)4) の原料でした。テトラエチル鉛はかつて燃焼不良防止剤としてガソリンに加えられましたが、大気汚染やその毒性から徐々に用いられなくなり、クロロエタンの需要は極端に落ち込んでいます。

以前にクロロエタンは、他のハロゲン化アルキルのように、冷媒、麻酔薬、エアロゾルの噴霧剤、発泡スチロールの発泡剤として用いられていました。

現在は工業的に、セルロースからエチルセルロース (エトセル) を合成するための原料に使用されています。エチルセルロースは塗料の増粘剤や結着剤 (バインダー) 、化粧品などの成分として使用可能です。

クロロエタンの性質

クロロエタンの融点は−139°Cで、沸点は12.3°Cです。

常温常圧でエーテル臭のある気体です。

クロロエタンの構造

クロロエタンの示性式はCH3CH2Clと表されます。

モル質量は64.51で、密度は0.92です。

クロロエタンのその他情報

1. クロロエタンの合成法

クロロエタンの合成

図2. クロロエタンの合成

クロロエタンは、1440年に初めてバジル・バレンタイン (英: Basil Valentine) によって、エタノールと塩酸の反応で合成されました。1648年にはエタノールと塩化亜鉛の反応でも生成しています。

光源下で塩素によりエタンの水素原子1個を塩素原子で置換して、クロロエタンを合成可能です。塩化水素とエタノールからもクロロエタンが得られますが、経済性で劣ります。さらに、130〜250°Cで塩化アルミニウム触媒を用いて、3気圧でエチレンに塩化水素を付加しても、クロロエタンを製造可能です。

またクロロエタンは、ポリ塩化ビニルの製造で副生物として生じます。クロロエタンの需要が少なくなった現在では、この副生成がクロロエタンの主な製造法でもあります。

2. クロロエタンの反応

クロロエタンの反応

図3. クロロエタンの反応

クロロエタンが鉛-ナトリウム合金と反応すると、テトラエチル鉛が合成できます。テトラエチル鉛は、エンジンのノッキングを防ぐためのアンチノック剤に使用可能です。類縁体のテトラメチル鉛、ジエチルジメチル鉛、エチルトリメチル鉛と合わせて、四アルキル鉛やアルキル鉛と呼ばれています。

テトラエチル鉛は揮発しやすく、特異臭を持つ無色の液体です。日光に不安定で、少しずつ分解します。引火性があり、金属に腐食性を有します。蒸気として皮膚から吸収されやすく、神経毒性が強いです。

3. クロロエタンの危険性

クロロエタンは、クロロエタン類の中では最も毒性が低いです。ただし他の有機塩素化合物と同様に、中枢神経系を抑制します。空気中の濃度が 1%未満のクロロエタン蒸気を吸い込んでも、通常は症状がありません。通常3〜5%の濃度で被害者には、アルコール中毒に似た症状が出ます。濃度が15%以上の蒸気を吸い込むと、致命的になる可能性が高いです。

6〜8%以上の濃度に晒されると、被害者は呼吸が浅くなり、意識を失って、心拍数が低下します。意識を回復するために、暴露領域からの移動が推奨されています。4時間以上の暴露では、二日酔いに似た副作用を引き起こし、例えば脱水、めまい、明確な視力の喪失、一時的な意識の喪失などです。水分、ビタミン、砂糖などの摂取によって、犠牲者が通常の健康状態に戻りやすくなります。

クレアチン

クレアチンとは

クレアチン (英: Creatin) とは、無臭の白色の結晶性粉末です。

化学式はC4H9N3O2、分子量は131.13、CAS登録番号は57-00-1である有機酸の1種で、2-(1-メチルグアニジノ)酢酸 (英: 2-(1-Methylguanidino)acetic Acid) とも呼ばれます。クレアチンは人の体内に自然に存在しており、約90%以上は筋肉に含まれ、一部は脳にも含まれています。

体のクレアチン総貯蔵量は、体重70㎏の成人で約120gと推定されています。クレアチンは体内において、3種類のアミノ酸 (アルギニン、グリシン、メチオニン) から、主に肝臓および腎臓内で合成される物質です。

体内で合成されるクレアチンは1日の必要量の半分程度であり、不足分は食品やサプリメントからの摂取が必要になります。生肉および魚に多く含まれていますが、加熱調理によりクレアチンの含有量は減少してしまいます。

クレアチンの使用用途

クレアチンは、筋肉が収縮する際のエネルギーであるATP (細胞の中に存在し、生命活動で利用されるエネルギーを保存・利用する上で必要な物質) の再合成に利用され、クレアチンリン酸として筋肉に存在しています。

運動時にはATPが分解される際に発生するエネルギーが使用されますが、ATPの量には限界があるため、運動し続けるにはクレアリン酸によるATPの再合成が必要です。クレアチンには運動時などの持久力や筋力を高める効果があるので、主に短時間で激しい運動を繰り返す際に、クレアチンの運動能力を高める効果が有効です。

また、アスリートだけではなく、クレアチンの高齢者の運動能力に及ぼす効果についても研究が進められており、高齢者の筋力維持やリハビリテーションを目的としたクレアチンの活用方法が研究されています。

クレアチンの性質

クレアチンの融点 (分解温度) は303℃で、水にはわずかに溶けますが、エーテルには溶けません。クレアチンは脊椎動物に見られ、主に筋肉や脳組織でアデノシン三リン酸 (ATP) のリサイクルを促進します。

リサイクルは、リン酸基の供与を介してアデノシン二リン酸 (ADP) をATPに戻すことによって達成されます。クレアチンは緩衝剤としても機能します。

クレアチンのその他情報

1. クレアチンの生合成

クレアチンは、アミノ酸のグリシンとアルギニンから人体で自然に生成されるアミノ酸誘導体です。生合成の最初のステップでは、酵素アルギニン (グリシンアミジノトランスフェラーゼ、AGAT) がグリシンとアルギニンの反応を媒介してグアニジノ酢酸を形成します。

次に、この生成物はメチル供与体としてS-アデノシルメチオニンを使用して、グアニジノ酢酸N-メチルトランスフェラーゼ (GAMT) によってメチル化されます。クレアチンは、クレアチンキナーゼによってリン酸化されてクレアチンリン酸を形成し、骨格筋や脳のエネルギーバッファーとして使用されます。クレアチニンと呼ばれるクレアチンの環状形態は、その互変異性体およびクレアチンと平衡状態で存在します。

2. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 酸化剤などの混触危険物質から離して保管する。
  • 分解すると一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物などを生じるため注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 粉塵やエアゾールを吸い込まないよう、充分注意する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/C3610

エタノールアミン

エタノールアミンとは

エタノールアミンとは、「モノエタノールアミン」「ジエタノールアミン」「トリエタノールアミン」の3種類の化合物の総称です。

単にエタノールアミンと言う場合は、基本的に2-アミノエタノールである「モノエタノールアミン」を指します。モノエタノールアミンは、アンモニア臭をもち、粘稠性・吸湿性といった性質をもつ液体です。別名、アミノエチルアルコールやコラミンとも呼ばれます。

エタノールアミンは、危険物第4類に分類されています。モノエタノールアミンは、劇物にも指定されており、取り扱いには注意が必要です。

化学式 C2H7NO
英語名 Ethanolamine
英語名の別名 monoethanolamine
分子量 61.08
融点 10 ~ 10.5℃

エタノールアミンの使用用途

1. モノエタノールアミン

モノエタノールアミンは、水・油によく溶けるため、乳化剤として広く利用されています。また、合成洗剤や金属腐食防止剤、化粧品、医薬品、農薬などにも使用可能です。さらに、モノエタノールアミンは混合ガスをガス洗浄して、酸性ガスを除去するのにも利用されています。

2. ジエタノールアミン

ジエタノールアミンは、洗剤・化粧品・ワックスなどの乳化剤や、紡績における湿潤剤などに用いることができます。

3. トリエタノールアミン

トリエタノールアミンは、縮合反応における塩基触媒として、有機合成反応に使用される他、乳化剤や可塑剤、防錆添加剤、保湿剤などとして使用されています。また、大気中の二酸化窒素の捕集剤として、分析にも利用されています。

エタノールアミンの性質

エタノールアミンは、アルコールとアミンの両方の特性を持っています。モノエタノールアミンの密度は1.012g/cm3、融点 は10.3°C、沸点は170°Cです。

ジエタノールアミンの密度は1.090g/cm3、融点は28.0°C、沸点は217°Cであり、トリエタノールアミンの密度は1.126g/cm3、融点は20.5°C、沸点は208°Cです。エタノールアミンは、水やアセトンによく溶解します。塩基性のため、二酸化炭素 (CO2) 、硫化水素 (H2S) 等の酸性ガスを吸収します。脂肪酸と反応することで、エステルを得ることも可能です。

エタノールアミンの構造

エタノールアミンの構造

図1. エタノールアミンの構造

1. モノエタノールアミン

モノエタノールアミンは、一級アミンと一級アルコールの両方を持っています。化学式はC2H7NO、モル質量は61.08g/molです。

2. ジノエタノールアミン

ジエタノールアミンは、分子内に二級アミンと2つのヒドロキシ基を持っています。化学式はC4H11NO2、モル質量は105.14g/molです。

3. トリエタノールアミン

トリエタノールアミンは、分子内に三級アミンと3つのヒドロキシ基を持っています。化学式はC6H15NO3、モル質量は149.188g/molです。

エタノールアミンのその他情報

1. エタノールアミンの合成法

エタノールアミンの合成

図2. エタノールアミンの合成

モノエタノールアミンは、エチレンオキシド (英: ethylene oxide) とアンモニアの反応によって得ることが可能です。ただし、反応条件によっては、ジエタノールアミンとトリエタノールアミンも生じます。生成する化合物の比率は、原料の化学量論比を変えることで制御可能です。

2. エタノールアミンの関連化合物

エタノールアミンの部分構造を有する化合物

図3. エタノールアミンの部分構造を有する化合物

エタノールアミンは、抗ヒスタミン薬の共通構造に見られます。具体的には、第1世代の抗ヒスタミン薬として知られるジフェンヒドラミン (英: Diphenhydramine) 、フェニルトロキサミン (英: Percogesic) 、ドキシラミン (英: Unisom) において、ジフェニルメタン (英: diphenylmethane) に連結しているエチルアミン部分構造でもあります。

現在でもアレルギー疾患に有効な物質とされています。また、エタノールアミンはリン脂質に豊富な頭部構造で、生体膜中でも見いだされます。

参考文献
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/700